マンションを売却することになったとき、売り出し価格はいったいどのようにして決めるのでしょうか?もちろん、売主には「この金額で売却したい」という希望がありますし、最終的に売却額を決定するのも売主です。
しかし、“売却したい価格”と、“売却できる価格”とは異なります。本当に買手がつく現実的な価格でありながら、ギリギリまでその数字を高くするためには、売主として押さえておくべきポイントがあります。
そこで、マンションを売却する際、売り出し価格を間違えて後悔しないために、「これだけは押さえておいた方がいい」という3つのポイントをご紹介しましょう!
売り出し価格を決める前に、まずは心から信頼できる有能な営業マンを選んでおく
いい営業マンと出会えれば、マンションの売却は半分以上成功したようなもの
売り出し価格をどうするかを考える前に、まずは心から信頼できる有能な営業マンを選んでおくことが大前提です。いい営業マンと出会えることができれば、マンションの売却は半分以上成功したと言ってもいいほどです。
それはなぜかというと、心から信頼できる営業マンを選ぶことによって、納得できる価格でより良い買手に売却することができるからです。逆に営業マン選びに失敗すると、売手が損失を被ってしまう可能性もあるので、十分に注意しましょう。
営業マンの人柄と能力は、売り出し価格の決定に大きな影響を与える
不動産会社の営業マンの中には、重いノルマを背負って「一刻も早く利益を確定したい」と焦っている人もいれば、売手ではなく買手の立場に立って、安い売り出し価格を提示してくるような人もいます。もしもそのような営業マンのいる会社に媒介を依頼してしまうと、売り出し価格の決定が難航するか、低い金額で押し切られてしまう危険性もあります。
たとえ売り出し価格を理想通りに決められたとしても、営業マンの中には売り出し後に購入希望者を意図的に紹介せず、売手が焦ったところで弱みにつけ込み、「売れないようなので当社が買い取りましょう」と業者買取を迫ってくるようなケースもあります。
またこれとは逆に、査定の段階で自分の会社が専任媒介を取りたいために、わざと売手が喜ぶように高額の売り出し価格を提示してくる営業マンもいます。このような営業マンのいる不動産会社を選んでしまったら、もう売り出し価格を考える以前の問題になってしまいます。
当サイトの「カンタン60秒査定」で、信頼できる営業マンを見つける
不動産会社を選ぶ際は、まずは当サイトの「カンタン60秒査定」を利用して複数の不動産業者から簡易査定を出してもらい、その中から金額的に妥当で対応のいい数社をピックアップして、訪問査定を依頼しましょう。
そして訪問査定の際には、査定額にばかり気を取られずに、担当する営業マンが誠実かどうか、能力が高いかどうかもしっかりチェックしておくことです。ここで営業マンの人柄と能力をしっかりチェックして、心から信頼できる人に媒介を任せれば、売り出し価格を決定する際に不信感が生まれることもないでしょう。
売り出し価格とは「本当に売れる価格がいくらなのか」を、売主自身が把握することから
業者任せにすると、売出価格に100万円以上のマイナスが出ることもある
売主さんの中には、「不動産会社の営業マンを信頼しているので、その人が提示した金額なら間違いないから」と、すべてを業者任せにする人がいますが、それは絶対にNGです!
