分譲マンションの建て替え費用は住民も負担する?費用や年数の目安を紹介

分譲マンションの建て替え費用は住民も負担する?費用や年数の目安を紹介

分譲マンションの多くは鉄骨鉄筋コンクリートで造られておりその耐用年数は60年とも80年とも言われていますが、いつかは建て替えが必要になります。

マンションのような大きな建物になると建て替えに相当な費用が必要になりますが、その費用は誰が負担するでしょうか。

今回の記事ではそんなマンションの建て替えに関する費用負担や年数の目安について解説をしていきます。

分譲マンションの建て替え費用は住民も負担する?

住民全員で負担するのが原則

マンションの建物は居住者全員の資産です。専有部分と言われる住民が住んでいる部屋だけでなく、マンションが建っている土地や廊下などの共用部分についても住民全員が共有している資産となります。

その共有資産を建て替える訳ですから、その費用は住民全員が負担するのが原則です。

修繕積立金は使える?

一方で、多くのマンションでは修繕積立金などの名目で毎月資金を拠出しています。この費用を使って建て替えが出来ないのか気になるところです。

マンションの修繕積立金は名前の通り修繕をするための積立ですから、修繕の都度資金を取り崩していますから建て替えの際にそのまま残っている訳ではありません。

またマンションの管理組合の規約によっては、建て替えに修繕積立金を使用することは出来ないとしているマンションが多いです。

修繕積立金で足りない場合は住民で負担

修繕積立金で足りなかったり、管理組合の規約によって修繕積立金が建て替えに使えない場合は、住民が建て替え費用を負担することになります。

費用負担をする場合、各住民がどれくらいの費用を負担するのかが、やはり気になる所です。そこで下記に表を用意しました。こちらは国土交通省が出している、建て替えの際の平均の負担額のデータです。

分譲マンションの建て替え費用の目安

参照:国土交通省「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」より抜粋

近年の建て替えでは、各住居者の平均費用負担額は約1,100万円となっています。1,100万円もの大金をすぐに用意できる方は少ないでしょうし、かなりの費用が建て替えにかかることが分かります。

これだけの大金を出してまで建て替えをする必要があるかどうかは各住民の判断にもよるところですが、マンションはいつかは建て替えをしなければなりません。また建て替えによってマンションの資産価値は大きく向上することになりますので、その点も考慮した判断が必要です。

負担を0にできる?

マンションの建て替えには様々な事例があります。中には、各住民の費用負担が0で建て替えをおこなった事例もあります。

住民にとっては費用負担なく、新築に建て替え出来る訳ですからこれほど良い話はないですが、どこのマンションでも出来る訳ではありません。

何故住民の費用負担を0で建て替えが出来たかと言うと、建て替えによって戸数を増やすことが出来たことがその要因です。例えば建て替え前の戸数が30戸のマンションを建て替えるとします。建て替えによって建物を大きく建築しすることが出来たため、建て替え後の部屋数は90戸になったとします。

90戸のマンションを建築するための費用として、15億の費用がかかったとします。建て替えによって増えた60戸を、1戸あたり2,500万円で売却することが出来れば15億の資金を捻出することが可能になります。

  • 【建て替え前】
    30戸のマンション
  • 【建て替え後】
    90戸のマンション→建築費用は15億
    建て替えによって増えた戸数60戸→1戸当たり2,500万円で分譲
    2,500万円×60戸=15億(建て替え費用に充当)

このように建て替えによって建物を大きく建築することにより戸数を増やし、その売却代金によって建て替え資金を捻出する方法もあります。

建物をどれだけ大きく建てれるかは、その土地の容積率によって決められています。このような建て替え成功事例に続くため、容積率の緩和が行われている地域もあります。

また新しく増えた戸数を予定通り売却するには、立地などが良い場所に限られます。

そのためどの場所でも上記のように出来る訳ではありませんが、少しでも住民の負担額を減らすという意味では参考になる事例と言って良いでしょう。

容積率とは

建物の延べ床面積に対する敷地面積の割合のことを指します。

容積率=建物の延べ床面積÷敷地面積

  • 例:敷地100㎡の土地に建物を建てる場合
    容積率100%の土地の場合→延床面積100㎡までの建物の建築が可能
    容積率300%の土地の場合→延床面積300㎡までの建物の建築が可能

