不動産の取引をする機会はそう多くはありません。不動産関係の仕事をしている方でなければ、多くの方が人生でそう何度も経験することではありません。そのため、不動産の売却の際にトラブルが起こってしまうことは珍しくありません。
不動産取引は高額な取引だけに、一度トラブルに発展してしまうと解決するまでに長い時間や多大な労力を費やすことになりますし、費用もかさみます。不動産を売却する際には出来るだけトラブルにならないよう、事前に対策をしておくことが大切です。
今回の記事では不動産売却ではよくあるトラブルとその対処法を7つ紹介していきます。不動産売却を予定している方は、ぜひ参考にしてください。
不動産売却でよくあるトラブル事例7選
不動産の取引でトラブルが起きやすい理由は、不動産の取引が高額だからという理由もありますが、それ以上に不動産取引が個人間の売買であることが原因です。
不動産を売却する場合、買主は個人であることが多いです。間に仲介役として不動産会社が入りますが、売主も買主も不動産売買に慣れていない個人同士で行うことになります。売却する物件が居住用の自宅であればその傾向はより強くなります。
間に不動産会社が入るものの、数千万にもなる高額な取引を個人間で売買を行う取引は他にはそうありません。例えば車であればディーラーに売却しますし、株であれば証券会社を通じて市場に売却をします。このように不動産の取引は慣れていない個人同士が高額の取引をするので、トラブルが多くなるのも必然とも言えます。
こうしたトラブルに巻き込まれないためには、トラブルになるケースが多い事案を確認して一つずつ対処していくのが有効です。不動産売却の際に多いトラブルは、下記のようなものがあります。
- 土地に関するトラブル
- マンションに関するトラブル
- 建物の破損に関するトラブル
- 設備に関するトラブル
- 契約の説明に関するトラブル
- 不動産会社に関するトラブル
- 契約の解除に関するトラブル
上記のように様々なトラブルがあります。それぞれのトラブルの要因と対処法について一つずつ説明をしていきます。
土地の広さが違う
売却に関するトラブルの代表と言っても良いのが、土地の広さに関するトラブルです。土地の広さは売買価格を決定するとても重要なポイントです。しかし、この土地の広さが違うことにより下記のようなトラブルが起きる場合があります。
- 登記簿で50坪となっていたのでそのまま売却したら、後日買主より測量をしたら45坪しかないと苦情を受け、売却代金の返還を求められた。
- 売却した土地の買主から、隣地との境界が曖昧でトラブルになっているとの苦情を受けた。
なぜこのような事が起きるのでしょうか?それは売買契約の種類と、日本の登記の歴史に原因があります。
公簿売買・実測売買とは?
土地を売買する際、その土地の広さに関する契約方法には次の2種類があります。
- 公簿売買
- 実測売買
公簿売買とは、土地の広さを登記簿に記載されている面積を基準にして売買を行うことです。公簿売買の場合、後で測量をして土地の広さが違っていても、金額の変更や契約の解除はできない契約になっています。契約には下記のような文言が入ります。
第〇条
本件土地の面積は登記簿に記載されている面積によるものとする。本件土地の面積が実測による面積と差異があった場合でも、売主買主双方は異議を申し立てず売買代金の増減、および契約の解除はできないものとする。 |
一方で実測売買とは、測量を行った結果が登記上の面積と違った場合には差額を清算することが出来る契約で、下記のような契約書になっています。
第〇条
本件土地の面積が実測による面積と相違があった場合、その差額について1㎡あたり〇円を乗じた金額で清算するものとする |
契約の種類を確認しないで公簿売買をしてしまった場合などにトラブルは起きやすいです。しかしここで疑問なのが、登記に記録されている土地の広さと、実際の土地の広さが違うことが良くあることです。何故このように土地の広さの誤差が生じるのでしょうか。
土地の広さが違う理由
登記簿の面積と実際の土地の広さに誤差が生じる要因は、登記制度の発祥に由来しています。
日本の制度には約130年もの歴史があります。明治時代、それまで無税であった土地の所有に対し、課税を始めることを目的として登記制度は始められました。
このような流れを受けて、明治6年~14年にかけて行われた地租改正事業が現在の登記と公図のルーツと言われています。
地租改正事業では、土地の課税をするにあたり土地の面積を正確に把握することが行われました。これにより日本全国の土地が測量され、記録されることになりました。
この際、測量事業を行うのはそれぞれの土地の農民でした。測量の慣れていない農民が行ったことや、測量方法が全国で統一されていなかったことから、多くの土地で誤差が生まれたと言われています。
とは言うものの最初に測量が行われたのが明治時代ですから、その後に改めて測量が行われ、正しい面積に修正された土地もありますが、まだまだ古い情報のまま登記されている土地も少なくないのが現状です。
このような理由から登記簿と実際の面積に誤差が生じている訳ですが、ここで問題となるのは隣地との関係です。日本は土地が少なく、住宅地であっても隣の家とぴったりとくっついているのが普通です。そのような土地で登記と実際の面積が違っていた場合、どこまでが自分の土地でどこからが隣地かをはっきりとさせる必要があります。
このようなトラブルを防ぐために、境界確定という制度があります。
境界確定とは?
