みなさんは「登記事項証明書」という言葉を聞いたことがありますか?普段の生活をしていて頻繁に使う言葉ではありませんよね。
だからこそ、いざこれが何かと聞かれるときちんと答えられる人は少ないのではないでしょうか。
しかし不動産の売却を考える人にとって、登記事項証明書は必ず必要になってくる書類なのです。
この記事では、そんな登記事項証明書について、また必要書類やいつ必要になるのかなどを解説していきます。
登記事項証明書とは?
「登記」ってなに?
登記事項証明書について詳しく説明する前に、まず「登記」とは何を指すかをご説明します。既にご存知の方は次の項目まで読み飛ばしてしまって大丈夫です。
「登記」とは、「その不動産は自分のものですよ。だからそれを売る権利も自分にはありますよ」ということを証明するもの。
この登記は法務局に登録されていて、その不動産が誰のものであるか、どのような権利をもっているかを知ることができます。
また、登録されているのは現在の権利所有者の情報だけでなく、過去にさかのぼってどのような権利、どのような建物・土地に対して誰が権利を持っていたかが記載されています。
登記がないということは、その不動産の「所有権」を持たないということになるので、当然その不動産を勝手に売ることもできません。ですので、登記はとても重要なものなのです。
では、登記事項証明書とはいったいなに?
「登記」について理解できたところで、では「登記事項証明書」とは一体何かをご説明します。
登記事項証明書とは、法務局に登記されている情報が記載されていて、その内容が正しいということを証明する書類のことです。
土地や建物の所在地・所有者などが、専用の用紙に印刷されたものになっています。
不動産を売却する際、その不動産が本当にその人のものなのかを証明するために必要な重要な書類なのです。
登記簿謄本との違い
登記事項証明書と似たような言葉で、「登記簿謄本」という言葉も聞いたことがありませんか?同じ「登記」という言葉が付いていますが、違いはなんなのでしょうか。
実は登記簿謄本に記載されている内容は登記事項証明書と全く同じです。ただし登記簿謄本は法務局において登記用紙に記載・保管されているものをそのままコピー(複写)したものになります。
一方で登記事項証明書は、コンピューター内で処理された情報を専用用紙に印刷したものです。
登記事項証明書の種類
登記簿事項証明書には、すべての情報を記載したもの、一部の情報のみ記載されているものなど、いくつか種類があります。
それぞれの特徴についてご紹介します。
全部事項証明書
全部事項証明書とは、その名の通りその不動産が登記されてから現在に至るまでのすべての所有権、所有権の移転、抵当権の設置・抹消などの記録が記載された証明書のこと。
何か特別な指示・理由がないかぎりは、この証明書をとっておけば問題ありません。
現在事項証明書
こちらも名前が示す通り、ある不動産の登記のなかで「現在の登記事項のみを記載したもの」が現在事項証明書です。過去の所有者や抵当権については記載されていません。
先ほど紹介した「全部事項証明書」のなかの、現在の部分だけを抜き取ったもの、と考えてください。
一部事項証明書
ある不動産の一部の登記情報だけを記載したものが「一部事項証明書」です。
例えば分譲マンションの登記事項証明書で、全部事項証明書を申請してしまうと、それぞれの部屋のオーナーが所有者として記載されているため、オーナー全員の情報が記載されてしまいます。
時には100ページ近くにもなるこの登記事項署名所を提出しても問題はないとはいえ、事務作業をするうえで便利とは言えません。
ですので、マンションの登記事項証明書を入手したい場合などは、必要な部分だけが記載されているこの「一部事項証明書」で問題ありません。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、土地の合筆(2筆以上の土地を1筆にすること)や建物の滅失なとにより消失し、閉鎖された不動産について記載された証明書になります。
閉鎖された不動産の記録である閉鎖登記簿は、全部事項証明書にも記載されません。
そのため、何らかの理由で閉鎖された不動産について知りたい場合は、この「閉鎖事項証明書」を取得する必要があります。
なお、閉鎖登記簿の保存期間は、土地が50年、建物が30年となっています。
登記事項要約書
この「登記事項要約書」は、主に現在効力のある事項が掲載されていて、内容は現在事項証明書と似ていますが、違いは「証明書」ではない点です。
あくまでも要約書なので、契約書に添付する書類としては使用することができないので注意が必要です。
証明書には法務局の登記官の認証文と発行年月日が記されているのに対して、この登記事項要約書にはそれが記されていません。
登記事項証明書の取得方法は?何が必要?
