企業の社員として働いていると、マンションを購入して住んでいても、突然遠方に転勤を言い渡されて売却せざるを得なくなることがあります。「せっかく購入したマンションなのに」という気持ちはあっても、会社の命令となれば仕方ないでしょう。
転勤が決まると、ただでさえ忙しい中でのマンション売却は、かなり大変な作業です。その辺を覚悟した上で、できるだけ効率よくマンションを売却する方法をご紹介しましょう。
転勤が決まったのち、まずはマンションを本当に売却するか、それとも賃貸に出すかを話し合う
数年で転勤先から戻るか、滞在が長期にわたるかによっても、判断が異なる
“転勤”とひと言で言っても、いろいろなパターンがあります。たとえば「地方の支社に転勤にはなるけれど、3年くらいで戻ってくる」という場合もあれば、「海外の支店長を任されて、もう日本には帰って来ないかもしれない」という場合もあります。
2~3年で戻る場合は、マンションを「定期借家」に出す方法もある
2~3年ほどで帰ってくるのがほぼ確実な場合は、わざわざマンションを売却するよりも、その期間だけ「定期借家」に出して家賃収入を得た方が良いでしょう。一度マンションを売却してしまうと、売却価格は購入時よりかなり安くなってしまうので、戻ってきたときにワンランク下のマンションを購入しなければならなくなるかもしれません。
転勤が長期にわたる場合や、いつ戻れるかわからないは、売却した方が賢明
しかし、転勤が10年などの長期にわたる場合や、転勤になっていつ戻ってこられるかわからない場合は、マンションを売却してスッキリした状態で引っ越しをするのが賢明な方法です。その場合には、できるだけ早くマンションを売却する方法を考えることが大切です。
突然海外勤務を言い渡され、マンションを定期借家に出したAさんの事例
マンションを売却せずに、定期借家契約を結ぶ
Aさんは東京の一般企業に勤めるビジネスマン。国内に支社はないので、転勤はないものと思って都内に新築マンションを購入し、11年が経ちました。
ところがある日、Aさんは突然上司に呼び出され、海外勤務を言い渡されました。しかも渡航までには、あと1ヶ月しかないとのこと。妻とは「3年後に戻る予定だから、その間は空き家にしておこう」と話し合ったのですが、人が住まない家は傷むと聞いて、それは断念しました。
Aさんが不動産会社に相談したところ、「定期借家」という方法があることを知りました。定期借家とは、契約期間に定めがある借家契約のこと。住宅ローンが残っている場合は賃貸契約を結べないケースもありますが、Aさんの借入先の金融機関は、3年後に戻るという条件付きでローンの継続を認めてくれました。
2年間の家賃収入は、帰国後のリフォーム費用に
3年間の海外勤務なので、定期借家の期間は2年。「たった2年間だけ住む人なんて、本当にいるのだろうか?」と疑心暗鬼のAさんでしたが、ちょうど地方から短大に通うために上京する女子学生が借手に見つかり、ホッとしました。
Aさん家族は不動産会社にマンション管理を頼み、賃貸に出すことで設備機器などが傷む心配もなく、安心して海外に向かいました。2年間は家賃収入が入るので、それを帰国後のリフォーム費用に充てる予定です。
転勤後、マンションの売却を決めたら、「不動産売却一括査定」で簡易査定を申し込む
不動産売却一括査定を活用して迅速に行動
マンションの売却を決めたら、転勤の場合はとにかく早く行動することが肝心です。不動産売却一括査定を活用して、まずは簡易査定を申し込みましょう。当サイトの“カンタン60秒査定”で数社の不動産会社から簡易査定(料金は無料)をもらい、マンションがおおよそいくらで売却できるかを把握しておくことが大切です。
不動産売却一括査定は、インターネット時代の常識
サイト上で不動産の査定を受けることに、躊躇する人もいるかもしれませんが、まったく心配は要りません。今やどんな商品でも、インターネットを通じて取引される時代。それに合わせて不動産の査定方法や販売方法も大きく変わり、簡易査定や物件紹介をネットで行うのは、もはや常識となりました。
