購入した自宅であっても転勤や親の介護、より広い家への転居など様々な事情で住み替えることもあります。しかし「まだ住宅ローンが残っているから・・・」とか、「住み替え後の家もローンを組めるわけない・・・」などの理由で住み替えに抵抗を感じている方は多いです。
このような悩みを解決して、ローンが残っていても住み替えが可能になるのが住み替えローンです。
今回の記事は下記の点を中心に、住み替えローンについて説明していきますのでぜひ参考にしてにしください。
住み替えローンとは?
そもそも住み替えローンとは、どのようなローンでしょうか?
通常、マイホームを買う際に組むローンは住宅ローンです。住み替えローンとは、一度マイホーム購入のために住宅ローンを借りたことのある方が、住み替えによって再度ローンを組むことを言います。
一度住宅ローンを組んでしまったら、そのローンを返済するまでは新たにローンを組むことが出来ないと思っている方も多いと思います。
そのためローンの残高がある間は住み替えなども躊躇する方も多いですが、転勤などによるやむを得ない事情で住み替えをしなければならない場合や、家族が増えたり収入が増えたりして住み替える場合もあります。
そのような時に、ローンの残高があっても住み替えが可能になるのが住み替えローンです。住み替えローンの詳細について見ていきましょう。
住み替えローンが組める人
住み替えローンの対象となる方は、どんな方でしょうか?住み替えをする全ての方が住み替えローンの対象となる訳ではありません。
住み替えローンの対象となる方は住み替えをされる方の中でも一部の方です。
住み替えをする方は大きく次の3つに分かれます。
- 現在のマイホームにローンが無い、もしくはマイホームの売却資金で完済できる。
- 現在のマイホームにローンがあり、マイホームの売却資金も完済出来ない。
- 現在のマイホームを、住み替え後も売却せずに保有し続ける。
一つずつ見ていきましょう。まず1の場合は、住み替えに伴って現在のマイホームを売却する場合です。売却する現在のマイホームのローンが無いか、ローンがあっても売却資金でローンを全額完済できる場合です。この場合は、新しく購入するマイホームのローンは、住宅ローンを利用することになります。
2の場合は1と同じく現在のマイホームを売却する場合で、売却資金で現在のローンを全額返済できない場合です。この場合には、ローンの残債と新しく購入するマイホームローンの合計額を借入することになりますが、この際の利用するのが住み替えローンです。
もう少し具体的に説明すると、住み替え前の現在のマイホームのローン残高が2,000万で売却金額が1,500万だとします。新しく購入する自宅が3,000万だとすると、住み替え前のローン残高500万に新しいマイホームの3,000万を加えた3,500万を住み替えローンで組むことになります。
3の場合は住み替え前の自宅もローンもそのままで、新しい自宅のローンを組む場合です。この場合は住宅ローンを2本組むことになるので、ダブルローンと言います。
住み替えの状況 | 利用するローン |
現在のマイホームにローンが無い、もしくはマイホームの売却資金で完済できる | 住宅ローン |
現在のマイホームにローンがあり、マイホームの売却資金も完済出来ない | 住み替えローン |
現在のマイホームを、住み替え後も売却せずに保有し続ける | ダブルローン |
住宅ローンとの違い
住み替えローンの対象となる方はこれまでの説明の通りですが、住宅ローンとの一番の違いは元々のマイホームの残高が残っているかどうかです。この違いで、住宅ローンになるか住み替えローンになるかが変わる訳ですが、住宅ローンと住み替えローンではどのような違いがあるでしょう。
住宅ローンと住み替えローンの違いは、次の3点があります。
- 資金使途
- ローンの組み方の流れ
- 審査のポイント
