住宅ローンの返済が滞ってしまい、競売を避けるため任意売却を行った、といった話はよく耳にしますが、任意売却で住宅ローンの残債を相殺できなかった場合は残債はどうなるのでしょうか?
任意売却に限らず、住んでいる家を売却して住宅ローン残債を相殺できることはほとんどありません。ローン残債は必ず残ると考えておいた方がいいでしょう。
しかし、任意売却するくらいですからその後の返済を求められても、返済なんてできるわけないという人が大半です。
そこで今回は任意売却後の残債はどういう扱いになるのか、どうやって返済していくのかを徹底解説していきます。合わせてローン残債を大幅に減額する方法についてもお教えするので、ぜひ最後まで目を通して参考にしてください。
そもそも任意売却とは?
まずは今回のテーマの主題となる任意整理について、簡単に解説していくことにします。任意売却についてよく理解しているならば、読み飛ばしてもらって結構です。
しかし、あまりよく知らないという人は、今回の記事を分かりやすく読み進めてもらうためにも、目を通してよく理解するようにしてください。
任意売却とは住宅ローンが完済されておらず、抵当権が設定されている物件を金融機関に合意を得て売却する方法です。
任意売却の合意を求めずそのまま放っておくと、金融機関はこの抵当権を実行して物件を売却します。しかし、その売却方法が問題なのです。
通常、マイホームを売却する時は、不動産会社等を仲介業者として雇って売却先を見つけてもらいますよね。
金融機関が抵当権を実行して売却する場合は裁判所に売却の申し立てを行い、裁判所命令によって強制的に売却される方法が取られます。
この売却方法を競売と呼ぶのですが、この競売で売却されてしまうと住宅ローン契約者はいくつものデメリットを被ることになってしまうのです。
競売のデメリットとは?
競売は抵当権を持つ金融機関が裁判所に売却の申し込みを行い、裁判所主導のもと売却が実施されます。
これだけの話なら売却先を見つけてくれるのが、仲介業者から裁判所に代わっただけですから、デメリットがないように思えるでしょう。
しかし、この競売は通常の仲介業者を介した売却と比べ、下記3つのデメリットが発生するのです。
- 安売却価格が安い
- 競売費用の負担を強いられる
- 近所の人や知人に知られてしまう
売却価格が安い
一番大きなデメリットになるのは、売却価格が安くなる点です。
競売の一般的な売却価格は市場価格の6割から8割だと言われています。
そのため競売による売却金額をローン返済に充てても、多くのローン残債が残ってしまいます。
競売費用の負担を強いられる
競売では売却金額の全額が金融機関に渡されるので、売主は1円たりとも売却金額を手にすることはできません。
そのため、競売時に必要になる諸費用の自己負担が強いられます。主な諸費用は下記の通りです。
- 予納金:40万円~
- 申立手数料::4,000円
- 郵便切手:94円分
- 差押登記のための登録免許税:確定請求債権額の1,000分の4
諸費用だけで100万円を超えるケースも出てくるでしょう。
お金がないから住宅ローン返済ができないのですから、こんなお金を捻出するなんてできるはずがありませんよね。
売却されれば引っ越しが必要ですからその費用も捻出する必要があるので、踏んだり蹴ったりの状況になるでしょう。
しかも引っ越し日も買主の意向に沿わなければなりません。売主の意向が尊重されることはないのですから、たまったものではないですね。
近所の人や知人に知られてしまう
裁判所は競売への参加を下記方法で公告するため、競売されることが多くの人の目にさらされてします。
- 裁判所本庁・支部の各閲覧コーナーで公告
- インターネットサイト(不動産競売物件サイトBIT)で公告
その上、競売が決まれば裁判所の執行官や競売に参加する不動産業者が家に頻繁に訪れます。
裁判所の執行官は家の情報を調査し、近隣住民へも状況確認が行うため、確実に近所の人にも知られることになるでしょう。
普通に売却するのが知られるのなら何の問題もありませんが、競売に掛けれることを知られるなんて恥ずかしくて仕方ありませんよね。
このように競売は売主にとって、何一つ良いことなんてありません。となれば何とか競売だけは避けたいところですよね。
そこで競売を避ける方法として、おすすめしたいのが任意売却です。
任意売却ならば通常通り仲介業者に売却先を見つけててもらい、マイホームを売却することができます。この方法ならば競売のデメリットを、全て解消することが可能です。
任意売却のメリット