境界確定とは、隣地との境界(境目)を確定することを言います。具体的には所有者全員が立ち会って、全員が合意した上で境界を定め、画像のような指標を埋め込みます。
境界確定を行うには、一般的には土地家屋調査士と呼ばれる専門家に依頼をします。しかし土地家屋調査士に境界を決める権利がある訳ではなく、境界の確定はあくまで所有者同士の合意によって行われます。
極端に言えば、所有者間での合意があればトラブルになることもありません。
土地の広さに関するトラブルを防ぐには?
土地の売却をする際には、この境界確定を行うことでトラブルを防ぐことが出来ます。境界確定を行うには費用も手間もかかりますが、トラブル防止の観点から言えば費用をかけてでも行うべきです。
土地によっては既に境界確定を行っている場所もありますが、売却の際には改めておこなった方がよいでしょう。
マンションでペットを飼う、布団を干す
次に紹介するのがマンションの使い方に関するトラブルです。近年は都市部を中心に戸建てよりもマンションに人気が高まっており、終の棲家でマンションを選ぶ方も増えています。
戸建てに比べるとマンションは隣の人との距離が近いため、自宅であっても周囲への配慮が必要になります。
マンションの売買ではこのような原因からトラブルになることがあります。良くある事例としては下記のようなものがあります。
- ペットが飼えると説明して売却をしたが、買主よりペットが飼えないとの苦情を受けた。
- マンションを売却した後、ベランダに布団を干せないとの苦情が買主からあった。
戸建てであれば特に気にすることもない事ばかりですが、マンションでは近隣住宅への配慮などでどれも禁止されている場合があります
このような日常生活における細かい取り決めを定めているのが、マンション毎に定められている管理規約です。
管理規約で決められている
マンションは一つの建物に多くの方が居住をしますから、その権利関係はとても複雑になります。住民それぞれの利益を守るために、様々なルールが区分所有法という法律で定められています。
その区分所有法に基づいて、住民同士がトラブルなく快適にすごせるためのルールとして定められているのが管理規約です。
管理規約には廊下やエントランスなど共用部と呼ばれる部分の使い方や、日常生活における注意事項など細かい規則が決められています。住民はお互いに快適に暮らすために、この規約を守って生活をすることが大切です。
マンションの使い方に関するトラブルを防ぐには?
上記のトラブルの1,2のケースは、売主自信が管理規約をきちんと把握しておらず買主に誤った説明をしてしまった可能性があります。
例えば上記のトラブル事例1では、マンションの売主はもともと部屋でウサギなどの小動物を飼っていて、特にトラブルがなかったため管理規約を確認しないまま、ペットが買えると説明してしまったことが原因です。
事例2では、売主はこれまでベランダで布団を干したことがないため深く認識がないまま買主に問題ないと説明しまった可能性があります。
売主側としてトラブルを事前に防ぐためには管理規約をきちんと確認すること、また分からない質問に対しては曖昧な回答をするのではなく、「管理規約に従ってください。」などのように回答をしておくと良いでしょう。
建物が破損していた
高額な取引になる不動産取引では、買主は慎重に慎重を重ねて検討をします。建物や部屋の中など現況を良く確認して購入を決めますが、それでも買った後で建物の破損やキズなどを見つける場合があります。
購入後に建物の欠陥でトラブルになるケースとしては、下記のようなケースがあります。
- 売却した物件の買主から、床下が白アリ被害にあっていたとの苦情を受けた。
- 雨の日に、天井から雨漏りをしていたとの申し出があり改修費を請求された。
不動産売買ではこのように建物が破損していたり、白アリ被害があったりする欠陥のことを瑕疵(かし)と言います。売買の際に良く確認をしていても、後で隠れた瑕疵が見つかった場合はどちらの責任になるでしょうか。不動産の売買では物件の瑕疵については、瑕疵担保責任と言って民法でルールが定められています。
瑕疵担保責任とは?
