ホームインスペクション(住宅診断)が最近、注目を集めています。ホームインスペクション(住宅診断)は中古住宅の健康診断のようなものです。
売却前に実施することで買主に安心感を与えるというメリットがありますが、今回は売主側に立って、具体的な方法や費用などをご説明します。
マンション売却前に実施するホームインスペクション(住宅診断)とは
ホームインスペクション(住宅診断)とは何か、見ていきましょう。
ホームインスペクション(住宅診断)は住宅の健康診断
ホームインスペクション(住宅診断)は、その名の通り「住宅診断」です。これは中古住宅(中古マンション)を対象に実施されるもので、特に売却前に行うことで買主に安心感をアピールできます。
また、ホームインスペクション(住宅診断)の結果、「適合」と判断されたら「既存住宅売買瑕疵担保保険」にも加入できるため、売買を有利に進めることができます。
ホームインスペクション(住宅診断)がないと買主の不安が尽きない!?
よくテレビなどで「欠陥住宅」の様子を放送していますね。せっかく購入した住宅(マンション)なのに、床が傾いているとか、ドアの開閉がうまくできない、壁にヒビが入っている……といったことが実際に起こっています。
中古マンションの欠陥による苦情が背景に
上記のような欠陥住宅(中古戸建住宅や中古マンションの欠陥や不具合)で購入者からの苦情が多いということ、それによって「中古物件は心配だ」という信頼性の低下などが背景にあり、国としてもホームインスペクション(住宅診断)の実施を推奨しています。
ホームインスペクション(住宅診断)の実施で安心して売買が可能
ホームインスペクション(住宅診断)をマンションの売却前に実施しておけば、欠陥や不具合などが事前に把握できるため、適切な修繕やメンテナンスが行えます。
また、「この物件はホームインスペクション(住宅診断)を受けて、問題なしという判定が出ています」とか「〇〇はひび割れがあると確認されました。購入後に修繕されるといいと思います」などを買主に伝えることで、買主は安心して物件を購入できますし、売主も「後で苦情が出たらどうしよう」という心配をしなくても済みます。
ホームインスペクション(住宅診断)は売主、買主の双方にとってメリットが大きいものなのです。
ホームインスペクション(住宅診断)は宅建業法で説明が義務化
ホームインスペクション(住宅診断)は今後、もっと広く知られるようになるのではないでしょうか。
その理由として宅建業法の改正があります。
不動産会社は媒介契約時にホームインスペクション(住宅診断)を説明
ホームインスペクション(住宅診断)の実施そのものは強制されるものではありません。
しかし、2016年5月に宅地建物取引業法が改正され、2018年4月からは不動産会社に下記の説明が義務づけられます。
ホームインスペクション(住宅診断)に関しての説明義務
不動産会社は購入者に対して「重要事項説明書」を提示して説明することとなっていますが、その中に下記に関する内容が義務付けられました。
- マンション媒介契約時にホームインスペクション(住宅診断)のあっせんが可能かどうかを説明すること
- ホームインスペクション(住宅診断)を実施したかどうかを重要事項説明書に記載すること
- ホームインスペクション(住宅診断)を実施した場合、その結果の概要を重要事項説明書に記載すること
- 売買契約時に建物の状況を当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付すること
これによってホームインスペクション(住宅診断)はもっと一般的になると言われています。
マンション売却前のホームインスペクション(住宅診断)はいつ、誰がやるの?
