土地改良区を相続!手続きや売却費用まで紹介!

土地改良区を相続!手続きや売却費用まで紹介!

土地改良区は、農家の方でなければ普段あまり聞きなれない言葉です。相続などで農地を引き継いで、初めてこの言葉を耳にする方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では土地改良区の内容や相続に関する知識、売却の手続きなども含めて詳しく解説をしていきます。土地改良区について知りたい方はぜひお読みください。

土地改良区とは?

土地改良区 相続 土地改良区とは

土地改良区と聞くと、その名称の響きからなんとなく商業地や住宅地のような土地の用途を表している印象を受けてしまいます。

更には「改良」という言葉が入っていることから、再開発を行っている地域のようなイメージを持ってしまいがちですが、土地改良区の意味は実は違います。

土地改良区は土地ではなく団体の名称

土地改良区とは土地の種類などを表す言葉ではなく、土地の改良事業を目的として設立された組織のことを言います。

つまり、土地改良区とは組織の名称を表す言葉なのです。土地改良区という言葉を初めて聞く方にとっては、土地改良区というのはとても違和感を感じる名称だと言えます。

土地改良区は土地改良法という法律に基づいて設立される組織で、設立には改良を行う土地の所有者の3分の2以上の同意と都道府県知事の認可が必要です。

土地改良区が行う土地改良事業は公共事業と位置付けられており、そのため土地改良区への加入が強制であったり、費用も強制徴収されるなど公共団体としての強い権限を持っているのが特徴です。

【公共団体とは】

公共団体とは一定の目的を果たすことを目的として国家が認めた法人を言います。その目的を達成するために必要な範囲で権力の行使を認められているのが特徴です。公共団体には地方公共団体である都道府県や、共済組合・健康保険組合などがあり、その権限の強さが分かるでしょう。

農地の整備が目的

土地改良区が行う土地改良事業とは、具体的にはどのような事業を指すでしょうか。土地改良区が行う土地改良事業とは、農業生産の増大や向上を目的として、農場を整備したり池や水路などの農業には欠かせない水路の維持や管理などを言います。

実際の業務内容としては農業に必要な水に絡んだ施設の管理が中心となっており、業務に占める4分の3が管理業務となっています。

土地改良区という名称では分かりずらい事もあってか、平成14年からは土地改良区の愛称として「水土里(みどり)ネット」とという愛称を使用しています。この愛称からもやはり水に関する施設の維持や管理に重きを置いていることが分かります。

土地改良区の賦課金

土地改良区 相続 賦課金

土地改良区が土地改良事業を継続するためには、費用が必要です。その費用は、組合員から賦課金として徴収することになりますが、土地改良区が組合員から費用を徴収するには、その旨を定款に記載して都道府県知事の認可を受ける必要はあります。

逆に言うと経費の徴収に関する認可を受けている土地改良区の組合員は、農業を営んでいなくても賦課金を払う義務があります。賦課金については土地改良法において、下記のように定められています。

【土地改良法】

第三十六条 土地改良区は、定款の定めるところにより、その事業に要する経費(第九十条第四項(第九十一条第四項及び第九十六条の四第一項において準用する場合を含む。)、第九十条第八項又は第九十一条第五項の規定により徴収される金銭を含む。)に充てるため、その地区内にある土地につき、その組合員に対して金銭、夫役又は現品を賦課徴収することができる。

参照:電子政府の総合窓口e-GOV「土地改良法」より抜粋

しかし現在では農業に馴染みのない方も多く、賦課金の徴収に抵抗を感じる方も少なくありません。そもそも賦課金とは、どれくらいの金額が徴収されるのでしょうか。農林水産省が発表している賦課金の全国平均は下記の通りです。

特別賦課金(建設費用) 経常賦課金(維持管理費用)
1,637円/10a 3,187円/10a

参照:農林水産省「今後の土地改良区の在り方について」より抜粋

更に日本での農家一戸当たりの平均経営耕地の面積は2.2haとされていますから、これに基づけば土地改良区の平均賦課金は39,201円ということになります。

賦課金は土地改良事業に伴う人件費や水道光熱費などの経常資金や、施設の維持管理費に使われる費用です。金額的には、そこまで大きな金額とは言えませんが、農業を営んでいない方にとってはやはり負担が気になる金額とも言えるでしょう。

土地改良区を相続したらどうすればいい?