任意売却のメリットは何と言っても、競売よりも高額売却できる可能性が高いという一点に尽きます。
任意売却は仲介業者を雇って、売却先を見つけてもらう売却方法です。そのため任意売却と通常の売却方法に違いはありません。
市場価格とほぼ変わらない価格で売却でき、競売よりも確実にローン残債を減らすこともできます。
任意売却をおすすめする一番の理由は、競売よりも確実に高く売却できるところです。
しかし、任意売却のメリットはこれだけではありません。それでは他にどのようなメリットがあるのかを、見ていきましょう。
売却に必要な手数料や引っ越し代が出る
マイホームを売却する際には、様々な諸費用が発生します。仲介業者を介した任意売却であれば、これら諸費用は売却金額から差し引かれることになるので、自ら用意する必要はありません。
競売とは雲泥の差ですよね。売却金額からこれら諸費用を差し引いてもらうことができます。
となれば自己資金なしで売却できる任意売却に、メリットを感じる人は多いことでしょう。
また、任意売却では売却金額から30万円ほどの引っ越し費用が出るのが一般的です。
売却後の引っ越し費用もバカにはできません。これも売却金額から捻出してもらえるのですから、間違いなく大きなメリットになってくるでしょう。
引き渡し時期に融通が利く
競売の場合、引き渡し時期は落札者の意向が反映されるため、どんな事情があっても引き渡し日には否応なく退去させられてしまいます。
次の居住先や子供の学校の問題があるので、それでは困るという人は少なくないでしょう。ですが競売にはそんな理由は通用しないのです。
任意売却ならば買主との話し合いで引き渡し日を調整することができるため、急な引き渡しで頭を悩ますこともありません。
プライバシーが守られる
競売では近所の人や知人に、競売にかけられていることがバレてしまいます。
ですが任意売却ならば通常の売却と何ら変わりがないため、住宅ローン返済が滞って大変なことになっている等の詮索はされずにすみます。
近所にマイホームを売却しなければならない理由など、知られたいという人はいないはずです。となればプライバシーが守られるのは、大きなメリットになってくるでしょう。
任意売却のデメリット
任意売却のメリットを知ってもらったところで、次は問題となるデメリットについて、簡単に紹介していきましょう。
メリット以上に重要になるので、よく目を通してください。
金融機関の合意を得づらい
任意売却は金融機関が競売にかける前に行うことが大原則です。そのため金融機関が返済不能と判断する前に、話を持っていく必要があります。
ですが金融機関に任意売却に応じてもらうのは、簡単なことではありません。
金融機関は通常通りの返済をしてもらった方が、多くの利息利益が得られるため、返済不能と判断しなければなかなか任意返済には応じてくれないからです。
しかも、任意売却したとしても、ローン残債を完済できるケースはほとんどありません。そのため任意売却後に残ったローン残債は、無担保状態で返済されるというリスクが生じます。
任意売却に応じてもらうためには、通常の売却よりも多くの時間と労力が必要になります。交渉をスムースに進めるためにも、不動産業者や弁護士等の専門家の力に頼る必要があるでしょう。
競売にかけられる可能性もある
詳しくは後述しますが、任意売却に要する期間は金融機関の意向が反映されます。そのため任意売却という方法を取れたとしても、金融機関が決めた指定期間内に売却できなければ、競売にかけられることになってしまうのです。
通常、売却期間は3ヵ月程度が一般的ですが、交渉次第では最大で6ヵ月くらいまで延長できます。
競売にかけられるリスクを回避するためにも、売却期間をできるだけ長くしてもらえるよう交渉してください。となれば、やはり個人で交渉するよりも、不動産業者や弁護士等の専門家の力に頼った方が無難ですね。
任意売却までの流れ
任意売却について詳しく知ってもらったところで、次は任意売却までの流れを分かりやすく解説します。
住宅ローンの返済が滞り、競売にかけられるまでの流れは下記の通りです。
- 金融機関から裁判所への競売申立
- 裁判所による物件調査
- 不動産の評価書作成
- 裁判所による情報公開
- 入札開始
- 競売開札
- 裁判所からの売却許可
- 物件引渡
ここで注意してもらいたいのが、任意売却が可能なタイムリミットです。任意売却はができるのは競売開札日の前日までで、それ以降は競売から逃れることはできません。
しかも任意売却には金融機関の同意が必要です。競売開札前日に金融機関に話をもっていっても、応じてくれることはないでしょう。
