台風被害を受けた土地はどうなる?地価はどれくらい下落する?

台風被害を受けた土地はどうなる?地価はどれくらい下落する?

地価はその土地にどれだけの需要があるのかが大きく影響してきます。しかし、台風被害を受けると、地価は大きく影響を受けることになります。

仮に地価の高い地域であっても、台風被害に遭えば確実に地価は下落してしまうのです。そこで今回は台風被害を受けた土地の地価がどうなるのか、実際のデータを元に検証しつつ、下落した地価が元通りになる可能性についても解説します。

台風被害を受けた土地の地価はどうなる?

台風被害_土地_地価はどうなる?

それではまずは台風被害を受けた土地の地価が、実際に下落傾向を見せているのか、その事実を知ることがが重要です。

国土交通省が毎年7月1日時点における土地の標準価格を判定した「都道府県地価調査(令和元年版)」のデータから見ていくことにしましょう。

参照先:国土交通省・令和元年都道府県地価調査

被災地の地価は下落する

下記の表は「都道府県地価調査(令和元年版)」の中で公表されている、住宅地の下落順位表(全国)です。

順位 都道府県 2018年 2019年 変動率
1位 岡山県倉敷市真備町 34,100 28,600 △16.1%
2位 広島県三原市本郷町 19,000 16,000 △15.8%
3位 北海道美唄市東明 2,600 2,350 △9.6%
4位 北海道雨竜郡沼田町 4,400 4,000 △9.1%
5位 北海道深川市納内町 3,600 3,300 △8.3%
6位 北海道美唄市東3条 5,600 5,150 △8.0%
7位 北海道夕張市沼ノ沢 1,900 1,750 △7.9%
8位 北海道雨竜郡妹背牛町 5,900 5,450 △7.6%
9位 兵庫県宍栗市千種町 17,200 15,900 △7.6%
10位 北海道雨竜郡沼田町 5,300 4,900 △7.5%

*基準地価格単位(円/㎡)

最も多くランクインしている北海道に関しては、2018年9月の北海道胆振東部地震被害の影響もありますが、地元経済の低迷が影響した人口減少と高齢が地価を下げている原因と言われています。

しかし、残り3つは全てが確実に台風被害による影響です。

  • 岡山県倉敷市真備町:2018年6月の台風6号による豪雨被害
  • 広島県三原市本郷町:2018年6月の台風6号による豪雨被害
  • 兵庫県宍栗市千種町:2018年7月の台風7号による豪雨被害

特に1年間で15.0%以上もの下落を示した、岡山県と広島市の地価には驚きです。台風被害による地価下落は、被害の大きさが大きく影響していきます。その点で言えば、この2県の台風被害がいかに大きかったのかは、容易に想像がつきますね。

このように地価は台風に限らず、自然災害で被害を受けると確実に下落傾向を示します。

被害状況が大きければ大きいほど、土地の価値が下がってしまうというわけです。それでは上位2つとなる倉敷市真備町と三原市本郷町の被害状況がどうだったのかを簡単に見てみましょう。

倉敷市真備町の被害状況

倉敷市および真備町の被害状況は下記の通りです。

被害 被害状況
死亡・行方不明 64名(倉敷市52名うち真備町51名)
建物全壊 4,462棟(倉敷市4,274棟)
建物半壊 3,314棟(倉敷市1,064棟)
床上浸水 2,799棟(倉敷市0棟、真備町不明)
床下浸水 5,938棟(倉敷市1棟、真備町不明)
救助者数 約3,280名(約2,350名)
商工被害額 約210億円
農林水産関連被害 約900ha・約196億円
土木被害金額 約302億円

参照先:岡山県HP

床上浸水・床下浸水ともに真備町は不明となっていますが、浸水被害がなかったということではありません。

真備町では狭い地域で多くの破堤が起こり、実際の浸水範囲は1,200haにも及びました。(*破堤とは堤防が決壊して、増水した川の水が内地に流れ出すことを指します。)