こちらも一つずつ見ていきましょう。まず一つ目の資金使途についてはこれまで説明してきた通りです。住宅ローンの資金使途が物件購入資金だけであるのに対して、住み替えローンは物件購入資金+住み替え前の自宅のローン残債になります。
住宅ローン | 物件購入資金 |
住み替えローン | 物件購入資金+住宅ローンの残債 |
二つ目のローンの組み方の流れですが、住宅ローンと住み替えローンでは流れが大きく違います。住宅ローンの場合、自宅の購入に合わせてローンを組めば良いですが、住み替えローンの場合は更に元々の自宅の売却もタイミングを合わせて行う必要があります。
住み替えローンの流れついては後程詳しく説明していますので、ここでは詳細は割愛します。
住宅ローン | 物件購入+住宅ローン |
住み替えローン | 自宅売却+ローン返済+物件購入+住み替えローン |
三つ目の審査のポイントについても、住宅ローンと住み替えローンでは大きく違いがあります。結論から言いますと、住宅ローンに比べて住み替えローンの方が審査は厳しいです。その理由の一つに担保評価があります。
例えば3,000万円のマンションを住宅ローンと住み替えローンで買う場合を比較してみましょう。一般的には担保評価は相場よりも低めに計算しますから、今回は仮に2,000万円とします。
住宅ローンの場合であれば3,000万円のローンに対して担保評価が2,000万円となります。一方、住み替えローンの場合は更に前のローンの残債が上乗せされます。仮に残債が500万円だとすると今回のケースでは3,500万円のローンに対して、担保評価が2,000万円ということになります。
住宅ローンに比べて、住み替えローンの方が担保評価を超える部分が500万円も多いことになりますので、審査はどうしても住み替えローンの方が厳しくなってしまいます。
借入金額 | 担保価値 | 無担保部分 | |
住宅ローン | 購入価格3,000万 | 2,000万 | 1,000万 |
住み替えローン | 購入価格3,000万+残債500万 | 2,000万 | 1,500万 |
住み替えローンのメリット
審査も厳しく、住宅ローンよりも煩雑な手続きになる住み替えローンですがメリットも大きいです。住み替えローンのメリットは大きく2つあります。
自己資金なしで住み替えが出来る
住み替えローンの最大のメリットは、自己資金がなくても住み替えが出来ることです。本来、自宅の売却資金でローンの返済が出来ない場合、差額分は自己資金でカバーする必要があります。
しかし住み替えローンを利用することで自己資金が無くても住み替えが可能になります。家庭の事情などでやむを得ず住み替えをしなければならない時など、住み替えローンはとても頼りになります。
再度住宅ローン控除が使える可能性がある
住み替えローンを利用することで、再度住宅ローン控除の適用となる場合があります。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に受けれる税額控除制度のことで、毎年数十万程度の経済的メリットを受けれる大きな優遇制度です。
住宅を購入した年から10年間(2020年12月末までの購入は13年間)は毎年のローン残高の1%が税額控除になります。
本来であれば10年間で受けられなくなってしまう制度ですが、住み替えローンを利用することによって再度住宅ローン控除を受けることが可能になります。ただし、これには条件がありマイホームの買い替えに関する税制優遇し制度を利用していない場合に限ります。
買い替えに伴う税制優遇制度については後ほど詳しく解説をしています。住宅ローン控除を使うか、買い替えに伴う税制優遇制度を使うかは慎重に判断する必要はありますが、住宅ローン控除による経済的メリットを再度受けることが出来るのも住み替えローンのメリットの一つです。
住み替えローンの流れは?
