台風で一番困るのが、家への台風被害です。今は耐震性だけでなく、風圧や浸水への対策を講じた工法があるため、台風に強い家を建てることもできます。
しかし、新築しようという人ばかりではありません。今住んでいる家で対策を講じる必要がある人の方が多いことでしょう。
そこで今回は主な台風被害について理解してもらい、その被害から家を守るためにはどうすればいいのか、その対策方法について徹底解説していきます。
最後まで目を通してもらい、しっかりと台風対策を立てるようにしてください。
台風から家を守るためにできる対策とは?
①家のメンテナンスをする
台風被害を受けて、初めて家の劣化を思い知らされる人は少なくありません。
ですが家の劣化箇所を事前に把握して、ちゃんとメンテナンスを実施しておけば、台風被害を最小限に抑えることが可能です。
ホームインスペクションを受ける
家の劣化状態を確認する方法として、おすすめなのがホームインスペクション(住宅診断)。
ホームインスペクションはJSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)と呼ばれる住宅診断の専門家に、家のコンディション状態を診断してもらう専門サービスです。
- 家の劣化状態
- 家の欠陥有無
- 改修が必要な箇所
- 改修が必要な時期
- 改修に必要な大まかな費用
診断方法は目視診断と機材を使用した詳細診断があり、目視診断が人間でいうところの健康診断、詳細診断が精密検査に当たります。
主な診断個所は下記の通りです。
- 屋根
- 外壁
- 室内
- 小屋裏
- 床下
まずは目視診断を行い、そこで診断項目に懸念事項がある場合は、JSHI公認ホームインスペクターから詳細診断を薦められることになります。
気になる費用は設定料金はJSHI公認ホームインスペクターが所属している会社によって異なりますが、相場価格は下記の通りです。
- 目視診断:5万円~6万円前後
- 詳細診断:10万円~
特に屋根の点検は定期的に!
一度ホームインスペクションを受けたからといって、それで満足してはいけません。
家の劣化は年ごとに進みますし、特に屋根は年中太陽からの熱や風雨にさらされているため、家の中で一番劣化が進みやすい箇所です。
屋根に関しては、定期的なメンテナンスが必要になります。専門業者に依頼して、屋根瓦の状態を確認するようにしてください。
1995年以降に建てられた家には、台風被害を抑えるための工法が用いられていますが、1994年以前に建てられた家には、何の台風対策も取られていません。
台風で屋根が飛ばされる構造のものが多いとも言われています。よって、特に1994年以前に建てられた家は、定期的なメンテナンスは絶対に欠かせません。
②窓の補強をする
飛散物による被害で一番注意しなければならないのが窓ガラスです。
風速が大きくなれば風圧によって割れることも考えられますし、窓から雨水が浸水するケースも出てきます。
窓ガラスが割れると大災害に繋がるケースが多いので、台風被害を最小に抑えるためには、窓ガラスへの対策は欠かせません。台風対策として、屋根と共に対策を講じる必要があるでしょう。
台風に強い窓ガラスへ交換
まず検討してもらいたいのが、台風に強い窓ガラスへの交換です。
台風に強い窓ガラスの条件には、下記の3つが挙げられます。
- 耐風圧性に優れている
- 水密性に優れている
- 割れてもガラス片が飛散しにくい
最新の窓ガラスには風速60m/s相当の風圧にも耐えられるものもありますし、降水量240mm/hで風速20m/sから35m/s相当の風が吹いても、窓から雨水の浸水を防げる高い水密性を持つものもあります。
各窓ガラスメーカーの耐風圧性や水密性を比較して、なるべく性能の良いものを選ぶようにしましょう。
また、飛散物や風圧により窓ガラスが割れた場合、暴風が一気に屋内に流れ込み、その勢いで屋根が吹き飛ばされてしまう事例も報告されています。
画像参照先:気象庁HP・テキスト「大雨や台風に備えて」
このような被害を回避するために必要になってくるのが、割れても飛散しにくい窓ガラスの設置です。
近年は防犯対策として、樹脂中間膜を挟み込んだ複層ガラスが販売されていますが、このガラスは割れてもガラス片が飛散しにくいため、大被害から家を守ることができます。
最新の窓ガラスならばこれら3つの条件を兼ね揃えたものが販売されているので、一度の交換で3つの台風対策を講じることも可能です。
