賃貸マンションの立ち退き料に相場はある?交渉のポイントも紹介

賃貸マンションの立ち退き料に相場はある?交渉のポイントも紹介

立ち退き、と聞くと高圧的なイメージを感じますが、賃貸マンションのオーナーなどの大家さんにとっては身近な言葉です。

賃貸物件に住んでいて、大家さんや管理会社から突然立ち退きを通告されて驚いた経験のある方もいるでしょう。このように立ち退きはそう珍しいことではないですし、それと同様に立ち退き料の問題も身近に起きやすい問題と言えます。

立ち退き料と言えば立ち退き交渉の際に必要となる費用ですが、立ち退き料は通常どれくらい払うのが正しいのでしょうか。今回の記事では、立ち退き料の相場について解説をしていきます。

立ち退き料とは?

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立ち退き料とは、賃貸マンションやアパートのオーナー(賃貸人と言います)が、部屋を借りている人(賃借人と言います)に立ち退きを依頼する際に払う金銭のことを言います。

賃貸マンションなどの家屋は賃貸人が所有しており、部屋を賃借人に貸してあげているのに、何故立ち退き料が必要になるのでしょうか?そもそも、立ち退き料は立ち退きの際に必ず払わなければならないものなのでしょうか?

賃貸人が賃借人に部屋を貸す際には、様々なトラブルを防ぐために借地借家法という法律で細かいことを定めています。例えば賃借人は賃貸人から借りている部屋に住んでいますから、賃貸人の都合で急に明日から出ていけ!と言われても困ってしまいます。このようなことを防ぐために、借地借家法では契約の解除について次のように定めています。

【借地借家法28条】

建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

参照:WIKIBOOKS「借地借家法28条」

長くて読みずらいですが、この条文では賃貸人から契約を解除する場合には正当な自由がないと出来ないことが書いてあります。そしてその場合の正当な自由とは、

  1. 建物の使用が必要となった
  2. 建物の賃借権に関する従前の経過
  3. 建物の利用状況や現況

の3点が挙げられています。またこれらの理由に加えて、

  • 財産上の給付をする旨の申し出をした場合は、その申し出

を考慮して正当事由かどうかを判断すると書いてあります。つまり賃貸人からの立ち退き申し出は、1~3に該当する事由に加えて立ち退き料の支払いがあるかどうかで、正当かどうかが決まるということになります。

この文面から分かる通り立ち退き料はあくまでも正当事由の補完的役割であり、払う事が義務付けられている訳ではありません。

ちなみに1は転勤などで貸していた部屋に、家主が戻ってきて他に住む場所もないようなケースが該当します。2は意味が分かりずらいですが、賃料の延滞があったり賃貸人に対する嫌がらせがあった場合などが該当します。3は建物の老朽化などが該当しますが、少し古くなった程度であれば、利用には問題ないため該当しません。

立ち退き料の相場

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続いて、立ち退き料の相場について見ていきましょう。その前に、立ち退き料は必ずしも払わなければならないものではないという事を改めて認識しておきましょう。その理由は先ほど説明した通りですが、正当な事由がある場合には払わなくても良いとされています。

例えば賃料の延滞が過去にあったり、住居として契約したのに事務所として使用していたりなど、これまでの契約に違反があったりした場合などが該当します。

これらの事情がある場合は当然払わなくても良いですし、該当する事由がなくても賃借人との信頼関係で話し合いの結果立ち退き料は払わずとも立ち退きしてもらえる場合もあります。このようなケースがあることを頭に入れて、立ち退き料の相場を考えていきましょう。

相場はないが家賃6ヶ月分が多い

結論から言うと、立ち退き料に決まった相場はありません。賃料の〇ヶ月分とか、地代の〇%とかのような大雑把な目安もありません。では立ち退き交渉をする場合、何を基準にして立ち退き料を計算していけば良いでしょうか?