瑕疵担保責任とは、普段あまり聞きなれない言葉です。瑕疵とは先ほど説明したように物件に関する欠陥や欠点を意味します。
担保とは損害や不利益を補うことを意味しますから、瑕疵担保とは建物の欠陥を治すというような意味になります。つまり瑕疵担保責任とは、建物の欠陥を治す責任ということになります。
不動産の売買においてはこの瑕疵担保責任を誰が負うかが重要になってくるわけですが、民法では瑕疵担保責任はは売主が負う事とされています。具体的には、買主は瑕疵を発見して1年以内であれば責任を追及できるとされています。
責任を追及された売主は瑕疵を回復する必要がありますから、売主が費用を負担して補修をしたり、損害賠償を金銭で払ったり、瑕疵がひどい場合には契約を解除しなければならない場合もあります。このように民法上のルールでは買主がとても有利になっています。
瑕疵の種類
瑕疵とは物件の欠陥と説明しましたが、何も雨漏りや白アリなどの建物に関する欠点だけを指す訳ではありません。瑕疵にはたくさんの範囲が含まれますが、大きく次の4つに分けられます。
(1)物理的瑕疵
物理的瑕疵とはこれまで説明したきたような建物に関する欠陥などを指します。雨漏りやシロアリ被害など建物に関する瑕疵だけでなく、土地に瑕疵がある場合もあります。例えば地盤沈下をしていたり土壌汚染、埋蔵物なども物理的瑕疵に含まれます。
(2)法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、その物件に対しては何らかの事情による法的な制限がかかっていることです。例えば自宅を建てるつもりで買った土地が、将来道路が計画をされているため建てらなかった場合などがあります。
他にも容積率や建ぺい率を超過している違法物件なども法律的瑕疵にあたります。これらの法律的瑕疵は目に見えない瑕疵とも言われています。
(3)環境的瑕疵
環境的瑕疵とは物件そのものの瑕疵ではなく、周辺の環境による瑕疵のことを言います。例えば、実は物件の近くに暴力団事務所があったり、ゴミ屋敷があって臭いがひどかったりする場合を指します。
環境的瑕疵は人によって感じ方も違うので判断が難しい場合もあります。
(4)心理的瑕疵
環境的瑕疵よりも、さらに判断が難しいのが心理的瑕疵です。過去にその物件で自殺や事件、事故で人が亡くなったりした場合などが心理的瑕疵にあたります。
こちらも感じ方は人それぞれですが、過去の判例では「多くの方が同じように瑕疵と感じること」が重要とされています
建物の破損に関するトラブルを防ぐ方法
民法のルールでは、売主はこのようにたくさんの種類の瑕疵について、長期間にわたって責任を負うことになっています。売主としてこのようなトラブルを防ぐには、瑕疵担保責任に関する条項を契約に盛り込むようにしましょう。
民法で定められているルールはあくまで原則的なものなので、売主と買主で合意をすれば民法のルールよりも契約を優先することが出来ます。瑕疵担保責任を売主優位にするには、下記のような方法があります。
(1)瑕疵担保責任を免除する
双方の合意があれば売主がいっさい瑕疵担保責任を負わないという契約も可能です。ただし、瑕疵担保責任の免除が出来るのは、売主が個人の場合に限ります。
売主が不動産会社の場合は、瑕疵担保責任を免除することは出来ず、売買から2年以上の期間を決めて責任を負う必要があります。
(2)瑕疵担保責任の範囲を限定する
瑕疵担保責任の免除が難しい場合は、範囲を限定した契約にすることで売主としてはリスクを限定することが出来ます。例えば「瑕疵担保責任については白アリ被害に限定する」などの内容にすることで、他の瑕疵担保責任については免れることが出来ます。
(3)瑕疵担保責任の期間を限定する
民法のルールでは買主は瑕疵担保責任を発見した時から1年間、責任追及が出来ます。つまり物件を買った何年後であっても瑕疵があれば追及できる訳ですから、この点はとても売主にとって不利です。
これを防ぐために瑕疵担保責任の期間を限定する契約にすることも可能です。例えば、「瑕疵担保責任は物件引き渡し後から3か月後に限定する」とすることで売主にとってはリスクを限定することが出来ます。
設備が壊れていた
建物にはたくさんの設備が設置されています。普段はあまり意識しないで使っていますが、エアコンなどの空調や台所やお風呂などの水回りなどたくさんの設備があるからこそ、建物を快適に使うことが出来ます。
このような設備を付帯設備と言います。
物件売却の際、設備に関するトラブルには下記のようなケースが多いです。
- 売却してすぐに給湯器が故障し、買主から修理代を請求された。
- 床暖房付きの物件を売却したが実は床暖房が故障しており、買主から床暖房相当額を返還するように求められた。
- 売却物件のエアコンは撤去する予定であったが、買主はエアコンをそのまま使えると思っておりエアコンの設置を要求された。
それぞれの要因を見ていきましょう。1のケースは引き渡しの時点では正常に動いていたが、引き渡し後に故障したことが要因です。2は売主自身が故障を把握しないまま(正常に使えると認識したまま)売却をしてしまったことが要因です。3は売主と買主の認識相違によるものです。
これらのトラブルを防ぐにはどのようにすれば良いでしょうか。
付帯設備表とは?
