ようやくマンションの売却が決まったと思ったら、「やっぱりキャンセルしてください」と言われたら、がっかりですよね。
マンションなど不動産の売買でもクーリングオフ制度はあるのでしょうか?
マンション売却でもクーリングオフはある!
結論から言うと、マンション売却にクーリングオフはあります。これは購入者を守るために設けられている制度です。
ただし適用されるケースが限られています。
クーリングオフとは
クーリングオフは消費者を守る制度
一定以内なら契約が解除できる
クーリングオフは「Cooling Off」、つまり契約後に一度頭を冷やして冷静に考えなおす期間を与え、一定期間内であれば契約を解除できるという制度のことです。
悪質な勧誘や強引なセールスなどが社会問題化し、冷静な判断ができないまま契約させられる事例などが増加したためにクーリングオフ制度ができました。
クーリングオフの対象となる取引
クーリングオフの対象となる取引には、次のものがあります。
・訪問販売
・電話勧誘販売
・連鎖販売取引(マルチ商法など)
・特定継続的役務提供(エステや語学教室の申し込みなど)
・業務提供誘引販売取引(パソコンソフトを購入してホームページ制作を行う在宅ワークなど)
・訪問購入(業者が店舗や事務所以外の場所で行う物品の購入のこと)
不動産の購入も申し込み場所など適用要件に該当すればクーリングオフの対象になります。
マンション売却のクーリングオフは宅建業法で決められている
マンションなど不動産売買に対してのクーリングオフは、「宅地建物取引業法(宅建業法)の37条2」に規定されています
不動産売買のクーリングオフ制度の概要
取引内容 | 宅地建物売買契約 | 賃貸借契約は対象外 |
---|---|---|
クーリングオフの期間 | 8日間 | クーリングオフについての書面を交付した日から起算して8日以内 |
対象 | 宅建業者が売主である売買で、店舗(事務所)外での取引 | ・個人が売主の場合は対象外 ・宅建業者が買主の場合も対象外 |
マンション売却でクーリングオフが適用される場合、されない場合
上の表でもわかる通り、マンション売却でクーリングオフが適用される場合と適用されない場合があります。
マンション売却でクーリングオフが適用される場合
クーリングオフが適用されるのは、次の場合です。
- 売主が宅建業者であること
- 買主が宅建業者ではないこと
- 8日以内に申し出ること
- 店舗(事務所)以外の場所で契約した場合であること
これらをすべて満たしている場合に、クーリングオフが適用されます。では、それぞれを詳しくご説明していきます。
宅建業者とは
クーリングオフが適用されるのは、売主が宅建業者の場合のみです。ここで宅建業者と不動産業者の違いを整理しておきましょう。
主な業務内容 | |
宅建業者 | ・正確には「宅地建物取引業」と言う ・土地や建物の売買や交換を行う ・売買、交換、賃借の代理や媒介(仲介)を行う |
不動産業者 | ・土地・建物の売買、媒介(仲介)を行う ・土地・建物・ビルなどの賃貸業務を行う ・分譲マンションや賃貸マンションの管理業務を行う |
特に宅建業者として事業を行うには「宅地建物取引業」の免許が必要になります。これは不特定多数を対象に不動産を「反復継続して」売却することが対象になっています。
個人がマンション売却をする場合は「反復継続」には該当しませんし、宅建業者でもないので、クーリングオフの適用ではありません。
買主が宅建業者ではないこと
宅建業法の第78条2項に「第33条の2及び第37条の2から第43条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。」とあります。この第37条の2がクーリングオフについて定めた部分です。
つまり、クーリングオフは宅建業者間の取引については適用外であるとされています。
8日以内に申し出ること
「クーリングオフは8日以内に」ということは、買い物や契約の場面で言われることですが、「いつから数えて8 日以内なのか」をしっかりと理解することが大切です。
8日間の初日は、クーリングオフの告知(クーリングオフについて書かれた契約書面(法定書面)を受け取った日)です。この日を1日目として8日以内にクーリングオフしたい旨を記した書面を発信します。書面の到着は8日が過ぎてからでもいいのですが、発信は必ず8日以内に行わなければなりません。
契約場所に注意!
クーリングオフは「どこで契約したか」という場所も重要なポイントになります。宅建業者の店舗や事務所に自分が出向いていって契約した場合は「契約の意思がある」と判断され、クーリングオフの適用にはなりません。
事務所以外でも次の場所はクーリングオフの対象にはならないので、注意が必要です。
- 買主の自宅または勤務先
- 宅建業者が事務所以外で継続的に業務を行うことができる場所
- 一団の宅地建物(10区画以上の一団の宅地またはは10戸以上の一団の建物)の分譲を行う案内所(モデルルームや展示場など)
申し込みが宅建業者の事務所でなくても、モデルルームや展示場のモデルハウスなど建物内の場合は事務所と同じ扱いになり、クーリングオフはできません。
しかし、テント張りや仮設の小屋のような一時的に設けられて移動が可能な施設での申し込みの場合は、クーリングオフの対象になります。
マンション売却のクーリングオフは購入の申し込み場所で判断
マンションなど不動産の売買は、高額なために「購入の申し込み」と「売買契約の締結」の2段階を踏むことが一般的です。
どこで購入の申し込みをしたか
マンション売買のクーリングオフは「申し込みをした場所」が重要になります。次の事例でご説明しましょう。
申し込み場所 | 契約場所 | クーリングオフの可否 | |
事例1 | 宅建業者の事務所 | テント張りの案内所 | できない |
事例2 | テント張りの案内所 | 宅建業者の事務所 | できる |
事例3 | 買主の自宅 | 喫茶店 | できない |
事例4 | 喫茶店 | 宅建業者の事務所 | できる |
事例5 | 買主の勤務先 | 宅建業者の事務所 | できない |
マンション売買のクーリングオフの方法
マンションの購入申し込みをした人がクーリングオフをする場合の方法について、ご説明します。
クーリングオフは8日以内に書面で行う
クーリングオフは電話やメールではできません。必ず書面で送付することが条件です。特に書面の形式に決まりはありませんが、契約者(住所、氏名)、契約日(申し込み日)、商品名、販売会社名と「この契約を解除します」といった内容を記します。
送付は発信日が証明できる「特定記録郵便」や「簡易書留「書留」「内容証明郵便」にすると安心です。
クーリングオフの費用はかからない
クーリングオフは契約そのものがなかったことにする制度です。クーリングオフの適用対象であれば違約金や手数料などは不要です。
クーリングオフをすれば手付金などは返金される
もしすでに手付金や頭金などを支払っている場合、クーリングオフが適用されれば売主(宅建業者)は速やかに買主に返金しなければなりません。
マンション売却のクーリングオフについて~まとめ
マンションの売買契約でも要件を満たしていればクーリングオフが適用されます。
クーリングオフができるのは「売主が宅建業者の場合」「申し込みの場所が宅建業者の事務所や買主の自宅、勤務先以外の場合」「8日以内に書面で申し出た場合」などの要件があります。
また、マンションなど不動産売買の場合は契約した場所ではなく、申し込みをした場所がどこかということでクーリングオフが適用されるかどうかを判断します。
クーリングオフが適用されれば手付金など支払っているお金は返金されます。
なお、個人が売主のマンション売買はクーリングオフの対象外なので、安心してください。