マンションと一軒家を比較!2020年に購入するならどっち?

夢にまでみたマイホームを選ぶのは、とても楽しい反面悩みも多いです。

中でもマンションにするか一軒家にするかの悩みは多くの方が直面する悩みです。マンションと一軒家、いったいどちらが良いのかはこれまで様々なメディアでも取り上げられ、議論されてきました。どちらも一長一短ありますし、結局は好みの問題と言ってしまえばそれまです。

しかし2020年現在、特にマンションの価格は高騰しています。東京オリンピックを目前にして、このような現在の状況の中でマンションと一軒家を比較する際、どのように考えれば良いでしょうか。

今回の記事ではそんな現在の不動産市況を踏まえながらマンションと一軒家を徹底比較していきます。

まずはマンションと一軒家の特徴を徹底比較

マンション 一軒家 比較 特徴

ここではマンションと一軒家の特徴を比較していきますが、まず実際に今の日本ではマンションと一軒家どちらの方が多いでしょうか。

最近ではマンションを買われる方が多いので、マンションの方が多いイメージを持っている方も多いでしょう。下記は平成30年度のマンションと一軒家の全国の世帯数の割合です。

一軒家 マンション 比較

参照:e-start「平成30年住宅・土地統計調査」より当サイト作成

上記の表から分かる通り、全国の世帯数で見れば一軒家の方が圧倒的に多いのが現状です。にもかかわらずマンションが注目されているのは都市部を中心に、マンションを選ぶ方が増え続けています。

そしてそれに伴ってマンション価格が上がり続けています。特に都心の中でも中心部にある中央区・港区・千代田区の都心3区でのマンション割合は7割を超えています。

ひと昔前では富裕層と言えば渋谷区松濤などの高級住宅街の大きな一軒家に住んでいるイメージが強かったですが、今では富裕層と言えば都心の高級マンションの上層階を選んでいます。

このようなイメージから、マイホームを買う際にはマンションを選ぶ方も増えており、マンションと一軒家で悩む方も同じように増えています。今回の記事ではマンションと一軒家と比較をしていきますが、まずはその前に既にマイホームを購入した先輩たちの意見を聞いてみましょう。

マンション・一軒家を選んだ理由

マンション 一軒家 購入理由

参照:国土交通省「平成30年度住宅市場動向調査」より抜粋

上記の表は一軒家とマンションを選んだ方の購入理由をまとめたものです。両者を比較して一番特徴的なのがマンションの購入理由の7割が、「住宅の立地環境」を理由に選んでいることです。マンションの場合は都市部を中心に駅近の立地が多いことが一般的ですから、多くの方が立地を優先して住宅を選んでいると言えます。

一方で、一軒家を購入した方の理由で上位を占めるのが「一軒家だから」「新築だから」という理由です。加えて「立地環境」が上位を占めていることを考えると、一軒家を選ぶ方はマイホームと言えば「新築一戸建て」をイメージしている方が多いと推測されます。

このようにマンションと一軒家を比較した場合、マンションを選ぶ方は立地重視、一軒家を選ぶ方はマイホームへの拘りが強い方が多いと言えますが、理由はそれだけではありません。一軒家とマンションのそれぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

マンションと一軒家、それぞれの特徴

マンションと一軒家を比べると、それぞれに特徴があります。この点は多くのメディアでも議論されている点ですので、見た事のある方も多いかも知れませんがおさらいの意味もかねて改めて比べていきましょう。

立地

一般的に同じエリアの同じ価格帯のマンションと一軒家であればマンションの方が駅から近いなどの立地面は優れています。

マンションの場合、物件によっては駅からデッキや地下通路で直結しており雨の日でも傘がいらないような物件もあります。一方、一軒家の場合は駅から少し距離はありますが閑静な住宅街などが多いです。

セキュリティ

セキリティなどの防犯面でもマンションに軍配があがります。マンションは自宅の鍵だけでなくオートロックや防犯カメラ、24時間管理人がいる物件もあったりと何重もの対策がしてあります。

