不動産を売却する際などには土地の図面が必要になります。しかし普段土地の図面に触れ合う機会は少ないため、いざ準備をするとなると何をどのように準備をすれば良いか戸惑ってしまう方もいるでしょう。
そこで今回の記事では土地図面がどのような際に必要になるのか解説しつつ、土地図面の種類や取得方法なども含めて詳しく紹介していきます。
土地の図面がはいつ必要?
不動産業界の方でもなければ、住宅地図以外の土地の図面を見る機会はそう多くありません。普段の生活で土地の図面が必要になるシーンがそう多くはないからです。まずはどのような場合に、どのような図面が必要になるのかについて見ていきましょう。
不動産を売却するとき
土地の図面が必要になるシーンで代表的なものが、不動産を売却する時です。不動産を売却する際、その土地の範囲を明確にして売る必要があります。昔の不動産取引では公簿面積と言われる不動産登記簿上の面積で売買することもありましたが、最近では隣地との境界を確定させた確定測量図という書類が必要になる場合が多いです。
不動産の価格は高額であり、たった1mでも広さが違うと価格が大きく変わります。土地の広さを明確にすることで、正確な売買代金を計算することも出来ますし、また隣地との境界を確定させることで買主としては後々のトラブルを防ぐことに繋がります。隣地との境界が曖昧な土地では、隣の人の建物が自分の土地に侵入して建てられていることは良くあるトラブルです。
土地を分筆するとき
土地は一つの単位を筆(ふで)と言います。土地は一筆ごとに登記所に、その広さや所有者が記録されています。一筆の大きさには決まりがある訳ではなく、何百坪という大きな土地で一筆の場合もあれば、逆に一坪にも満たない小さな筆もあります。
売買や相続などで土地の名義を変える際には、筆ごとに所有権を移すことしか出来ません。そのため大きな土地の一部の所有権を移す場合などは、一筆の土地を二つ以上に分ける必要があります。
このように一筆の土地を複数の筆に分けることを、分筆(ぶんぴつ)と言います。そして平成17年に施工された新不動産登記法で、土地の分筆を行う際には隣地との境界を確定させて地積総量図を作成することが義務付けられています。売買の場合と同じように分筆の場合も土地の広さが重要になるためです。
土地の評価をするとき
相続や売買などに供えて、土地の評価をする際にも図面が必要になります。不動産鑑定のような正式な物件の評価をする際にも土地図面が必要になります。不動産の評価するためをには正確な土地の広さが必要です。後ほど詳しく説明をしますが公図や謄本などは正確さに欠ける場合があるため、測量図が必要になります。
払い下げや寄付をするとき
公的な土地を民間に払い下げを行う際や、寄付をするときや、相続税の支払いとして土地を納める物納の場合にも土地の図面が必要になります。これらの場合は売買や相続の際と同じように、物件の所有権が移転したり正確な評価が必要になるため隣地との境界を確定することが求められます。
相続税の物納とは、相続税を金銭で支払うのが難しい場合に金銭の代わりに土地で支払うことを言います。物納で支払うためには隣地との境界を確定した測量図が必要になるため、時間がかかります。
相続税の支払いは相続が発生してから10か月となっていますので、物納で支払う場合などはあらかじめ境界確定を行っておいた方が良いでしょう。
土地図面の種類と取得方法、見方を徹底解説
これまで説明してきたように、土地の所有権が移るときや物件の評価をする際に図面が必要になる場合が多いです。
一口に土地の図面と言っても、様々な種類がありそれぞれ取得方法が違います。また初めて見る方にとっては見方も分からないでしょう。ここでは土地の図面の種類と、それぞれの見方や取得方法について説明していきます。
公図
公図とは土地のおおまかな形状や位置を図面にしたものを言います。公図の一番の特徴は土地は筆ごとに記されている点で、住宅地や商業地などの用途で区切られている地図とは大きく違います。実際の公図は下記のような様式になっています。
参照:法務省「地図証明書」より
公図の見方
上記のように土地が筆毎にその形状が記されているのが公図の特徴です。公図の見方として注意が必要なのは、土地の表示が住居表示ではなく地番表示となっている点です。地番表示とは普段使っている住居表示(=住所)と違って、土地の筆毎に付された番号です。土地の登記は地番毎に行われているのが特徴ですから、登記が出来ない土地(河川など)には地番もありません。
また住居表示と地番の関連性はなく、目的の土地の公図を取得する際にはまずは地番表示を確認することが必要です。しかし多くの土地では町名と〇丁目までは住居表示も地番表示も一致していますので、地図を見比べれば大体の場所は特定できます。またブルーマップというゼンリンが作成している地図では、住居表示と地番表示を同時に確認することが出来ます。
公図の取得方法