この多数の破堤により内水氾濫は実態がつかめないほど多数発生し、床上浸水・床下浸水が多数あったのが事実です。

建物半壊が県内の3割ほどですが、建物全壊は倉敷市が大半を占めていることからも被害の甚大さがうかがえます。

三原市本郷町の被害状況

三原市および本郷町の被害状況は下記の通りです。

被害 被害状況
死亡 8名(本郷町3名)
負傷者 10名(本郷町5名)
避難者数 2,031名(本郷町525名)
浸水害棟数 2,575棟(本郷町1,688棟)
土砂災害損壊棟数 399棟(本郷町51棟)
道路被害 1,114箇所40億3,500万円(本郷町199箇所17億2,300万円)
河川被害 442箇所21億1,600万円(本郷町112箇所9億3,300万円)
都市施設被害 17億4,170万円
農林水産被害(施設・山林) 1,798箇所(本郷町226箇所)
農作物被害 6,033万円
畜産物被害 989万円
造林地等被害 973万円

参照先:三原市HP・災害対策本部(水防本部)及び被害状況等について

被害は倉敷市真備町より規模は小さくはありますが、上記の数値を見ると三原市の中でも本郷町の被害の大きさがうかがえますね。

岡山県では浸水被害が甚大でしたが、広島県では土砂被害が甚大でした。しかし、本郷町では浸水害棟数を見ても分かるように浸水被害が高くなっています。

台風に被災した土地の地価が下落する理由とは?

台風被害_土地_地価_なぜ下落する?

それでは地価が台風被害に遭うと、なぜ土地の地価が下落するのでしょうか?

ここでは被災地の地価が下落する、その理由について検証していきます。

地価に影響を及ぼす最大の要因は人口

地価が下落する要因は様々なものが考えられますが、最大の要因となるのは人口の減少です。

人が地域に根差して生活していく上で、欠かすことができないのは住居です。

そのため地域に住む人口が多ければ多いほど不動産需要は高くなり、逆に人口が少なければ少ないほど不動産需要は低くなります。

現在、社会問題になっている「空き家問題」は、人口減少を抑えることができなかった最悪の結果とも言えるでしょう。

そこでここでは、先ほどの「都道府県地価調査(令和元年版)」のデータを元に、「人口減少が地価下落を引き起こす」という仮説を実証していくことにします。

東京圏で見る地価下落が大きい地域の特徴

下記は「都道府県地価調査(令和元年版)」の中で公表されている、東京圏の住宅地下落率順位表です。

順位 都道府県 2018年 2019年 変動率
1位 神奈川県三浦市尾上町 56,000 52,300 △6.6%
2位 神奈川県横須賀市武5丁目 79,500 74,500 △6.3%
3位 神奈川県横須賀市林1丁目 83,500 78,500 △6.0%
4位 神奈川県横須賀市長井5丁目 63,800 60,000 △6.0%
5位 神奈川県横須賀長坂3丁目 74,000 69,600 △5.9%
6位 神奈川県横須賀市二葉2丁目 104,000 98,000 △5.8%
7位 神奈川県横須賀市鷹取4丁目 123,000 116,000 △5.7%
8位 神奈川県横須賀市栗田1丁目 95,500 90,300 △5.4%
9位 神奈川県愛甲郡愛川町 36,800 34,800 △5.4%
10位 千葉県野田市山崎 63,200 59,800 △5.4%

*基準地価格単位(円/㎡)

神奈川県の地価は全体でみると年々、少しずつではありますが、上昇傾向の強い圏域になります。

それではなぜ横須賀市に限って、このように地価が下降傾向にあるのでしょうか。横須賀市の特徴として挙げられるのは下記の2つです。

  • 人口の減少が続いている
  • 人が移り住んでこない

国勢調査によれば、横須賀市の人口は1990年の433,358人をピークに年々減少傾向にあり、2015年には406,586人にまで減少しています。

地域 人口(人) 2010年~2015年 面積(㎢) 人口密度(人/㎢)
2010年 2015年 増減数 増減率
全国 128,057,352 127,094,745 -962,607 -0.75 337,970.75 336.3
神奈川県 9,048,302 9,126,214 77,912 0.86 2,415.83 3,777.7
横須賀市 418,325 406,586 -11,739 -2.88 100.83 4,032.4