一軒家の場合は玄関の鍵だけなのが一般的です。加えて最近の一軒家では土地が十分に確保できないため、塀や門などもない家が一般的ですからセキュリティ面ではマンションに比べると劣っていると言えるでしょう。

物件価格

同じエリアで同じ立地であれば、一般的にはマンションの方が価格も安くなります。しかしこれはエリアや物件のグレードによって大きく変動します。2019年12月における首都圏のマンションと一軒家の平均販売価格は下記の通りです。

 地区 マンション 一軒家
東京23区 7,444万円 6,784万円
東京都下 4,332万円 6,784万円
神奈川県 5,286万円 5,944万円
埼玉県 4,241万円 4,088万円
千葉県 4,274万円 3,654万円

参照:不動産経済研究所(東京都の価格の平均値)

上記のように首都圏エリアにおけるマンションと一軒家の価格を比較してみると、エリアによって差があるのが分かります。特に首都圏では23区内におけるマンションの価格が突出して高いことが分かります。

これ以外の地域においても近年ではマンション価格は全体的に高騰が続いており、マンションと一軒家の価格差が縮まっているのが現在の状況です。

住宅の広さ

住宅の広さでは一軒家の方が勝っています。マンションの広さの平均は70㎡前後と言われていますが、一軒家の平均面積は90㎡です。

ただし、マンションの場合は物件によってはパーティールームなどの共用施設のある物件もありますから、単純に専有面積だけで比較することのないようにしましょう。

駐車場や庭

駐車場や庭などのエクステリア関連でも、一軒家の方が勝っています。一軒家では土地の広さにもよりますが、駐車場や庭などがあるのが一般的なのに対して、マンションでは庭はありません。

駐車場は物件によってはありますが、別途駐車料金が必要になります。また戸数分の駐車場を確保できていない物件もあり、抽選で漏れてしまった場合には、近隣に月極駐車場を確保しなければならない場合もあります。

ご近所との関係性

マンションの方が隣人との関係が近く、コミュニティが形成されやすいと言えるでしょう。しかし、近隣との距離が近いだけにベランダでの喫煙がNGだったりと、周囲への配慮が必要になります。

一方で一軒家の場合は、近隣とも一定の距離間は確保されているのでプライバシーは確保できていますし、喫煙やペットなども自由です。この点については好みが分かれると言えるでしょう。

住宅内のプライバシー

一般的にはマンションの室内の構造は平面です。そのため家族がいつも近くに感じられる一方で、一軒家の場合は2階建が中心ですから、部屋ごとに独立している造りになっており住宅内のプライバシーは確保しやすいと言えるでしょう。

火事や地震への対策

火事や地震などの災害に対しては、マンションの方が優位性があります。一般的には一軒家の構造は木造が多いのに対し、マンションは鉄筋コンクリート造りです。マンションは物件にもよりますが、耐震や免震などの地震に強い構造で作ってあります。

一軒家のように地震で倒壊したり、火事で全焼というのは考えずらいでしょう。火災保険などもマンションの場合は割引になる場合もあります。

修繕や改修への備え

マンションでも一軒家でも、年数が経てば住宅の補修が必要です。どのようにマイホームの補修を行っていくかは、マンションと一軒家では大きく異なります。マンションは居住者全員で計画的に行っていくのに対して、一軒家は自分次第です。

マンションでは毎月管理費や修繕積立金などを各住戸から集めて、必要な際に必要な修繕を行います。大規模な修繕や建て替えなどは住民による多数決で決められていきますから、時には意図しない追加の出費が必要になります。

一方、一軒家は自分の判断と資金で全てを行っていく必要があります。自分の判断で修繕などを行っていけるので、この点では一軒家の方がストレスは少ないと言えるでしょう。

住宅設備や仕様

住宅には建物以外にも様々な設備があります。最新の便利な設備を導入することで、とても便利に生活することが出来ます。マンションと一軒家で設備を比較すると、引き分けと言っていいでしょう。

ただマンションの方が大きな物件が多いため、スケールメリットを活かして一軒家では導入しづらい設備が入っている場合が多いです。例えば生ごみを粉砕するディスポーザや床暖房などは、標準で入っているマンションは多くあります。

