マンションに住んでいると、毎月修繕積立金や管理費を支払います。しかし、マンションを売却したら、そのお金は戻ってくるのでしょうか?
マンションの修繕積立金・管理費とは
まずはマンションの修繕積立金と管理費とはなんぞや……ということを再度、確認しておきましょう。
マンションの修繕積立金と管理費の使用目的
毎月支払っていながらも修繕積立金や管理費がどのように使われているのか、案外ご存知ない方が多いのではないでしょうか。
修繕積立金と管理費は、それぞれに「何のために必要だから〇〇円を積み立てる」ということがマンションの規約で決められています。国土交通省の「マンション標準管理規約」の資料によると、主な使い道は下記の通りです。
管理費 | ・管理員人件費 ・共用設備の保守維持費・運転費 ・備品費、通信費その他の事務費 ・共用部分の火災保険料とその他の損害保険料 ・清掃費、消毒費、ごみ処理費 ・依託業務費 ・専門的知識を有する者の活用に要する費用 ・居住者間のコミュニティ形成に要する費用 ・管理組合の運営に要する費用 など |
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修繕積立費 | ・一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕費用 ・不測の事故その他特別の事由による必要となる修繕の費用 ・敷地および共用部分などの変更に必要な費用 ・建物の建て替えにかかる合意形成に必要となる事項の調査費用 など |
マンションの修繕積立金・管理費は管理組合の財産
使用目的がわかったとしても、「自分が住んでいるマンションの修繕のために積み立てるお金だから、自分のものなんじゃないの?」と思う方がいるかも知れません。
しかし、修繕積立金も管理費も、実はマンションに入居している個人のものではなく「管理組合の財産」になります。
マンションの修繕や管理にはお金がかかる!
マンションは1棟が大きな建物です。建築されてから年数が経過すると、外壁や共有部分をはじめ、さまざまな箇所で修繕が必要になります。しかし、修繕範囲が広いために、修繕費用も高額になります。
その費用を修繕のつど、入居者から集金をするのは負担になってしまいます。そこで計画的に修繕費を集金して積み立てておき、修繕に備えておくのです。
管理費も同様の考え方です。そのために修繕積立金も管理費も組合財産として管理されています。
マンション売却時に修繕積立金や管理費は返金されない!
納入した修繕積立金と管理費は、管理組合の組合財産になるため、退去するからと言って個々に返金されることはありません。
特に修繕積立金は「一度も修繕などを行っていないのに、返金されないのか」と不満を感じるかも知れませんが、将来の修繕のために積み立てている共有財産なのでこの場合も返金はありません。
念のために管理規約を確認
上記のように納入した修繕積立金や管理費は、通常は返金されないことになっています。気になる方は、一度マンションの管理規約を確認してみましょう。規約には修繕積立金や管理費の取り扱いについての記載があります。
- 集金方法(当月分は前月の〇日までに納入のこと)
- それぞれの費用の使い道
- 納入が遅れた場合の遅延損害金(年利〇%)
- 「組合員(入居者のこと)は納付した管理費に対して返還請求はできない」
など
このような記載があるので、それを見れば返金ができないということがわかります。
先払いしている分は返金されることも
一般にマンションの修繕積立金や管理費の支払いは前月に納入するようになっています。そのため、売主は退去した後の分も支払っていることになります。その場合は、マンションの規約にもよりますが、日割り計算で返金される場合があります。
金額としてはそれほど大きな額ではありませんが、たとえ少しでも戻ってくるとうれしいですよね。
これも念のために規約で確認しておきましょう。なお、規約では返金できる締め日などを設定している場合があります。「〇月分は△日までに申し出ること」などと決められていることが多いので、その点もよく確かめておきましょう。
マンション売却時に修繕積立金の未払いがあったらどうなる?
マンションの修繕積立金と管理費は、口座からの引き落としなどの方法で毎月納入するようになっています。
しかし、何らかの事情で未納や滞納になってしまう場合があります。
滞納分は買主が負担!?
買主はマンションを購入することによって、元の所有者(売主)の修繕積立金や下院り費の支払い義務を引き継ぐことになります。
これは「区分所有法」(正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」で通称「マンション方」とも呼ばれる)に、次のように定めています。
- 区分所有者が規約・集会決議に基づいて他の区分所有者に対して有する債権は特定承継人に対しても行うことができる
修繕積立金や管理費は、通常は規約や集会決議に基づきます。そのため、買主は売主の滞納分の修繕積立金や管理費を支払う義務があるということになります。
実際にマンション管理組合の規約でも「管理費・修繕積立金支払義務の承継」が定められています。
売主の滞納分はマンション価格から差し引く
ただ、自分がまだ入居していない期間の滞納分まで買主が支払わなければならないというのは、なんとなく理不尽ですよね。
滞納があることを知らずに購入すると、当然トラブルに発展します。そこで、どうしても売主が滞納分を納入できない場合は、仲介する不動産会社がそのことを買主に伝えます。
その際には、修繕積立金や管理費の滞納があること、そして、その分を買主が負担しなければならないが、その金額分をマンション価格から差し引くという交渉を行います。
買主としてはそれだけ安くマンションを購入できますし、売主も滞納分を支払う必要がないので、お互いにメリットがあります。
交渉時の注意点
このようにマンションの修繕積立金や管理費の滞納があり、その分をマンション代金から差し引くことを「精算」と言いますが、その際には精算を理由に過度な値下げを要求されないように注意しましょう。
例えば滞納分が80万円だとします。その際に買主が「滞納分は私が支払うので、その代わりマンション代金を100万円値引きしてください」と言われることがあるのです。
厳密に滞納分を差し引くのではなく、キリのいい金額で売ってほしいと言って滞納分以上の値引き要求をされる場合があるので注意が必要です。
滞納したままで売却したくないという人は、普段から未納にならないように気をつけましょう。
マンション売却時の修繕積立金や管理費の精算~まとめ
マンションに入居中は修繕積立金や管理費を毎月納入しています。これは個人のものではなく、マンションの管理組合の共有財産です。そのため、入居中に特に大きな修繕などがなかった場合でも、返金はされません。ただし、退去日以降の修繕積立金・管理費を納入している場合は、日割り計算で返金される場合があります。
いずれもマンションの規約に記載されているので確認しておきましょう。
また、売主が修繕積立金や管理費を滞納していて売却までに滞納分を納入できない場合は、滞納分は買主に引き継がれます。しかし、そのままではトラブルになるために、不動産会社を通じて滞納分をマンション代金から差し引くことで精算したいという交渉を行います。
その場合は滞納分以上の値引きを要求されないように気をつけましょう。対策としてはマンションの売却価格がいくらなのかを最初に明確にすると安心です。
信頼できる不動産会社に売却価格と値引き額(滞納額)を提示してもらうといいでしょう。