「ホームステージング」という言葉をご存知でしょうか?
日本ではまだ導入されたばかりですが、欧米ではマンション売却前にホームステージングを施すのが一般的になっています。
ホームステージングとは何でしょう?詳しくご説明していきます。
マンションを高く売るにはホームステージングで演出を
住宅を購入する前には、モデルルームに見学に行く方が多いのではないでしょうか。モデルハウスやモデルルームは、入居後の生活がイメージでき、さらに憧れを抱くような演出がなされています。
しかし、中古マンション売却の場合は、内覧時にまだ所有者が入居していると家族の荷物が雑然と置かれています。一方、空室の場合は家具がまったくないので、入居後のイメージがわかないという問題が起こります。
そこで、購入後の暮らしをイメージしやすくするために、ホームステージングを行います。
ホームステージングとは
マンション売却の前に内覧会を実施するのは、よくあることです。しかし、室内が散らかっていると、物件の魅力が十分に伝えられません。
そこで、モデルルームのように美しく見栄えのする部屋に演出することを「ホームステージング」と言います。
家具がまったくない空室では入居後のイメージができない
新築マンションでも中古マンションでお、ホームページやチラシに掲載されている写真は、ほとんどが空室の状態です。写真や間取り図で広さや間取りはわかりますが、実際にそこで暮らすイメージをするのは意外と難しいものです。
入居中の室内を見せられてもイメージできない
逆にまだ入居中の場合でも、内覧会などで室内を見せることがあります。きれいに片付けたとしても、やはり入居中の人の暮らしぶりが目に焼き付けられるため、購入希望者が入居後の暮らしをイメージするのは難しくなります。
また、室内の状況(家具の配置や片付け具合など)によっては、広い部屋が狭く見えてしまうこともあります。
ホームステージングでモデルルームのような部屋を作る
ホームステージングは、売却するマンションを現状のまま見せるのではなく、モデルルームのようにさまざまな演出を施します。
空室の場合は家具や小物を置いて、「ここに住んでみたい」と思わせるような演出をするのです。
入居中の物件の場合でも、家具や生活用品などはいったん運び出して、モデルルーム並みの家具や生活雑貨を配置します。
ホームステージングは自分で行うのではなく、専門の業者に依頼してやってもらいます。
マンションを高く売るためにホームステージングは必須
日本ではまだ、あまり聞き慣れない言葉ですが、アメリカでは1970年代から実施されています。
欧米ではホームステージングをするのが当たり前
欧米、特にヨーロッパでは古い建物に価値があるとされ、中古住宅や中古マンションの売買が盛んです。
中古物件市場が活発な中で、少しでも資産価値を高める手法として、欧米では早くからステージングが導入されてきました。
現在ではホームステージングを施していない物件は買い手が付かないと言われるほどです。アメリカではホームステージングの専門家「ホームステージャー」がアドバイスや演出を行っています。
なかなか売れなかった物件がホームステージングをすることで売れるという事実
実際に、なかなか買い手が付かなかった中古マンションにホームステージングを施したところ、すぐに買い手が付いたとか、希望価格で売却できたというケースが多く見られます。
マンション高く売るためのホームステージングの手法
ホームステージングは「より高く、より早く売却すること」が目的です。そのために効果的な手法で行っています。
ホームステージングはターゲットに合わせて実施
ホームステージングは、ただ見栄えのいい部屋を作ることが目的ではありません。売却をよりスムーズにするために行います。
そこで、まずは物件の購入ターゲットを絞り込みます。
例えば、立地や間取りが小さな子どもがいるファミリー層の場合、アットホームなリビングやかわいい子ども部屋を演出します。一方、都市型のマンションで子どもがいないDINKS(ディンクス)がターゲットと考えられる場合は、大人っぽい部屋やすっきりした室内を演出することで購入意欲をかき立てるようにします。
ホームステージングとインテリアコーディネートの違い
ホームステージャーとよく似た仕事で「インテリアコーディネーター」という職業があります。インテリアコーディネーターは、現在住んでいる人の好みや希望に合わせて室内のインテリア(家具)や照明、カーテンなどをトータルにアドバイスする仕事です。
ターゲットは「入居者」という顔が見える存在なので、希望やニーズがはっきりしています。その分、具体的なアドバイスができます。
一方、ホームステージングは「マンション購入希望者(見込み客)」をターゲットに想定して、演出を行います。相手が不特定多数であるために、ターゲット層をよく見極めないといけないという難しさがあります。
マンション売却前のホームステージングの流れ
ホームステージングは空室の場合だけでなく、所有者が入居中の場合でも可能です。それぞれのケースでのホームステージングの流れをご紹介します。
空室の場合のホームステージングの流れ
ホームステージャーが物件を見に来ます。所有者や不動産会社と購入ターゲットを想定して、予算に合わせて必要なインテリアを選んで搬入します。
3ヶ月間など一定期間、家具などをレンタルする形で設置します。
入居中の場合のホームステージングの流れ
入居中の場合は、現在使用している家具は運び出します。そして、ホームステージャーが選んだ家具や生活小物を配置します。
内覧会の当日はもちろんこの状態ですが、すぐに売れないということもあるでしょう。その場合は、ホームステージング用に配置された家具の中で生活をすることになります。
その場合は、「傷を付けたらどうしよう」という不安があると思います。もし、そういった心配がある人は、引越し先で使用する家具を運び込んで使用するという方法も可能です。
ホームステージングはプロに依頼しなくても、自分でモデルルームのように演出しても構いません。費用をかけたくないという人や借り物の家具の中で暮らすのは心配という人は挑戦するといいでしょう。
ホームステージングは住居全体?1室のみでも可能?