通常の窓ガラスよりは高額になりますが、安全性を考慮した上で検討してみることをおすすめします。
雨戸やシャッターの設置
最近は雨戸が付いていない家も多く見られますが、台風時にはこの雨戸の存在の有無によって、受ける被害の大きさが違ってきます。
台風から窓ガラスを守るために、一番簡単な方法は窓ガラスをむき出しにしないことです。
現在、雨戸がないならば、雨戸の設置をおすすめします。また最近は雨戸の代わりに、窓ガラス用のシャッターを設置することも可能です。
これならば通常の雨戸より高い強度を誇るので、台風から窓ガラスを守るのにおすすめとなってきます。
交換や設置が間に合わない場合
台風から窓ガラスを守るためには、交換と雨戸やシャッターの設置がおすすめですが、どれもそれなりの費用が掛かりますので手が出ないという人も少なくないでしょう。
また、検討していても工事が、間に合わなかったという人も出てくきます。そんな時の対策として実施してもらいたのが、窓にガムテープを貼る対策方法です。
窓ガラスに対して、下記のようにガムテープを貼ってください。
こうすれば飛散物が直撃しても、窓ガラスが飛散することを抑えれます。
ガムテープは紙状のものだと、後ではがれにくくなるので、布ガムテープや養生テープがおすすめでしょう。
この窓ガラス対策で覚えておいて欲しいのは、ガムテープを貼る目的はガラスの飛散を抑えるためだという点です。
この方法で窓ガラスの強化効果は、まったく期待できません。この点は勘違いのないように、理解しておきましょう。
また、このの対策方法は緊急時のものとなりますが、時間に余裕があるのなら、下記2つの対策方法がおすすめです。
- 窓ガラスに飛散防止フィルムを貼る
- 窓ガラスに防犯フィルムを貼る
防犯フィルムは石やバールで叩いても、ガラスが割れるのを防げるものあるのでおすすめですが、25,000円以上と価格が高価なのが難点です。
その点、飛散防止フィルムならば数全円と安価な上、素人でも簡単に貼れるので、一時的な台風対策ならば、こちらの方がおすすめでしょう。
➂浸水対策をする
家を建てる時に耐震性は十分に考慮されますが、浸水に備えた家造りは見逃されがちです。
近年は下記のように浸水に備えた工法を家造りも取り入れることもできます。
- 高床式にする
- 地盤を高くする
- 家を防水壁で囲む
- 耐水性のある外壁を設置する
浸水被害に遭う可能性が高い地域では、家を建てる時には必ず検討してみることをおすすめします。
しかし、既に家を建てている場合でも、家を浸水被害から守る方法はいくつもあります。ここではその方法を、紹介していくことにしましょう。
家の出入口に簡易土のうを設置する
家の出入り口など、道路からの雨水が浸水しやすい場所に、土のうを設置することで浸水を防ぐことができます。
土のうは布袋の中に土砂を詰めたもので、一般的には土木資材として用いられていますが、今回の浸水防止壁など様々な用途にも用いられている優れものです。
また、市販されている吸収性土のうを利用するのもいいでしょう。吸水性土のうは、初めは軽量でコンパクトですが、水を吸収することで膨張して、土のうと同じ効果を発揮します。
土のう袋はホームセンター等で簡単に手に入れることができますが、中に詰める土砂の用意ができない人は多いでしょう。その場合は、簡単に手に入れることができる生活用品で作った、水のうで代用することも可能です。
それではこの水のうの作り方を、いくつか紹介しておきます。
①ゴミ袋と段ボールで作る水のう
まずは40ℓほどのごみ袋を二重にして、半分くらいまで水を入れて口を縛ります。
それを用意した段ボールに入るだけ詰め込み、ビニールシート等で包んで、必要な個所に並べるだけです。
②ポリタンクを使った水のう
ポリタンクを使った水のうは、ポリタンクに水を入れ、ビニールシート等で包んで並べるだけです。
ポリタンクさえ用意できれば、手間もかからず簡単に作れます。先の水のう作りが面倒な人は、こちらの方法の方がおすすめです。
水中ポンプを購入しておく
屋内や敷地内に浸水した場合、浸水した雨水の排水作業が必要になります。この排水作業で大いに役立つのが水中ポンプです。
水中ポンプは土木・建築現場や農業・園芸用の排水作業に用いられる機械ですが、台風の浸水時にも十分な効果を発揮します。
水中ポンプは15,000円前後で販売されており、ホームセンター等で手に入れることが可能です。
しかし、機種によってパワーが異なるため、購入時には販売員に利用目的を相談し、適したものを購入するようにしましょう。また購入時には下記3点を想定して、必要な器材の購入を忘れないようにしてください。
