不動産を売却した際には、確定申告をしなければいけないのですが、「いつするの?」「どうやって?」「面倒くさくない?」と感じる方が大半だと思います。
そこでこの記事では「不動産売却時の確定申告について」わかりやすく解説します。税金=面倒くさい、難しいと思いがちですが、きちんとステップを踏めば不慣れでも自身で確定申告を行うことができます。ぜひ参考にしてください。
不動産売却時の確定申告の必要書類はどれくらいある?
それではまず、不動産売却時の確定申告に必要な書類をご紹介します。
確定申告に必要な書類は以下の通りです。
- 税務署や市町村役場で入手、その後記入が必要なもの
- 不動産売却時に入手しているもの
- 売却後に法務局で入手するもの
それぞれいくつか種類があるので詳しくご説明します。
1.税務署や市町村役場で入手、その後記入が必要な物
このカテゴリーの書類には以下のものがあります。
a. 確定申告の用紙(申告書B、申告書第三表/分離課税用)
b. 譲渡所得の内訳書
c. 戸籍の附票(売却2か月経過したのちにされたもの)
上記のうちaとbは税務署でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードできます。
cは売却した不動産がある市町村役場で受け取ります。
aおよびbの記入方法に関しては後のセクションで詳しく解説いたします。
2.不動産売却時に入手しているもの
不動産売却時に入手している書類は以下の通りです。
a. 売買契約書および領収書(写し)
b. 仲介手数料の領収書(写し)
c. 諸費用(測量費、登記費用など)の領収書(写し)
これらの書類は確定申告時に必要になってくるので、売却時に入手したらわかりやすいところにまとめて保管しておきましょう。
3.売却後に法務局で入手するもの
法務局で入手する書類は
a. 売却した不動産の全部事項証明書
のみです。
この書類は不動産登記簿に記載されている内容が正しいことを証明するもので、所有権の移転、抵当権の設定・抹消など、全履歴が記載されています。
不動産売却時の確定申告で必要な知識
確定申告に必要な書類がわかったところで、今度はぜひ知っておいていただきたい事柄についてご説明します。
そもそも確定申告は絶対にしなければならないのか、するならいつなのかなど基本的なことばかりですが、意外と知らない人は多いです。
確定申告はいつする?
確定申告は不動産売却が成立した翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。
確定申告が必要であるにも関わらずこの期限を過ぎて納税した場合は、延滞税が発生するので要注意です。
確定申告は絶対に必要?
確定申告をしなければいけない条件は、「売却益がでたとき」です。売却益とは、売却代金から取得費・諸経費を差し引いたのちに売却代金がプラスであった場合、そのプラス分を売却益といいます。
この売却益が出た場合は必ず確定申告をしなければなりませんが、言い換えると「損失が出た場合は確定申告をしなくてもいい」ということになります。
ただし、損失が大きかった場合は逆に確定申告を行うことによってほかの所得と相殺することができ、
結果的に課税額を減らすことができて節税につながります。「絶対に」ではありませんが、どちらにしろ確定申告はしたほうがいいということですね。
譲渡所得はどうやって計算するの?
確定申告をする際に必要となってくる「譲渡所得金額」ですが、どうやって計算するのでしょうか。
「計算か・・・面倒くさい」と、みなさんまずここで躓くかと思いますが、ステップを踏めばきちんと計算できるのであまり構え過ぎないでくださいね。
それでは詳しく見ていきましょう。譲渡所得の算出方法は次のように行います。
譲渡所得=譲渡価格-(所得費+譲渡費用)
「譲渡価格」とは、「家がいくらで売れたか」の価格なので明確ですよね。
「所得費」とは、「家をいくらで買ったか」の金額ではなく、経年劣化による下落価格である「減価償却費」を差し引いた後の金額のことです。
なお、減価償却の対象は建物のみであり、土地は対象外なのでご注意ください。計算方法は以下の通りです。
減価償却費=物件の購入費×0.9×償却率×経過年数
なお償却率については建物の構造により異なりますので、売却した物件の償却率を調べる必要があります。
また、「譲渡費用」とは不動産を売却するのにかかった費用のことで、これには不動産屋に払う仲介手数料などの諸費用が含まれます。上記をふまえて、具体的な金額で譲渡所得を計算してみましょう。
譲渡価格が6,000万、所得費が2,500万、譲渡費用が150万だった場合は、
6,000万-(2,500万+150万)=3,650万
となり、譲渡所得は3,650万円であることがわかります。この場合はプラスなので確定申告が必要となります。
不動産売却の確定申告書類の準備から記入方法まで紹介
ではいよいよ書類の準備から記入です。
まず国税庁のホームページからダウンロード
出典:国税庁
まず国税庁のホームページへ行き、必要書類をダウンロードしましょう。トップページの「税の情報・手続き・用紙」というカテゴリーから、2番目の「申告手続き・用紙」をクリックします。
次のページの右側に申告・申請・届出等・用紙(手続の案内・様式)という項目があるのでそちらをクリックし、ページの中央部分にある「所得税」をクリックします。
次のページの下のほうへ行くと「各種用紙」という項目があり、そのすぐ下の「確定申告書等」をクリックします。
そうすると下のような画面になります。
ここから必要書類をダウンロードします。まず「確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等」からダウンロードする書類は以下の通り。
- 申告書B様式
- 申告書第三表
- 所得税青色申告決算書(不動産所得用)
そして「確定申告書付表等」からは次の2つの書類をダウンロードします。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(1から4面)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(5面)
ダウンロードができたら次は記入に移りましょう。
譲渡所得の内訳書に記入
最初に「譲渡所得の内訳書」に記入していきましょう。
第1~第2面までの記入内容は以下の通り。
- 不動産の所在地
- 土地・建物の種類
- 利用状況
- 売買契約日・引き渡し日
- 買主の住所・氏名・職業