*参照先:横須賀市HP・平成27年国勢調査結果報告

また住民基本台帳登載人口を元にした人口推移推計によれば、この人口減少は止むことなく2052年には269,426人にまで減少すると予測されているのです。

これでは土地を求める人が年々減少し続けていくのですから、地価の下落傾向にストップがかからないのも当然のことでしょう。

横須賀市の人口減少にストップがかからない理由

横須賀市に人が移り住んでこない理由としては、下記の3点が挙げられます。

  • 都内への通勤が不自由
  • 駅周辺の開発が進んでいない
  • 公共施設の削減が進められている

横須賀市から都心への通勤は、品川止まりの京急線のみのため乗り換えが前提です。

そのため決して通勤の便がいいとは言えず、郊外エリアへの移住を検討している人から敬遠されてしまうのでしょう。

その上、横須賀市の財政難から駅周辺の開発が進まないどころか、公共施設の削減が進められているのも大きなネックです。

同じ県内でも人口増加が進んでいる藤沢市と海老名市では、近年には駅近郊に大型ショッピングモールが建設されています。

しかし、横須賀市にあるのは建設から20年以上経過した「モアーズシティ」や「ショッパーズプラザ横須賀」だけです。

買い物先に不自由はないでしょうが、古びた施設に移住しようと思うほどの魅力は感じられませんよね。そして魅力的な街でなければ、移り住んでくる人はいません。

しかも横須賀市の施設配置適正化計画によれば、全体の約3分の1となる130もの施設が統廃合される予定です。

施設名 廃止 縮小・再編成 合計
コミュニティーセンター等 15 0 15
図書館・美術館・生涯学習センター 3 1 4
公園・プール・体育館 9 0 9
勤労福祉会館 3 0 3
小学校・中学校 9 33 42
幼稚園・保育園 2 11 13
老人福祉センター 10 0 10

*参照先:横須賀市施設配置適正化計画

こうなると幼稚園や保育園が減らされれば待機児童が出てくる懸念がある上、小学校や中学校が減らされれば通学が困難になることも懸念されます。

都心から郊外への移住を考えている人の多くは、良好な環境での子育てとしている家庭が大半です。

となればそう思えないところへ、移り住もうという人はいませんよね。横須賀市の地価下落をストップするには自治体主導による魅力的な街づくりに掛かっていると言っても過言ではないでしょう。

大阪圏で見る地価下落が大きい地域の特徴

台風被害_土地_地価_下落が大きい土地の特徴

下記は「都道府県地価調査(令和元年版)」の中で公表されている、大阪圏の住宅地下落率順位表です。

順位 都道府県 住所 2018年 2019年 変動率
1位 兵庫県 神戸市長田区高東町 44,500 41,500 △6.7%
2位 奈良県 生駒郡平群町 44,300 42,000 △5.2%
3位 大阪府 泉南郡岬町多奈川 19,400 18,400 △5.2%
4位 大阪府 泉南郡岬町深日 27,300 25,900 △5.1%
5位 京都府 木津川市南加茂台 46,800 44,500 △4.9%
6位 奈良県 生駒郡三郷町城山台 51,300 48,900 △4.7%
7位 奈良県 生駒郡三郷町三室 47,100 44,900 △4.7%
8位 兵庫県 神戸市長田区西山町 69,000 66,000 △4.3%
9位 大阪府 泉南郡岬町淡輪3026 39,800 38,200 △4.0%
10位 大阪府 泉南郡岬町淡輪3631 37,600 36,100 △4.0%

*基準地価格単位(円/㎡)