一つの参考になる考え方として、立ち退きで裁判になった場合に裁判所が立ち退き料を計算する場合の考え方があります。裁判では賃貸人にある程度の正当事由がある場合は、賃借人の経済的損失を補填するに相当する費用を立ち退き料として計算します

賃借人は立ち退きをさせられる事で引っ越し代などの経済的な損失が発生するので、それを立ち退き料で補償するということです。

立ち退き費用の目安=引っ越しなどに伴う経済的損失

では引っ越しに伴う経済的損失とはどのように考えればよいでしょうか。これにも色々な考え方がありますが、賃借人がこれまでと同じような生活ができるようにするために必要な費用というのが目安です。つまり住居系の賃貸マンションであれば、別の住居を準備するために必要な費用となります。

例えば、月額賃料10万円の賃貸マンションの賃借人に払う立ち退き料を考えてみましょう。まず必要なのが引っ越し代です。月額10万円の部屋であれば、ファミリーでの賃借人が想定されるため引っ越し費用も15~20万円程度が想定されます。

次に必要なのが、新しい部屋の入居に必要な費用です。物件にもよりますが通常入居時には敷金と礼金が賃料の1か月分ずつ、前払い家賃に賃貸の仲介手数料が家賃の0.5~1ヵ月分必要になります。立ち退き前と同グレードの月額賃料10万円程度の部屋であれば、35~40万円程度になるでしょう。

合計すると、50~60万円程度になります。これが立ち退き料の相場が賃料の6ヵ月程度と言われるのはこのことに由来しています。ちなみに立ち退きをするのが店舗の営業目的などの物件の場合は、引っ越し期間中の休業補償なども考慮されるので住居の場合よりも、もっと高額になります。

経済的損失=新しい住居を用意する費用(引っ越し代や、新しい物件を借りるための費用

立ち退き料に含まれる費用は?

立ち退き料には、経済的損失を補填する意味を含んでいることは先ほど説明しました。経済的損失の主たる部分も先ほど説明した通りですが、事情によっては様々な損失が想定されます。

例えば立ち退きに伴う引っ越しで子供が転校する場合などはどうなるでしょうか。これには、立ち退き料に含まれている費用の中身を知る必要があります。立ち退き料に含まれていると言われる費用には、下記のようなものがあります。

  1. 引っ越し代
  2. 新しい部屋を借りるための費用
  3. 新しい部屋の賃料差額の補償
  4. 引っ越しに関する雑費
  5. 借家権の補償
  6. 営業売り上げなどの補償
  7. 建物や造作の買取
  8. 必要費や有益費の償還
  9. 社会的変化や地縁的変化に対する補償
  10. 訴訟の予防、費用の節約への見返り

1~4は先ほど説明したような引っ越しなどに伴う実費です。5については算定が難しいですが、通常借地や借家は借地借家法によって保護されている立派な権利です。

その権利の経済的価値が5になりますが、借地と違って借家の場合は特にその評価をするのが難しいのが現状です。6や7は店舗などの物件の場合が対象ですので、賃貸マンションでは通常発生しません。

8は電気ガス水道などを利用する際の必要費や、内装などの有益費に対する償還という意味になります。9は引っ越しによる精神的・社会的な損失への補償です。先ほどの子供の転勤などもこれに該当すると予想され、立ち退き料の算定の際には考慮するべき可能性があります。

10は訴訟を防いだり、長期化させないための費用です。賃貸人にとっては、立ち退きでトラブルになったり訴訟になるのは避けたいのが本音です。そのため、金銭を渡すことで早期解決を図るという狙いが立ち退き料にはあります。

このように様々な意味を含んだのが立ち退き料です。立ち退き料を交渉する場合には、それぞれの事情に該当するかどうかなども考えながら検討する必要があります。

立ち退き交渉をする際のポイント

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ここからは実際に立ち退きの交渉の仕方について見ていきましょう。立ち退き交渉はオーナーにとっても憂鬱な交渉でしょう。出来ることならトラブルもなくスムーズに立ち退き交渉出来れば良いのですが、実際にはトラブルになって交渉が長引くケースもあります。まずは、立ち退きで多いトラブルを紹介します。

事前に立ち退きで多いトラブルを知っておく

立ち退き交渉は賃貸人にとっても賃借人にとっても気持ちの良い話ではありません。どのような事情があるにせよ、賃借人からしたら出ていけ、と言われてる訳ですから納得の行かない場合もあるでしょう。立ち退き交渉では様々なトラブルが起きますが、下記のようなケースが多いです。

  • 様々な理由をつけて立ち退きに応じてもらえない
  • 立ち退きには応じてくれたが、法外な立ち退き料を請求された
  • 新しい引っ越し先が見つからず、立ち退き出来ないと言われた

