新しい家を購入したり、転勤が決まってマンションに住めなくなった場合などに、まず誰もが思い浮かべるのが“マンションを売却する”という方法です。しかし、もうひとつの方法として、売らずに“人に貸して家賃収入を得る”という選択肢もあります。
では、いったいどちらの方法を選ぶのが、結果的にお得なのでしょうか?人に貸せば毎月の家賃は入りますが、オーナーとして物件を所有し続けることのリスクも忘れてはなりません。そこで、マンションが空室になるさまざまなパターンを例に挙げながら、売却と賃貸、どちらがお得なのかをご紹介しましょう。
マンション売却or賃貸 どちらがお得?こんな場合には、マンション売却の選択肢しかない
新居購入のために、まとまったお金が必要な場合
新居を購入してマンションを退去する場合、新居購入のためにまとまったお金が必要な人は、もちろん“マンション売却”という選択肢しかありません。速やかにマンション売却に向けて、作業を開始しましょう!
まずはおおよその売却査定額を知るために、「カンタン60秒査定」を申し込むことをお勧めします。必要事項を入力して申し込むと、複数の業者からすぐにメールや電話が届き、簡易査定の金額がわかります。この金額をもとに、新居購入のための確実な資金計画を立てることです。
性格的に賃貸経営者に向いていない場合
内覧の案内や不具合への対処など、大家の仕事を果たさなければならない
自分のマンションを賃貸に出すとなると、大家としての仕事を果たさなければなりません。内覧希望者の案内、退去時の室内確認、毎月の経理、青色申告、トラブルへの対処、設備の不具合が生じた際の修理など、大家のやるべきことはけっして少なくありません。住人と良好なコミュニケーションをとることも、賃貸経営を順調に行う上で重要です。
また、賃貸物件は空室対策も大変です。人気物件でないと空室になったときになかなか埋まらないので、エアコンを装備したりオシャレな空間づくりを工夫するなど、それなりの努力をしなければなりません。空室が続いてしまうと家賃収入は入らず、管理費や修繕積立金だけをいたずらに払わなければならなくなります。
こうしたことが面倒な場合は、賃貸経営者には向いていないので、速やかにマンション売却を考えた方が良いでしょう。
マンション管理業者に管理を委託する方法もあるが、委託手数料は安くない
大家稼業に向かないタイプの人が賃貸経営をする場合、マンション管理業者に管理を委託するという方法もありますが、委託手数料はけっして安くありません。1件しか物件を所有していない場合は、そこまでして月々の少ない家賃収入を求めるよりも、マンションを売却してしまえば数百万~数千万円単位のお金に替えることができます。
その辺をよく考えて、貸すべきか売るべきかを判断する必要があるでしょう。もし賃貸経営を考えるなら、マンション管理会社が提示する条件はさまざまなので、数社から話を聞いて検討するのがベストです。
マンションが1室だけの場合は、売却した方がお得
マンションの1室だけを賃貸に出すと、後で後悔する人が多い
マンションを10室以上所有するオーナーが賃貸経営を行う場合は、それなりのリスクを踏まえつつ本気で運営をするので良いのですが、1室だけを賃貸に出すと後悔する人が数多くいます。
それはなぜかというと、「自分が住んでいた部屋が空き部屋になったから、人に貸せば儲かる」という安易な発想で続けられるほど、賃貸経営は甘くないからです。思わぬトラブルが起きたり、住宅設備の不具合が発生したり、「リフォーム費用を含めると、結果的に採算が合わなかった」というケースも少なくありません。
マンションの賃貸経営をするには、経営者としてのプロ意識が必要
マンションの賃貸経営をするには、たとえ1室を貸すだけでも、経営者としてのプロ意識が必要です。「どうすれば入居者が満足するのか?」「より魅力的な物件にするにはどうしたらいいのか?」といったことを常に考えながら、自分が賃貸物件のオーナーなのだという意識を持ち続けていなければなりません。
逆に言えば、もしそうした意識をしっかりと持てるのであれば、マンションの1室を売らずに賃貸に出すのもひとつの方法でしょう。
マンション1室だけの場合、通常は売却するのが賢明な方法