ただしこのような場合でも、建て替え前のマンションで保有していた広さと同じ広さの部屋になるとは限りません。建て替えによってマンションの資産価値そのものが上がるのであれば、その分専有面積の広さが狭くなる可能性があります。

建て替えに関して費用負担をしていない訳ですから、建て替え前の価値と建替え後の価値が同じとするならば、建物の価値が上がった分専有面積は狭くなるという考え方です。

  • 【建て替え前の価値】
    専有面積90㎡×単価30万円=2,700万円
  • 【建て替え後の価値】
    専有面積45㎡×単価60万円=2,700万円

上記の例では、建て替え前の専有部分の評価が2,700万円でした。建て替えによってマンションの資産価値は向上し、1㎡当たりの単価は30万円から60万円へと倍増しました。

そのため建て替え後のマンションの専有面積としては、45㎡と建て替え前の約半分となってしまっています。

こんなに単純な計算ではないですが、実際の建て替えの際にはこのようにして計算をされます。建て替えを判断する際には、建て替え後の専有面積やその計画なども必ず確認して判断するようにしましょう。

分譲マンションの建て替え年数の目安

頭にも申し上げた通り鉄骨鉄筋コンクリートで造られているマンションの構造は非常に堅固で、寿命は60~80年と言われています。

しかし実際には築30~40年で建て替えを実施しているケースが多いです。下記の表はマンションの建て替えを実施した物件の所在地と築年数を集計したデータです。

参照:公益財団法人不動産流通推進センターの記事より抜粋

この表によるとマンションの建て替えの実績は東京都が全体の約6割を占め、その平均築年数は40年となっています。マンションの寿命が60~80年と言われている一方で、実際の建て替えサイクルは早いことが分かります。

しかし、これまで建て替えが行われたマンションは築年数が古く、現在の建築技術は当時よりも飛躍的に進歩していることを考えると、今後建て替えの年数はより長くなっていくことが想定されます。

分譲マンションの建て替えがなかなか進まない理由

マンションの建て替えは住民にとっても、また災害時への対応などの観点からでも必要な事業と言えます。

しかし、現実には老朽化による建て替えの必要性を感じながらも、住民の足並みが揃わず建て替えが出来ていない物件もたくさんあります。なぜマンションの建て替えが中々進まないケースが多いのでしょうか。

区分所有法が関係している

区分所有法とはあまり聞きなれない名前の法律ですが、正式には「建物の区分所有に関する法律」と言い、1棟の建物を区分で所有する際のルールについて定めた法律です。

つまり区分所有法では、分譲マンションにおける管理のルールや建物の使い方などについて定めた法律ということです。区分所有法では、専有部分と共有部分を定めていたり、マンションの管理組合を結成することなどが定められています。各マンションに管理組合が必ず存在するのは、区分所有法に定められているからです。

建て替えには多数の賛成が必要

そしてその管理組合には、区分所有法に基づいた管理規約が作られており大規模修繕や建て替えなどの重要決議は多数決によって決めることが定められています。建て替えの場合は、各区分所有者の5分の4以上の賛成が必要とされています。

決議内容 必要賛成数
  • 共有部分の管理に関する事項
  • 共用部分の軽微な変更
  • 小規模滅失の修繕
過半数
  • 管理規約の変更
  • 共用部分の大規模な変更
  • 大規模滅失の修繕
  • 規約違反者への訴訟
4分の3以上
  • 建て替え
5分の4以上