たしかに信頼のおける営業マンなら、不誠実な売り出し価格を提示してくることはないでしょう。しかし、不動産の売り出し価格は、担当者の考え方ひとつで100万円以上も違ってくることが多々あります。100万円といえば、不動産の金額としては少額ですが、貯金しようとするととても大変な金額です。
売り出し価格の相場をチェックしておくと、営業マンと駆け引きできる
たとえば、3,800万円で売却できたかもしれないマンションを、営業マンが石橋を叩いて渡るタイプで「3,700万円の売り出し価格なら、確実に買手がつくでしょう!」と言ってきた場合、自分の中に「もっと高くても売れる」という確信がないと、それで納得せざるを得なくなります。たとえ「いや、やっぱり3,800万円の売り出し価格にしたい」と主張しても、自分の中に確証がないと、まったくもって説得力がありません。
しかし、自分自身で売り出し価格の相場を調査し、それなりの確信があれば、「3,700万円なら確実に売却できるかもしれませんが、うちは室内の状態が良くて内覧の印象も良いと思うので、3,800万円はいけると思うんですよね」というように、営業マンと駆け引きをすることができるでしょう。
説得力のある売主の意見に営業マンが納得し、実際に3,800万円の売り出し価格で売却することができたら、100万円損をせずに済んだということになります。
マンションの売り出し価格の相場をチェックする方法
不動産取引情報サイト「レインズ」の成約物件情報を入手する
マンションの売り出し価格の相場をチェックするといっても、不動産の専門家ではないので、特別なことをする必要はありません。一番手っ取り早いのが、不動産会社の営業マンにお願いをして、成約済み物件の売却価格を教えてもらうことです。
同じマンション内に売却物件があればいくらで売れたのか、周辺で同じような条件のマンションが売却に出ていれば、売り出し価格はいくらなのかといった情報を入手できれば、おおよその売り出し価格は想定することができます。
不動産会社は、「レインズ」という業者間の不動産取引情報サイトを閲覧することができ、直近1年間に取り引きされたマンションの成約価格を簡単に知ることができます。これを使えば沿線や駅からの距離・間取り・築年数などの条件を入れて簡単に検索できるので、自分のマンションと条件が近い物件がいくらで売却されたかを、すぐに知ることができます。
国交省の不動産取引価格情報サイトで、成約価格を確認する
不動産会社の営業マンから情報を入手することが難しければ、国交省が運営している不動産取引価格情報サイト「土地総合情報システム」で検索すると、過去5年間に取り引きされたマンションの成約価格を知ることができます。
土地総合情報システム http://www.land.mlit.go.jp/webland/
このサイトを使えば、自分のマンションと似ている物件の取引価格を知ることができるため、売り出し価格を考える上で大いに参考になります。四半期ごとのデータもチェックできるので、「以前よりもマンションの成約価格が上がってきている」といった不動産価格の動きも調べることができます。
SUUMOやLIFELL HOME’Sなどの不動産情報サイトを常にチェック
マンションの売却を考え始めたら、SUUMOやLIFELL HOME’Sなどの不動産情報サイトは、常に見る習慣をつけた方が良いでしょう。
自分の住むマンションが売却に出ていればまずチェックし、周辺の同条件のマンションも、売却の際にはライバルになるため、常に確認するようにします。
中古市場には値引きがつきものなので、実際の売却価格はレインズなどでなければ確認できませんが、「いま購入希望者はこれらの物件を見ながらマンションを探している」ということを知るのは重要なことです。
最終的な値下げまで見込んで、計画的に売り出し価格を考える
売り出し価格は、先の先まで計算した上で決めること
マンションの売り出し価格を決める際は、いつまでに売り切りたいのか、最終的にどこまで値下げするのかを考え、先の先まで計算してから決めることが大切です。
たとえばマンションの販売期間が3ヶ月だった場合、「最初の1ヶ月は強気で売り出し価格を設定し、それでも売れなかったら一段階値を下げ、最終的にはギリギリまで下げて売却する」というようなシナリオを考える必要があります。
「最初の売り出し価格は3,880万円、1ヶ月経っても売れなければ3,680万円まで下げ、さらに1ヶ月経っても売れなければギリギリ3,580万円まで下げる」といったような具合です。
3,880万円で売りに出せば、おそらく値引きがかかって端数が切り捨てとなるので、実際には3,800万円で成約するといったイメージです。買手によっては、さらなる値引きを要求してくる場合もあります。
見切り発車で売り出し価格を決めると、後で後悔することになる
こうしてスケジュールを立てると、転勤などで販売期間がタイトになっている場合は「最初から売り出し価格を低めに設定しよう」とか、ゆっくり時間をかけて売却できるなら「当初はダメモトで高値をつけてみよう」といったように、売り出し価格を事前に調整することができます。