では、ホームインスペクション(住宅診断)は、いつ、誰が実施するのでしょうか?具体的な流れを見ていきましょう。
公認ホームインスペクターが診断を実施
ホームインスペクション(住宅診断)を行うために特別な資格が必要というわけではありません。放射線技師(レントゲン技師)やリハビリを行う理学療法士のように、「〇〇ができるのは△△の資格を持った人だけ」という決まりは設けられていません。
ただ、そうは言っても専門知識がない人ができるものでもありません。現在では公認ホームインスペクター(住宅診断士)」という民間資格があるので、その資格を持つ人や建築士の資格を持つ人などがホームインスペクション(住宅診断)を実施しています。
ホームインスペクター(住宅診断士)とは
ホームインスペクター(住宅診断士)は、「NPO法人日本ホームインスペクターズ協会」や建築士会が認定する「建築士会インスペクター」「既存住宅状況調査技術者」の認定試験に合格することで資格が得られます。
NPO法人日本ホームインスペクターズ協会のホームインスペクター(住宅診断士)認定試験
NPO法人日本ホームインスペクターズ協会のホームインスペクター(住宅診断士)認定試験では、次のような内容の試験が実施されます。
- 主に木造住宅、マンションの構造部材等の名称に関すること
- 住宅の給排水、衛生、空調、電気設備などに関する呼称や一般的な仕様に関すること
- 木造住宅、マンションの施工に関すること
- 木造住宅、マンションの劣化の判断に関すること
- 調査・診断方法に関すること
- マンションの管理に関すること
- 報告書の作成に関すること
- 一般的な住宅の売買・取引の形態や契約に関すること
- 業務に関するコンプライアンス、モラル、マナーに関すること
このように住宅に関する幅広い知識が求められます。
マンション売却前にホームインスペクション(住宅診断)を依頼する
マンション売却を考えたら、不動産会社と媒介契約(仲介のこと)を締結します。その際にホームインスペクション(住宅診断)をしたいことを相談してみましょう。
上にも書いた通り、2018年4月からは不動産会社の側からもホームインスペクション(住宅診断)を促すようになりますが、自分でも意識しておくといいでしょう。
ホームインスペクター(住宅診断士)は自分でも探せる
ホームインスペクター(住宅診断士)はNPO法人日本ホームインスペクターズ協会や建築士会のホームページでも検索できますが、不動産会社に紹介してもらうと安心でしょう。
ホームインスペクション(住宅診断)の実施時期と費用、所要時間
ホームインスペクション(住宅診断)を実施する時期や費用、所要時間などは下記の通りです。
実施時期 | マンション売却前 |
---|---|
費用 | 5~6万円 (場合によっては10万円くらいすることも) |
所要時間 | 2~3時間 |
なお実施時は、まだ売主の引越しが終わっていないことが多く、その物件に人が住んでいることになります。もちろんその状態でも住宅診断は可能です。
ホームインスペクション(住宅診断)のほとんどが目視中心だからです。
ただ、診断の妨げにならないように、当日は室内を片付けておくといいでしょう。
買主からホームインスペクション(住宅診断)を求められることも
売主はホームインスペクション(住宅診断)を実施する意思がなくても、買主からやってほしいと言われることがあります。その場合に断ることも可能ですが、それによって「欠陥があるのではないか?」と疑われる可能性があり、結果的に売買が成立しないこともあり得ます。
対応に迷ったときは不動産会社の担当者に相談してみましょう。
ホームインスペクション(住宅診断)の内容
ホームインスペクション(住宅診断)は目視での診断が中心になります。
次のような内容を診断しています。
主な診断内容
診断場所 | 確認部位 | 状態 |
---|---|---|
外周り | ・基礎 ・外壁 ・屋根 ・軒裏 ・雨樋 ・バルコニー ・外部階段 |
・著しいひび割れ ・著しい欠損 ・水染みの跡 ・鉄骨の露出 ・変色 ・はがれ ・腐食・さび ・チョーキング(白亜化)など |
室内 | 壁・柱 ・床 ・天井 ・階段 ・サッシ・ドア・シャッター・雨どい |
・著しいひび割れ ・著しい欠損 ・水染みの跡 ・ひび割れ ・はがれ ・腐食 ・動作不良(シャッターなど) |
床下 | ・土台 ・基礎 など |
・著しいひび割れ ・著しい欠損 ・防湿シートの著しいすき間 ・著しい陥没 |
小屋根・天井裏 | 梁・桁・小屋根 ・天井裏・小屋裏 |
・著しい割れ ・金物の著しい不足 ・金物の著しい緩み など |
設備 | ・給水設備 ・給湯設備 ・排水設備 ・換気設備 |
・機器の劣化 ・動作不良 ・破損 など |
診断後は報告書を発行
ホームインスペクション(住宅診断)が終わると、確認した箇所や状態などを記入した報告書が発行されます。
ホームインスペクター(住宅診断士)は中立的な立場で診断を実施
ホームインスペクター(住宅診断士)は売主側や不動産会社側、買主側のどの立場にも立たず、中立的な立場でマンション(住宅)を客観的に診断します。
マンション売却前のホームインスペクション(住宅診断)のまとめ
ホームインスペクション(住宅診断)は中古物件を対象に実施されるもので、主に目視で住宅の欠陥などがないかを診断するものです。
宅建業法の改正で2018年4月からは不動産会社にホームインスペクション(住宅診断)についての説明が義務づけられました。それによって、今後は広く知られると考えられます。
マンションの売主は事前にホームインスペクション(住宅診断)を実施し、適合診断を受けることで既存住宅売買瑕疵担保保険にも加入できるので買主に安心感を与えられるというメリットがあります。
費用は5~10万円ほどかかるので、不動産会社の担当者に相談してみましょう。