大規模リフォームや予想外の出費を考えると、1室だけでは利益が薄い
マンション1室だけの場合、通常は賃貸に出すよりも、売却をしてまとまったお金を得るのが賢明な方法です。
賃貸に出すと、そのときは“家賃収入”が発生するので、「儲かった」という意識を持つかもしれません。しかし、年月が経つにつれて物件も老朽化するので、大規模なリフォームが必要になります。この費用は、売却していれば当然発生しない費用です。
マンションを賃貸に出したとき、月々の実質収入は驚くほど少ない
たとえば築15年のマンションの1室を貸して、月々11万円の家賃をもらい、諸経費を差し引いて月7万円の家賃収入が入ったとします。ても、賃貸経営を始めて10年後に500万円の大規模リフォームを行なったらどうなるでしょうか?7万円×12ヶ月×10年=840万円が10年分の家賃収入なので、そこから500万円のリフォーム代を引くと、340万円が手元に残ります。10年で340万円ということは、月々に直すと2万円8千円台と、家賃のおよそ4分の1。「月々もらえるのはたったそれだけ?」と思うと、大家稼業をやるのがばかばかしくなってきそうです。
これがたとえば1室ではなく10室あったとしたら、月30万円の収益になるので、やりがいもでてくるというものです。マンション1室の場合に売却した方がいいというのは、“労力に対して収益が見合わない”という点が大きいのです。
マンションの賃貸経営には、思わぬ出費がある
さらに、築20年・30年となって大規模修繕を行なう際には、毎月の修繕積立金ではまかなえ切れずに別途費用を徴収される場合もあります。こうした「思いがけない出費」も、賃貸経営には付きものです。
これらのことをすべて踏まえると、「たった1室だけで賃貸経営をするのは、面倒なだけで利益が薄い」というのが、一般的な考え方です。
自宅マンションを売却せずに賃貸に出して、後悔したケース
遠方に転勤が決まり、自宅マンションを賃貸に出したAさん
Aさんには妻と2人の子供がいます。6年前に新築マンションを購入して、家族4人で暮らしていましたが、突然会社から遠方への転勤を言い渡されました。
Aさんは当初、マンションを売却する予定でした。ところが妻から「売らずに賃貸に出した方が、家賃収入が入るのでは?」と言われ、マンション管理会社に委託して賃貸経営を行なうことに決めたのです。
子育てファミリーに室内をボロボロにされ、悲惨な状況に
賃貸マンションに入居したのは、Aさんと同じ子育て中のファミリーでした。しかし、Aさんの子供は女の子でしたが、入居したファミリーの子供はいたずら盛りの男の子2人。遊んだりケンカしたりボール投げをしたりで、壁紙から床・天井・トイレ・浴槽に至るまで、次第に酷い状態になっていきました。
やがて5年後に入居者が退去することになり、管理会社が退去時の現状確認を行ないました。あまりに酷い現状に、管理会社は入居者と交渉したものの、結局は敷金を戻さないという約束だけで終わってしまいました。
入居者がかなり強気に出てきたようで、管理会社も自分の懐が痛むわけではないので、丸く収めてしまったようです。もちろんAさんが反論することはできましたが、気の弱いAさんだったので、過激な態度の入居者と渡り合う勇気はありませんでした。
退去後のリフォーム費用が膨大にかかり、家賃収入は差し引き赤字
仕方なく状況を受け入れてしまったAさんですが、問題なのは退去後のリフォームでした。新たにマンションを人に貸すためには、すべての居室をリフォームし直す必要があり、Aさんはそれを支払わなくてはならなくなったのです。
床・壁・天井の張り替えや、細かい補修などをすべて含めると、リフォーム費用は200万円もかかりました。では家賃収入はというと、管理会社に払う委託費用、マンションの修繕積立金・管理費、固定資産税、火災保険、地震保険などのもろもろの経費をすべて差し引くと、5年間で180万円ほど。つまり、20万円の赤字になってしまったのです。
結局マンションを売却し、賃貸に出したことを心から後悔したAさん
これに懲りたAさんは、リフォーム後のマンションを賃貸には出さず、売却してしまいました。築11年になっていたので、マンションの売却価格は5年前に比べて300万円も安くなっていました。