金融機関も裁判所申し立て等の段取りに時間と労力を要しているわけですから、安易に応じてくれるはずはありません。
任意売却をするためには、できるだけ早めの対応が必要不可欠です。この点を理解した上で、次の任意売却までの流れを見ていきましょう。
任意売却の相談から、売却完了までの流れ
任意売却の相談から、売却完了までの流れは下記の通りです。
- 不動産業者や弁護士等に任意売却の相談
- 仲介業者との媒介契約を締結
- 金融機関に任意売却の申請
- 金融機関が同意
- 仲介業者による販売活動の開始
- 購入者の決定
- 不動産売買契約を締結
- 物件引渡
- 諸経費を差し引いた売却金額を金融機関に返済
- 任意売却完了
- 売却後のローン残債が確定
以上が任意売却が完了するまでの簡単な流れになります。
先ほど金融機関との交渉時には、不動産業者や弁護士等に依頼した方が良いと話しましたが、仲介業者の選定が必要になることから依頼先は任意売却に手慣れた不動産会社がおすすめです。
仲介業を専門に取り扱う不動産会社なら、金融機関が設けた期間内での売却も可能でしょうし、少しでも高く売却できる期待もできます。
近年は弁護士と提携して任意売却を専門に扱う機関も出てきているので、掛かる費用等を試算して自分に合った依頼先を選ぶようにしてください。
任意売却で残債がゼロになることはない!
任意売却で一番重要になってくるのが、売却後のローン残債です。残念ながら一部を除き、住宅ローン残債が残っている物件を売却しても、売却金額でローン残債を完済できることはほとんどないでしょう。
その理由は戸建にしろマンションにしろ、物件の市場価格は下記のように、急激に値が落ちてしまうからです。
競売よりも高く売却できる任意売却という方法を取ったとしても、ローン残債は残ってしまうでしょう。
任意売却の相場価格
任意売却は通常の売却方法と変わらないと言いましたが、実際のところは全く同じ効果が得られるとは限りません。競売より高く売却できる可能性は高いのですが、市場価格で売却できる可能性は低いでしょう。
その理由は任意売却では下記2つの条件を避けて通れないため、どうしても市場価格で売却できる可能性が低くなってくるからです。
- 売却期間が限定される
- 瑕疵担保責任を免責して販売しなければならない
売却価格の目安は市場価格の9割から8割くらいだと言われています。
それではこれら2つが売却価格に、どう影響してくるのかを見ていくことにしましょう。
売却期間が限定される
任意売却をするためには金融機関の同意が必要になります。その際に条件になるのが、任意売却の売却期間です。
この売却期間は金融機関の意向によって決められており、3ヵ月くらいが一般的ですがこれよりも短い期間となるケースも出てくるでしょう。
そのため仲介業者には早期売却が求められます。売り出す物件が好条件を兼ね備えた、魅力的なものであれば、購入希望者も多くなるため、早期売却も可能でしょう。
しかし、周辺に同じような売出物件があったり、ごく平凡な物件であれば、購入希望者にアピールするためには同条件の物件よりも売出価格を引き下げる必要がでてきます。
早期売却を求めるならば値引きが必須条件になるのです。早期売却時の売出価格の相場は、市場価格の9割から8割くらいが相場です。
値引きをして売り出しても購入希望者が見つからない場合は、さらなる値引きも必要になるので、さらに売却価格が低くなることもあるでしょう。
期間内に売却先が見つからなければ、競売にかけられてしまうので、売主も値引きに応じるしかないというわけです。
任意売却では市場価格で売却できることはほとんどありません。この点はよく理解しておくようにしてください。
瑕疵担保責任を免責して販売しなければならない
中古物件を売却する場合には、売主が買主に対して、瑕疵担保責任を負うことが一般的です。
瑕疵担保責任とは購入前に分からなかった住宅の欠陥が、購入後に判明した場合、売主が買主に対して、その補修や改修に掛かる費用を負担する義務を指します。
その責任期間は売主が不動産業者ならば2年、個人ならば2ヵ月というのが一般的です。
この瑕疵担保責任があるから、買主は安心して中古物件を購入できるのですが、任意売却をしなければならない財政状態の売主に、その責任を負うなんてできるわけありません。
そのため、任意売却ではこの瑕疵担保責任を免責した方法でしか、販売することができないのです。となれば、購入希望者を募るためには、その見返りとして値引対応するしかありませんよね。
任意売却で少しでも残債を軽減するには?
