マイホームの購入は人生に一度の大きな買い物ですから、少しでも安い時に買いたいと誰もが思うことです。しかし住宅価格は常に変動しているため、タイミングによって価格が異なってきます。
また2020年現在、コロナウィルスが世界的に感染拡大をしており、不動産への影響も深刻になっています。
そこで現在の情勢をもとに、住宅の買い時についてコロナの影響なども含めながら詳しく解説をしていきます。
【2020最新版】住宅の買い時はいつ?
最近のコロナウィルスの蔓延の中でも、あるいは影響で相場が変動しているからこそ住宅の購入を検討している方も少なくないでしょう。
住宅の購入は景気や不動産価格に迷わされる場合もありますが、購入を決定するには家庭のライフイベントによる要因の方が大きいとも言えます。
現在のような未曽有の状況の中でも、子供の進学や転勤などの理由で住宅購入を検討する場合、どのタイミングで購入するのが良いでしょうか。
コロナが収束時期を見極める
これまで説明してきた通り、コロナウィルスによる住宅価格への影響が避けられない状況の中で住宅を購入する場合は、収束の時期を見極めるのが何よりも重要です。
コロナウィルスの影響で不動産価格が下落するのであれば、収束とともに不動産価格は持ち直す可能性があるためです。
一般的に不動産の価格は株価などの経済指標に比べると、数か月~半年程度遅れて動くと言われています。下記の表は株価と不動産価格の動きをグラフにしたものです。
参照:ニッセイ基礎研究所「不動産投資レポート」より抜粋
株価を表しているのが赤線のTOPIXと言われる株価指数です。そして青線が住宅の中でも株価に連動しやすいと言われる中古マンションの価格です。
この二つを比較すると、株価の動きを追うようにして住宅価格は動いており、かつ上がり幅も下がり幅も株価に比べると緩やかなのが分かります。
コロナウィルスが収束して、景気がまた回復に向かっていけば一度下がった不動産価格も反転していくことが予想されます。そのため住宅購入のタイミングを見極めるにはコロナ収束時期を見極め、経済や株価などの動きを参考にするのが良いでしょう。
経済対策にも注目をしておく
しかしコロナウィルスが収束したからと言って、必ずしもすぐに経済が好転するとは限りません。今後の感染状況によってはこれまでに経験したことのないような不況になる可能性もあり、そうなると例えコロナウィルスが収束したとしてもすぐに景気が元通りにならない可能性もあります。
コロナウィルス終息後の景気動向については現時点では誰にも分かりませんが、大きなポイントとなるのが政府による経済対策です。
現在でも各国政府がこれまでにない大規模な経済対策を打ち出しています。日本においても100兆円を超える規模の経済対策の発表がされていますし、日本銀行による更なる金融緩和も検討がされています。
残念ながら今の段階では日本の経済対策は十分とは言えないですが、今後の更なる対策や金融緩和次第で経済は好転する時期は変わってきます。
また景気動向による住宅価格だけでなく、金利情勢にも注意しておくと良いでしょう。日本銀行による更なる金融緩和が進めば、住宅ローンの金利が一段と下がる可能性もあります。
住宅ローンは借入金額が大きいだけに、0.1%金利が違うだけで大きな差が出ます。今後の住宅購入のタイミングを見極める際には、ぜひ合わせてチェックしておくようにしましょう。
【2020年最新版】足元の住宅価格相場
住宅の買い時を説明する前に、足元の不動産価格の相場を見ていきましょう。コロナウィルスが蔓延する前までの住宅相場は、バブルという言葉が出るほどに上昇を続けていました。
下記の表は国土交通省が発表している住宅価格の推移を表したグラフです。
参照:国土交通省「不動産価格指数」より抜粋
上記の表の通り、直近の住宅価格相場は上昇が続いていることが分かります。マンション価格を始めとして全体的に住宅価格が上昇を続けているには、下記のような理由にがあります。