住み替えローンは住宅ローンに比べると流れや手続きが煩雑になります。元々の自宅の売却と住宅ローンの返済、新しい自宅の購入と住み替えローンの実行を行う訳ですから、住宅ローンの倍以上の手続きになります。更に全ての手続きを段取り良く計画的に行う必要があります。
住み替えローンの流れについて説明します。住み替えローンの場合、元々の自宅の売却を新しい自宅の購入の前に行う場合と、購入した後に売却する場合があります。それぞれ流れが違いますので、一つずつ見ていきましょう。
売却を先に行った場合
具体的な流れは次のようになります。
- 住み替えが決まったら、新しく購入する自宅を探します。
- 同時に現在の自宅を売りに出します。このとき現在の住宅ローンを借りている金融機関に住み替えに伴ってローンを返済する旨を申し出ておき、返済の手続きを確認しておくようにしましょう。
- 新しい自宅が決まったら、住み替えローンの審査をします。
- 住み替えローンの審査が通ったら、購入する物件の物件の売買契約を結び引き渡し日などのスケジュールを決めます。
- 元々の自宅の売却先が決まったら、売却スケジュールを決めます。
- 住宅ローンを借りている金融機関へと連絡をして、売却日に合わせてローンの繰上げ返済を行う手続きを行います。
- 新しい自宅の購入に合わせて住み替えローンを実行します。売却を先に行った場合、つなぎ融資が必要になる場合もあります。
- 新しい自宅の引き渡しを受け、引っ越しします。
実際には順番が前後する場合もありますが、大体このような流れで住み替えローンを組むことになります。
6と7は同日に行う場合もありますが、先に売却を行う場合もあります。先に売却をしてしまうと、住み替えローンを実行するまでは一部元々のローンの残高が残ってしまうことになります。ローンの残高が残ったままでは抵当権を外すことが出来ず、売却が出来なくなってしまうので自己資金で対応するかつなぎ融資が必要になります。
つなぎ融資が必要な場合は、事前に住み替えローンを借りる金融機関と良く擦り合わせをしておく必要があります。また新しい自宅に引っ越すまでの間の仮住まいも必要になりますから、その費用も準備しておく必要があります。
売却を先に行う場合、どうしても住み替えローンの実行日までに売却を終わらせる必要があります。そのため売却価格が希望より低い場合でも、売却せざるを得ない可能性もあり相場よりも安くなってしまう可能性があるのがデメリットです。
先に購入もした場合
続いて先に新しい自宅を購入し、売却を後にするパターンです。この場合は一時的にローンが2つ重なるので金融機関の審査が通りづらいのは説明しましたが、収入の高い方であれば通る可能性はあります。先ほど説明した売却を先にする場合とは流れは大きく変わります、まずは、流れを見てみましょう。
- 住み替えが決まったら、新しく購入する自宅を探します。
- 先に購入する場合でも、このタイミングで自宅の売却活動は初めておいた方が良いでしょう。
- 購入する新しい自宅が決まったら、住み替えローンの審査をします。この審査が通って初めて、売却が後でも良いことが確定します。
- 住み替えローンの審査が希望通り通ったら、新しい自宅の購入を進めます。
- 新しい自宅への引っ越しなどを進めつつ、元々の自宅の売却活動を継続します。
- 元々の自宅の売却先が見つかったら、売却して住宅ローンの返済をします。
先に売却をするパターンに比べると、売却をじっくり行えるためスケジュールに余裕があります。何よりも売却を急ぐ必要がないので、納得の行く価格で売却できる可能性が高まります。
また売却活動をする場合、買いたい方は検討する段階で必ずと言っていいほど部屋の中を見に来ます。この時新しい自宅へと引っ越しをして、部屋を開けておいた方が部屋も広く綺麗に見えるため、高い値段で売りやすくなります。
このように先に購入が出来ることで高く売りやすくなるメリットがありますが、一時的にでもダブルローンになってしまうため支払い利息が二重になってしまうというデメリットもあります。どちらの方が経済的メリットがあるかは良く検討する必要はありますが、低金利の昨今の環境では後で売却出来るメリットは大きいでしょう。
メリット | デメリット | |
先に売却 | 売却金額が先に確定するので資金計画がたてやすい | 売却にかける時間が少ないので高く売りにくい |
先に購入 | 一時的にダブルローンになるので金利負担は大きい | ゆっくり売却できるので高く売りやすい |
住み替えローンの審査を通りやすくするには?