任意売却は通常の売却方法と変わりませんが、今話した理由から、値引きを余儀なくされます。
だからといって、すべての取り引きで値引きを行う必要はありません。優秀な不動産会社を仲介業者にできさえすれば、必要以上の値引きを回避でき、少しでも高く売却することができるからです。
優良な仲介業者の選定が必要不可欠!
いくらで売却することができるかは、雇った仲介業者の手腕1つです。
優秀な仲介業者であれば、買い手と売り手双方の利益を考慮してくれる上、値引きに頼った売却はしませんし、顧客が多いため購入希望者も見つかりやすくなります。
筆者が考える優秀な仲介業者の条件は下記の通りです。
- 担当者から販売意欲が感じられる
- 十分な仲介実績を上げている
- 地域密着型で多くの情報を持っている
- 明確な査定根拠に基づいた査定を行う
任意売却は期間が限定されているため、どうしても値引先行の売り急ぎになるケースが多くなってきます。
期間内にできるだけ高く売却するためにも、優良な仲介業者選びをするようにしてください。
仲介業者選びには一括査定サービスがおすすめ!
優良な仲介業者選びなんて、どうすればいいのか分からないという人は多いことでしょう。
友人や知人に不動産業界に詳しい人がいれば、その人に紹介してもらうこともできますが、通常は自分で探し回ることになってしまいます。
しかも、任意整理ともなれば、時間に制限があるので、仲介業者選びに時間をかける余裕はなく、優良な仲介業者を見つけることができないこともあるでしょう。
そこでおすすめしたいのが一括査定サイトです。一度の依頼で複数社から査定見積もりを取ることができます。
こちらのマンション売却ガイドというサイトでは、全国1,700社以上の優良な不動産会社が登録しており、一括で最大6社へ査定見積もりを依頼できます。
60秒もあれば全国どこからでも一括査定が依頼できるので、利用してみることをおすすめします。
任意売却後の残債は返済義務が伴う
ここまでの話を総合すると、任意売却は競売よりも高く売却できる可能性は高いのですが、売却金額で住宅ローン残債を完済できる可能性は低いということになります。
銀行とも相談して任意売却したのだから、ローン残債が残ったとしても、返済義務から解放されるのでは?なんて風に考えている人は少なくないでしょう。
しかし金融機関はそんな甘い対応はしてくれません。任意売却の売却金額が2,000万円で、ローン残債が2,500万円だとしたら、残った500万円のローン残債は、その後も継続して返済していくことになるのです。
任意売却後のローン残債は、平均で800万円から1,000万円くらいだと言われています。それではここからは任意売却後に残った、このローン残債がどうなるのかを、解説していくことにしましょう。
任意売却後の残債の返済先は?