公図は、法務局や支局などの登記所で取得することが出来ます。謄本と同じく誰でも取得することが可能です。取得する際には申請書に地番表示で記入をし、数百円程度の手数料を払うことで取得することが出来ます。地番表示が分からない場合、登記所に備え付けられているブルーマップを確認するか、登記所の職員に聞くと教えてくれます。
地積測量図
不動産の売買などの際に必要になるのが地積測量図です。地積とは、土地の面積のことを言いますから、地積測量図とは簡単に言ってしまうと土地の広さを図った図面ということになります。測量図には地積測量図の他に、この後説明する現況測量図や確定測量図などいくつか種類がありますが、その中でも地積測量図は法律で定められた公的な図面という性格があります。
不動産登記に関する法律である不動産登記令の中で、地積測量図について下記ように定められています。
不動産登記令 第2条
~中略~
三 地積測量図 一筆の土地の地積に関する測量の結果を明らかにする図面であって、法務省令で定めるところにより作成されるものをいう。
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参照:電子政府の総合窓口e-GOV「不動産登記令」より抜粋
上記のように、土地の登記申請をする場合は必ず地積測量図の添付が必要とされています。土地の登記は1筆ごとにされているため、地積測量図も同じように一筆ごとに作成されています。下記が地積測量図のサンプルです。
参照:盛岡地方法務局「地積測量図」サンプル
地積測量図の見方
地積測量図は上記のように、まず右上に土地の所在と地番が記載してあります。ここに記載されるのは住居表示の住所ではなく、地番表示の所在地になります。そして真ん中の左側に、求積表というその土地を計算した際の計算方法が記載してあります。土地の面積の出し方は、以前は三斜法といって土地を細かい三角形の形に分けて、それぞれの三角形の面積を出して計算していました。しかし現在では座標データを使った計算方法になっており、一般の方が見ただけでは求積表の内容は分かりません。
その求積表の右側に記載されている図面が、該当する土地の形と境界点などを表記したものになります。境界点とは隣地の土地との境目を表したもので、下記のように金属プレートを埋め込んだものなど様々な種類があり、どのような境界を打ち込んでるかを確認することが出来ます。
地積測量図の取得方法
地積測量図は登記と同じように公的に定められた図面ですから、その土地を管轄する法務局に行くと謄本や公図と同じように誰でも取ることが可能です。公図を取る場合と同じように、数百円の手数料が必要になります。また法務局が遠方などで行くのが難しい場合は、郵便やインターネット上でも取得が可能です。
しかし日本の全ての土地に地積測量図がある訳ではありません。登記や地積測量図の制度は明治初期の地租改正から始めり、その後何度も法改正があり形を変えなが現在の形になりました。そのためこれまでの間に売買や分筆などの登記を行っていなければ、地積測量図は作成されていません。
地積測量図を作るには費用や手間がかかるため、必要ないのにわざわざ作らないからです。地積測量図が無い場合、土地家屋調査士に依頼をして新しく作成する必要があります。
現況測量図
現況測量図とは、その名前の通り現況を見ながら作成した測量図になります。土地家屋調査士が現地に出向いて、土地の形状などを確認して作成した図面ですから、必ずしも100%正しいというわけではありません。
また現況測量図の一番の特徴は、隣地の土地の境界確定を行っていない点にあります。通常土地の境界を確定する際には、後でトラブルにならないようにそれぞれの土地の所有者が立ち会って境界点を決めます。
これを境界の確定と言いますが、現況測量図の場合は極端に言うと土地家屋調査士が現況の壁や塀などをみながら、「このへんが境界だろう」と推測をして作った図面になります。
そのため地積測量図に比べると現況測量図は精度が低く、売買などの図面には使うことが出来ません。では何故現況測量図があるかと言うと、確定測量図を作る前段階での測量図として使われているためです。
例えば、不動産会社がどれくらいのボリュームの建物が建てれるかをチェックするために、土地仕入れの前にまずは現況測量図を使ったりします。また隣地が国などの場合は、境界確定に時間がかかるためまずは現況測量図のみで取引を行う場合もあります。
いずれの場合でも、まずは現況測量図が作成されたのちに、現況測量図をもとにして地積測量図やこの後に説明する確定測量図が作られることになる重要な測量図です。
現況測量図の見方
現況測量図の図面の様式や見方などは地積測量図とほぼ同じです。表題には必ず「現況測量図」と記載してあることと、図面のどこかに「隣地との立ち合いは未実施」や「境界確定は未済」などのような隣人との境界確定を行っていない旨の文言が入っている場合があります。そのほかは地積測量図と同じように求積表や、その土地の図面や地積が記載されています。