- ポンプの仕様に合った電源確保(*浸水箇所から話して設置する必要あるため、発電機が必要ンある場合も)
- 電源までの距離に合わせた延長コード
- 排水予定先までの延長ホース
家の周辺の問題解決
また見逃しがちですが家の周辺を再確認でも、家を浸水から守ることができます。意外と大きな効果を発揮するので、やったことがない人は、ぜひ実施してみましょう。
雨水ますの清掃
家の周辺にある雨水ますの上や中には、どうしても落ち葉やごみが集まりがちです。
そうなると雨水ます内に雨水が流れ込まなくなり、家に浸水する確率が高くなってしまいます。
そうならないためにも、日ごろから家周辺の雨水ますの清掃を心がけるようにしてください。
カーステップなどの撤去
時折、道路にはみ出して家の周りにカースッテプやプランターを設置している人がいますが、これは雨水ますへ雨水が流れるのを妨げる原因になります。
しかも、道路上に個人の所有物を設置するのは、法律上でも禁止されている行為です。
設置物が原因で事故等が発生した場合には、設置した人の責任問題が問われることになります。何の得にもならないので、絶対に道路へ所有物を設置しないようにしてください。
④家周辺にあるものを片付ける
台風が接近した際は家周辺に置いてある物を、屋内に片付けるようにしてください。
プランターや自転車を屋外に置いているところは多いでしょうが、それが暴風で飛散すると、自分の家だけでなく、周囲の家にも被害を与えることになります。
飛散しそうな物は、必ず全部屋内に片付けるようにしましょう。またベランダに置いているものも同様です。
忘れがちになりますが、必ず屋内に片付けるようにしてください。
台風に併せた事前準備を!
ここまで家の台風対策について解説してきましたが、「台風が来た!すぐに対策を!」と言われても、直ぐにできることは限られています。
よって、台風が多い時期を把握して、それに合わせた事前準備をすることことが肝心です。
下記は気象庁が発表した、ここ9年間の台風発生月のデータになります。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
2019 | 1 | 1 | 1 | 4 | 5 | 6 | 4 | 6 | 1 | |||
2018 | 1 | 1 | 1 | 4 | 5 | 9 | 4 | 1 | 3 | |||
2017 | 1 | 1 | 8 | 5 | 4 | 3 | 3 | 2 | ||||
2016 | 4 | 7 | 7 | 4 | 3 | 1 | ||||||
2015 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 4 | 5 | 4 | 1 |
2014 | 2 | 1 | 2 | 2 | 5 | 1 | 5 | 2 | 1 | 2 | ||
2013 | 1 | 1 | 4 | 3 | 6 | 7 | 7 | 2 | ||||
2012 | 1 | 1 | 4 | 4 | 5 | 3 | 5 | 1 | 1 | |||
2011 | 2 | 3 | 4 | 3 | 7 | 1 | 1 | |||||
合計 | 6 | 5 | 4 | 4 | 5 | 21 | 39 | 35 | 43 | 32 | 23 | 9 |
こうして見るとほぼ1年を通して、台風が発生していることになりますね。
この事実には筆者も驚きでしたが、これはあくまで発生回数であり、台風被害を引き起こすことになる、接近・上陸回数とは異なります。
接近回数も上陸回数も、発生回数の数値に開きはありますが、ともに6月から10月に集中しています。
よって、接近・上陸とも記録のない、1月から3月の間に台風対策を実施するのがベストでしょう。
台風で家に被害が出る風速は?
台風被害を引き起こす原因となるのは、台風が伴う暴風雨と大雨によるものです。しかし、台風が発生したからといって、家が必ずしも被害を受けるわけではありません。
大雨による被害は土砂災害や浸水害、中小河川の洪水が挙げられますが、これは地域性が大きく影響してきます。
すべての地域で心配しなければならないのは、暴風雨による被害でしょう。
そこでまずは気象庁が発表している風速被害を参考に、どれくらいの風速が観測されれば、家に被害が出るのかを見ていくことにしましょう。
風速40m/秒を超えると家は倒壊の危険が!