ちなみに、各決議に必要とされている賛成数は区分所有者数の賛成数です。区分所有者とは分譲マンションの専有部分、つまり各住戸を所有している方のことを指します。

一つで住戸に夫婦で住んでいたとしても、その建物を所有しているのが夫であればその家庭の区分所有者数は1になります。

 保有 区分所有者数
一人で一つの専有部分を保有 1
一人で二つ以上の専有部分を保有 1
二人で一つの専有部分を保有 1

注意が必要なのは夫婦で住戸を共有しているようなケースです。このような場合は、所有者としては二人になりますが、区分所有者としては1になります。

同居している家族であれば、意見を一つにまとめる必要があるという事になります。

分譲マンション建て替えまでの流れ

実際にマンションの建て替えを行う場合の流れを見て見ましょう。

  1. 建て替えの時期を迎えたら検討へむけた事前準備を行います。有志による勉強会を開催して知識を得たり、問題点などを把握します。
  2. 続いて検討段階へと入ります。管理組合の中に検討委員会を設置して、建て替えの計画や修繕との比較を行います。そして建て替えを進めるために、各区分所有者の決議を取ります。
  3. 決議が取れたら、計画段階へと移行します。デベロッパーなどを比較して具体的な建築計画を立てていきます。
  4. 計画が固まったら実施段階へ移行し、実際に工事を始めていきます。新マンションの建築が完了したら、各住民へと引き渡します。

このように建て替えの流れは大きく4段階によって進められていきます。各段階において行うべき事項はたくさんありますから、やはり建て替えにはどうしても時間がかかってしまいます。

建て替えはなかなか進まない

ただ上記のような流れに基づいてスムーズに建て替えが行われることは、実はあまりありません。

やはり住民の足並みが揃わないからです。建て替え時期を迎えているマンションは築後相当の年数が経過していることから、住民も高齢化が進んでいる場合も多いです。

そのため建て替えの必要性は感じながらも、慣れ親しんだ部屋で生涯を暮らしたいと考える方も少なくありません。また建て替えには経済的な負担や、仮住まいへの引っ越しなど精神的にも体力的にも負担を伴います。

高齢者であればその負担に耐えることが出来ない場合も多く、そのため必要な賛成数を得られないケースが多いのです。

このような理由から全国には建て替え時期を迎えているにも関わらず、建て替えが実施されていないマンションが数多くあり、今後社会的な問題となっていくことが予想されます。

建て替えに納得できない場合

住んでいるマンションに建て替えの話が出た場合、様々な理由からどうしても賛同できない場合もあるでしょう。その場合は、そのマンションを売却してしまうのも方法の一つです。

建て替えには費用負担もいるのに、そんなマンションが売れるか?と思ってしまいますが、不動産投資家と呼ばれる方達の中には建て替え前のマンションを狙って買う方も少なくありません。

何故なら建て替えによってマンションの資産価値が上昇するからです。建て替え前の築古の状態で安く購入することが出来れば、建て替えに費用を払ったとしても、建て替え後の資産価値の上昇で十分元が取れると考えられるからです。

物件にもよりますが、このような方達に売ることも出来ますので、建て替えに賛同できない場合は売却も視野に入れるのも選択肢の一つでしょう。

またマンションを売却する場合は、下記のような点にも注意すると高く売れる可能性があります。

  • 物件の相場を把握する。
  • 信頼の出来る良い不動産会社を見つける。
  • 部屋の中を綺麗にしておく。

このような点に気を付けることで、買主との交渉もしやすくなりますし、相場よりも安く売ってしまって後悔することを防ぐことが出来ます。

マンションの建て替え費用に関するまとめ

分譲マンション 建て替え まとめ

今回マンション建て替えの費用負担について、下記の内容を中心に解説をしてきました。

マンションの建て替えは、誰にでも起こりうる身近な問題です。マンションの場合は毎月修繕積立金を払っている物件が多いので、なんとなく建て替えもその資金を使って行われるようなイメージを持ってしまいがちですが、実際には建て替えの際には住民の費用負担が発生します。

突然の費用負担に慌てないように、前もって資金の準備をしておくことが大切ですが、どうしても建て替えに賛同できない場合は売却を検討しましょう。売却の際には下記のような無料の一括査定サイトを利用することで、効率よく物件の相場を調べることが出来ますのでオススメの方法です。

今回の記事がマンション建て替えに関して不安に思っている方の参考になれば幸いです。

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