マンション売却は所有者が手続きを行うのが基本ですが、どうしても本人が契約に立ち会えないという場合があります。そのときは「代理売却」という方法があります。
マンションの代理売却を行うケース
マンション売却はさまざまな段階を経て、ようやく売買契約が成立します。そのすべての過程で所有者が立ち会うのは困難な場合があります。
マンション売却までの流れ
マンションの売却には、次のように多くの手順を踏みます。
- 不動産会社に査定額を出してもらう
- 不動産会社に物件を見てもらう
- 不動産会社に広告宣伝をしてもらう
- 購入希望者に物件を見てもらう(内覧)
- 買主が決まったら売買契約を締結する(手付金を受け取る)
- 手続きに必要な書類を取り寄せる
- 引渡し前にマンションを掃除し引越しを完了させる
- 管理組合に連絡する
- 引渡しと同時にマンション代金を受け取り不動産登記を行う(司法書士に依頼する)
代理売却はさまざまな理由で実施
マンションの売却までには、何度も不動産会社や購入希望者と会わなければいけない場面があります。特に売買契約の締結や引渡し・物件代金の受け取りなど重要な場面では所有者が立ち会うのが原則です。しかし、下記のようにそれが難しいケースがあります。
遠方 | ・転勤先に移住することになり、所有していたマンションを売却したいが遠方で手続きができない ・実家の不動産を売却したいが、自分は離れた土地に住んでいるために現地にたびたび行けない |
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高齢 | ・所有者が高齢で本人では手続きができない |
多忙 | ・忙しくて売却の手続きができない |
不安 | ・自分ひとりでは手続きを進めるのが不安 |
病気 | ・病気療養中や長期入院中で売却手続きができない |
離婚 | ・離婚することになりマンションを売却するが、相手と顔を合わせたくない |
このような場合に代理売却という方法があります。
マンション売却の代理売却は代理人が必要
代理売却を行うには「代理人」が必要です。
マンション売却の代理人とは
代理売却の代理人は売買契約締結の手続きなどを所有者の代わりに行う人です。ただし、どこまでを代理人に任せるかは、依頼者が決めることができます。
マンション売却の代理人は誰がいい?
マンションの売却は高額な取引であり、自分にとっても買主にとっても大きな出来事です。このような大切な取引を任せる代理人は誰でもいいというわけではありません。一方で、特に資格が必要というわけでもありません。
代理人は親族にお願いする
マンション売却は大きなお金を扱う上に銀行の住宅ローンの借入額の話をするなど、プライバシーに立ち入る話が多くなります。
そこで代理人は友人・知人ではなく親族(親子や兄弟)がおすすめです。その場合も信頼できる人であることが重要です。
適切な代理にがいない場合
親族には代理人を任せられる人がいないというケースもあると思います。特に最近は少子化で兄弟が少ないとか、離婚や再婚をすることで親戚関係が複雑になっているケースが増えています。
普段から親戚としてのつき合いがない親族に大切な取引を任せるのは不安が伴います。親族で頼める人がいない場合は、弁護士や司法書士に依頼することができます。専門家に頼むのは費用がかかりますが、法律の知識があるため専門用語にも詳しく、手続きがスムーズに進められるというメリットがあります。
マンション売却時の代理売却には委任状を作成する
代理人が決まったら委任状を作成します。
代理売却の委任状の作成方法
委任状には特に決まった様式はありませんが、下記の内容は必ず記入します。
委任者の住所・氏名 | 委任者(代理売却を依頼する人でマンションの所有者のこと)の住所、氏名(自筆で署名)を記入し、実印で押印します。 |
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受任者の住所・氏名 | 受任者(代理売却を依頼される人で代理人のこと)の住所、氏名(自筆で署名)を記入します。押印は不要です。 |
代理人と定める旨 | 「〇〇(代理人の氏名)を代理人と定める」という旨を記入します。 |
委任の内容 | どこまでを委任するかという内容(権限の範囲)を記入します。 |
売却物件の概要 | 売却する物件の概要(所在地、構造など) |
売却条件 | 売却価格や手付金の額、引渡し日など |
禁止事項・有効期間 | 禁止事項や委任状の有効期間を記入します |
日付 |
売却するマンションが共有名義の場合
売却しようとするマンションが夫婦や親子など共有名義のケースで代理売却をする場合は、共有している人(共有者)全員の同意が必要です。
また、共有者全員の委任状と印鑑証明書、本人確認書類が必要になります。
代理売却で進める場合は委任の範囲を明確にすること
代理売却で進める場合、どこまでを代理人にお願いするのかをはっきりさせておくことが大切です。
委任の範囲とは
代理人には売買契約の締結だけを頼むのか、売買契約締結と売買代金の受け取りも頼むのか…といった委任する範囲を事前に決めておきます。
そうでないと代理人が勝手に何もかも進めてしまい、望まない形での契約を締結される懸念があるからです。
委任する内容のことを「権限」と言いますが、委任状にはこの権限の範囲をしっかり記入しておきましょう。
委任状作成の注意点
委任状を作成する際には、次の点に注意しましょう。
白紙委任状は絶対に避けるべき!
委任状は特定の形式はありません。しかし、専門用語などがあるため、「面倒だから」と所有者が自分の署名と押印だけして「後は任せるからよろしく」とすべてを一任してしまう人がいます。
逆に代理人側から「こういうことは詳しいから任せて!委任状?こっちで書いておくから、〇〇さん(所有者)はここに署名と印鑑だけ押しといて」と言われることがあるかも知れません。
自分は不動産売買や法律には詳しくないからと、すべてを代理人に任せるのもやめましょう。
これを「白紙委任状」と言います。たとえ署名と押印をしていても、白紙では代理人が勝手に内容を書き加えることができるため大変危険です。
最悪な場合は代理人が物件を自分名義にしたり、勝手に別のところに売却したり……といったことが起こる可能性があります。
それを避けるためにも、委任状には必ず委任する内容と権限の範囲を明記することが大切です。
委任の範囲(権限)は最小限に抑えるのが安心
「自分は忙しいから」とか「法律に詳しくないから」という理由で、何もかも代理人に任せたい気持ちはわかります。
しかし、大事な取引だけに委任する範囲は最小限に抑えておきましょう。
こまめな確認も必要
代理人に委任したからと任せっきりにするのも控えましょう。契約締結時に同席できずに代理人に委任した場合でも、電話で「問題はありませんか」と連絡すると安心です。
もちろん事前に不動産会社に代理売却で進めることを伝えておきましょう。その上でアドバイスを受けると、不安なく進められます。
マンション売却時の代理売却~まとめ
マンション売却の手続きは所有者本人が行うことが原則です。しかし、物件が遠方、高齢や多忙、病気などさまざまな理由で、所有者自身で手続きができない場合があります。
そのときは代理人を立てて「代理売却」を行います。代理人は親族(親子や兄弟など)がいいのですが、最適な人がいない場合は弁護士や司法書士に依頼する方法があります。
代理売却を進めるには委任状を作成し、どこまでを委任するかという権限の範囲を明確にしておきます。また、白紙委任状には署名・押印しないように注意しましょう。
代理売却は代理人選びを含めて慎重に進める必要があります。まずは信頼できる不動産会社を探すことから始めましょう。