土地改良区 相続

相続などで実家の土地や親の不動産を相続する場合も多いですが、その中に土地改良区に該当する土地があった場合はどのようにすれば良いでしょうか。土地改良区が行う事業は、先ほど説明した通り農業に関する事業ですから農地を引き継いだ際に、土地改良区の該当地である可能性があります。しかし中には農地で引き継いだ場合でも、農業を行わない場合もあるでしょう。ここでは土地改良区に該当する土地を引き継いだ場合の対応について見ていきましょう。

賦課金を払う必要がある

土地改良区に該当する農地を相続で引き継いだ場合、まず気になるのが賦課金の取り扱いでしょう。結論から言いますと、相続で引き継いだ場合であっても賦課金を払う必要があります。これは相続人(土地を引き継いだ人)が農業を行っていない場合でも同じです。

農業をしていないのにも関わらず、土地改良区の賦課金を払わなければいけないのは腑に落ちない方もいるでしょう。しかし土地改良事業とは全ての農業従事者が円滑に農業を続けることを目的としています。

そのため、土地改良区の組合員であれば農業を行っていることを前提としていますし、農業を行っていなくても賦課金を払う必要があります。

また農地を引き継いだものの、実際にはその農地を使って別の方が農業を行っているケースもあります。土地改良区の定款にもよりますが、土地改良区の賦課金は所有者または耕作者としている場合が多いです。

そのような場合は土地改良区へと手続きすることで、耕作者に賦課金を払ってもらうことが可能になります。

農地以外の利用は出来ない?

相続で土地改良区に該当する土地を引き継いだ場合、農業をしていなければ毎年賦課金のみを払い続ける必要があります。

更に農地は農業を行っていれば固定資産税などで優遇される場合がありますが、農業を行っていない場合には優遇税制も受けられず毎年の維持費ばかりかかってしまうことになります。

農地を相続することでとても負担が大きくなってしまう訳ですが、農地を農地以外の目的で利用することが可能でしょうか。駐車場にしたりアパートを建てれば収益を生んでくれますから、所有者にもメリットがある土地になります。しかし原則として、農地は農地以外の利用が出来ません。

しかし全ての農地が農地以外に利用出来ないという訳ではありません。農地の利用に関する法律である農地法では、農地を農地以外に転用する場合には都道府県知事または指定市町村長の許可が必要と定められています。

つまり所定の許可が取得出来れば農地以外に転用できる訳ですが、全ての農地が転用の許可を取得出来る訳ではありません。

農地法 第四条

農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。

参照:電子政府の総合窓口e-GOV「農地法」より抜粋

生産性の高い優良な農地や、規模の大きな集団農地など転用が認められない農地も決められています。また、都道府県などから転用が認められた場合でも注意が必要なのは、土地改良区への手続きも同時に必要になることです。土地改良区に該当する土地を転用する場合、決済金が必要になる場合があります。

決済金とは土地改良区に該当する土地が転用されることで、残された組合員の賦課金の負担の上昇を抑えるために請求される費用です。

組合を抜けるのに費用を請求されるので、腑に落ちないような気持ちもしますがこのことは土地改良法でも次のように定められています。

土地改良法 第四十二条

2 土地改良区の組合員が、組合員たる資格に係る権利の目的たる土地の全部又は一部についてその資格を喪失した場合において、前項の承継又は第三条第二項の規定による交替がないときは、その者及び土地改良区は、その土地の全部又は一部につきその者の有するその土地改良区の事業に関する権利義務について必要な決済をしなければならない

参照:電子政府の総合窓口e-GOV「土地改良法」より抜粋

相続した土地改良区は売却可能?

土地改良区 相続 売却

先程は、土地改良区や農地の転用について説明してきましたが、転用以外では売却という方法があります。土地改良区に該当する土地は売却することが出来るでしょうか。

農地目的なら売却が可能

土地改良区に該当する土地は農地であることはこれまでも説明してきました。そして農地の利用や転用については、農地法で定められていることも説明してきた通りです。農地法では農地の売却についても下記のように定めています。