最も多くランクインしているのが大阪府と奈良県ですが、地価がなぜこうも下落しているのでしょうか。

この理由も先ほどの神奈川県横須賀市と同様で、その地域に下記特徴が見られるからです。

  • 人口の減少が続いている
  • 人が移り住んでこない
大阪府泉南郡岬町の人口減少にストップがかからない理由

大阪府でランクインしているその全てが泉南郡岬町です。

この泉南郡岬町は市街地から離れた地域の住宅地となるため、利便性の悪さが影響して人口減少が止まらず需要が低迷しています。これが、毎年地価下落が続いている一番の理由です。

実際に泉南郡岬町の2010年から2015年までの人口推移を見てみましょう。

地域 人口(人) 2010年~2015年
2010年 2015年 増減数 増減率
全国 128,057,352 127,094,745 -962,607 -0.75
大阪府 8,865,245 8,839,496 ―25,776 -0.3
岬町 17,504 15,938 -1,566 -8.9

*参照先:岬町HP・国勢調査

約23,000人の1980年をピークに、年々、人口は減っていき、35年間の人口減少数は約7,000人にも上っています。

この人口減少の理由は、やはりこの地域の生活環境によるところが大きいようです。実際に不動産総合サイトgooで泉南郡岬町に住んでいる人の口コミを見ると、生活環境に不便さを感じる声が実に多く見られました。

基本的にレストランは無く、美味しい個人店もありません。コンビニか道の駅の食堂みたいなのしかありませんので、車で隣町まで移動しなければなりません。

淡輪駅は各駅停車のみなので、難波に行くには尾崎駅で急行に乗り換えなければなりません。急行も約30分に1本程度なので、少し不便さは感じます。

コンビニと大型スーパーが1つありますがしっかり買い物をしたい場合は電車に乗るか車に乗ってどこかに行くしかありません。スーパーも品ぞろえがあまりよくない時もあるので基本的に買い物は町から出ないとできないと思ったほうがいいです。そのため車が必須アイテムになってきます。

遊ぶところといえば大きな公園が1つと海と山と川等なので、アリオなどの屋内で遊べる所がありません。ショッピングや映画鑑賞などができず、おしゃべりするのに集まったりするなどができません。

*参照先:不動産総合サイトgoo

海や川、山に囲まれているため、自然に囲まれた生活ができるというメリットはありますが生活していくには不便さが感じられます。

人口流出が止まらず人が移り住んでこないのは、この生活満足度の低さが一番の理由でしょう。

奈良県生駒郡の人口減少にストップがかからない理由

また、大阪府に次いで多いのが奈良県で、こちらも全てが生駒郡です。生駒郡平群町の方は、山々に囲まれた地域で傾斜地系の住宅も多く、居住環境の悪さが人口減少を引き起こしています。

地域 人口(人) 2010年~2015年 面積(㎢) 人口密度(人/㎢)
2010年 2015年 増減数 増減率
全国 128,057,352 127,094,745 -962,607 -0.75 337,970.75 336.3
奈良県 1,421,310 1,399,978 ―21,332 ―1.5 3,691.09 379.3
平群町 20,286 19,712 -574 -2.8 23.90 824.8

*参照先:平成22年国勢調査・速報人口の概要・奈良県

生駒郡平群町は人口増加を図るため安値大量供給を行いましたが、その効果はなく供給過多状態が続いたため、この対策が逆にあだとなって地価の下落を増長したのです。

それでは先ほどと同様に不動産総合サイトgooから、生駒郡平群町に住んでいる人の口コミから街の様子を見てみましょう。

人があまりいないので、トラブルらしいトラブルはほとんどありません。また、交通量も少ないので、自動車事故の心配はいりません。

自然と住宅がほとんどの町なので、日々の買い物に行くような店、スーパーやデパートがほとんどありません。

田舎なので、飲食店や居酒屋がほとんどありません。騒々しいほどの繁華街も嫌ですが、もう少しあったら良いなと思います。

*参照先:不動産総合情報サイトgoo

人口が少なく住んでいいる人が全員顔見知りだという声もあったため、新しい人が移り住んでこない地域だということでしょう。

人口流入がなく人口流出が進んでいる状態ですから、今後も人口減少を抑えられる要因は見られませんね。

また、もう一方の三郷町は2015年をピークとし、人口は年々減少傾向にあります。

地域 人口(人) 2010年~2015年 面積(㎢) 人口密度(人/㎢)
2010年 2015年 増減数 増減率
全国 128,057,352 127,094,745 -962,607 -0.75 337,970.75 336.3
奈良県 1,421,310 1,399,978 ―21,332 ―1.5 3,691.09 379.3
三郷町 23,446 23,062 384 1.7 8.80 2,664.3

