マンション売却時には司法書士のお世話になりますが、具体的にはどのような場面でどんな役割を果たすのでしょうか?また、費用の目安はどれくらいなのか?詳しく解説しています。
マンション売却時の司法書士の役割とは
普段の生活の中で司法書士のお世話になる機会は、それほど多くないのではないでしょうか。マンション売却の場面で初めて司法書士にお世話になったという人がほとんどだと思います。
まずは司法書士の役割について見ていきましょう。
司法書士とはどんな仕事をする人?
司法書士は国家資格で、法律に関する書類の作成や法律上の手続きなどを行う仕事です。主な業務には、下記のものがあります。
不動産登記 | 所有権保存登記、抵当権設定登記などの登記業務 |
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商業登記 | 会社設立時の法人設立登記、役員変更登記などの登記業務 |
成年後見 | 高齢者や障害者などの成年後見業務 |
債務整理 | 借金の返済で困っている人のために行う債務整理業務 |
これら以外にも帰化申請業務や簡易裁判の訴訟代理業務なども行います。
マンション売却時に司法書士とはどんなことをするの?
マンション売却時に関して司法書士は、上の表でもわかる通り「不動産登記」に関する業務を行います。
マンション売却時に司法書士が行う「不動産登記」とは
では、次に不動産登記についてご説明します。
不動産登記とは
不動産登記は物件の権利関係を明らかにするためのもの
登記簿に記載して権利を証明
不動産登記は不動産(土地や建物)の権利を持っているのは誰かという権利関係や不動産の形状などの物理的な状況を登記簿に記載して、広く一般に公開(公示)することを言います。また、公示することで権利を証明することになります。
登記簿は「表題部」と「権利部」で構成される
登記簿は物理的な状況を記載する「表題部」と不動産の権利関係を記載する「権利部」で構成されています。
「表題部」の記載内容は不動産の所在、地番、家屋番号、種類、面積、構造などです。
「権利部」には所有者に記載する「甲区」と所有権以外の抵当権などについて記載する「乙区」があります。
不動産登記は取引の安全と円滑を図るための制度
自分の不動産を第三者に勝手に売買されないように、不動産登記をして所有権を明確にしておきます。それによって、不動産取引の安全性が守られ、取引が円滑に進められます。
不動産登記は司法書士が代行
本来、不動産登記は「登記権利者」(買主)と「登記義務者」(売主)が共同で行います。しかし、登記は専門的な知識が求められます。そのため、専門家に代行してもらっても構いません。この代行を行うのが司法書士です。
司法書士の選定は金融機関や不動産会社が手配
なお、不動産登記の代行を依頼する司法書士の選定は、売主や買主ではなく住宅ローンの借入先である金融機関や不動産会社が行うのが一般的です。
マンション売却時の司法書士の費用はどれくらい?
司法書士に不動産登記の代行を依頼した場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
マンション売却時の不動産登記費用
不動産登記は土地や建物を取得した場合も行いますが、今回は「マンション売却」のケースのみでご説明していきます。
必要な費用は3つだけ
マンション売却時に売主が司法書士に支払う費用は3つだけで、一般的な費用の内訳は下記の通りです。
内容 | 費用の目安 | |
登録免許税 | 登記の際に課される税金 | 2,000円 |
司法書士への報酬 | 不動産登記(抵当権抹消登記)の代行への報酬 | 1万円~2万円程度 |
登録事項証明書の取得費用 | 登記完了後に登記事項証明書を取得する費用 | 600円(書面の場合) | 合計 | 12,600円~22,600円程度 |
(なお、司法書士の報酬は平成15年から自由化となっています。そのため、担当する司法書士によって報酬額は異なります。)
所有権移転登記の費用は買主負担が一般的
マンションの売買で所有権は買主に移転します。その際に「所有権移転登記」も行いますが、この費用は買主が負担することが一般的です。
なお、場合によっては売主と買主の双方が負担することもあります。いずれにしても、どちらが負担するかは事前に話し合った上で、売買契約書に記載しトラブルがないようにしておきましょう。
マンション売却時の司法書士の手続きに必要な書類
司法書士に登記の代行を依頼する場合、次の書類が必要になります。
不動産登記に必要な書類
書類 | 内容 |
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権利書または 登録識別情報 |
権利書(正式名称は「登記済権利書」)は平成17年3月に廃止されました。それ以降に取得した物件の場合は「登録識別情報」を準備します。「登録識別情報」は住宅ローンの借入をしている銀行で保管しているケースが多いので聞いてみましょう。「登記済権利書」がある場合は、それを準備します。 |
住民票 | 住所を証明するために必要です。発行から3ヶ月以内のもの。 |
印鑑証明書 | 発行から3ヶ月以内のもの。実印も準備します。 |
固定資産税評価証明書 | 登録免許税の計算のために必要です。最新のものを準備します。 |
抵当権抹消書類 | 金融機関が準備します。 |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなど |
委任状 | 司法書士が登録を代行する際に必要です。用紙は司法書士が準備します。 |
住民票や印鑑証明書の取得費用として数百円ほど必要になります。
不動産登記を行うタイミング
不動産登記は通常は売却代金を受け取るときに、司法書士に立ち会ってもらい委任します。必要な書類もすべてそのときに渡します。
なお、売却代金を受け取るとそのお金を住宅ローンの返済に充てるため、金融機関も同席します。金融機関は住宅ローンの残金の支払いが終わったことを確認して「弁済証書」や「借用書」などをそろえてくれます。
司法書士はそれらの書類も一式持参して法務局に出向き、登記申請を行います。
不動産登記は自分でもできる?
不動産登記は自分でできないわけではありません。特に住宅ローンを借りていない場合は抵当権抹消の登記が不要になります。必要な書類をそろえて法務局に行けば、担当者がくわしく説明してくれます。
ただし、所有権移転登記は売主と買主が一緒に行う必要があります。自分ひとりの都合で進められるわけではありません。登記は専門用語なども多い上に売却の前後は何かとあわただしくなります。売主側はそれほど高額な費用がかかるわけではないので、司法書士に依頼する方がスムーズに進むでしょう。
マンション売却時の司法書士の役割と費用のまとめ
不動産はそれぞれの土地、建物について所在や所有者を明確にする必要があります。そのために不動産登記を行い、物理的状況や権利関係を登記簿に記載し社会に公示します。
不動産登記には土地の所在や状況などを記した表題部と権利に関する内容を記した権利部があります。
マンションを売却したときは、抵当権抹消登記や所有権移転登記を行います。登記申請は個人でもできますが、専門知識などが必要になるため司法書士に依頼するのが一般的です。
不動産登記に関する費用には登録免許税と司法書士への報酬、書類の取得費用などがかかりますが、売主が負担するのは抵当権抹消登記に対する費用が中心なので1万円~3万円くらいで収まります。
司法書士は金融機関や不動産会社が紹介してくれます。司法書士に依頼する場合は委任状や住民票などの書類が必要になります。詳しいことは不動産会社の担当者に相談してみましょう。