台風は最大風速が17.2m/s以上の熱帯低気圧のことを指します。
風速が17.2m/sと言われてもピンとこない人も多いでしょうが、風速17m/sを車の走るスピードに置き換えれば、時速60㎞とほぼ同じくらいです。
つまり時速60㎞の車に乗って、窓から顔を出した時に受ける風の抵抗が風速17.2m/sと考えてもらえばいいでしょう。
この風速17.2m/s程度の台風であれば、仮に直撃されたとしても、家が大きな被害を受けることはありません。
長い間メンテナンスを行わず、放ったらかしにしていれば、屋根瓦が剝がれて飛散することもありますが、通常は雨戸やシャッターが揺れるくらいです。
しかし、風速が20m/sを超えると、確実に家へ被害が出始めてきます。それではどのくらいの風が吹けば、家にどのような被害が出るのかを、気象庁が発表しているデータから見ていくことにしましょう。
①風速が20m/s以上から30m/s未満の場合
*画像提供:気象庁
この風速となれば風の強さは予報用語で「非常に強い風」と呼ばれます。
- 風速20m/s以上~25m/s未満:~時速約90㎞
- 風速25m/s以上~30m/s未満:~時速約110㎞
人は何かにつかまっていなければ建っていられない状態になり、屋外は下記のような状態です。
- 細い木の幹が折れる
- 根の張っていない木が倒れ始める
- 看板が落下・飛散する
- 道路標識が傾く
これら飛散物によって負傷する恐れがあるため、早急に屋内に避難する必要があるでしょう。
また、家が受ける被害には、下記のようなものが挙げられます。
- 屋根瓦や屋根ふき材が飛散するものがある
- 固定されていないプレハブが移動・転倒する
- ビニールハウスのフィルムが広範囲に破れる
②風速が30m/s以上から35m/s未満の場合
*画像提供:気象庁
この風速となれば風の強さの予報用語は「猛烈な風」に変わります。
- 風速30m/s以上~35m/s未満:~時速約125㎞
上記の時速換算数値を見てもらえば歴然ですが、風速30m/sから35m/sは、走行中のトラックが横転するほどの強風です。
この風速になれば屋外での行動は極めて危険ですから、家から出られる状態ではありません。
また、家が受ける被害には、下記のものが挙げられます。
- 固定が不十分な金属屋根のふき材がめくれる
- 養生の不十分な仮設足場が崩壊する
風速20m/s以上から25m/s未満の時よりも、被害度がいくぶん上がっていますね。
➂風速が35m/s以上から40m/s未満の場合
*画像提供:気象庁
風の強さは、予報用語で先ほどと同様に「猛烈な風」です。
- 風速35m/s以上~40m/s未満:~時速約140㎞
この風速になれば屋外の状況は先ほどよりさらに酷く、下記のような状態になります。
- 多くの樹木が倒れる
- 電柱や街頭で倒れるものがある
- ブロック塀で倒壊するものがある
また、家が受ける被害は下記の通りです。
- 外装材が広範囲にわたって飛散する
- 下地材が露出するものがある
イラストのように外装材が剥げて、下地がむき出しになるのですから、いかに風圧が高くなるのかが見て取れます。
④風速が40m/s以上
*画像提供:気象庁
風の強さは、予報用語でこれまでと同様に「猛烈な風」です。
- 風速40m/s以上:時速約140㎞~
風速40m/sを超えると、家は倒壊するものが出てくる上、木造よりも頑丈な鉄骨構造物でさえ変形するものが出てきます。
そのため、この風速になれば家の中にいたとしても、安全とは言えない状況です。このクラスの台風が接近・上陸した場合は、早急な避難が求められるでしょう。
画像参照先:気象庁HP・リーフレット「雨と風(雨と風の階級表)」
台風による家への主な被害事例
今紹介したように、台風で家が大きな被害を受けることになるのは、風速が20m/sを超えてからです。
風速が40m/sを超えると家は倒壊の危険があるため、このクラスの台風が接近・上陸した場合には、指定避難所に避難するようにしてください。
ここではさらに台風被害について理解してもらうため、家の台風被害にはどのようなものがあるのか、主な被害事例を挙げて紹介していくことにします。
①風で飛んできたものが家に当たる
先に紹介したように、家の台風被害でまず起こるのが、飛散物による被害です。
新築であろうと、鉄骨構造物であろうと、家の強度に関係なく、台風が接近すればすべての家がこの被害を受けることになります。そのため台風被害の中で、最も多い被害と言われています。
風速20m/sを超えれば、屋根瓦が飛散する家も出てくるため、それが家に当たって破損してしまいますが、飛散物で最も多いのは屋根瓦です。
