亡くなった人がバブル期に投資目的でいわゆる別荘を買い、それを子供が相続するというパターンは近年増えています。
しかし当時は都市部並みに高価だった別荘地も、バブルがはじけて価値が低下し、今では買い手もつかないという状況も増えているのです。
この記事では、そんな別荘地の相続税評価額はどのように計算するのか、別荘地を使っていなくても相続税の対象になるのかなどを解説していきます。
別荘地の相続税評価額とは?相続税の対象となる!
相続税評価額とは、相続税の計算に必要となる、その不動産の価値です。
なお、別荘地は使っていなくてどれだけ荒れていても所有していれば相続税の対象です。
バブル期には別荘地は軒並み高価格で、その状況から資産価値を感じて投資目的に購入する人もいたほどでした。しかし今となっては、テレビのニュースなどでも人がおらず、荒れ果てた別荘地を紹介しています。
ましてや、現在はモノを持つ、所有するということに価値を感じない人が増えました。働き盛りの若い人が別荘地を魅力と感じていないのですから、当然価値も下がりバブル期より価値の上がっている別荘地はごくわずかといえます。
そのように買った時よりも価値が下落した不動産は相続した方にとっては問題で、真っ先に考えるのが「相続税はいくらなの?」ということですよね。
相続税が高いと生活に支障が出てくる場合もありますので、別荘地の相続税の計算の仕方を詳しく解説していきます。
別荘地の相続税評価額の計算方法
別荘の相続税評価額の計算方法を知る際に大切なのが、別荘地としての土地が「どういう土地であるか」を示す「地目」と、2つの計算方法です。
2つの計算方法は「路線価方式」、「倍率方式」といって、それぞれ評価額の出し方が異なります。
相続税の計算というと難しそうな響きでとっつきにくいイメージがありますが、この項目では用語の解説も交えつつわかりやすく解説していきます。
土地評価額の計算方法
土地評価額を知るのにまず行うのが、持っている別荘地が「どういう土地であるのか」を知ることです。
例えば、宅地用として家が建っている場合もあれば、田んぼや畑として活用している場合もありますよね。この場合、「家が建っている土地」と「田んぼや畑に使用している土地」とでは、評価額の計算方法が異なってくるのです。
だからこそ、このどういう土地であるのか、という「地目」を知ることが大事になってきます。
「地目」にはどういう種類があるのかというと、法令により次の通り定められています。
- 宅地
- 田
- 畑
- 山林
- 原野
- 牧場
- 池沼
- 鉱泉地
この地目に関しては登記事項証明書や固定資産税評価に項目として記載されています。
しかしここで注意したいのが、相続税の評価では、「所有者が亡くなった時の現況で判断する」ということです。
例えば、登記事項証明書に記載されているのが宅地であっても、現状で田んぼにしていたら、相続税の評価上の地目は「田」になります。つまり、登記事項証明書や固定資産税評価に記載されている地目をそのまま当てはめればいいということではないので、注意してください。
現状の地目がわかったら、次は計算方式をあてはめます。
別荘地の評価額の計算方法は、結論からいうと「路線価方式」での計算と「倍率方式」での計算の2通りあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
路線価方式
路線価方式は、次の場合に使用します。
- 地目が「宅地」であり、かつ別荘地の所在地が「路線価地域」である場合
地目が宅地かどうかは現状で宅地として利用しているかどうかによるので判断は簡単ですが、「路線価地域」かどうかはどのように知ればいいのでしょうか。
路線価地域かどうかは、大まかに言えば市街地である場合は路線が地域であることが多く、郊外である場合は「倍率地域」という分け方ができます。
具体的に所有している別荘地が路線価地域であるかどうか知りたい場合には、以下の国税庁のサイト「路線価図・評価倍率表」で簡単に調べることができます。
上記で所有地を確認し、路線価がつけられていれば路線価地域、と判断することができます。
路線価方式での相続税額は、