ホームステージングは住居全体、つまり玄関から浴室やトイレ、キッチン、寝室に至るまですべての部屋に施すこともできますし、「〇〇と△△の部屋だけ」と限定して施すことも可能です。
ホームステージング業者ではさまざまなプランを準備しているので相談してみましょう。
ホームステージングをやっておくといい場所
住居全体にホームステージングを実施すると費用がかかるという場合は、場所を限定して実施する方法があります。
その場合、特におススメしたいのは次の場所です。
玄関 | 物件を見学に来た人の目にまず入るのが玄関です。 きれいに清掃し、スリッパ、玄関マット、観葉植物などを配置します。 |
---|---|
キッチン | 主婦は必ずキッチンを確認します。 おしゃれな調理器具やキッチン小物など配置します。 |
廊下 | 各部屋を移動する際に、廊下は必ず通ります。 絵画などをさりげなく飾っておきます。 |
水周り | タオルやマット、スリッパ、小物などをきれいに配置し、香りにも配慮します。 |
リビング | ソファやクッション、観葉植物などを効果的に使って、好印象をアピールします。 |
このように見学者の目に触れる場所はホームステージングを施すといいでしょう。
マンションを高く売るためにホームステージングを行うメリット・デメリット
マンション売却前にホームステージングを行うメリットとデメリットを、売主側と買主側の立場で見ていきましょう。
マンション売却前にホームステージングを行うメリット
まずメリットからです。
売主側のメリット
マンション入居後の生活がイメージできるので、販売促進につながります。売れるまでの期間が短くなるとか、売却価格が高値で売れるといったメリットがあります。
買主側のメリット
購入後の生活がイメージしやすいというメリットがあります。また、「いい物件だ」という印象が残るので、買主の満足感が高まるのも売買交渉に有利に働くと言えるでしょう。
マンション売却前にホームステージングを行うデメリット
ホームステージングを行うには費用がかかります。これが最大のデメリットと言っていいでしょう。
しかし、最初からその費用を上乗せした売却価格を設定しても、値切られる可能性が低くなるので希望価格で売れるケースが多いと言われています。費用対効果が高いので、このデメリットはそれほど心配することはないと思われます。
気になるホームステージングの費用はどれくらい?
では、実際にホームステージングを行うには、費用はどれくらいかかるのでしょうか?
ホームステージングの費用は依頼内容によって異なる
ホームステージング業者にどこまで依頼するかによって違ってきます。
A社の場合は、下記のような料金設定になっています。
プラン | 料金 | 内容 |
---|---|---|
コンサルティングプラン | 5万円~ | ・コーディネートやアドバイスのみで、家具や小物などは自分で準備するプラン ・費用を抑えたい人や入居中の人におすすめ |
ベーシックプラン | 20万円~ | ・リビングのコーディネートとソファー、ダイニングセットなどの家具のレンタル ・家具のレンタルは成約まで(3ヶ月以内)の費用が含まれます |
スタンダードプラン | 30万円~ | ・リビング、ダイニング、キッチン、水周りをトータルにコーディネート ・家具と小物のレンタル費用(成約まで3ヶ月以内)が含まれます |
フルパッケージ | 物件価格の1~2% | ・住居全体のコーディネートと清掃、必要な家具と小物のレンタルをすべて含めたプラン ・家具は成約までの費用が含まれます。 |
ホームステージングは安さ勝負の物件には向かない
このようにホームステージングは専門のホームステージャーが購入ターゲットに合わせて演出を企画し、最適な家具などを設置してくれるので、物件をより良く見せる効果があります。
ただし、その分、費用がかかります。「とにかく安い物件がほしい」と安さを求める顧客層がターゲットの物件には不向きだと言えるでしょう。
マンションを高く売るためのホームステージング~まとめ
ホームステージングは中古マンションを売却する前に、住居内をモデルルームのように演出することです。日本ではまだ聞き慣れない言葉ですが、今度広がっていくと言われています。
専門のホームステージャーが購入ターゲット層に合わせて演出プランを考え、最適な家具や小物を選びます。ホームステージングには費用がかかりますが、物件が早く、高く(または希望価格で)売れるというメリットがあります。
マンション売却前に検討してみるといいでしょう。