マンション売却~引渡しまでの「もしも」のときの危険負担を知っておこう

マンション売却~引渡しまでの「もしも」のときの危険負担を知っておこう

マンション売却は売買契約を締結しても、引渡しが完了するまでは気が抜けません。引渡しまでの間に、マンションに「もしも」のことがあったら……!?
そんな場合の「危険負担」についてご説明します。

マンション売却時の危険負担とは

「危険負担」という言葉をご存知でしょうか?
その言葉だけでは一体何のことなのか、ちょっとイメージができないですね。

危険負担とは

危険負担とはマンションの売買契約から引渡しまでの間に災害などで物件が損傷した場合に、誰が修繕費を負担するのかということを指します。

危険負担に該当するケース

危険負担の対象となるのは、次のケースです。

  • 隣家からの出火が自分の部屋にも延焼した場合
  • 放火による火災
  • 地震による損傷や倒壊
  • 台風による被害
  • 水害による被害

このように第三者による放火や自然災害などで売却するマンションが被害に遭った場合、売主にも買主にも非はありません。

ところが売買契約は締結しているものの引渡しはまだ……という状況では、どちらが修繕費用を負担すべきなのか判断に迷ってしまいます。

なお、危険負担は売主または買主が故意や過失で損害を与えた場合は対象外です。

マンション売却時の危険負担を法律はどう判断するのか?

このような場合について、民法第534条1項では次のように規定されています。

危険負担に対して民法の判断

民法第534条1項で買主が負担と規定

民法第534条1項の内容

民法第534条1項では、次のように規定されています。
「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。」

債権者と債務者とは

債権者とは「引渡請求権の債権者」という意味で、買主を指します。一方、債務者は「引渡請求権の債務者」という意味で、売主を指します。

つまり、民法第534条1項では、「債務者(売主)の責任ではない理由で滅失または損傷したときに債権者(買主)が負担する」ということを示しています。

法律では危険負担は買主が負うのが原則

上記のように民法では危険負担(第三者の放火や災害など売主の責任ではない理由でマンションが滅失や損傷した場合の負担)は買主が負うこととしています。これは売買契約を締結した以上は、買主はその費用を支払わなければいけないという考え方があるからです。

そのため、もし大地震などでマンションが崩壊して住めなくなってしまった場合でも、買主はマンション代金を支払わなければなりませんし、修繕が可能な場合は買主が修繕費用を負担するということになります。

マンション売却時の危険負担は特約で売主の負担に

法律では買主が負担すると定めていても、実際に引渡しが済んでいない物件の滅失や損傷を買主が負担するのはあまりにも理不尽だということで、実際には危険負担に対して売主が負担するという旨の「特約」を定めるようにしています。

危険負担の特約

危険負担の特約は不動産(マンション)の売買契約書に記載します。契約書の記載例をご紹介します。
(甲は売主、乙は買主です)

第〇条(危険負担)
本契約締結後、本物件の引渡し完了前に、甲または乙のいずれかの故意または過失によらないで本物件の全部または一部が火災、流失、陥没その他により滅失または毀損したときは、その損失はすべて甲の負担とし、乙は甲に対して売買題記にの減額または原状回復のために生ずる損害の賠償を請求することができるものとする。
2.前項に定める滅失または毀損により乙が本契約締結の目的が達することができないときは、乙はその旨を甲に書面で通告することにより本契約を解除することができるものとし、この場合、甲はすでに受け取った手付金を全額乙に返還するものとする。

原状回復が難しい場合は契約解除が可能

現実は大地震でマンションが倒壊するなど大きな被害を受けた場合、元通りの状態に修復すること(原状回復)が難しいというケースがあります。

そのときは買主は契約の解除ができること、またすでに支払った手付金などは全額買主に返還することを契約書に記載しておきます。

危険負担と火災保険の関係

危険負担の特約を付けることで修繕費は売主が負担することになりますが、多くの場合は火災保険金で修繕費をまかなうことができます。

火災保険の補償範囲

ちなみに火災保険の補償範囲は、下記のように火災以外の自然災害もカバーできるようになっています。
(保険商品によって内容は異なります。)