飛散物はどこから飛んでくるかわかりませんし、風速が強くなるほど飛んで当たる威力が強くなるので、家への被害もその分大きくなってしまいます。
屋根瓦くらいと侮ることはできません。窓ガラスが割れることくらいは当たり前で、瓦が壁に激突して大穴が開いたという事例もあるので注意が必要す。
また窓ガラスを割って飛んできた瓦が、人体に激突することも考えられます。
飛散物から逃れることはできないので、家にはまず飛散物を出さない、飛散物が当たっても被害を最小限に防げる対策が必要になってくるでしょう。
②家の劣化部分から雨漏り
強い暴風雨によって雨漏り被害に遭うこともありますが、台風による雨漏り被害で最も多いのは、家の経年劣化によるものだと言われています。
経年劣化による雨漏りで考えられる箇所は屋根とサッシです。劣化しているところから、雨が入ってきて雨漏りを引き起こすというわけですね。
ふだんは家の劣化に気づかず、台風で雨漏りが起こって、初めて家の劣化部分に気が付く人も少なくありません。
雨漏りを起こす原因としては、下記の経年劣化が考えられます。
- 壁とサッシの間に隙間ができている
- サッシ素材が劣化している
- 屋根の防水シートが劣化やひび割れ
- 屋根瓦と屋根瓦の間に隙間がある
- 屋根瓦に浮きがある
- 屋根瓦の割れやめくれ
台風時の雨漏りを事前に防ぐためには、これら部分の定期的なメンテナンスが必要になってくるでしょう。
➂大雨で家に浸水
次に考えられるのが、大雨による浸水被害です。どのような浸水被害が起こるのかを、ケース別に分けて紹介していきます。
まずは道路よりも低い位置に家を建築しているケースです。この場合は、道路からの浸水が考えられます。
*画像提供:気象庁
そして、次に考えられるのが、大雨で河川の水位が上がることで、水があふれて決壊する「外水氾濫」のケースです。
*画像提供:気象庁HP・テキスト「大雨や台風に備えて」
居住地は平野部のなどの土地の低いところが多いため、河川の近くでは、外水氾濫による浸水被害に遭う可能性が高くなります。
また次に考えられるのは、「内水氾濫」による浸水被害のケースです。
近年はアスファルトやコンクリートで道が舗装が施されているため、道に浸水性がありません。
そのためゲリラ豪雨のような局所的豪雨に見舞われると、下水道の排水処理が追い付かず、下水道の配管から雨水があふれてしまい、浸水被害に見舞われます。
また台風で浸水被害に遭うのは大雨ばかりが原因とは限りません。高潮による浸水被害も考えられるのです。
東京都港湾局の発表では、風速65m/sを超えるスーパー台風が東京都を襲った場合、23区中の3割が高潮による浸水被害に見舞われる可能性があると警鐘を鳴らしています。
台風が海面を通過する時には、海面の潮位は大きく上昇するため、大雨による浸水ではなく、高潮による浸水被害も発生するというわけです。
沿岸部に住んでいる人は、高潮による浸水被害にも注意が必要になってきます。
台風被害に強い家って?
ここまで紹介した台風の被害事例を見ても分かるように、台風という自然を相手にするため、台風被害を回避することはまず不可能です。
できることといえば、台風被害を最小限に食い止めることぐらいでしょう。そしてその対策として考えられるのが、家に台風に耐える工夫を施すことです。
ここでは台風に強い家には、どのような条件が求められるのかを解説します。自分の家がいくつの条件をクリアしているのかを、確認しながら読み進めていきましょう。
飛散物を出さない家造り
先に話した通り、台風被害で最も多いのは、風で飛ばされたきた飛散物によるものです。
よって、まずはこの飛散物の被害を出さないために、飛散物を出さない家造り対策を家に施す必要があります。
まず必要なのは屋根瓦対策
家が被害に遭う飛散物は、その大半が屋根瓦です。
実は台風で屋根瓦が飛ばされる被害に遭った家に共通しているのは、昔ながらの屋根瓦だったという点で、スレート瓦は被害が少なかったという調査結果が、千葉県館山市の自治体被害認定調査員から出ています。
昔ながらの屋根瓦は重ねた間に隙間ができやすい上、重く空気抵抗を受けやすく台風による暴風で飛ばされやすいのだそうです。
これに対してスレート瓦は隙間がなく、軽いため空気抵抗を受けにくく台風の暴風でも飛ばされにくいという特性があります。
築浅の家でも昔ながらの屋根瓦の場合、被害が大きかったことからも、この見解は間違いない事実でしょう。
屋根瓦をスレート瓦に総葺き替えするとなれば、工事費込みで50万円から100万円くらいの費用が掛かります。
決して安くない費用ですから、安易におすすめはできませんが、台風で屋根瓦を飛ばされて、大損害を被ることを考慮すれば、十分に検討に値するでしょう。
カーポートにも注意して!