一方一軒家では太陽光システムや、オール電化などの省エネ関連の設備が普及し始めています。上手く導入することで毎月日の光熱費を大きく抑えることが可能になります。

どちらがお得?一軒家とマンションのコストを徹底比較

マンション 一軒家 比較 コスト

マンションと一軒家の特徴について比較してきましたが、やはり一番気になるのが価格ではないでしょうか。どちらが経済的にメリットがあるのかは、マイホームを決める大きな要因の一つです。ここではマンションと一軒家の価格について比較していきます。

価格と言うと、どうしても購入の際にかかるコストだけを比べてしまいがちですが、それだけで判断してしまうのはとても危険です。マイホームは長い期間住み続ける訳ですから購入時のコストだけでなく、住み始めてからのコストも合わせて比較することがとても重要です。

マンションと一軒家に関わる様々なコストについて比較をしていきましょう。

購入時のコスト

不動産経済研究所のデータによると、2019年12月の首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)における新築マンションの平均販売価格は5,876万円、一軒家の平均販売価格は5,580万円となっています。

しかしマイホームを購入する場合に必要な費用はこれだけではありません。物件価格とは別に様々な諸費用が必要になります。諸費用がどれくらい必要になるかは、マンションと一軒家によって違います。今回は5,876万円の新築マンションと、5,580万円の新築戸建てを購入したとして、比較していきましょう。

共通のコスト

マンション・一軒家ともに必要になる共通の諸費用には下記のようなものがあります。

  • 印紙税(売買契約・ローンの借入契約書)
  • 登記費用(所有権移転・抵当権設定に必要な費用)
  • 住宅ローンの費用(手数料や保証料)
  • 不動産取得税
  • 固定資産税

上記の諸費用は地域や物件によって違いはありますが、概ね物件価格の3~5%程度と言われています。今回のケースで計算すると、

マンションの場合 5,876万円×5%=約294万円
一軒家の場合   5,580万円×5%=約279万円

となります。

それぞれのコスト

続いて、マンションと一軒家でそれぞれに必要なコストです。

マンション 一軒家
修繕積立金 約30万円 0円
火災保険料 約10万円 約40万円
仲介手数料(物件価格の3%+6万円) 0円 約173万円
水道加入負担金 0円 約30万円
合計 約40万円 約243万円

このように200万円以上の差が出る場合もあります。内容を見ていきましょう。

修繕積立金とはマンションの将来の修繕へ供えた積立金です。マンション入居後に毎月数万円が必要になりますが、加えて入居時に一括で求められる場合も多いです。金額は物件によってまちまちですが都心の物件では30万円程度の場合が多いようです。

火災保険は、火災や地震に備えた保険です。木造が中心の一軒家に対し、マンションの方が鉄筋コンクリート製で作られており災害には強いため保険料は安くなります。

仲介手数料とは、仲介する不動産会社へ支払う手数料です。新築マンションの場合は売主が不動産会社の場合が多いので、仲介手数料が不要です。一軒家の場合も物件によっては不要な場合もあるので良く確認しましょう。

水道加入負担金は新築戸建ての際に自治体に払う費用ですが、自治体によっては不要なケースや物件価格に含まれている場合もあります。

以上がそれぞれに必要なコストです。では購入時にかかるそれぞれの費用を比べて見ていきましょう。

費用の種類 マンション 一軒家
物件価格 5,876万円 5,580万円
共通のコスト 294万円 279万円
それぞれのコスト 40万円 243万円
合計 6,210万円 6,102万円

マンションの方が諸費用は安く抑えられますが、物件価格が高い分合計金額としては高くなる傾向にあります。

ただしこれは首都圏の新築価格での比較になります。物件の価格はエリアによって大きく差がありますが、その点については後ほど詳しく説明します。

維持管理のコスト

マンションでも一軒家でも、物件を購入した後も常に費用が発生します。物件を維持・管理するためのコストには大きく下記のようなものがあります。

  • 固定資産税
  • 管理費
  • 駐車場代

これらのコストは物件を保有している間は常にかかるコストです。マイホームを購入してから30年間のコストについて比較していきましょう。

固定資産税

固定資産税とは不動産を保有している人に課される税金で、毎年の税額は保有している物件の固定資産税評価額という評価額を基準に決められます。固定資産税評価額は物件毎に各自治体が評価を行って決めますが、土地の場合は時価の約70%、建物の場合は建築価格の60%程度が相場と言われています。