  • 火災
  • 落雷
  • 破裂・爆発
  • 建物外部からの物体の落下・飛来・衝突または倒壊
  • 漏水などによる水漏れ
  • 騒擾(そうじょう:群衆など多数の集団行動によって被害を受けること)・集団行動などに伴う暴力行為
  • 風災・ひょう災・雪災によるもので20万円以上の損害が出た場合
  • 盗難によって建物に生じた損傷・汚損など
  • 水災

なお、地震による火災は、火災保険の対象ではありません。別途、地震保険に加入する必要があります。地震保険の補償内容は、地震による火災・損壊、地震による津波での被害などです。

危険負担の特約がない場合、買主は売主に火災保険金を請求できる

危険負担の特約を付けると、修繕費用は売主の負担になります。しかし、売主は火災保険金が受け取れるので、それで支払うことができます。

一方、特約を付けていない場合、買主は自費で修繕費用を出さなければなりません。費用は高額になりますが、売主はその物件に対して火災保険に加入しているので、買主は売主に保険金を渡すように請求できるという権利があります。これを「代償請求権」と言い、過去の判例でも認められています。

そうでないと売主は修繕費用を負担することなく保険金だけを受け取るということになり、一方の買主はマンション代金と別に修繕費用も負担するため不公正が生じてしまいます。

このような背景があることから、一般的には引渡しまでの期間での被害に対しては売主が負担するケースが多いと言われています。

危険負担も考慮して火災保険は引渡し完了日まで加入すること

マンションを売却すると、火災保険を解約します。ただし、問題は解約日です。「火災保険の解約」のページでもご説明しましたが、火災保険の解約は引渡しが完了してからにしましょう。

もし、引越しを済ませていたり、売買契約を締結したりしていても、引渡しが完了するまでに火災や災害でマンションが破損・滅失したら修繕費用を負担しなければなりません。そのときに火災保険を解約していると、すべて自己負担になってしまいます。

解約日には注意しましょう。

マンション売却時の危険負担と瑕疵(かし)担保責任の違い

マンション売却後の物件の破損や欠陥に対して売主が責任を負うものとして「瑕疵(かし)担保責任」があります。

危険負担と瑕疵担保責任の違いを理解しておきましょう。

瑕疵担保責任は物件そのものの欠陥が対象

危険負担と瑕疵担保責任の違いを整理すると、下記のようになります。

危険負担 マンション売却時に引渡しまでの間で、住宅が火災や地震、台風などの災害で損害を受けた場合に修繕費用を負担することを言います。
民法では買主が費用を負担することになっていますが、一般には売買契約書に特約を設けて、売主が負担することを明記しています。
その場合の修繕費用は火災保険金が使えるので、火災保険は引渡しが完了するまでは解約しないようにしましょう。
なお、危険負担は、住宅そのものの欠陥や不具合が対象ではありません。
瑕疵担保責任 売買契約時には発見できなかった住宅の欠陥や不具合が入居後に見つかった場合に、売主は買主に対して賠償責任を負うことを言います。
買主は売主に修繕費用などを請求できますが、それに備えて既存住宅売買瑕疵担保保険に加入しておくと安心です。

マンション売却時の危険負担~まとめ

マンション売買の契約を締結しても、引渡し日までは日数があります。この期間に火災や自然災害などでマンションが滅失や損傷した場合に、その費用を負担することを「危険負担」と言います。

民法では修繕費用は買主が負担することとなっていますが、まだマンション代金を支払っていないし、引渡しも済んでいない物件の修繕費用を負担するのは理不尽に感じる人がほとんどです。
そこで、売買契約書に危険負担の特約を設けて、こういった場合は売主が負担することを明記します。

なお、特約を設けない場合でマンションが被害に遭った場合、買主は売主に火災保険金を修繕費用として請求できるという判例があります。

万が一に備えて、火災保険は引渡し完了まで解約せずに継続すると安心です。

業界最多!1000社以上の会社から選んで一括査定!
一部上場の大手企業から地元密着の歴史ある不動産会社などから最大6社までを選んで一括査定できる

  • センチュリー21
  • ピタットハウス
  • 長谷工リアルエステート
  • 大京穴吹不動産
  • 大東建託
  • ハウスドゥ

一括資料請求はこちら