このような付帯設備に関するトラブルを防ぐため、契約の際には付帯設備表を作成します。
参照:全日本不動産協会
上記のように付帯設備表には売買する不動産の設備の有無や故障などについて記載をします。付帯設備表は売主が仲介不動産会社などと一緒に作成をして、買主に交付をします。
売買の際にはこの付帯設備表に基づいて、設備の有無や残置物、設備に関する故障などを確認することになります。
先程建物などの瑕疵担保責任について説明をしましたが、設備にも瑕疵担保責任はあります。設備の場合の瑕疵担保責任は、主要な設備に関しては引き渡しから7日とするのが一般的です。
主要な設備とは、給湯関係・水回り関係・空調関係を言います。
設備に関するトラブルを防ぐ方法
売主として設備に関するトラブルを防ぐには、契約で設備の引き渡しに関する条項を記載することと付帯設備表をきちんと記載することがあります。売買契約書での設備における条項は、下記のような内容が一般的です。
第〇条
売主は買主に対し、付帯設備表「設備の有無」欄に「有」とした各設備を引渡すものとする。 |
上記のような文言が入っていることをしっかりと確認しておきましょう。また可能であれば上記より売主に有利な契約をすることも出来ます。この点を認識して買主と交渉するようにしましょう。
また上記の文言の通り、故障不具合がある設備についてはその旨を申告しておくことが何よりも重要です。付帯設備表の「故障不具合」欄に故障が有ると記載しておけば、後日瑕疵担保責任を追及されることがないからです。
良くあるケースとしては売主自信が設備の故障を認識していないケースです。例えば、売却物件に床暖房が設置されていても売主が何年も床暖房を使用しておらず、実は故障していたというケースもあります。このような事を防ぐには、設備については動作確認をして売却することが大切です。
重要な説明を行っていない
これまで説明したきた通り不動産の売却に伴うトラブルには様々な種類がありますが、その多くは売主と買主の認識相違、つまり言った言わないのようなことが原因です。
物件に関する瑕疵や、物件の特徴や周辺の道路の状況などの説明不足によって起こるトラブルは少なくありません。重要なことを説明しないで発生したトラブルの具体例としては次のようなケースがあります。
- 海沿いに面しているマンションを売却する際、「全室オーシャンビュー」と宣伝して売却したが、買主から海が見えない部屋があるとトラブルになった。
- 土地を売却する際、接道の関係で建築が出来ない土地であることが買主にきちんと伝わらないまま売却をしてしまい、後日損害賠償を請求された。
このようなトラブルを防ぐために不動産の売買には、重要事項説明ということが義務付けられています。
重要事項説明とは?