住み替えローンは住宅ローンに比べると審査が厳しいことはこれまでも説明してきました。しかし、工夫次第でローンを通りやすくすることは出来ます。住み替えローンの審査を通りやすくするためのコツを紹介します。
返済比率を意識しよう
まず大切なのは、住み替えローンと言えども審査のポイントは住宅ローンと同じであることです。
住宅ローンの審査のポイントはいくつかありますが、最も重要なポイントの一つは返済比率でしょう。返済比率とは、年間の収入に対するローンの返済額の割合を表した数字です。返済比率の計算式は下記のようになります。
返済比率=今回のローンの年間返済額+他のローンの年間返済額/年間収入×100 |
住宅ローンでも住み替えローンでも審査において返済比率は重要なポイントです。一般的には返済比率が35%以内に収まるかどうかで返済に無理がないかどうかを判定します(金融機関によって基準は違います)。
特に住み替えローンの場合は元々のローンの残債が上乗せされるため、借入金額は大きくなり返済比率も高くなってしまう傾向にあります。
金融機関に審査を申し込む場合、この返済比率を意識した借入金額を申込するようにしましょう。
住宅ローンの審査は金融機関側からすると、件数も多くスピードも求められる融資です。一つの案件に対してかける時間は比較的短いため、どうしても審査をする際は返済比率などの審査基準のポイントをクリアしているかどうかという画一的な審査になってしまいがちです。
逆に言えばポイントさえ抑えて申し込みをすればすんなりと通ることが多いです。
特に返済比率は重要なポイントですから、申し込む前に自分で計算をしてチェックしてからの方が良いでしょう。
仲の良い銀行に申し込む
知らない人にお金を貸すのは不安ですが、仲の良い人であれば貸しやすいこともあるでしょう。銀行の審査も同じで、取引のある方の方が審査がうまく行く場合もあります。
住宅ローンを借りる場合、不動産会社に誘導されるままに取引のない金融機関を選ぶ場合も多いですが、可能であれば取引のある銀行を使った方が良いです。
取引のある、と言っても何も深い取引が必要な訳ではなく、預金口座があって給与振り込みや各種引き落としにその銀行の口座を使っているというだけで十分です。むしろ給与振り込みや各種引き落としなどの取引がある方は、銀行からすればとても信頼のできる方と見ることが出来ます。
住宅ローンの審査はお客様から提出される年収資料などを基に審査をしますが、極端に言えばその内容が本当かどうかは分かりません。
しかし既に口座があって、お金の流れがあれば少なくとも実在する人物で、更に取引があって預金などもあります。つまり初対面の人ではなく以前から知っている信頼できる人、ということになりますから審査もスムーズに進みやすくなります。
不動産の価格と残債を確認する
住み替えローンが住宅ローンに比べると審査が厳しいことはこれまでも説明してきましたが、その最大の理由が以前の住宅ローンの残債が含まれることです。
以前の住宅ローンの残債が上乗せされることで返済比率が上昇し、本来であれば通るはずのローンが通らなくなるケースは住み替えローンでは珍しくありません。
審査を申し込む前に住宅ローンの残債と不動産の価格を良く確認をして、残債がどれくらいになるかは必ず確認しておきましょう。おおよその残債額を予想したうえで、住み替えローンの返済比率が無理のない水準に収まるかどうかは必ず事前に確認しておくようにしましょう。
住み替えローンが使える金融機関は?
これまで住み替えローンに関する説明をしてきましたが、実際に住み替えローンが利用できる金融機関の一部を紹介します。住み替えローンを利用出来るのは、大手を中心とした銀行が多く、ネット銀行などでは対応していない場合が多いです。
三井住友銀行
3大メガバンクと呼ばれる日本を代表する大手銀行の一つです。大手銀行ですから店舗もたくさんあり、ローン専用のフリーダイヤルなど相談窓口が充実しています。三井住友銀行の住み替えローンは、元利均等方式と元金均等方式を選択できるのも特徴です。
また申込には前年度の年収が500万以上、現在の住宅ローンが借入から4年以上経過していることが条件になっています。
みずほ銀行
みずほ銀行も三井住友銀行と同じく3代メガバンクを占める大手銀行です。メガバンクの中でも47都道府県に全てに支店があるのは実はみずほ銀行だけです。みずほ銀行も返済方法を元利均等と元金均等方式を選べるのが特徴です。
三井住友銀行のように年収要件はなく、安定した収入がある方が申込条件となっています。また元々の住宅ローンの借入期間の〇年以上のような決まりはありません。
りそな銀行
りそな銀行は3大メガバンクには入りませんがそれに続く規模の大きな銀行で、グループの銀行である埼玉りそな銀行や関西みらい銀行などを含めると国内の店舗数は最大です。