任意売却後のローン残債の返済先は、住宅ローン契約をした金融機関ではありません。
住宅ローン契約では保証会社の保証が受けられることが条件になりますが、この保証会社はローン契約者が返済不能になった場合、金融機関に残りのローン残債全額を補償するための会社です。
任意売却後、金融機関は保証会社に補償を受け、その結果住宅ローンの債権は金融機関から保証会社へと移ります。
しかも、その後も住宅ローン残債の債権は次の債権回収会社へ移ることになるのです。このように任意売却後は時間と共に債権者が変わるため、返済先もその都度、変わっていきます。
任意売却後、ローン残債の債権先は移動する
それでは任売却後、住宅ローン残債の債権がどのように移動していくのかを、分かりやすく解説します。
任意売却開始時から、債権回収会社へ債権が移動するまでの流れを見ていきながら、確認していきましょう。
①金融機関から保証会社へ移動
ここまでの解説の中で裁判所に競売申立を行うのは金融機関だと話してきましたが、実は競売申請を行うのは金融機関ではなく、保証会社です。
その時にはまだ保証会社の存在が話に出てきていなかったため、話の進行をスムースにするためい敢えて金融機関としていました。
金融機関が保証会社からローン残金の補償を受けることを代位弁済と呼ぶのですが、この代位弁済を受ける時期は金融機関が回収不能と判断した時です。
この時期は金融機関によって違いが見られますが、最短で滞納期間が3ヵ月、最長で6ヵ月経過したくらいに金融機関は回収不能と判断し、契約者に一括返済を求めることができる「期限の利益の喪失」を実行します。
この時点で金融機関は保証会社に代位弁済を求め、ローン残金の補償を受けることになり住宅ローン残債の債権が保証会社へと移管されるのです。
よって、金融機関から保証会社へ債権が移るまでの流れは、下記のようになります。
- ローン契約者からの住宅ローン返済が滞る
- 金融機関から返済の督促が行われる
- 滞納期間が3ヵ月~6ヵ月になると期限の権利の喪失が実行される
- 金融機関から保証会社へ出良い弁済の請求が行われる
- 代位弁済が実行される
- 住宅ローン残債の債権が、保証会社に移管される
このように金融機関は競売や任意売却にかかわることはありませんし、競売や任意売却後の契約者からの返済にもノータッチです。
②保証会社から債権回収会社へ移動
保証会社へ債権が移管された後、保証会社がまず行うのが契約者への一括請求です。
それで返済されなければ競売の手続きに入り、その後、競売もしくは任意売却で得た売却金額を回収します。
競売や任意売却後、残ったローン残債は保証会社によって回収されるという話もありますが、実は保証会社はこの回収にはあまり係わってきません。
中には回収を行うところもあるようですが、実際にこの回収に係るのは債権回収会社になります。
保証会社は住宅ローンの契約時の保証料と、競売や任意売却で売却金額を得ているため、回収が難しい返済にはあまり興味がないのです。これは保証会社が回収業務を生業とする会社でないことも影響しています。
そこで登場するのが、回収業務を生業とする債権回収会社です。
大抵の保証会社は競売や任意売却で回収が終わると、残ったローン債権をこの債権回収会社へと転売します。
そして最終的に競売や任意売却後の返済は、債権回収会社が担当することになるのです。
保証会社から債権回収会社へ債権が移るまでの流れは、下記の通りです。
- 保証会社からローン残債の一括返済が求められる
- 返済できない場合、保証会社から裁判所に競売申立が行われる
- 競売もしくは任意売却でローン残債の回収が行われる
- 債権回収会社へローン残債の債権が転売される
任意整理した場合、最終的な返済先は債権回収会社になると覚えておきましょう。
住宅金融支援機構は残債の債権者は変わらないはウソ!