特に転勤などで売却を急いでいる場合は、不動産売却一括査定で地域のマンション売買に強い不動産を早く見つけることができ、マンションの売却をスムーズに進めることができます。複数の業者が見積もることで、より高い金額でマンションを売却できる可能性も高まるでしょう。
転勤によるマンション売却ということを伝えて、不動産会社数社に訪問査定を依頼する
簡易査定が出たら、一日も早く訪問査定を
簡易査定をもらった不動産会社の中から、最も印象が良く、査定額の面でも納得できる不動産会社を数社選び、すぐに訪問査定に来てもらいましょう。転勤の支度などで忙しい時期ですが、少しでもマンションを早く高く売却できるよう、訪問査定の予定はすべてに最優先するぐらいの気構えで進めたいものです。
気に入った不動産会社と媒介契約を結ぶ
専任媒介契約を結ぶか、一般媒介契約にするかは慎重に判断を
数社の不動産会社から訪問査定を受けた後は、一番迅速丁寧に対応してくれそうな不動産会社を選んで「専任媒介契約」を結ぶか、不動産会社を限定せずに「一般媒介契約」で広く買手を求めるかを決めます。
専任媒介契約を結ぶと、その会社だけが売却契約の権利を持つので、「転勤で売却を急いでいるお客様のために、何とかがんばらねば」と、一生懸命に売却活動を行ってもらえます。
人気物件なら一般媒介契約の選択肢もあるが、意外なデメリットもある
しかしその反面、専任媒介契約を結ぶと、広くさまざまな不動産会社から買手を紹介してもらえるチャンスはなくなります。そのため、転勤で一刻も早くマンションを売却したい場合は、一般媒介契約にしてより多くの購入希望者の目に留まるようにするのも、ひとつの方法かもしれません。
ただし、一般媒介契約には、下記のような意外なデメリットもあります。媒介契約に関しては、くれぐれも良く考えて選ぶようにしましょう。
一般媒介契約の意外なデメリット
一般媒介契約にすると、売れ残った物件と勘違いされやすい
一般媒介契約にすることで、たしかに多くの人の目に留まるようにはなるのですが、これには意外なデメリットもあります。それは、不動産情報サイトを見た人が「なかなか売れない物件なのではないか?」と勘違いしてしまうことです。
SUUMOやLIFULL HOME’Sなどで、実際に検索をしてみるとわかりますが、たとえば「中古マンション/東京都エリア/練馬区/4LDK」というように検索をかけると、同じ物件がズラズラといくつも並んで出てくることがあります。
しつこい宣伝にイライラし、スルーされてしまう可能性も
不動産に詳しい人は「これは一般媒介契約だな」とすぐにわかるのですが、その知識が無いと「これは売れない物件だから、何とか売ろうとしていくつも広告を出しているのではないか?」と勘違いしてしまうのです。
立て続けに物件紹介が出てくるので、たしかに目立つことは目立つのですが、けっして好印象とはいえません。「何でこんなに何回も、しつこく同じ物件ばかり出てくるのだろう?」と見る人はイライラし、かえってスルーしてしまうこともあるのです。
一般媒介契約は、不動産会社があまり熱心に宣伝活動を行わない
さらに、一般媒介契約にすることで、不動産会社としては「何もうちががんばらなくても、他の不動産会社が売却してくれる」と思い、あまり熱心に営業をしてもらえません。転勤の期日までに何とか売却したい場合は、これが災いしてしまう危険性もあるでしょう。
複数の不動産会社と接し、一番良い媒介方法を慎重に考えることが大切
もちろん、不動産会社の広告活動はインターネットだけではありませんし、一般媒介契約にすることで物件を紹介してもらえる幅が広がるのは、とても有難いことです。
売却を急いでいる場合、専任媒介契約にするか一般媒介契約にするかというのは、非常に重要な問題です。ただでさえ忙しい時期かとは思いますが、できるだけ多くの不動産会社と接し、何が一番良い方法なのかを慎重に考える必要があります。
マンションの販売を開始! 購入希望者が出れば内覧を行なう
室内を美しく整え、内覧者が成約に至るよう努力を