農地法 第三条

農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

参照:電子政府の総合窓口e-GOV「農地法」より抜粋

転用の場合は都道府県知事の許可が必要でしたが、売却の場合は農業委員会の許可が必要とされています。

農業委員会とは農業をしていない方にとってはあまり聞きなれない団体ですが、各市町村に設置されている農業に関する事務や農地の利用関係の調整を行っている機関です。

そしてこの農業委員会が売却の許可を出すことが出来ない場合として、下記の7つが農地法には規定されています。

  1. 農地を購入しようとする者が、農地取得後に農地全てを効率的に利用して耕作が出来ないと判断される場合
  2. 農地所有法人以外の法人が取得する場合
  3. 信託として所有権が移転される場合
  4. 農地を購入しようとする者が、常時農業に従事すると認められない場合
  5. 農地を購入する者が取得後に所有している農地の面積が、北海道で2ヘクタール以上、それ以外では50アール以上に満たない場合
  6. 農地を購入する者が取得した農地を貸し付けしようとしている場合
  7. 農地を購入する者が行う農業が、周辺地域の農業の効率化や総合的な利用の確保に支障を生ずる可能性がある場合

つまり、上記の全てをクリアする買主でなければ売却が出来ないことにあります。既に大規模な農業を行っている農家などの方に限定されるため、実際には売却相手を探すことがかなり困難なことが予想されます。

このように農地の売却自体は可能ではありますが、買い手先を探すのが困難な場合は不動産会社選びが重要になります。農地の売買に長けた信頼の出来る不動産会社に任せるようにしましょう。

売却の手続き

それでは続いて実際に農地を売却するの流れと手続きを見ていきましょう。

農業委員会に相談する

農地の売却を決めたら、まずは農業委員会に相談をしましょう。先ほども説明したように農地を売却するには、農業を行っている方に買ってもらう必要があります。そのため農業委員会に相談することで、買主を斡旋してもらえる場合があります。

農地を売却する際には農業委員会の許可が必要になることは説明しましたが、許可申請の前に一度農業委員会に相談すると良いでしょう。

不動産会社に依頼をする

農業委員会の斡旋でも買い手が見つからなかった場合は、不動産会社へと依頼をします。この際、不動産会社選びには注意が必要です。

大手の不動産会社などでは農地を取り扱っていない場合もあるので、地域に密着した農地の売買の実績のある不動産会社を選ぶようにしましょう。

売却の許可申請をする

買主が決まったら必要書類を集めて、農業委員会へと売却の許可申請を出しましょう。この際に必要な書類は、登記簿謄本や土地の位置図・委任状などのほか、買い手の農家証明や法人の定款なども必要になります。

またこの際に土地改良区の意見書も同時に提出します。許可に必要な期間は、通常書類を提出した後1~2か月程度になります。

売買契約・引き渡し

許可申請がおりたら、売買契約を締結し土地の引き渡しを行います。土地の売買契約のタイミングによっては、まだ農業委員会の許可がおりていない場合もあります。

その際には売買契約の特約で、許可がおりなかった場合は契約の白紙撤回や手付金の返還などを記載しておくことで後々のトラブルを防ぐことが可能になります。

土地改良区への相談

忘れてはならないのが、売却が決まったら土地改良区へ対して手続きをしておくことです。農業委員間の許可申請には、土地改良区の意見書が必要になるためです。

土地改良区によっては意見書の発行に手数料がかかる場合もありますし、転用の場合と同じく決済金が必要なケースもあります。意見書の発行に時間がかかる場合もありますので、土地改良区へは早めに申し出をしておきましょう。

土地改良区の相続まとめ

土地改良区 相続 まとめ

今回の記事では土地改良区の相続について、下記の内容を中心に解説をしてきました。

農業を行う方の人口は年々減少傾向にあるため、相続で農地を引き継いでも農業を行わないケースも増えています。その農地が土地改良区に該当している農地の場合は、農業をしていないのに毎年賦課金を払う必要があります。

また農業を行っていなければ固定資産税などの優遇も受けられなくなるため、毎年コストばかりがかかってしまう事になってしまいます。

そのような場合は、ハードルが高い場合もありますが宅地への転用や売却を検討するのも一つの方法です。使わない農地を有効活用したり、他の方に売却をして農業を行ってもらうことが出来れば、土地の有効活用へと繋がりますし土地を維持する負担を減らすことも出来ます。

農地を売却する際には、買い手がかなり限定されているため時間がかかることが多いです。スムーズに売却するためには、下記のような一括査定サイトを利用するのも良い方法です。

複数の不動産会社の査定を取ることで、地元の農地に強い不動産会社を見つけることが出来る可能性もありますので、ぜひ活用してください。

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