「このマンション、これくらいの価格で売れたらいいな~」と思っていても、現実には希望通りにはいきません。
実際に〇〇万円で売り出しても、成約するのはもっと低い価格ということがよくあります。
販売価格の目安はどれくらいなのか、そして、より高い価格で成約するにはどうすればいいのでしょう。
中古マンション売却の価格には売出価格と成約価格がある
中古マンションをはじめとする不動産の売買には「売出価格」と「成約価格」があります。
売出価格と成約価格とは
売出価格とは売り主が「この値段で売りたい」と希望する価格のことです。一方、実際に成約した価格のことを「成約価格」と言います。売出価格で成約するのが理想ですが、場合によっては成約価格が売出価格を大きく下がることがあります。
では、どうして売出価格よりも低い価格で成約するのでしょうか。
それは中古物件ならではの事情があります。
不動産業界はレモン市場
中古マンションの販売価格は表示価格通りに売れることは少なく、交渉次第で価格が決まります。いわば「値切るのが当たり前」という世界なのです。
どうして値切るのが当たり前なのか?その理由は「レモン市場」にあります。
日本の不動産業界は「レモン市場」と呼ばれています。さわやかなネーミングですが、その意味はそれほど美しいものではありません。レモン市場はアメリカの経済学者ジョージ・アカロフ教授が最初に取り上げたもので、日本では中古車市場や中古住宅市場のことをレモン市場と言います。
「レモン」には「良くない」という意味があります。中古車や中古住宅は実際に手に入れてみないとその品質を知ることができないため、販売者は粗悪品でも欠陥をユーザーに伝えずに販売する傾向があります。その結果、市場に粗悪品ばかりが流通することをレモン市場と言います。
中古マンションでのレモンとは
マンション売却にあたりリフォームをすることはよくあります。見た目はきれいになったとしても、設備が古い、不具合がある、電源コンセントの位置やドアの開閉が使いにくい……といった情報が顧客に十分伝わらないことがあります。
そこでユーザーは内覧会などで物件をあちこち確認するのですが、その際に不具合などを見つけると、それを理由に値引き交渉をします。
売出価格と成約価格の開き
売出価格と成約価格の開きはどれくらいが一般的なのでしょうか?
これはケースバイケースで正確なデータはわかりませんが、この開きのことを「かい離率」と言い次の計算式で出すことができます。
(成約価格-売出価格)÷売出価格×100
売出価格が3000万円の物件が2700万円で成約した例で計算してみます。
(2700万円-3000万円)÷3000万円×100=-10
かい離率は-10%となります。希望する販売価格(売出価格)よりも10%も安い価格で成約したということですね。このかい離率が少ないほど希望価格(売出価格)に近い価格で成約できるということになります。
中古マンション売却の成約価格は非公開~目安はどうやって調べる?