細かい事情や経緯はそれぞれのケースで違いますが、上記のようなトラブルは立ち退き交渉では良くあるケースです。悪質な入居者などがいると何だかんだと理由をつけて法外な立ち退き料を求められたり、交渉にとても長い時間がかかってしまう場合もあります。

立ち退き交渉をするからには、賃貸人には何らかの事情がある訳ですからスムーズに交渉を進めたいのが本音です。

このようなトラブルを少しでも減らすには、どのように交渉をしていけば良いでしょうか。

立ち退き交渉のコツを知っておく

立ち退き交渉を出来るだけトラブルなく進めるコツは、賃借人の立場に建って説明をすること・立ち退き理由や立ち退き料をきちんと説明すること・立ち退きに応じられない理由を解決してあげることがあります。一つずつ見ていきましょう。

賃借人の立場で説明すること

例えば、建物が古くなり空室も多く賃料も下がってきた物件を建て替えるとき、どのように賃借人に説明すれば良いでしょうか?

  1. 建物も古いし、空室も増えたので建替えで収益力を高めたい
  2. 建物が古くなり入居者の方の安全面も不安なので建替えを検討している

賃借人からすれば、1のような理由で引っ越しを余儀なくされるのは納得が行かないでしょう。2のように賃借人目線で説明することで、多少は感情を和らげることが出来る可能性があります。

立ち退き理由や立ち退き料をきちんと説明すること

これまで説明したきたように立ち退き交渉には、立ち退き料の提示は付き物とも言えます。賃借人の立場になって考えてみるなら、急に立ち退きを言われたら、何とかして立ち退き料を多くもらえないか?と思うのは当然とも言えます。もしかしたら専門家に相談したりネットで情報収集などを行うかもしれません。

そのような事態に発展させないためにも、出来るだけ交渉の初期の段階できちんと正当事由を説明し、その補完策としてこれだけの立ち退き料を払う、ということを説明しましょう。

例えば老朽化を原因で建替えをするのであれば、単に老朽化というのではなく、「老朽化により耐震基準を満たしていないため建替えをする。ついては引っ越し代〇万円と新しい家を探す費用〇万円を立ち退き料として払う。」のような具体的な説明の方が賃借人も納得しやすいでしょう。

立ち退きに応じられない理由を解決してあげること

賃借人の立場になって考えるなら、賃借人が立ち退きに応じられない理由を解決してあげるのも方法の一つです。例えば、老朽化した物件の建物の場合、賃借人にも高齢の方や海外の方などが多い場合もあります。

現実的にそのような方たちが新しい入居先を見つけるのは容易ではありません。そのような場合は不動産会社とも連携しながら、新しい転居先を斡旋してあげるのも重要な解決方法です。

また出来るだけ早く立ち退きの通知をすることも大切です。賃貸借契約において、賃貸人から契約の解除を申し出る場合は遅くとも6ヵ月前には通告をしなければならないと定められています。

賃借人からすると、やる気のない引っ越しを半年以内にしなければならないのは酷でしょう。できるだけ時間の猶予を持って、早めに言うことも大切です。

立ち退き料相場のまとめ

今回は賃貸マンションの立ち退き料について下記の内容を説明してきました。

  • 立ち退き料とは、正当な立ち退き事由の補完的な位置づけとして定められているもので、必ず払わなければいけないものではないこと。
  • 立ち退き料の相場には特に決まりはないが、賃借人の経済的損失を補填するのが考え方の一つであること。
  • 立ち退き交渉でトラブルが起きないように交渉するコツは、賃借人の立場になって交渉すること。

賃貸マンションのオーナーにとっては、立ち退き交渉は避けたくてもいつかは避けられない交渉です。嫌な話ほど出来るだけ早めに、相手の立場になって説明することを心がけて交渉することが大切です。

それでも立ち退き交渉は一筋縄ではいかず、交渉が上手くいかない場合もあるでしょう。そのような場合は、専門家に相談することが解決への一番の近道です。

下記のような一括査定サイトを利用することで不動産の専門家に、立ち退きの相談や場合によってはサポートをしてもらえることもあります。立ち退き交渉に困った場合は、下記のような一括査定サイトを利用するにもオススメの方法です。

今回の記事が立ち退き料について不安のある方の参考になれば幸いです。

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