「5年前に賃貸に出さずに売却していたら、300万円も高く売れていたのに、わざわざ損をするために賃貸に出したようなものだ」と、Aさんは心から後悔するのでした。
数年間の転勤や海外勤務の場合は、賃貸に出した方がお得
数年間で帰ってくる予定なら、マンションを売却するのは損
たとえば「3年間だけ海外勤務になった」など、いずれ住んでいた場所に戻ってくる場合には、マンションを売却してしまうと損をしてしまいます。帰国後に新居を建てる予定などがあれば別ですが、そうでなければまた同じようなマンションを購入しなければなりません。
かといって住んでいたマンションをそのまま空室にしておくと、家はどんどん傷んできます。それならば「定期借家」という方法をとり、通常より安い賃貸料で期間限定の賃貸に出せば、多少なりとも家賃収入があり、家も傷まずに済みます。
ただし定期借家にする場合は、前述のAさんのように室内がボロボロになってしまわないよう、入居者を限定した方が賢明でしょう。ペットのいる家庭や子育て中のファミリーは避け、「夫婦・単身者のみ」というような条件を付けることで、戻ってきたときのリフォーム代を安く抑えることができます。
3年間の海外赴任中にマンションを貸して、成功したケース
築11年のマンションを売却せず、賃貸に出すことを決めたBさん
Bさんは築11年のマンションに妻と二人で暮らしていましたが、会社から3年間の海外赴任を命じられ、今住んでいるマンションを空けなければならなくなりました。
当初はマンション売却も考えたBさんですが、築11年でマンション売却の好機といえる“築10年以内”を逃したこともあり、「新築時よりかなり安くなった金額で売却しても、帰国してからまたマンションを購入することを考えると、このまま誰かに貸した方が得かもしれない」と思い直しました。
賃貸料を安くし、ペット不可・子供不可で入居者を募集
そしてBさんはマンション管理会社を訪れ、「賃貸料は安くてもいいので、ペット不可・子供不可・居住期間3年の条件で、マンションを貸したい」と伝えました。そこで管理会社は、通常12万円の家賃を取れるBさんのマンションを、9万8千円で貸してはどうかと提案しました。
ネット上で広告を出したところ、すぐに借り手は見つかりました。子供のいない60代のご夫婦で、3年くらいずついろいろな土地に住んで、老後を楽しんでいるとのことでした。
Bさんは安心して妻と共に海外に渡り、予定通り3年後に日本に戻ってきました。「年配のご夫婦とはいえ、きちんと住んでいてくれただろうか?」と不安なBさんでしたが、入居者が退去した後を見て感激しました。
リフォームの必要がまったくなく、家賃収入も得られて大満足
室内の手入れは完璧で、傷や汚れは何ひとつなく、むしろ3年前よりもきれいになっていたほどだったからです。時間にゆとりのある年配のご夫婦だったので、きちんとした生活を送ってくれていたようでした。
さらに月9万8千円の家賃のうち、もろもろの経費を差し引いて残るお金は月4万円ほどでしたが、リフォームがまったく必要なかったので4万円×12ヶ月×3年=144万円はすべてBさんの収入となりました。
不在期間が長期にわたる場合は、マンションを売却した方が賢明
不在期間が10年を超えるような長期間の赴任の場合は、貸している間にマンションが老朽化することも視野に入れる必要があります。たとえば築3年で海外赴任になった場合、帰国時に築16年になってしまうと、マンションが一番快適な時期をほとんど住まずに終わってしまいます。
それならば、海外赴任前にマンションを売却しておいて、帰国後はそのお金を頭金に新たなマンションを購入した方が良いという考え方もあるでしょう。
マンションの売却と賃貸に関するまとめ
「マンションを売るべきか、貸すべきか」というのは、さまざまな要素が絡む難しい問題です。突然海外赴任が決まったときなどは、「マンション内に子育て仲間がいっぱいいるし、売却しないでとりあえず賃貸に出して、またこのマンションに帰ってきたい」というような、心情的なものもあるでしょう。
家族だけで話し合って決めるよりは、まずマンション管理の専門家に相談した方が、より良い方法を選択できるかもしれません。与えられた条件の中で、できる限りお得な方法を考えたいものです。