りそな銀行の住み替えローンの申し込みは前年年収が100万以上、また勤続年数の要件があるのが特徴です。りそな銀行の場合は、元利均等のみで元金均等方式は選択できません。また、元々の住宅ローンの残高の上乗せは1,000万円迄と決まっているのもりそな銀行の特徴です。
横浜銀行
横浜銀行は神奈川県を基盤とする有力地方銀行です。横浜銀行で取り扱っている住み替えローンは、前年度の年収が400万以上が申込の要件となっています。横浜銀行の場合は、元々の住宅ローンを上乗せ出来る金額は2,000万円となっています。
また最終返済が82歳未満となっているのも横浜銀行の特徴で、他の金融機関では80歳未満となっているところが多いです。
主な申込条件 | 融資金額・期間 | その他特徴など | |
三井住友銀行 | ・前年度年収500万以上 ・現在のローンの借入期間が4年以上 |
・100万円~1億円以内 ・最長35年 |
・元利均等、元金均等の選択が可能 ・保証会社手数料55,000円 |
みずほ銀行 | ・安定した収入のある方 ・現在の住宅ローンに延滞のない方 |
・50万円~1億円以内 ・最長35年 |
・元利均等、元金均等の選択が可能 |
りそな銀行 | ・前年度年収が100万以上 ・給与所得者は勤続1年以上、自営の場合は3年以上 |
・50万円~1億円以内 ・最長35年 |
・元利均等のみ ・元々の住宅ローンの上乗せは1,000万円が上限 |
横浜銀行 | ・前年度年収が400万以上 | ・1億円以内 ・最長35年 |
・元々の住宅ローンの上乗せは2,000万円が上限 ・元利均等のみ ・最終返済年齢が82歳未満 |
上記の表は各金融機関における特徴の一部を記載したものです。実際には各社のホームページなどで詳細は確認してください。
また上記の表で紹介した金融機関以外にも、たくさんの金融機関が住み替えローンの取り扱いをしています。上記の表を参考にして、まずは取引のある金融機関に相談するようにしましょう。
住み替えローンのデメリットや落とし穴とは?
住み替えローンを利用することで、自己資金が少なくても住み替えが可能になります。住み替えローンはとても便利なローンですが、気を付けるべきことも多くあります。
住み替えローンに関する注意点を見ていきましょう。
返済期間に注意する
住み替えローンを利用する場合、多くの金融機関で35年の借入が可能になります。借入期間を長くすれば毎月の返済額を軽減できることになるので、一見資金繰りはとても楽になるように感じます。
しかし住み替えローンでローンを再度組み替えることで、完済時年齢は伸びることになります。
例えば最初の住宅を30歳で35年ローンで組んだとします。この場合の完済年齢は、65歳になります。10年後、40歳の際に住み替えローンを35年で組んだとすると、完済時年齢は75歳になります。
このように住み替えローンを利用することによって、ローンの完済時年齢が伸びてしまうことは意識しておいた方が良いでしょう。
借りすぎに注意する
上記の表は30歳で3,500万のローンを組んだ場合と、その後住替ローンを比較した場合の年齢別のローン残高の比較です。
表が表す通り、住替ローンを利用した場合はその後のローン残高に大きく影響が出ます。特に注目すべき点は、途中で住替ローンに組み替えたことによって65歳時点での残高が大きく変わっている点です。
当初の住宅ローンであれば定年と同時に住宅ローンの返済が終わっていましたが、住み替えによって定年後もローン返済が続くことになります。退職金をローン返済に回すか、雇用延長で働き続けるか、もしくは年金と貯蓄を取り崩すかなどの対応が必要になります。
先述の返済期間の説明と重なる説明になってしまいますが、このように住替ローンを利用することは、それだけ住宅ローンの完済時期と残高を後ろへと伸ばすことになります。住替ローンを利用する場合には、この点をよく認識しておくことが大切です。
税制をうまく利用する
住替ローンを利用するということは、これまで住んでいた自宅を売却することになります。自宅を売却すると、売却する金額によっては利益が出ることになるので、税金を払わなければなりません。不動産を売却した場合の利益を譲渡所得と呼び、譲渡所得は下記の計算式で計算します。
譲渡所得=収入金額−取得費−譲渡費用 |
収入金額とは売却した金額を、取得費とは購入した金額です。譲渡費用とは不動産会社に払う仲介手数料などの売却の際にかかった経費です。上記の計算式で計算した結果がプラスになった場合、所得税を払わなければいけません。
所得税は通常は、給料などその個人にかかる所得をまとめて計算しますが、不動産の譲渡所得は分離課税と呼ばれており、他の所得とは分けて計算をします。税率は売却した不動産の所有していた期間によって下記のようになります。