重要事項説明とは、不動産の売買を行う際に(賃貸の場合も)その取引に関わる重要事項を記載した書面を契約当事者に交付して、その内容を説明をすることを言います。
重要事項説明を行うのは売主ではなく、仲介を行う不動産会社です。さらに重要事項の説明を行う人物は、宅地建物取引士の資格を持っている方しか行うことが出来ません。
不動産会社の社員であっても、宅地建物取引士の資格を持っていない方は重要事項説明を行うことは出来ません。
さらに説明を行う宅地建物取引士は、説明をする前には宅地建物取引士証を呈示して重要事項説明書に署名・捺印をする必要があります。このように、不動産取引における重要事項説明はとても重要です。
重要事項説明書に書かれる項目
重要事項説明書には、どのような文言が記載されているかを見ていきましょう。重要事項説明書に記載される項目は大きく次の3つに分類できます。
【取引物件に関する事項】
|
【取引条件に関する事項】
|
【その他の事項】
|
このように物件に関することや取引内容に関すること、お金に関することなど重要なことが書いてあります。そしてその重要な内容について、宅地建物取引士の資格を持った方がきちんと説明をすることで売主と買主の認識相違をなくして、トラブルを防ぐのが重要事項説明です。
重要な説明に関するトラブルを防ぐ方法
トラブルが起きないよう重要事項については説明を行うことを不動産売買では義務付けられていますが、それでもトラブルが起きているのが事実です。
売主としてこのようなトラブルを防ぐには、不利益な事実をしっかりと伝えることと信頼出来る不動産会社に依頼をすることです。
売主として認識している不利益なことはしっかりと伝えましょう。例えば再建築が出来ない土地であるとか、隣人トラブルがあった場合なども伝えるべきです。
過去に人が亡くなるような事件や事故があった場合も伝えるべき事項です。迷うことがあれば不動産会社の人に相談して、後々のトラブルに巻き込まれないようにしましょう。
重要事項説明は売主ではなく、不動産会社が行います。不動産会社は売買が成立して初めて報酬がもらえますから、売買が成立しなければ無報酬です。
このため売買の成立を優先するあまり、買主にとって不利益な事実を隠してしまうことがまれにあります。このような事態を防ぐために信頼できる不動産業者に依頼することが大切です。
不動産会社と揉める
不動産売却でのトラブルは買主との間のトラブルだけではありません。不動産の売買には必ず不動産会社が間に入りますが、その不動産会社が原因でトラブルになることは良くあります。不動産会社が原因で起きるトラブルには下記のようなものがあります。
- 仲介手数料を法定の金額以上に請求された、仲介手数料の他にコンサル手数料を要求された。
- 売却情報を自社の客にしか紹介をしていない。
- 市場に比べてとても安い価格で売却をしてしまった。
このように様々なトラブルが発生しており、原因はそれぞれ違いますが、共通しているのはやはり不動産取引は専門性の高い取引であり不動産会社は知識も豊富で取引に慣れている一方で、売主などの個人は知識も経験も少ないことが原因となっています。
このようなトラブルを避けるためには、トラブルの事例とその背景を知っておくことが大切です。上記の3つの例について見ていきましょう。
仲介手数料とは?
1のケースは、仲介手数料に関するトラブルです。売主と買主との間に入って不動産の契約をしたり、重要事項説明をしたりすることを仲介といい、仲介をする不動産会社を仲介業者と言います。
そして、仲介者業者の報酬が仲介手数料です。仲介手数料は、不動産業者が自由に決めれる訳ではありません。仲介手数料の上限は、法律によって下記のように決められています。
取引額200万円以下の金額 | 取引額×5%以内 |
取引額200万円を超えて400万円以下の金額 | 取引額×4%以内 |
取引額400万円を超える金額 | 取引額×3%以内 |
上記のように金額に応じて決まっています。取引金額が400万円を超える場合は、200万円以下の部分は5%で200万~400万円の部分は4%と分けて計算をしますから、400万円を超える場合は400万円×3%+6万円+消費税が仲介手数料の上限になります。
仲介業者が仲介活動の際にかかった費用があっても、仲介手数料以外は依頼者に請求することはできません。物件の広告宣伝費や人件費なども全て仲介手数料に含まれています。
ただし依頼者の依頼に基づいた費用で、通常の仲介業務では発生しない費用が発生した場合は、その実費部分については請求が認められるという例外があります。
上記のトラブルにおける1のケースでは、不動産会社が上記の上限を超えた違法な請求をしていることが要因として推測出来ます。
両手取引とは?