- 譲渡価格
- 代金の受領状況
- 売却した理由
そして第3面には以下の項目に記入します。
- 不動産の購入先・支払先・譲渡価額の5%
- ※減価償却費・取得費
- 仲介手数料・印紙税の支払先・支払金額
- 譲渡所得金額(取得期間5年以内は「短期」、5年超は「長期」に印を付けましょう)
マイホームなど土地と建物の両方を売った場合は、それぞれ分けて記入する必要があるので注意してください。
申告書B第一表に記入
次に申告書Bの記入です。
まず、上の写真の上部、赤の四角部分に「確定」と記入します。
次いで以下の記入をします。
- 個人情報
- 収入金額等
- 所得金額
これらの記入は、最新の源泉徴収票に記載されているものを書きうつします。
また、「所得から差し引かれる金額」へも忘れずに記入しましょう。
申告書B第二表に記入
第一表への記入が終わったら次は第二表へ記入します。ここへは基本的には源泉徴収票の内容を書き写すだけなのでそこまで難しくない作業です。
「所得の内訳」に収入金額および源泉徴収額を記入し、「社会保険控除」の欄内の「支払い保険料」には源泉徴収票の金額を記入します。
ここまで記入したら、「生命保険控除・地震保険控除」には「源泉徴収票と同じ」と記入するだけで大丈夫です。
申告書第三表に内訳書の内容を書き写す
次は最初に作成した内訳書の内容を申告書第三表に転記します。
以下の表に、内訳書のどの内容を申告書第三表のどの部分に転記するかをまとめました。
内訳書 | 申告書第三表 |
4-A:収入金額 | 「収入金額」の該当項目 |
4-B:必要経費 | 〇分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項「必要経費」 |
4-C:差引金額 | 〇分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項「差引金額」 |
4-E:譲渡所得金額 | 「所得金額」の該当項目 |
1-(1):所在地 | 〇分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項「所得の生ずる場所」 |
上記の記入が終わったら、次に「税金の計算」という欄に記入していきます。
ここは申告書B第一表の記載内容を書き写していきます。書き方は下の表を参考にしてください。
申告書B第一表 | 申告書第三表 |
「所得金額」の合計 | 総合課税の合計額⑨ |
「所得から差し引かれる金額」の合計 | 所得から差し引かれる金額㉕ |
第三表左下「税金の計算」に記入
ここは少し難しいかもしれませんが、説明を読んで正確に記入していきましょう。
第三表の左下に「税金の計算」という項目があります。
記入が必要なのは以下のの3項目ですl.
- 64対応分(71)
- 66対応分(73)
- 合計(78)
まず、「66対応分(73)」に記入する方法から説明します。
こちらに記入する数字は、以下のように計算してください。
66番に記入した数字(所得金額)× 所得税率
所得税率は、所有期間5年以内の場合は30%、5年超の場合は15%で計算します。
次に64対応分(71)に記入する数字の算出方法です。
64番に記入した数字(所得金額)× 所得税率-控除額
なお、ここで計算する税率・控除額は、所得金額に応じて決まっています。下の表を参考にしてください。
所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
1,000円以上195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上900万円未満 | 33% | 636,000円 |
900万円以上1800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円以上 | 40% | >2,796,000円 |
最後に申告書B第一表の右側に記入
ここまで来たらあと少しで完成です。これまでに記入した第二表および第三表の数字を使って申告書B第一表の右側に記入し、確定申告の書類の完成となります。
第二表・第三表のどの部分を第一表に計算・記入するかを下の表にまとめました。
第二表・第三表 | 申告書B第一表 |
第三表86番 | 「税金の計算」上の㉖に対する税額(㉗) |
再差引所得税額(㊵) | ㊳-㊴ |
復興特別所得税額(㊶) | ㊵×2.1% |
所得税及び復興特別所得税の額(㊷) | ㊵+㊶ |
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額(㊺) | ㊷-㊸-㊹ |
所得税及び復興特別所得税の第3期分の税額 (㊼) | ㊺-㊻ |
不動産売却をe-Taxで確定申告する場合
e-Taxで確定申告する場合は、紙で申請する内容をパソコンの画面上で入力します。
e-Taxのマニュアルも公開されているので、詳しくはそちらをご覧ください。
e-Taxソフト操作マニュアル
リンク:http://www.e-tax.nta.go.jp/manual/clientmanual_all.pdf
忙しい方は税理士に不動産売却の確定申告をお願いする方法も
確定申告は、個人でも今回紹介したようにステップを踏んで、記入漏れの内容に注意すれば出来ないことはないでしょう。
しかし、慣れないひとは時間と労力がかかるというのも事実です。普段仕事をしていてさらに確定申告の書類作成に時間を取られるのはいやだという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、税理士にお願いするというのも一つの方法です。税理士は税のプロです。売却時に入手した書類をすべてきちんと渡せば、あとの計算はすべてやってくれます。
費用も5~10万と、決して払えない金額ではありません。「年度末の忙しいときにこれ以上負担を増やしたくない!」という方は、税理士への依頼も検討してみてくださいね。
不動産売却の確定申告まとめ
税金の計算と聞くと拒絶反応が出てしまう方も多いと思いますが、どんな書類が必要で、計算方法や記入方法がわかればそこまで難しくはありません。
もちろん時間的にも労力的にも個人で確定申告をするのは難しいという方は、税理士にお任せするのも方法です。
不動産売却をして売却益がでれば確定申告は必ずしなければなりませんし、期限をすぎるとペナルティもあるので、個人でするにせよ税理士にお願いするにせよ、後回しにはしないでおきましょう。