現況測量図の取得方法
現況測量図は、地積測量図と違って法務局に供えられている図面ではありません。そのため取引を予定している土地の現況測量図を手に入れたい場合は、土地家屋調査士に依頼をすることになります。
土地家屋調査士が現地を訪れて、現況測量図を作成します。土地家屋調査士に依頼することになるので、当然費用が発生しますが現況測量図の方が確定測量図を依頼する場合よりは費用は安いです。
建物を建築する際、自治体等に建築確認申請を提出して建築の許可を取ります。土地の取引ではないので、その際の図面は現況測量図でも良いとされています。そのためハウスメーカーなどが、建築計画の際に作る図面も現況測量図です。
確定測量図
確定測量図とは、地積測量図と同様に隣地との境界確定を行って作成された測量図です。地積測量図は測量の制度の悪い時期につくられたものがあるため、100%正確でない場合もあります。
一方で確定測量図は現在の技術で土地を測量し、更に隣人とも立ち合いの上で境界を確定し、同意の署名捺印も添付されますのでより精度の高い図面になります。
これまで説明して来た3種類の測量図の中では確定測量図が一番精度が高く、次に地積測量図、その次が現況測量図という順番になります。そのため土地の売買や土地の分筆、相続税で土地を物納する場合などの正確な土地の面積が求められる取引の際に確定測量図が必要になります。
確定測量図の見方
確定測量図に書いてある事項は、地積測量図と概ね同じです。しかし確定測量図には隣地の所有者が署名捺印をした、下記のような境界確認書が添付されています。
参照:東京都「境界確定確認書」
上記の例は東京都の書式ですが、個人同士の場合でもあっても同様の内容です。隣地の人数が複数になる場合は全ての所有者から署名・捺印をもらいます。
確定測量図の取得方法
地積測量図と違って、確定測量図は法務局などで取得することが出来ません。確定測量図は土地の所有者のみが所有・保管している書類です。もし手元に確定測量図が無く、新しく取得する場合は土地家屋調査士へと依頼をして、新たに作成をするしかありません。当然現況地積図に比べると、手間がかかる分費用も時間がかかります。
土地図面を取得する場合の注意点
不動産に関する取引や登記手続きを行う際に必要になるのが、これまで説明してきたような土地の図面です。土地の図面を取得する機会はそう多くはありませんが、それだけに注意が必要な点もあります。ここでは土地の図面に関する注意点を紹介します。
公図は精度が低い
土地の図面には種類があり、図面によってはその精度に差があります。特に不動産取引など幅広い場合で使われる公図は、法務局で取得できることからその内容を信じてしまいがちですが、実は精度はあまり高くありません。公図の誕生は明治時代の地租改正に遡ります。当時の測量技術はまだ不完全で、しかもプロが行ったのではなく各地域の測量はそこに住んでいる住民が測量を行ったのです。そのため公図には現況の土地と大きくずれている場合もあります。
公図の正式名称は、「地図に準ずる図面」とされています。地図とは土地の地番などを正確に表した図面のことを言い、地図があれば境界の確定が行えるぐらいの精度の高いものを指します。現在国ではその地図の作成を進めていますが、まだまだ作成が追い付かず公図を使う場面の方が多いです。公図を使う場合は、精度が低い場合があることを認識しておきましょう。
建物の図面がいる場合もある
これまで土地の図面についてのみ説明をしてきましたが、土地には建物が建っている場合の方が多いです。そのため建物付き土地を売買する場合や、分筆する場合には建物図面も必要になります。建物図面とは、公図や地積測量図と同様に法務局で取得するための図面で、建物の形状や敷地との位置関係などを記載した図面です。
参照:盛岡地方法務局「地積測量図」サンプル
上記のように建物図面では、各階の平面図やその土地のどの部分に建物が建っているかなど建物謄本だけでは分からないことが分かるようになっています。建物の立っている土地の取引や登記を行う場合は、建物図面も一緒に取得しておくと良いでしょう。
土地の図面に関するまとめ
今回の記事では土地の図面について、下記の内容を中心に解説をしてきました。
土地の図面が必要になる取引や登記は、普段あまり触れる機会はありません。そのため土地の図面と言われても、ピンと来ない方も多いでしょう。土地の図面を取得する際には今回の記事を参考にしてそれぞれの特徴を理解しておくと良いでしょう。
また土地を売却する際には、土地の査定をすることも重要です。土地の査定を通じて土地の相場を知ることで、買主との交渉も有利に進めることが出来、高く売れる可能性が高まります。
土地の査定をする際には、複数の不動産会社から査定を取ることが重要ですが、その際におすすめなのがマンション売却ガイドというサイトの一括査定です。
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