こうした計画なしに、見切り発車で売り出し価格を決めてしまうと、後で後悔することになります。「買い替えなので急いで売却したかったのに、相場より高値で売り出してしまい、なかなか買主がつかずにあわてて大幅値下げをして損をした」というようなことがないよう、くれぐれもマンションの売り出し価格は計画的に設定するようにしましょう。
売り出し価格は営業マンと納得がいくまでじっくり話し合う
お互いの考え方が合致するまで、何度でも根気よく話し合う
売り出し価格をいくらにするかについて、営業マンと納得がいくまでじっくり話し合うことはとても重要です。営業マンは日頃自分以外の売主や買主とたくさん会話を交わし、業界内の事情にも詳しいので、当然ながら自分よりもたくさんの情報やアイデアを持っているはずです。
こうしたプロのアドバイスを大いに参考にしながら、自分自身の意見も伝えて、お互いの売り出し価格に対する考え方が合致するまで、何度でも根気よく話し合いましょう。
マンション売却は人生の一大事なので、心残りのないよう慎重に決断を
この話し合いをいい加減にして、「営業マンがこの金額じゃないと無理だと言うから、仕方ないだろう」などと妥協をして売り出しをかけてしまうと、制約した後に「もしかしたらもっと高く売れたんじゃないだろうか?」と心残りが生まれてしまいます。
もちろん不動産会社は日々忙しいので、1回の話し合いで売り出し価格が決まれば、営業マンとしては万々歳でしょう。しかし、相手にとっては何件もある物件のひとつでも、自分自身にとってマンションの売却は、人生にもう二度とないかもしれない一大事です。
大きなお金が動いているのだということを十分に認識して、営業マンとしっかり話し合う機会をもち、「よし!この売り出し価格でいこう」と思えるまでじっくり検討することが大切です。
営業マンの出した査定額は、あくまで“たたき台”と考えること
居住用マンションの売却査定額は、主に「取引事例法」によって算出する
不動産会社の営業マンの多くは、同じマンションや近隣の同条件のマンションの取引事例を集め、現時点での相場を見ながら査定額を決定します。これを「取引事例法」といい、居住用マンションの多くは、この取引事例法によって算出します。
<取引事例法を使った査定額の計算式>
査定額=時価(レインズなどにある類似例数例の平均単価×面積)×補正分(評点)
マンション周辺に新駅ができる予定があったり、大型ショッピングモールができる予定があるなど、マンションの価値が将来的に上がる可能性がある場合には、補正分として査定額に考慮されます。
不動産会社の方針や営業マンの性格によって、提示される査定額はさまざま
このようにして不動産会社の営業マンは査定額を算出し、売主との話し合いに臨みます。しかし、営業マンにもさまざまなタイプがあって、絶対に売却できる低めの査定額を提示してくる人もいれば、売手の希望にできるだけ応じようと高額を提示してくる人もいます。
このように、不動産会社の方針や営業マンの性格によって、提示される査定額はさまざまです。営業マンの出した査定額は、けっして“正解”というわけではないので、あくまで“たたき台”として考え、売り出し価格をいくらにするかをじっくりと考える必要があります。
売り出し価格は、最終的には自分で判断を
売出価格が相場より高くても売れる人もいれば、妥当な金額でも売れない人もいる
マンションの売り出し価格は、相場や取引事例、不動産会社の査定額などをもとに売主と不動産会社が話し合い、“本当に売れる金額”をはじき出して決定します。
しかし、マンションの売却とはまさに水物で、たとえ相場より高い売り出し価格でも、たまたま内覧した買主が資産家で、物件を気に入って即決するというようなことも実際にあります。逆に、相場通りの売り出し価格なのに、たまたま内覧にきた購入希望者が皆お金にシビアで、なかなか売却が決まらないというケースもあります。
“時の運”が大きく左右する、マンションの売却
ある意味、“時の運”のようなものが大きく左右するのも、マンション売却の大きな特徴です。そうしたことも考慮した上で、たとえ営業マンが安い売り出し価格を提示してきても、「うちは築古だけど駅チカだから、利便性を気に入って高値で買ってくれる人がいるかもしれない。最初は相場より高い売り出し価格で勝負してみたい!」といった強い希望があれば、営業マンに遠慮なく相談しましょう。
マンション市場の現実も見据えて、冷静な判断を
ただし、いたずらに高い売り出し価格を設定しても、多くの場合は時間の無駄になってしまいます。特にここ数年は、マンション市場が飽和状態であるにもかかわらず、新築マンションは増え続けています。
その中で中古マンションは、“老朽化の不安”や“管理費・修繕積立金のアップ”といったさまざまなデメリットをかかえながら、買手争奪戦に勝たなければなりません。そのアピールのひとつが“金額の安さ”であることは十分に認識した上で、売り出し価格を考えることが重要です。
マンションの売り出し価格に関するまとめ
マンションを少しでも高く早く売却するために、売り出し価格をいくらにするかというのは、とても重要な問題です。最終的に価格を決めるのは売主ですが、買手が見つからなければ売却は成立しませんし、そういう意味で不動産会社の営業マンのアドバイスは非常に重要といえるでしょう。
営業マンの提示する金額をたたき台に、自分自身の意見や思いも遠慮なく伝えながら、「こんなはずではなかった」と後悔をすることのないよう、慎重に売り出し価格を設定しましょう。