不動産会社と媒介契約を結んだら、いよいよマンションの販売開始です。室内をできるだけ魅力的に美しく整え、買手に「こんなマンションに住みたい」と思ってもらえるよう、できるだけ工夫をしましょう。花やタペストリー、アロマなどを使って演出をするのも効果的です。
転勤の忙しいときにこれを行なうのは、けっして簡単なことではありませんが、室内が魅力的かどうかで成約率はかなり変わってきます。もしも「そんな時間はまったくない」というのであれば、プロの業者に頼るのもひとつの方法です。
物件の魅力につながるものは、ひとつでも多く集めておく
また、「近くのショッピングセンターが充実している」「人気の高い保育園がある」など、物件の魅力につながる情報はメモにまとめておきましょう。写真やパンフレットなどの資料があれば集めておき、内覧のときにさり気なく伝えられればベストです。
こうした努力は、なにも内覧者のためだけにあるのではありません。売手の熱意は不動産会社の営業マンにもしっかりと伝わり、「これだけお客様ががんばっているのなら、何とかしてあげたい」という気持ちにもなるものです。
営業マンを味方に付けて、賢くマンションの売却活動を
不動産会社の営業マンは、売手のためだけにいるのではなく、買手にとってもメリットを与える必要があります。そのため、営業マンの中には、「転勤で早く売却したがっているお客様がいるので、できるだけ安く購入できるように交渉してみましょう」という触れ込みで、買手を誘う可能性もあります。
買手の立場としてはうれしいことですが、売却する方としてはたまったものではありません。そんなことにならないよう、営業マンをできるだけ味方につけて、賢くマンションの売却活動を行なうことが大切です。
安く買い叩かれないためには、転勤後の売却も視野に入れること
売り急いでいることがわかると、買手に叩かれる可能性がある
転勤のためにマンションを売却する場合は、もしも転勤するまでにマンションを売却できないと、現在のマンションの住宅ローンと赴任先の家賃の二重払いに苦しめられる可能性があります。
そこで、ほとんどの人は「転居の前に売却を済ませておきたい」と考えます。しかし、そこで“売り急いでいる”という弱みを見せてしまうと、買手に足元を見られることもあるので注意する必要があります。
マンションの売却額を、極力住宅ローンの残債に近づける努力を
たしかに急いでいるのは事実なのですが、「納得できる価格でなければ売らない」という姿勢は、できるだけ崩さないことが大切です。そして、こちらが納得できるギリギリの金額内に、何とか売却額を収められるようがんばりましょう!
転勤は予期せぬときに訪れるので、マンション売却の好機ではないのに売らざるを得ないケースが数多くあります。しかし住宅ローンが残っている場合、マンション売却額がローンの残債に満たないと、住宅を所有していないのにマイナスの金額だけが残るという悲惨な状態になってしまいます。
万が一売却が転居後になってしまっても、焦らないこと
買手に安く叩かれないようにするためには、本来なら転居前にマンションの売却が終わるのが理想ですが、そこにこだわり過ぎないことです。もし売却できなければ、転勤後も売却活動を続けるか、当面は賃貸に出すという方法も視野に入れる必要があります。
ただし、転勤後に売却活動を続ける場合は、マンションの管理費・修繕積立金を払いながら、転居後の賃貸住宅の家賃も払わなければなりません。家計を考えて「それは無理」と判断した場合は、不動産会社に相談して何らかの対策を考えなければなりません。
転勤によるマンション売却の方法に関するまとめ
転勤が決まってマンションを売却することになったら、とにかく一日も早く動き始めることが、マンション売却を成功させるベストの方法です。
転勤によるマンション売却は、売手にとってけっして有利な状況とはいえません。「こんなことなら、マンションなど買わない方が良かった」と後悔することの無いよう、与えられた時間を最大限に活用して積極的に売却活動を行い、少しでも高値でマンションを売却できるよう努力しましょう。