2のケースでは、不動産会社が両手取引をしたいがために不動産の売り情報を囲い込んでいる場合があります。
不動産の仲介業務には片手取引と両手取引があります。仲介業者は売主側の仲介業者と、買主側の仲介業者が違うのが一般的で仲介手数料はそれぞれが3%を報酬として受け取ります。
これを片手取引と言います。一方で売主側の仲介も買主側の仲介も同じ不動産会社が務めることがあり、これを両手取引と言います。
両手取引の場合の仲介手数料は、売主側と買主側から受け取れますから合計6%が上限となり仲介業者にとってはとても魅力的な取引です。
両手取引自体は違法でもなんでもなく、良くある取引ですが上記トラブル2のケースでは売却依頼を受けた不動産会社が両手取引にこだわるあまり、売却情報を公開せずに自社の客にしか紹介をしていないケースです。
片手取引の仲介手数料=取引金額×3%+消費税 |
両手取引の仲介手数料=取引金額×6%+消費税 |
このように不動産会社が情報を公開しないことを囲い込みと言います。売主からしたら情報を囲い込まれてしまうと希望通りに売却できない可能性が高くなります。
これを防ぐにはレインズという不動産の売却情報を管理するシステムへの登録状況や、売却活動の進捗などをこまめにヒアリングする、複数の不動産会社へ依頼をかけるなどが有効です。
不動産の相場を知ることが大切
3のケースでは不動産業者に言われるがままの金額で売却をしてしまって、相場より低い金額で売却をして後で後悔をしてしまうパターンです。
不動産を売却する際に不動産業者に査定を依頼するケースは多いですが、悪質な業者の場合は「建物にヒビがある」などのように様々な理由をつけて安い値段で売却させようとする場合もあります。
不動産売却をする際には周辺の不動産相場などを調べて、適正な金額を知っておくことが大切です。
業者に査定を出す場合には一社だけでなく複数社に依頼をするようにして、営業がしつこい業者などは避けた方が良いでしょう。
不動産業者とのトラブルを防ぐ方法は
不動産売却をする際、不動産業者とのトラブルを防ぐには信頼できる不動産業者へ依頼をすることと、売主自身も不動産取引について知識をもっておくことです。
これまで説明した仲介手数料などの知識を持っていれば、違法な請求をされても気づくことが出来ますし、不動産の相場を知っていれば極端に安い金額で売却をしてしまうことも防げます。
不動産取引は普段あまり行うことのない取引だけに、売主自身も知識を深めて不動産業者におまかせにしないことが大切です。また不動産業者を選ぶ際には、何社かを比較して信頼できるところを見つけましょう。
契約が解除になった
買主が見つかり、売買契約まで終わったらようやく売却が終わったとほっとするのが売主の心理でしょう。しかし、売買契約まで済んだからといって安心するのはまだ早いです。
不動産の取引は物件の引き渡しまではまだ何が起こるかわかりません。中でも多いのが契約の解除と手付金に関するトラブルです。
- 売買契約を結んだ後に、買主が物件の瑕疵を理由に契約解除を主張し、手付金を返せと言ってきた。
- ローン特約付き売買契約を結んだ後、買主がローン審査をしなかったにもかかわらず手付金の返還をもとめられた。
不動産の契約には代金の売買の前に、一部先にお金を支払う手付金という制度があります。この手付金をめぐってトラブルになるケースが少なくありません。
手付金とは
手付金とは、買主が売主に対して契約や物件の申込の際に支払う金銭のことです。手付金をいくらにするかというのは実は決まりはないのですが、大体売買金額の5~10%程度の場合が多いです。
そして手付金の支払いは決められたルールではありません。手付金なしでも契約をすることは可能ですが、一般的に売主の立場からしたら手付金の支払いを求めた方が良いでしょう。
手付を払ってもらうことで買主の購入希望が確かなものであることが確認出来ますし、簡単にキャンセルが出来なくなります。
もし、手付金がなければ買主は複数の物件にとりあえず申し込んで、後でキャンセルをするという事が可能になってしまい売主は振り回されることになってしまいます。
このように不動産取引における手付金はとても重要な意味を持ちますが、実は手付金には3つの種類があります。
(1)証約手付
証約手付とは、売買が成立した証拠として支払う手付金です。買主が売主に対して意思表示をするために支払います。そのため契約が解除されても手付金は買主に返還されません。
(2)解約手付
売買契約を結んだ後に、どちらかが一方的な理由で契約を解除する場合に手付金を放棄することで解約が可能にあります。例えば買主側からの解約であれば一度払った手付は戻ってきませんし、売主側からの解除であれば一度受け取った手付の倍額を買主へと返金します。
(3)違約手付
不動産の売買は契約に基づいて行われます。違約手付とは、売主買主のどちらかに契約内容に関する違反などがあった場合に、違反をした方が支払う金額を指します。
一般的には手付金と言えば、解約手付を意味します。ただし手付金放棄による契約の解除はいつでもできる訳ではありません。
手付金放棄による解除が出来るのは、一般的に相手方が契約の履行に着手するまでと言われています。例えば、売主側が引き渡しに向けて修繕の作業に入ったりした場合は買主側からの解除は出来ません。
上記のトラブル1のケースでは、買主が普通に契約を解除すると手付金を放棄しなくてはならないので、「物件に瑕疵があったから解除する」という流れに持っていこうとしていたことが原因です。
本当に物件に瑕疵があるのであれば応じなければなりませんが、手付金を返してほしくて難癖を付けてくるような買主も存在します。
こうした買主に対しては毅然とした態度で交渉をすることが大切です。
ローン特約とは?