*参照先:平成22年国勢調査・速報人口の概要・奈良県

上記のように前回の国勢調査では若干の人口増加が見られますが、三郷町HPで公表している住民基本台帳からの人口数では2015年までは国勢調査と同様に若干の人口増加が続いていました。

しかし、2015年をピークとし、それ以降は着実に人口減少が起こっています。

年度 人口総数 男性人口 女性人口 世帯数
2015年 23,200 10,987 12,213 10,291
2016年 23,126 10,962 12,164 10,328
2018年 23,086 10,954 12,132 10,399
2019年 22,999 10,911 12,088 10,452

参照先:三郷町HP

不動産総合サイトgooの住んでいる人の口コミから街の様子を確認してみると、平群町と同じような意見が見られました。

病院は少ないです。 内科はありますが、そのほかの専門的な病気を見てもらうためには、車を走らせて遠くに行かないといけません。

ンビニエンスストアなどは近辺にあるので便利ですが、CDショップや本屋さん、服屋さんなど生活用品以外の買い物ができません。

最寄駅には各駅停車の電車しか止まらないことから、大阪まで出る際にはターミナル駅を経由する必要があるなど不便です。

参照先:不動産総合情報サイトgoo

人口が減少している理由は、平群町と同じようですね。今回は東京圏と大阪圏を例に挙げて、地価下落となる理由を見ていきましたが、やはり地価が下落する原因は人口減少によるものであることは明白です。

人口が減少すれば、供給過多状態に陥りやすいので、当然のことといえば当然のことですよね。

地価が上昇傾向にある都道府県においても、地域によっては人口減少を引き起こし、地価が下落するところも出ています。今回話に出てきた横須賀市がその最たる例と言えるでしょう。

地価の高い都道府県であれば、同じように地価が高いというわけではありません。この点は勘違いしないよう、よく覚えておいてください。

台風被害で下落した土地の地価はどうなるのか?

台風被害_土地_地価_下落を受けた土地はどうなる?

台風被害で地価が下落するのは、「都道府県地価調査(令和元年版)」の住宅地の下落順位表(全国)から見ても歴然です。

順位 都道府県 住所 2018年 2019年 変動率
1位 岡山県 倉敷市真備町 34,100 28,600 △16.1%
2位 広島県 三原市本郷町 19,000 16,000 △15.8%

2018年の西日本豪雨による被害が甚大だった、倉敷市真備町と三原市本郷町が全国下落順位のトップに並んでいるのですから、疑う余地はありません。

地価の下落幅は台風被害の大きさによって異なります。大きいほど復旧・復興が遅れるため、人口流出を招きやすく、人口流入を妨げるからです。

つまり、台風被害で地価が下落したとしても、復旧・復興が進みさえすれば地価の下落を抑えられ、その後の地価上昇だって見込めるというわけです。

台風被害による地価下落は土地が被害を受けたから、土地自体の価値が下がるわけではありません。

先に話したように、人口減少によって需給バランスが崩れたことが理由です。人口流出によって需要が減り、その結果、地価の下落が引き起こされるのです。となれば被災によって下落した地価が、再び元に戻ることも不可能ではありません。

これは被害の大きさと復旧・復興にかかる時間しだいというところでしょう。復旧・復興が進めば、人口流出には歯止めが効きますし。流出した人口も戻ってくるので地価の上昇が望めます。