所有期間 | 税率 |
5年以下(短期譲渡所得) | 39.63%(所得税30.63%、住民税9%) |
5年超(長期譲渡所得) | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
所有期間の判定は、売却した時点ではなく売却をした年の1月1日時点での所有期間になりますから注意しましょう。
このように売却によって税金が発生する訳ですが、自宅の売却の場合には特例で税金が優遇される制度がいくつかあります。これらの制度を活用することで所得税の支払いを抑えることが出来ます。
3,000万円の特別控除の特例
この特例は不動産の譲渡所得が発生しても、マイホームの売却の場合は3,000万円まで所得を控除することが出来る制度です。
この特例の特徴は、マイホームの所有期間は関係のないことです。つまりマイホーム売却による所得であれば3,000万までであれば税金は発生しなということになります。適用には要件がありますので、詳細は国税庁のホームページなどで確認しましょう。
10年超所有の軽減税率の特例
譲渡所得が3,000万円を超えると所得税が発生し、所有期間によって先ほど紹介した税率で計算する訳ですが、マイホームの場合は所有期間が10年を超えていると税率が更に軽減される特例があります。具体的な税率は下記のようになります。
譲渡所得が6,000万以下の部分 | 14.21%(所得税10.21%+住民税4%) |
譲渡所得が6,000万円を超える部分 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
譲渡所得が6,000万円までの部分と6,000万円を超える部分で税率が異なる点に注意しましょう。この特例の特徴は先ほどの3,000万円控除の特例と同時に使えることです。
詳細な要件については国税庁のホームページを確認してください。
買い替えの特例
マイホームを買い替えた場合、所有期間が10年超などの一定の要件を満たすことで買い替えに伴う税金の支払いを先に延ばすことが出来る特例です。
この特例は売却したマイホームの金額と新しく購入したマイホームの金額によって、税金の払い方が下記のように変わってきます。
売却した金額より新しく購入する金額が高い場合 | 売却に伴う譲渡益は繰り延べられます。 |
売却した金額より新しく購入する金額が低い場合 | その差額分の金額のみ所得税が発生します。 |
少し分かりにくいので、もう少し具体的に説明します。例えば5,000万円でマイホームを売却をして、この際の譲渡所得が4,000万、新しく購入する物件は7,000万円だとします。
本来であれば4,000万円の譲渡所得に対して課税されますが、この特例を適用することで新しく購入した自宅を売却するときまで4,000万円の譲渡所得を繰り越すことが出来ます。繰り越すだけで、非課税になる訳ではないのでこの点は注意が必要です。
一方、上記の例で新しく購入した物件が3,000万円だった場合はどうでしょうか。この場合は5,000万と3,000万円の差額の2,000万円に対して課税されることになります。
適用の要件や詳しい制度の内容は国税庁のホームページなどで確認しておきましょう。
住み替えローンのまとめ
今回住み替えローンに関して、メリットや注意すべき点について下記の内容を中心に説明してきました。
- 住み替えローンとは、マイホームを住み替えする際に元々の住宅ローンの残高の残りを上乗せして組めるローンであること。
- 住み替えローンを利用することで、自己資金が不足していても住み替えが可能になること。
- 住み替えローンを利用する場合、売却が先になるケースが多いこと。手続きやスケジュールが煩雑になるので注意が必要であること。
- 住み替えローンの審査は基本的には住宅ローンと同じであるが、元々の住宅ローンの残債が上乗せされるため審査が厳しいこと。返済比率を意識して、取引のある銀行に申込をする方が良いこと。
- 住み替えローンが利用できる金融機関は、大手銀行や地方銀行が多い。ネット銀行では取り扱いが少ないこと。
- 住み替えローンを利用すると完済時年齢や借入残高が増えるので、後で困らないように計画的に借入することが大切であること。また買い替えに伴う税制をうまく活用すること。
メリットも多いですが、注意点も多く手続きも難しいのが住み替えローンの特徴です。特に、資金計画が重要になりますから取り組み始める前に、今の自宅の売却金額と住宅ローンの残高を良く確認しておくことをオススメします。
自宅の売却金額を調べるには、不動産会社に査定をしてもらうのが一番確実です。下記のような一括査定サイトを利用すれば、無料で複数社の査定が確認出来るのでとても便利です。
今回の記事が住み替えを検討している方の参考になれば幸いです。