路線価地域の土地の相続税評価額=路線価×面積(㎡) |
で求められます。ここでの路線価は、所有地が面している前面道路の価格になるので注意しましょう。
倍率方式
倍率方式は、次の場合に使用します。
- 地目が「宅地」であり、かつ別荘地の所在地が「倍率地域」である場合
- 地目が「宅地」以外の場合
宅地でも路線価地域ではない場合、および地目が宅地以外の場合は、すべて倍率方式で計算することになります。
倍率方式での相続税額は、
倍率地域の土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率 |
で求められます。
固定資産税評価額を知る一番簡単な方法は、固定資産税の課税明細書を見ることです。「評価額」と書いてある項目がありますので、その数字をあてはめましょう。
そして評価倍率は、以下の国税庁のサイト「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。
建物評価額の計算方法
宅地の場合、土地の相続税評価額の計算が出来たら次に知りたいのは建物にどのくらいの価値があるのか、という評価額ですよね。
建物評価額は土地よりも簡単に調べることができます。
用意するものは固定資産税の課税明細書のみで、明細書の数字を見るだけです。そこに「評価額」という項目があり、建物の評価額が土地と一緒に書かれているので、確認してみましょう。
固定資産税評価額を調べよう
建物にかかってくる固定資産税評価額を一番早く知れるのが、固定資産税の課税明細書を見ることです。
万が一紛失してしまったという場合には、市役所に本人確認書類を持参すれば発行してもらえるので一番時間がかからない方法といえますね。
評価額の計算式
固定資産税の課税証明書に記載されている金額がどうやって決まっているのかというと、以下の計算式で求められます。
固定資産税評価額=建物の評価額×減価率 |
建物の評価額は実は複雑な計算式や規則があり、容易に計算できるものではないのですが、おおよそは建築価格の「約3割から5割」くらいになるといわれています。
さらに、建物は年数が経つごとにだんだん古くなっていきますので、価値が減った分を引く必要があります。この価値が減った分の指標が「減価率」です。このようにして、自分でも固定資産税の評価額を調べることができます。
別荘地の相続税評価額が時価より高い理由は?
別荘地の相続税評価額はバブル時には価格が高騰していましたが、今となっては買い手がつかない場合も多々あります。このようなときには、評価額が時価より高くなる現象が起きてしまうのです。
どういうことなのかというと、時価とは市場価格のことで、売買が成立するその時々の価格をいいます。対して別荘地の評価額は路線価などの「参考価格」で決まります。
しかし、その参考価格で売買されずに実際に取引されている価格、つまり時価がかなり低くなってしまいます。
本来時価と評価額は同じくらいであるべきですが、この現象はなぜ起きてしまうのでしょうか。
不況や震災による時価の暴落
バブルが弾けるのを皮切りに、一部地域を除いた土地の価格は下落し続けています。
不況により大きい買い物を買い控える現象も起きており、金額が大きくなる不動産業はそのあおりを一番受けているといっても過言ではありません。
また、地震や津波などの震災が起こり地域が被害を受けることで、人口が減少し本来価値があった土地も住めなくなってしまうことがあります。
そういった場合には、買い手がつくはずもありませんから、時価が大幅に安くなってしまう現象が起こるのです。
過疎化・少子化による需要の低迷
別荘地は大抵郊外にありますが、郊外でも人口が多ければ街が栄えてそれなりに需要が高くなり、時価はそれほど落ちないはずです。
しかし、バブルが弾け不景気により、賃金の低下が起こって人々はあまりお金を使わなくなりました。すると地方では仕事が減り、より高い賃金を求めて都心へと出る若者が増えます。これが進行すると、結果的に地方に人がいなくなる過疎化が起き、人口自体が減ってしまうのです。
そもそも人がいない状態では、需要が高くなるはずもありません。