ですが進まなければ人口流出は加速し、流出した人口が戻ってくることもなく、地価の下落を歯止めすることはできません。

つまり、被災後の地価は復旧・復興度合いによって、このどちらかのケースに向かって、二極化が進むことになってくるというわけです。

被災後の地価変動は二極化する

それでは実際に例を挙げていきながら、被災後の復旧・復興が地価にどのような影響を与えるのかを見ていくことにしましょう。

地価が反転したケース

まずは被災後も復旧・復興が進み、順調に地価が上昇している例です。

熊本地震では震度6以上の余震が5回、震度1以上の全余震回数が4,200回を超え、下記被害に見舞われました。

  • 避難者最大:16,000人
  • 建物の全半壊数:約6,200棟

特に建物は一部損壊を含めると、全体の98%を超える被害を被りました。

また、その他施設も甚大な被害に見舞われたため、本当に都市機能が崩壊した状態に追い込まれたのです。

  • 道路
  • 上下水道のライフライン
  • 役場庁舎
  • 総合体育館を初めとする多くの公共施設

しかし、益城町では復旧・復興が順調に進んだため、被災後も下記のように年々地価が上昇しています。

年度 地価公示価格(坪単価)
2016年 125,200円
2017年 125,300円
2018年 129,200円
2019年 132,600円

このように被災しても、順調に復旧・復興が進めば人口流出は防げるため、地価は順調に上昇傾向を描くようになるというわけです。

その点において地価の動きは、その地域の経済状態を測るバロメーターとも言えるでしょう。

地価が下落し続けているケース

次は被災後も復旧・復興が進まず、地価が下落し続けている例です。熊本地震では揺れによる被害が甚大でしたが、被害の原因となったのは揺れによるものだけではありません。

被災地は阿蘇山からの火山灰が地盤のところが多く、この脆い地盤が影響して、土砂流や地滑り、がけ崩れによる被害が150か所以上で発生しました。

その中でも特に大きな被害を受けたのが、山の尾根が700mにわたって崩れ、土砂崩れを引き起こした熊本県阿蘇郡南阿蘇村です。

この土砂崩れは過去最大規模で50㎡もの大きさを記録しており、この土砂災害では建物だけでなく、阿蘇大橋が流されるという被害に遭っています。

このことで交通ライフラインに大ダメージを与え、なかなか復旧・復興が進みませんでした。

下記は阿蘇郡南阿蘇村の地価公示価格の推移です。

年度 地価公示価格(坪単価)
2016年 22,800円
2017年 22,700円
2018年 22,100円
2019年 21,800円

こうしてみるとあまり大きな下落はないかのように思えます。

ですが実際の取引価格は、下記のように驚くような下げ幅を記録しているのです。

年度 平均取引価格(坪単価)
2016年 31,500円
2017年 10,000円
2018年 19,500円
2019年 4,300円

なんと、地震発生年には30,000円を超えていた取引価格が、2019年には5,000円を切ってしまっています。

しかし、公示価格にしろ、取引価格にしろ2019年の坪単価は、ここ13年間で一番の最安値となっていることからも、被災後の復旧・復興がなかなか進まなかったことが影響しているのは間違いありません。

地価公示価格で土地を購入する人がいないため、実際の不動案取引では価格引き下げが避けられなかったということです。

このように地価は台風被害で下落はしますが、復旧・復興の進み具合で、上昇するケースもあれば、下落し続けるケースもあるということですね。

「台風被害を受けた土地はどうなる? 」のまとめ

台風被害に遭うと一般的に地価は下落傾向を示すようになります。その理由は再建困難なった自宅等の建物を住民が手放すことが多くなるからです。

これによって市場は供給過多になり、自ずと地価は下落します。またこの不動産の供給過多に加え、台風被害に遭ったことから、その地域が自然災害に弱いと烙印を押されてしまうため、その地域を離れる人は増加するものの、今後の流入人口は見込めません。

人口減少が進むことにより、さらに不動産を求める人がいなくなり、地価の下落はさらに進むことになってしまうのです。

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