上記のトラブル2のケースは買主がローンを組んで不動産を買う場合のトラブルです。不動産はとても高額な取引ですからローンを借りて買う方の方が多いです。しかし、誰もが希望通りのローンを組める訳ではなく時にはローンの審査が通らず、代金が払えないケースもあります。
このような事態に備えて、あらかじめ契約の際にローンが通らなかった場合は無条件でキャンセル出来るような内容にしておくことをローン特約と言います。
この特約を入れておくことで買主としては万が一ローンが通らなかった場合は、手付金を放棄することなく契約を解除できますから買主にとっては有利な契約です。具体的には下記のような文言が契約書に入ります。
第〇条 (ローン特約)
買主は、残金の支払いに際し表記融資金を利用することとし、本契約締結後すみやかにその融資の申し込みをするものとする。 |
売主の立場からすると、ローン特約付きでの契約は避けたいのが本音です。もし同時に現金で買いたいという方がいる場合は、現金での買主を優先させた方が良いです。
またローン特約の内容を、出来る限り具体的に契約に折り込むことが売主とってはリスク回避につながります。例えば悪意のある買主が、ローン特約付で売買契約だけしておいて実際は銀行に審査の申込もしていないのに審査が通らなかったことを理由に契約の解除を申し出る可能性もあります。
こうすれば買主にとってはローン特約を利用して複数の物件をとりあえずおさえておくことが可能になってしまいます。
このような事態を防ぐためには、出来るだけローン特約の内容を具体的に決めておくことが重要です。
どこの銀行にいくら申込をして、いつまでに承認を取るか、などをきちんと決めておくことで買主の動きを牽制出来ますし、万が一買主が審査の申込をしていないなどの悪意のある行動があれば、契約は解除されても手付金を返還する必要はありません。
契約の解除に関するトラブルを防ぐには?
このような契約の解除に関するトラブルを売主として防ぐ方法は、解除できる内容などを出来るだけ具体的に契約に折り込むことが有効です。不動産の売買は一般的には売主が優位と言われています。
売却しようとしている物件が、比較的好条件の物件であれば「ローン特約付きの契約はしない」や「手付金を相場よりも多くする」などの条件を出すことも可能です。
出来るだけ契約に関する知識などを自分なりに吸収したうえで、信頼できる不動産業者に依頼することが大切です。くれぐれも不動産業者に全部おまかせで何も言わない、というような売却方法はしないようにしましょう。
不動産売却に関するトラブルのまとめ
今回の記事では不動産売却の際に起きやすいトラブル7つについて下記のように紹介をしてきました。
- 登記上の面積と実際の面積は違うことがあり売却の際にトラブルになりやすい
- マンションを売却する場合、共用部などの利用規則をよく確認しないとトラブルになる
- 隠れた瑕疵で後々トラブルになるケースがある
- 設備の故障でトラブルになるケースもある
- 物件に関する重要事項を説明していないとトラブルになるケースがある
- 不動産会社とトラブルになるケースもある
- 契約解除の際の手付や、ローン特約などでもトラブルになる可能性がある
不動産を売却する際には、様々なトラブルが起きる可能性があります。これらのトラブルを防ぐには、トラブル事例を確認して事前に対処しておくことが大切です。
多くの方は不動産取引に不慣れな方が多いですから、出来るだけ不動産取引に関する知識を付けておくことや、不動産の相場を知っておくことは重要です。
売却する不動産の相場を知るには、一社ではなく複数の業者と比較する方が良いです。その場合は一社ずつ自分で依頼を出すには手間がかかりますので、下記のマンション売却ガイドの一括査定サイトなどを利用するのもオススメです。