金融緩和
マイナス金利という言葉もすっかり定着しように、日本では2013年に大規模な金融緩和政策が導入され、現在に至るまで続いています。
この大規模な金融緩和が住宅価格の理由の一つで、実際に上記のグラフでは2013年を契機に住宅価格が上昇をしていることが分かります。マイナス金利の導入によって住宅ローンなどの借入金利は一段と低下し、金融緩和によって融資も受けやすくなるため不動産を購入する方が増えて住宅価格は上昇を続けています。
オリンピックやインバウンド
インバウンドという言葉も、今ではすっかり定着したように日本では海外旅行客の消費が大きな経済の原動力となっています。不動産の価格においても例外ではなく、都心部のマンションなどは今後の値上がりなどを期待して海外の富裕層が購入する例が多いです。
2020年に開催される予定だった東京オリンピックへの期待も高まって、マンション価格を中心として価格は上昇を続けていました。
もう一つは、建築価格の上昇という影響もあります。本来は2020年7月に開催されるはずだった東京オリンピックのために、国立競技場を始めとした施設や、海外観光客などを狙いとしてホテルの建築が相次いで始まりました。
そのため建物を建築するための人材や資材が一時的に不足してしまい、建築価格の高騰が住宅価格への高騰へとつながっていきました。
足元の状況
このようにいくつかの理由から、住宅価格は上昇を続けてきました。しかし足元では世界的なコロナウィルスの蔓延によって、リーマンショックを超える世界的な不況が現実的となってきています。
また予定されていた東京オリンピックも延期が正式に決定しており、その影響も懸念されています。このような状況ですが、まず足元の住宅販売の動向を見て見ましょう。
下記の表は株式会社不動産経済研究所が発表している首都圏の直近のマンションの契約戸数を前年同期間と比較したものです。
年度 | 1月 | 2月 | 3月 | 合計 |
2020年 | 784戸 | 882戸 | 1,500戸 | 3,166戸 |
2019年 | 1,283戸 | 1,515戸 | 2,410戸 | 5,208戸 |
参照:株式会社不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」より抜粋
前年比で約40%のマイナスと首都圏のマンション販売は大きく下落していることが分かります。続いて建売の状況も見て見ましょう。
年度 | 1月 | 2月 | 3月 | 合計 |
2020年 | 82戸 | 141戸 | 238戸 | 461戸 |
2019年 | 70戸 | 110戸 | 137戸 | 317戸 |
参照:株式会社不動産経済研究所「首都圏建売市場動向」より抜粋
マンションと違って建売の方は大幅に契約戸数が増えていることが分かります。マンションが大幅下落している一方で、戸建てが大幅に増えているので全体としては安定しているかというとそうではありません。
マンション+建売の合計の戸数を前年と比較すると、2020年3月の1,738戸に対して2019年3月は2,547戸ですから全体では大幅に契約戸数が減少していることが分かります。
マンションは戸建てに比べるとインバウンドの需要や、今後の値上がり益を期待して投資目的で買われるケースが多いです。マンションの価格が突出して上昇を続けていたのはそのためです。
そのマンションの販売が大幅に落ち込んでいる要因は、やはりコロナウィルスによる不景気やインバウンドの減少という影響が大きいと言えるでしょう。
このように足元ではマンションを中心に住宅価格への影響が出始めていると言えますが、コロナウィルスの蔓延によって住宅価格は今後どのように推移していくでしょうか。
新型コロナウィルスの住宅価格への影響は?