登記事項証明書を取得するには、どこに行けばいいのでしょうか。また、どんなものが必要なのでしょうか。
このセクションでは、取得方法、交付に必要なもの、手数料、また取得までにかかる時間などをご紹介します。
取得方法
取得方法は以下の3つの方法があります。
- 直接法務局へ行く
- オンラインで申請し、郵送で受け取る
- オンラインで申請し、直接法務局で受け取る
直接法務局へ行く
法務局とは、登記・戸籍・国籍・供託・公証などの事務を行っている地方組織です。全国に42ヶ所ありますが、事前に不動産管轄区域を調べてから行くことをおすすめします。
法務局にある申請用紙に必要事項を記入し、窓口で申請・交付を行います。
オンラインで申請し、郵送で受け取る/直接法務局で受け取る
オンラインで申請する場合、「登記ねっと」というオンラインページから申請が可能です。
オンライン申請では、受領方法を洗濯することができます。
郵送での受け取りを希望する場合は自宅や会社など受け取りを希望する住所を指定することができます。もし急ぐ場合は、簡易書留や速達を希望することができますが、もちろんその分の料金が加算されます。
一方、オンラインで申請し、近くの法務局証明サービスセンターや登記所で受け取るということも可能です。
法務局のホームページの管轄一覧や地図で最寄りの登記所などを検索することができるので、この受け取り方を希望する場合は事前に調べておきましょう。
必要なのは交付請求書と認印
実は登記事項証明書の取得には、特に特別なものが必要というわけではありません。
法務局に直接行くのであれば、その場で交付請求書に登記事項証明書が必要な不動産の所在地を書いて提出するのみで取得できます。
なお、交付請求書は法務局のホームページからもダウンロードが可能です。
手数料
手数料に関しては、取得方法によって異なります。
下の表をご参照ください。
取得方法 | 手数料 |
直接法務局に行き、申請・取得 | 600円 |
オンラインで申請→郵送で取得 | 500円 |
オンラインで申請→法務局に行き取得 | 400円 |
なお、50枚を超える証明書の場合は、50枚までごとに100円が追加されます。
申請から取得までにかかる時間
申請から取得までにかかる時間も、取得方法により異なります。
申請方法 | 受領方法 | 所要時間 |
法務局の窓口 | 法務局の窓口 | 15~30分 |
オンライン申請 | 郵送 | 翌日~翌々日 |
オンライン申請 | 法務局の窓口 | 3~4時間 |
一番早い方法は、混雑具合にもよりますが法務局に直接出向くこと。
しかしオンライン申請をして郵送で受け取る方法でも3日以内には届くので、そこまで時間がかかるわけではありません。
お急ぎのではない場合、近くに法務局の窓口がない場合などは、オンライン申請で郵送での受領を利用しましょう。
登記事項証明書が必要になるタイミングとは?
登記事項証明書がどのようなものかがわかったところで、その証明書は一体どのようなときに必要になるのかを見ていきましょう。
登記事項証明書が必要になるのは、主に以下のようなときです。
- 購入したい不動産の情報を知りたいとき
- 不動産を売却するとき
- 住み替え/物件購入による住宅ローン申請時
- 確定申告の際、住宅ローン控除を申請するとき
それぞれのタイミングについて詳しくご説明します。
購入したい不動産の情報を知りたいとき
購入したいと思っている不動産があるとき、その不動産について詳しく知りたいと思いますよね。
過去の所有者などの履歴、また現在の状況などを詳しく知るためには、登記事項証明書が便利です。
また、購入したい不動産だけでなくその隣接する不動産などについても調べておくと安心ですね。
不動産を売却するとき
登記事項証明書は不動産売却に必要な最も重要な書類と言っても過言ではなく、売却時に用意できていなければ、売却そのものができません。
不動産売却にはたくさんの種類の書類が必要となりますが、1つでもかけていると売却がうまくいかないこともあるので注意が必要です。
この登記事項証明書ですが、戸建ての売却をする際は、土地、建物に対してそれぞれ1通が必要になります。
分譲マンションの場合は、専有部分のみの1通で問題ありませんが、昭和58年以前に建てられた物件に関しては、専有部分および共有部分に対して1通ずつ必要となる場合があるので
事前に不動産会社に確認することを忘れないでください。
住み替え/物件購入による住宅ローン申請時
住み替えや物件を購入するときは、キャッシュで一括払いする以外は多くの人が住宅ローンを利用しますよね。
その申請時に登記事項証明書が必要になります。住宅ローンは金額が大きく、返済期間も長いため、銀行は申請者が本当に返済できるかをきちんと確認しなければなりません。
その際に、住宅ローン申請の対象不動産を抵当権で担保設定されることが多く、その手続きに登記事項証明書が必要なのです。
確定申告の際、住宅ローン控除を申請するとき
住宅ローンを利用して新居を購入した際に適用される減税措置である「住宅ローン控除」。
この住宅ローン控除を申請する際に必要となる書類の1つが、登記事項証明書です。
なお、住宅ローン控除は住宅を購入した翌年に申請を行うので、必ず忘れず、確実に行うようにしましょう。
登記事項証明書のまとめ
登記事項証明書は、普段聞きなれない言葉かもしれませんが、不動産売却時だけでなく、住宅ローン申請時や、住宅ローン控除を申請する際に必要となるとても重要な書類だということがわかりました。
この書類がなければ不動産の売却そのものができないので、不動産売却を考えている方は絶対に忘れず用意しましょう。
不動産売却には本当にたくさんの書類が必要となります。
いったい何を準備して何がまだなのかわからなくなったりしないよう、しっかりチェックリストを作って準備するようにしてくださいね。