「住宅金融支援機構のフラット35なら保証会社はなく、債権回収会社への売却もないため、債権者はずっと変わらず住宅金融支援機構のままだ」、といった記事を公然と記載しているサイトがあるようですが、これは全くのウソです。
こんな突拍子もない話が出るのは、保証料が掛からないのは保証会社と契約していないからと考えてのことでしょうが、住宅金融支援機構のフラット35の契約には、保証会社が存在しています。
財団法人 公庫住宅融資保証協会が保証会社となっており、ここから代位弁済を受けているのです。もちろん代位弁済後は住宅ローン残債の債権は保証会社へと移り、一括返済が求められ、応じられない場合は競売にかけられることになります。
民間の金融機関とは違い、競売前に任意売却を勧めてくれるので、任意売却しやすいというメリットはありますが、流れは全く変わりらないのです。
しかも、2018年からは下記3つの民間債権回収会社とも委託しています。
- エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
- 株式会社住宅再建監理改修機構
- 日立キャピタル債権回収株式会社
間違った情報に振り回されないように、よく覚えておくようにしてください。
任意売却後の残債の返済先は債権回収会社!
最終的に任意売却後の返済先は債権回収会社になりますが、多く多くの人がこの債権回収会社に馴染みがないことでしょう。
この名称に認識しているのは、過去に金融機関と返済トラブルを起こしたことがある人だけです。そのため初めて目にした人は、この名称から何だか怪しい会社を連想する人もいることでしょう。
「暴力団が関係しているのでは?」とか、「怪しい団体が経営する違法な会社では?」といった感じです。
しかし、安心してください。債権回収会社は決して怪しいところではなく、厳しい開業条件のもと法務大臣の許可を得た、社会的にも高い信用度を誇る会社なのです。
債権回収会社とは?
債権回収会社はサービサーとも呼ばれ、サービサー法(債権管理回収業に関する特別処置法)に基づき、債権回収業務が認められている会社です。
サービサー法は1998年10月に公布されたのですが、それ以前は債権回収業務を行えるのは弁護士だけでした。
その当時は弁護士数が十分でなかったことや、取り立てが難しい債権が多かったことで、債権回収が効率的に行われていなかったため、債権回収の促進を図り、民間企業に債権回収を認めるサービサー法ができたというわけです。
債権回収会社の業務を行うには、下記の厳しい条件をクリアしなければなりません。
- 資本金が5億円以上
- 弁護士が常務に常時する取締役に加わっている
- 暴力団関係者との係わりがない
- 法務大臣の許可が受けられる
これら条件を全てクリアできるくらいの会社ですから、不法な取立をすることはありませんし、強面の取立人が威圧することもないことは理解してもらえるでしょう。
任意売却後、住宅ローン残債はこうなる!
それでは債権回収会社に住宅ローン残債の債権が移った後の返済はどうなるのでしょうか?
考えられる返済方法は下記のいずれかです。
- 一括支払
- 分割支払
- 返済可能な範囲で支払う
そして、大抵は一番最後の「返済可能な範囲で支払う」という方法が選ばれます。
「返済可能な範囲で支払うってどういうこと?」こう思われた人も多いことでしょう。
任意売却するくらいだから、債権回収会社も返済する側の財政状態が緊迫していることは重々承知です。
よって、住宅ローン契約時の返済方法が、そのまま適用されるわけではありません。
無理な返済がは求められず、家計収支を元に、返済可能な金額が返済額として設定される可能性が高いのです。
残債を減らせる理由はコレ!
債権回収会社の債権買取方法は、通常の売買取引とは異なります。
保証会社から債権を一件一件買い取るのではなく、いくつもの債権をまとめていくらといったバルクセールという買取方法が取られます。
しかも、任意売却されたような債権は、回収不能となることが多い不良債権ですから、額面どうりの金額では債権回収会社は買い取ってくれません。
そのため大幅な値引きが行われます。そして驚きなのはその値引き幅です。
バルクセールでは実際の債権額の1%から10%ほどが相場と言われており、まとめて1憶円の債権でも100万円、1,000万円といった驚きの価格で取り引きされます。
返済可能な返済額が設定される可能性が高いと言ったのも、債権回収会社が債権を安く買い叩いているからです。
残債は交渉で確実に減らすことができる!