ここで子供が増え総人口が増えるのであれば需要が回復する見込みもありますが、低賃金は改善しておらずお金がかかる子供をそもそも産まないという少子化も、別荘地の需要の低迷につながっています。
さらに、現在ミニマリストという言葉が流行っていることもあり、若い人は大金をかけて土地や建物を所有するよりも賃貸で借りて住む、という方を好むようになりました。
そうすると、ただでさえ少子化によって別荘地の需要が低迷しているのに、輪をかけて需要が減っていくということになるのです。
倍率計算しか使えない
別荘地の土地の評価には、「路線価方式」と「倍率方式」とがあります。
簡単に説明すると、路線価方式は市街地における評価方式で、倍率方式は郊外における評価方式です。別荘地は大抵郊外にあることが多いので倍率方式での計算になりますが、これがデメリットとして働いているのです。
どういうことかというと、路線価方式では住みやすさなどを考慮して細かく計算がされた路線価を用いるため、時価の70%から80%になります。
相続税評価額が時価より低いため、その分税額も安いことになります。
対して、倍率方式の場合は地域ごとに倍率が設定され細かく決められてはいないので、住みやすい土地でもそうでなくても同じ地域で同じ固定資産税評価額なら、同じ税額になってしまいます。
つまり、実際に取引される価格より評価額の方が高いことが起き、その分税金も余計にかかってしまうことになるのです。
別荘地の相続税評価額が時価より高い時の対処法
別荘地の相続税評価額が時価より高い場合、余計な税金を払わなければいけなくなるというリスクがあります。
そのリスクを回避するためにはどのようにしたらいいのでしょうか。ここではその対処法を解説していきます。
不動産鑑定士に時価算定を依頼
相続税の計算は、路線価方式か倍率方式で計算するのが原則ですが、あまりにもかけ離れすぎている場合があります。
そのような場合には、不動産鑑定士という専門家に鑑定を依頼しましょう。不動産鑑定士に依頼して算出してもらった評価額をもとに相続税を申告できる可能性があります。
ここで注意したいのは、
- 通常不動産鑑定には数十万の費用が掛かる
- 鑑定結果をもとに税務署に持って行っても否認されるおそれがある
ということです。
必要ならば不動産鑑定士に依頼するのと同時に、税理士などの専門家に相談してみるのが一番手っ取り早いといえそうです。
相続した別荘地は売却するのもアリ
相続した別荘地は、自分が普段住む住居にできればいいのですが、たいていは郊外にあるということもあり、なかなか足を運ぶ時間がないという方も多いでしょう。
他にも、相続してたまの休日に使用しているものの、光熱費やリフォーム代などの維持費がかかって大変ということもありますよね。
このように自分の家もあるしそれほど所有している必要がないという場合は、思い切って売却するということも選択肢の一つです。
別荘の売却は一括査定サイトが便利
しかし、高く売るためにはいちいち不動産屋を探して売ってもらえるようにお願いしなければなりませんし、面倒ですよね。
そんなときは、一括で複数の不動産業者に査定を依頼できる、マンション売却ガイドというサイトの一括査定サービスがおすすめです。
簡単な入力で別荘地を査定してもらえますし、ネットから行えるので手間もあまりかかりません。
もちろん見積もりを取るだけでもいいですし無料ですので、一度依頼してみることをオススメします。
別荘地の相続税評価額のまとめ
別荘地の相続税評価額の計算自体は簡単なもので自分でも行えますが、いざ別荘地を所有して管理していく、となると非常に大変なものです。
その苦労は相続してみないと分からないために、なんとなく相続してしまい今になって悩んでいる、という方もいるのではないでしょうか。
この記事で紹介しているように、相続したあとは所有する以外にも売却という手段があります。
思ったよりも相続税の評価額が高くなり、所有していることに悩んでいる方は一括で複数の不動産業者に査定を依頼できる、マンション売却ガイドというサイトの一括査定サービスを使用するのもいいですね。
見積もりを取ること自体は無料でできますので、いざというときのために選択肢を増やしておきましょう。