また、カーポートを設置している場合は、カーポートの耐風圧強度の確認が必要です。
最新のものであれば耐風圧強度が風速40m/sを超えるものも出ています。ですが近年の台風は風速50m/sクラスのものも発生しているので、このクラスの台風が直撃すれば、カーポートの飛散を防ぐことはできません。
まずは設置しているカーポートの耐風圧強度を確認し、十分でない場合は耐風圧強度の強いものに買い替える、またはサポート柱を設置するなどの対応を取るようにしてください。
飛散物から守れる家造り
次に考えなければならないのが、飛散物から守れる家造りです。
家は台風時の飛散物から逃げることはできないので、飛散物から守れる家造りは台風対策で一番の要になってきます。
台風に強い建物の構造は?
日本の新築戸建住宅の大半は木造建築です。
近年は新しい工法が次々に出ているので、耐震性については木造でも鉄筋造でもあまり変わりはありません。
しかし、防風性に関しては、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の方が圧倒的に強い強度を誇ります。
しかも鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の家は、フラットルーフ、つまり屋根瓦を持たない形状のものが多いため、飛散物を出さないというメリットも持ち合わせるのです。
またこのフラットルーフは木造に用いられる勾配屋根よりも、風圧抵抗が小さいため、防風性が高くなってきます。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の家は、木造よりも確実に台風被害に強い家というわけです。
木造のように吸湿性は高くなく、建築費用が格段高額になってきますが、台風から家を守れるという点においては、木造よりもおすすめになってくるでしょう。
立地条件
台風に強い家を造るためには家の構造も重要ですが、もう1つ考えなければならないのが立地条件です。
台風被害を避ける方法で一番効果があるのは、強風を受けにくい場所に家を建てることでしょう。
平坦で周囲に風通りを防ぐ障害物がない方が、家が受ける風圧は確実に大きくなってきます。
つまり、密集地に家がある方が、家が受ける風圧は小さくなってくるのです。そして、自分の家が建っている場所が、どれくらいの風圧を受けるのかの指標となるのが地表面粗度区分です。
地表面粗度区分は元来、都市化の状況を確認する際の指標で、下記のように4つの区分に分類されています。
- 地表面粗度区分Ⅰ:都市計画区域外で極めて平坦で障害物がない(海岸沿い等)
- 地表面粗度区分Ⅱ:都市計画区域外でⅠの区域外、またはⅣの区域外で海岸線または湖岸線までの距離が500m以内(田畑や建物が散在しているところ等)
- 地表面粗度区分Ⅲ:Ⅰ、Ⅱ、Ⅳ以外の区域(通常の市街地)
- 地表面粗度区分Ⅳ:都市計画区域内で、特定行政庁が極めて都市化が著しいと定めた地域(大都市)
同仕様の家を建てた場合、Ⅰが強風によるダメージが最も大きく、Ⅳが最も小さい地域になります。
この地表面粗度区分は都道府県や市町村で区分されているので、土地や家を購入する際には、必ず確認するようにしてください。
またもう1つの台風被害となる浸水被害も、この立地条件が大きく関係してきます。以前は川や海だった場所を埋め立てて、住宅地とされているケースがあるからです。
海や川を埋め立てた土地は少しの雨でも浸水しやすいため、台風による大雨だと確実に浸水被害に遭うことになるでしょう。
元々どんな土地だったかは、国土地理院のHPで確認することができますし、住んでいる地域の自治体が出しているハザードマップで浸水のしやすさを確認することもできます。
また、台風被害を受けた土地は上記の被害に遭うだけでなく、地価も大きく下落してしまいます。土地や家を購入する際には、それらを忘れずに確認するようにしましょう
台風に強い家は沖縄から学べ!