マンション売却時に希望価格(売出価格)をいくらに設定するか。
これは難しい問題です。
なるべくかい離率を抑えた売出価格を決めたいのですが、その目安となる個々の成約価格は一般に公開されていません。
成約価格は販売者と仲介業者、購入者のみが知っている
売出価格は不動産会社のホームページや物件情報のチラシ・フリーペーパーなどで知ることができます。ところが実際の成約価格はさまざまな交渉の後に決まります。
そのために世間に知られることなく契約されます。成約価格を知っているのは販売者と仲介業者、購入者のみということになります。
成約価格の目安
売出価格を決める際に、ある程度の目安は知っておきたいですね。そこでマンション価格の目安になるデータをご紹介します。REINS(レインズ)の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2016年)」に中古マンションの取引動向と物件属性が掲載されています。
REINS(レインズ)とは不動産流通標準情報システムのことで、国土交通大臣指定不動産流通機構が東日本、中部、近畿、西日本の4つのエリアで不動産の市況データを取りまとめています。不動産業者は販売や成約したらREINS(レインズ)に報告しなければなりません。
そして、REINS(レインズ)はそのデータを集計ているのです。今回は首都圏のデータを参考にしてみましょう。
REINS(レインズ)のデータに見る売出価格と成約価格
首都圏の不動産流通市場のデータによると中古マンションの新規登録価格と成約価格は下記の通りです。「新規登録」とは「売りに出された物件」という意味です。そのため、新規登録価格は「売出価格」のことを指します。比較しやすいように㎡単価で比較してみました。また、1㎡あたりの単価を売出価格と成約価格で比較計算したデータもご紹介します。
築年数 | 新規登録価格 (売出価格)㎡単価(万円) |
成約価格㎡単価(万円) | ㎡単価の成約価格÷売出価格(%) |
---|---|---|---|
築0~5年 | 90.69 | 74.37 | 82.0% |
築6~10年 | 72.93 | 61.17 | 83.9% |
築11~15年 | 66.00 | 56.46 | 85.5% |
築16~20年 | 53.27 | 46.73 | 87.7% |
築21~25年 | 37.51 | 31.55 | 84.1% |
築26~30年 | 36.78 | 29.97 | 81.5% |
築31年~ | 41.94 | 29.79 | 71.0% |
売出価格と成約価格の目安を計算
例えば築13年の中古マンションを5,000万円で売り出した場合、上の表で築1年~15年の物件は売出価格の85.5%で成約していることがわかります。つまり売出価格の約15%ほど安い価格で売れるということですね。
それを元に計算すると、成約価格の目安は「5,000万円×85.5%=4,275万円」ということになります。同様に他の築年数の物件も計算ができます。
また、㎡数から成約価格の目安を計算することもできます。例えば築16年で70㎡の中古マンションを売却する場合、上の表では1㎡単価(成約価格)が467,300円です。計算は
467,300円(㎡単価)×70㎡(売りたい物件の面積)=32,711,000円
となります。「この築年数と面積ならこれくらいの価格かな?」と予想ができるわけです。ただし、実際は立地や設備などの条件も考慮しなければなりません。
中古マンションで売れやすい築年数は?
REINS(レインズ)の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2016年)」を見ると、築年数による成約状況がわかります。
対新規登録成約率とは
中古マンションは売りに出された物件のうち、どれくらいが成約(売れる)のかを示すのが「対新規登録成約率」です。
次のような計算式で出すことができます。
成約件数(実際に売れた物件数)÷新規登録件数(売りに出された物件数)=対新規登録成約率
築年数別の対新規登録成約率
首都圏の中古マンションの築年数別の対新規登録成約率は下記の通りで、築11年~15年がもっとも高くなっています。つまり、これくらいの築年数の物件が売れやすいということになります。
2015年 | 2016年 | |
築0~5年 | 24.9 | 22.9 |
築6~10年 | 22.0 | 21.2 |
築11~15年 | 27.3 | 26.6 |
築16~20年 | 21.9 | 21.6 |
築21~25年 | 16.3 | 18.3 |
築26~30年 | 14.4 | 14.1 |
築31~ | 16.9 | 15.7 |
築11年~15年の物件が売れやすい理由
2016年の15年前というと2001年(平成13年)です。この年より後に建築されたマンションがよく売れるという理由のひとつに「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の施行があると考えられます。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の施行で安心感がUP
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって、平成12年4月1日以降に契約する新築住宅は、基本構造部分(柱や梁など住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分)について10年間、瑕疵(かし)担保責任を義務づけると定められました。
瑕疵担保責任とは瑕疵(欠陥や傷など)があった場合、売り主や施工業者が責任を負うということです。これによって買い主は安心して物件を購入できるというメリットが生まれます。
品確法施行後に建築された物件の成約率が高いのは、こういった理由があるからだと言えるでしょう。
中古マンション売却時の成約価格の目安~まとめ
中古マンション売却時の成約価格は、買い主との交渉次第という側面が大きいためはっきりした数値を出すのは難しいものです。
しかし、統計的に見て、おおよその目安を予想することができます。REINS(レインズ)のデータを元に築年数を見て成約価格の予想を立ててみましょう。