2020年4月現在、日本では初めての緊急事態宣言が出され、コロナウィルスのこれ以上の感染拡大を防ぐために大規模な外出自粛要請がとられています。
このような感染症拡大が、住宅価格へはどれくらいの影響を及ぼすかが気になっている方も多いでしょう。コロナウィルスの拡大によって、住宅価格にどのような影響を及ぼすかについて説明をしていきます。
経済への影響
まずは影響が懸念されるのが、大規模な外出自粛などによる経済への影響です。飲食店などの小売業や、ホテルを始めとした観光業を筆頭に臨時休業が相次いでおり、実際に倒産した事例も出始めています。
また勤務先の休業や出社禁止命令によって、収入が減少している世帯も多く家計への負担も深刻な状況となっています。
これは日本だけに起きている訳ではなく、欧米などの海外も同じか日本以上の影響です。このように世界的な不景気が現実的となっており、その影響はリーマンショックを超えると言われています。
IMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ専務理事は講演で、「2020年の世界経済が大幅なマイナス成長に陥ることは明白だ。経済への影響は世界大恐慌以来最悪になると予測している。」と述べています。
世界大恐慌とは1929~1933年に起こった世界的な深刻な不況にことで、アメリカでは失業率が25%に達し平均賃金は4年で3割以上も減少しました。
株価も約9割の下落幅を記録していますから、その深刻さが分かります。今回のコロナウィルスによる不況がここまでひどいものになるかどうかは分かりませんが、住宅への影響は避けられないと言って良いでしょう。
オリンピックの延期
もう一つ今回コロナウィルスによる住宅価格への影響を及ぼすであろう要因として、オリンピックの影響があります。
これまでの住宅価格の上昇は、2020年の東京オリンピックが大きな要因の一つでした。しかし今回のコロナウィルスの影響によって、そのオリンピックも延期が決まっています。
オリンピックでこれだけ価格が上昇した要因のひとつに、インバウンドがあります。東京オリンピックをきっかけに日本や東京の良さが世界に伝わり、これまで以上に海外から注目を浴びることが期待されていました。
実際に東京のマンション価格は海外の富裕層などが今後の値上がりを期待した買いが原因のものも多く、価格上昇の要因となってきたことは先ほども説明しました。
しかし今回のコロナウィルスの影響で、そのインバウンド需要が大きく減少しました。コロナの影響で国際的な移動が出来なくなったためです。更にオリンピックの延期によって、期待していた価格上昇に不透明感が漂っています。
オリンピックは現時点では1年後の2021年に開催される予定となっていますが、その時期にコロナウィルスが収束している補償はありません。
またコロナウィルスが収束した後、人々がどのような心理状態になるかも重要です。今回のコロナウィルスはアジアを中心にして世界に広まっていきました。コロナウィルスが収束した後でも、そのイメージを根強く持っている方がいれば海外旅行客は元通りには回復しない可能性もゼロではありません。
このようにコロナウィルスによってインバウンド需要が減少しており、またコロナウィルスが収束したからと言ってすぐにインバウンド需要が戻るとは言えません。
コロナウィルスによる不動産価格の影響を考える際、オリンピックやインバウンドの影響は織り込んでおくようにしましょう。
過去の経済危機時の不動産価格はどう動いたか
コロナウィルスによる経済の停滞と、インバウンド需要の減少による経済の停滞が推測されるのが現状です。経済が不況となれば株価などが下落するように、不動産価格も下落するイメージが一般的です。
しかし過去の経済危機の際に不動産価格はどのように推移してたのでしょうか。下記のグラフはリーマンショック前後の不動産価格を表にしたものです。
参照:国土交通省「不動産投資市場政策における今後の検討課題について」より抜粋
リーマンショックの起こった2008年をきっかけに不動産価格が大きく下落しているのが分かります。リーマンショックはアメリカの住宅ローン債権が焦げ付いたことによる世界的な大不況です。
不況のきっかけになったのは海外ですが、日本にも多大な影響がありました。当然不動産価格も大きな影響を受け、上記の表の通り軒並み価格が下落しています。