日本で毎年台風に見舞われる地域といえば沖縄です。沖縄では夏になると毎年台風が直撃します。
そのため、実は沖縄では昔から台風被害を回避するための家造りが行われているのです。
沖縄の伝統的な家として有名なのが「かーらやー(瓦家)」ですが、冒頭の写真を見てもら手も分かるように、このかーらやーには、下記のような台風対策が講じられています。
- 屋根瓦を漆喰で固める
- 家の周囲にサンゴでできた石垣を軒の高さで巡らす
- フクギを防風林として植樹する
また現在でも家の台風対策には余念がありません。日本では木造の新築戸建が圧倒的に多いのですが、沖縄県では鉄筋コンクリート造(RC造)の新築戸建が大半を占めているのです。
下記は少し古いのですが2007年の戸建住宅着工数で、全国と沖縄県の木造数とコンクリート造数(RC造)を示した表になります。
全国 | 沖縄県 | |
新築戸建住宅戸数 | 439,743 | 2,204 |
新築木造戸建住宅戸数 | 375,285 | 146 |
新築戸建住宅戸数に占める割合 | 85.3% | 6.6% |
新築RC造戸建住宅戸数 | 5,255 | 1,524 |
新築戸建住宅戸数に占める割合 | 1.2% | 69.1% |
全国的に見ると木造が圧倒的に多いのですが、沖縄ではその数値は逆転し、コンクリート造(RC造)が大半を占めていることがわかります。
木造よりも圧倒的に建築費用が高額になる、コンクリート造数(RC造)を敢えて選んでいるのは、間違いなく台風に備えてのことでしょう。
沖縄県の人たちの、台風対策に対する意識の高さを感じますね。
台風被害で損害賠償義務は生じるのか?
「台風の時にあなたの家の屋根瓦が飛んで、窓ガラスは割れるは、壁に大穴が開くはで、家が大きな被害があった。」「改修費用を負担してくれ!」と、被害に遭った家の人から言われたら皆さんはどうしますか?
中には責任を感じて、賠償金を支払わなければならないと考える人もいるでしょう。
しかし、賠償金請求ができるのは個人の故意または過失によって、第三者が損害を受けた場合のみです。
そのため自然災害による損害は、その原因が他人にあるとしても損害賠償責任を問われることはありません。
ですが注意しなければならないのは、過失が認められた場合です。この場合はいくら台風が原因だと言っても、損害賠償義務を負うことになってしまいます。
民法第717条から考察する賠償義務
損害賠償責任については、民法第717条に下記のように規定されています。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
工作物は家、占有者は住んでいる人になり、瑕疵とは通常備えておくべき性質や設備を指します。
つまり、台風で家の設置物が他人に損害を与えた場合、家に備えておくべき安全性能が欠けていた状態なら損害賠償義務が発生するというわけです。
それでは損害賠償義務を負う瑕疵とはどのような状態を指すのでしょうか。
1978年の「風速14.5m/s達しないのに屋根瓦が飛散した」という事例の判例では、家に瑕疵がないということは、一般的に予測できる強風に対して耐えられるだけの性能を備えていることと解釈した上で、屋根瓦が飛散した家の所有者に損害賠償責任を認めました。
先にも紹介したように、気象庁の一般予測では屋根瓦が飛散する際の風速は風速30m/sから40m/sの風が吹いた時と予測されています。
本来備えておくべき安全性を備えていなかったため、屋根瓦が飛散する風速に達していない風で屋根瓦が飛散したと判断した判例です。
このように日ごろのメンテナンスを欠かすと自分の家が被害を受けるだけでなく、他人の家に被害を与えた場合には損害賠償請求されてしまいます。
台風被害に遭わない、遭わせないためにも、定期的にメンテナンスを実施するようにしてください。
賃貸物件だから関係ないは通用しない!
台風で屋根瓦が飛散して、他人の家に被害を出した損害賠償責任が問われたが、賃貸物件だから住んでいる自分に賠償責任はない。支払う責任があるのは大家だと、考える人は多いことでしょう。
しかし、この考えは通用しません。民法第717条で損害賠償義務を負うのは、「工作物の占有者」とされているからです。
賃貸物件の場合、この占有者は賃借人となる住人となるため、損害賠償義務を負うのは大家ではなく住人になります。
しかし、先ほどの民法第717条にはまだ続きがあり、損害賠償責任義務を負う対象者について下記の通り規定しています。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
大家に台風で被害を受けそうな箇所の補修や改修を申し出ていれば、損害賠償責任義務を回避することができるのです。
賃貸物件であっても住んでいる人は台風に備えて、家の劣化の確認義務を負っているというわけですね。
これは知らない人も多いでしょうから、忘れず覚えておくようにしましょう。
台風被害に備えて火災保険には加入しておこう!