債権回収会社への返済で覚えておいて欲しいのは、返済額は必ず減額できるということです。
筆者がこういう理由は、言わなくても理解してもらえたと思います。しかし、何もしなければ大半減額は望めません。
債権回収会社はできるだけ多く回収できれば、その分、利ザヤが大きくなるからです。
そのため最初は、債権回収会社はできるだけ多くの回収を行おうと、一括返済や短期での分割返済、元本だけの回収を求めてきます。
ここでこの提案に応じてしまっては、大幅減額は叶いません。債権回収会社との減額交渉が必要なのです。交渉できるのはローン残債が残った債務者本人、もしくは代理人となれる弁護士や司法書士だけです。
段階的に交渉を進めれば、最初は強気に出ていた債権回収会社もだんだんと態度を変え、「いくらなら払えるのか?」、「200万円の返済計画でどうだ?」となり、最終的には懐具合に合った返済額で納得することになるでしょう。
債権回収会社はバルクセールで債権を購入するため、担当する回収先は少なくありません。中には100件にも上ることもあるため、回収が難しい相手にいつまでも時間を割いている暇はないのです。
そのため、相手に支払える余裕がないと判断すれば、懐具合に見合った金額で折れるケースが多くなってきます。
大幅減額ができるかどうかは、交渉しだいというわけです。有利に交渉を進めるためにも、必ず弁護士や司法書士を代理人にするようにしてくださいね。
必ずしも競売より任意売却の方が残債を軽減できるわけではない!
ここまで任意売却とその後の住宅ローン残債の返済について話してきましたが、最後に知っていれば得する情報をお教えします。
競売よりお任意売却の方が、高く売却できるのは通論です。多くの売却ケースにおいて、この通論は通用するでしょう。
しかし、この通論は必ずしもというわけではありません。任意売却よりも競売の方が、高く売却できるケースもあるのです。
ここではどんなケースであれば、競売の方が高く売却できるのかを分かりやすく解説していきます。
任意売却より競売の方が売却価格が高くなる場合が・・・
任意売却の方が高く売却できると言われる理由は、競売時に決められる売却基準価格の存在が大きく影響しています。
売却基準価格とは、裁判所が雇った鑑定士が査定評価した価格で、市場価格の5割から7割くらいが相場です。
しかし、勘違いして欲しくないのは、この売却基準価格はあくまで競売開始時の最低競売価格で、そこから競売が始まるため、実際の競売の落札価格はもっと高くなります。
実際の落札価格は売却基準価格の1.3倍から2.4倍とバラつきがありますが、2倍以上の価格で落札される可能性もあるのです。
2倍の落札価格ともなれば、市場価格と同額、もしくは1.4倍で売却できることになります。売却物件によっては任意売却するよりも、競売の方が高く売却できる可能性があるのです。
まずはBIT不動産競売物件情報サイトを確認してみよう!
競売に出される物件は、裁判所が運営しているBIT不動産競売物件情報サイトで公告されると話しましたが、実はこのサイトでは管轄裁判所ごとに実際の売却結果を調べることもできます。
この売却結果を見て自分が売却する物件と条件の近いものを探して、実際の売却価格を確認してみてください。
そうすればどれくらいの落札価格で売却できるかの予測が付くでしょう。ここで任意売却するよりも、高い落札価格が記載されているならば、競売の方が高く売れる可能性が出てきます。
下記は実際にBIT不動産競売物件情報サイトで検索した売却結果です。
*参照先:BIT不動産競売物件情報サイト
実際に2倍から3倍で落札されている物件があることが、お分かりいただけるかと思います。
このように競売の方が高く売却できるケースも出てくるので、任意売却だけにとらわれず、まずは自分で確認してみるようにしてください。
「任意売却後の残債はどうなる?払わない事は可能? 」のまとめ
競売よりも高く売却できる任意売却でも、売却金額でローン残債を完済できることはほとんどありません。大抵の場合は、その後もローン残債が残ってしまい、完済するまで返済を続けることになります。
しかし、最終的な返済先となる債権回収会社への返済額は、交渉次第で大幅減額することも可能です。
ですがこの大幅減額を勝ち取るためには、債権回収会社との交渉がものを言うので、減額交渉に長けた専門家の力は欠かせません。
任意売却後の返済交渉を専門にしている弁護士や司法書士に依頼して、できるだけ有利な返済を勝ち取ってくださいね。