しかし個別に見れば下落の幅には大きな違いがあるのが分かります。どのエリアでも住宅地に比べると、商業地の下落幅が大きくなっています。特に、都心の商業地では大幅に下落しており全体の下落幅を牽引しているのが分かります。
何故このように物件によって下落幅が大きく違うのでしょうか。その理由について解説をしていきます。
投げ売りが起きるかどうか
リーマンショック後の不動産価格の下落幅に、商業地と住宅地では何故このように差が出たのでしょうか。その大きな理由の一つは金融機関の融資の影響があります。リーマンショックは、アメリカの住宅ローンの焦げ付きを発端として世界の金融機関が危機的状況に陥ったことが要因です。
日本のメガバンクを始めとした金融機関は比較的健全ではありましたが、それでも大きな影響がありました。
そのため銀行を初めとした金融機関は、不動産市況の下落など懸念して不動産投資事業向けの融資を大幅に縮小しました。そのため不動産投資事業としての売買が多い商業系物件は取引が出来なくなり、価格もどんどん下落をしました。
一方で住宅ローンなどの融資姿勢は投資事業向け融資ほどは縮小しなかったこともあり、比較的影響は少なかったと言えます。
現在のコロナウイルスによる不況がリーマンショックと大きく違うのは、今の時点では金融機関の経営が比較的健全である点です。そのため現在ではリーマンショックの頃のようは融資縮小は起きていません。
しかしコロナウィルスの感染拡大防止のための営業自粛や外出自粛が続いており、倒産なども増え始めています。また飲食店を始めとして商業施設などでは賃料の減額や免除などの交渉が始まっています。
このように企業の倒産やビルオーナーの経営不振が増えてくると、銀行も不良債権処理を優先させるため融資の姿勢を大幅に縮小させる可能性はあります。
そうなってくると融資の返済に困ったビルオーナーや不動産を保有している不動産会社の中には、手元の資金を確保するため投げ売りが起きて不動産価格が下落する可能性があると言えます。
戸建てよりもマンションの影響が大きい
リーマンショックの経験を踏まえて考えると、大幅な不動産価格の下落が起こった場合まずは商業地が大きく下落することになります。
コロナウィルスによる不況の原因は、感染拡大防止のために人の移動を大幅に制限したことが要因ですから、真っ先に影響を受けるのが商業地であることも納得できます。では住宅価格が全く影響を受けないかと言うと、そうとは言い切れません。
リーマンショックの後、住宅地に比べて商業地の方が価格下落が大きかったのは、住宅地に比べて商業地が投資目的で価格が左右されやすいことです。
住宅地の物件は実需、つまり自分が住むために購入する方が多いですが、商業地の物件は賃料収入や値上がりなどの利益を目的として買う方が多いです。そのためリーマンショックのような不況になると、金融機関の融資縮小などを背景に一気に価格が下がる傾向にあります。
更に、同じ住宅地の中でも戸建てに比べるとマンションは投資目的で買われることが多いです。
2013年の大規模金融緩和以降にマンションだけが大幅に値上がりしていることは既に説明しましたが、これは金融緩和による投資マネーがマンションに集中したのが価格上昇の要因の一つです。
つまり、マンションはこれまで投資目的による買いが集まって価格が上昇している側面が強い為、コロナウィルスによる不況が到来した際には価格下落するリスクが住宅地に比べると高いと言えます。
現在のこのタイミングで住宅の買い時を見極める際、戸建てを買うかマンションを選ぶかで買い時のタイミングは違ってくると言えるでしょう。
住宅の買い時に関するまとめ
現在のような感染症による世界的な不景気が現実になっている状況で、住宅の買い時を見極めるのはとても難しいです。
また今後の生活状況などを考えると不安になってしまう気持ちもありますが、不景気になれば不動産価格は下がりますから、住宅を購入する方にとってはチャンスとも言えます。
リーマンショックの後にも不動産価格は大きく下落をしましたが、その後は価格は戻しています。価格が下がったタイミングで購入をした方は、とても良いタイミングで購入したことになります。
不景気になってしまうと今後の不安から、どうしても購入時期を見送ってしまいがちですが、景気が落ち込んでいるタイミングこそ購入を検討するのも良いでしょう。またマイホームの場合は価格だけに惑わされるのではなく、家族のライフイベントや、快適な暮らしができるかどうかという点も重要です。
後で後悔をしないように、価格だけでなく様々な考え方で検討するようにしましょう。