ここまで話したように他人の家のせいで、台風被害に遭うのは決して珍しい話ではないことは、よく理解してもらえたことでしょう。
被害を受ける元凶となる他人の家に瑕疵があれば損害賠償請求をすることができますが、そうでなければ改修費用は自己負担となってしまいます。
被害状況によっては、多額の費用が発生することもあるでしょう。そのリスクを回避するのにおすすめなのが、火災保険への加入です。
火災保険と聞けば火災だけの補償だと思っている人もいるでしょうが、通常の保険会社が販売している火災保険は、下記災害が基本補償として販売されています。
- 火災
- 風災
- 水災
- 雪災
- ひょう災
この中の風災と水災が台風被害時の補償に該当します。ですが注意してもらいたのが水災補償です。
火災保険に加入する人の中には、保険料が高くなることを理由に、水災補償を外して契約する人が少なくありません。
浸水被害を全く受けない地域の場合には、水災補償を外して契約するのもありですが、そうでない地域に住んでいる場合は、外さず契約するようにしてください。
外したはいいが浸水被害に逢ってしまったでは、保険に加入した意味がなくなってしまいます。保険加入時には本当に火災補償が不要なのかを、十分に検討するようにしてください。
台風被害に遭った時にとるべき行動
最後は台風被害に遭った時に、取るべき正しい行動についてお教えしておきます。台風被害なんてもう慣れっこという人もいるでしょうが、大半の人はそうそうある体験ではありません。
初めてという人も多いでしょう。人は日ごろ慣れない体験をすると、パニックって右往左往してしまい、どうしたらいいのか分からなくなってしまいます。
台風の場合には、正しい行動がとれなかったことで、後々トラブルに見舞われることもありますし、人体を危険にさらす可能性もあるので注意が必要です。
よく目を通して、緊急時に正しい行動を取れるようにしてください。
緊急時には消防署へ連絡を!
台風が去り、台風被害を受けて家が壊れてしまう事態に落ちいた場合は、工務店等の業者に連絡するよりも、まずは消防署に連絡するようにしてください。
工務店等の業者に連絡しても、台風被害に遭った家が多いため、直ぐに来てくれることはありません。消防署を呼ぶのは被害状況にもよりますが、屋根瓦が落ちそうなど、危険性を感じる場合は絶対に消防車です。
自分で確認しようとすれば、家の破損や倒壊でけがを負うことにもなりかねません。絶対に自分で行わず、専門家の手に委ねるようにしてください。
大家や管理会社へ連絡を!
賃貸物件に住んでいて、台風被害に遭った場合は、まずは大家や管理会社に連絡を入れるようにしましょう。
後になって連絡しても、本当に台風被害によるものなのかと疑われる等、トラブルの元になってしまいます。
そうならないためにも、被害箇所を写メ等で写しておき、早急に大家や管理会社に被害状況をチェックしてもらうようにしてください。
最悪な場合は避難を!
台風の大きさによっては、避難勧告が出る場合もあります。避難勧告が出るような状況で家に中にいると、怪我を負うことにもなりかねませんし、命を危険にさらす恐れもあるでしょう。
避難勧告が出た時に迅速な移動ができるよう指定避難場所は事前にしっかりと確認し、この状況を考慮して避難用品を常備しておくことをおすすめします。
今は必要な非常食や避難用品がセットになって、リュックに詰め込まれた避難セットが20,000円ほどで販売されています。
非常食は5年といった長期保存が効くものが大半ですから、台風が接近・上陸しやすい地域に住んでいる人は、購入しておくことをおすすめします。
「台風から家を守るためにできる対策とは?」のまとめ
今回は台風被害から家を守る対策について解説してきました。台風被害を最小限に抑えるためには、まず家の劣化状況を把握する必要があります。定期的なメンテナンスは必須条件です。
また、今回の記事を読んで、台風に強い家に買い換えようと考えた人も少なくないでしょう。台風被害に遭うことが多い地域で、予算に余裕があるなら、これは一番おすすめの台風対策です。
その際に住んでいる家を売却をするなら、一括査定サービスの利用をおすすめします。下記のマンション売却ガイドというサイトなら全国1,700社以上の優良な不動産会社の中から、最大6社へ一括査定見積もりを依頼できます。
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