また、建物の評価額は毎年耐用年数に応じて価値が下がっていきます。木造の一軒家の方が、鉄筋コンクリートで造られているマンションに比べると耐用年数は短く設定されているため評価額の下がるスピードが速いことになります。

加えて一軒家とマンションでは物件価格に対する土地と建物の割合に違いがあります。一般的に物件価格に対する土地と建物の価格の割合は、一軒家の場合で土地7建物3、マンションの場合は土地3の建物7と言われています。

更に固定資産税には、住宅用の不動産の場合には下記のような軽減税率が設定されています。

【住宅用土地】

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分)・・・固定資産税評価額×1/6
  • 一般住宅用地(200㎡を超える部分)・・・固定資産税評価額×1/3
【新築の建物】

  • 一般の住宅・・・新築後3年間にわたり固定資産税額が1/2
  • 3階以上の耐火構造、準耐火構造住宅・・・新築後5年間にわたり固定資産税額が1/2
  • 認定長期優良住宅に該当するマンション・・・新築後7年間にわたり固定資産税額が1/2

以上を踏まえて、今回のケースで試算を行って見ましょう。まずマンションの場合です。

購入価格5,876万円に対する建物・土地の内訳→建物価格(7割)4,113万円、土地価格(3割)1,763万円

建物の固定資産税評価額=4,113万円×6割=2,468万円

土地の固定資産税評価額=1,763万円×7割×1/6=206万円

初年度固定資産税額=2,468万円×税率1.4%×1/2+206万円×税率1.4%=172,760円+28,840円=201,600円

上記の計算は先ほど紹介した軽減税率が適用になると仮定し、建物・土地の割合や評価額も一般的な目安を例として用いた初年度の試算です。実際の固定資産税評価額は物件毎に大きく変わりますのでご注意ください。

続いて一軒家の固定資産税額を見ていきましょう。

購入価格5,580万円に対する建物・土地の内訳→建物価格(3割)1,674万円、土地価格(7割)3,906万円

建物の固定資産税評価額=1,674万円×6割=1,004万円

土地の固定資産税評価額=3,906万円×7割×1/6=456万円

初年度固定資産税額=1,004万円×税率1.4%×1/2+456万円×税率1.4%=70,280円+63,840円=134,120円

このように1年目の固定資産税だけで約7万円程度一軒家の方が安いです。上記は固定資産税だけの試算ですが、実際には固定資産税とは別に都市計画税が0.3%程度の税率で必要になりますので、その差はより大きくなるでしょう。

更に、2年目・3年目と経過するにつれて一軒家の方が建物の価値が下がっていくペースが速いため、その金額差はより大きくなります。上記のケースで固定資産税と都市計画税の差額を30年間で計算すると、マンションに比べて一軒家の方が約500万円も安い計算になります。

管理費・駐車場代

マンション特有のコストとして管理費があります。管理費とはマンションのエレベーターや廊下等の共用部分を維持するために、各住戸の住民が負担する費用です。

国土交通省の平成30年マンション総合調査によると管理費の平均費用は月額10,862円となっています。

駐車場代もマンションの場合は毎月必要となるコストです。駐車場代の都内の平均では3万円程度、地方でも1万円程度が毎月必要になります。管理費を月1万円、駐車場代を月1万5千円とすると、毎月2万5千円×30年では900万円もの費用になります。

管理費1万円+駐車場代1万5千円×12か月×30年=900万円

管理費も駐車場代も、一軒家の場合は不要のコストです。

修繕のコスト

マンションでも一軒家でも、年数が経過すると建物の修繕をする必要があります。外壁や構造に関する修繕ともなると大きな金額に必要になりますが、その資金を捻出する方法はマンションと一軒家では大きく違います。

マンションの修繕費

マンションの場合は、将来の大規模修繕へ供えて各住戸から毎月積立金を集めます。国土交通省の平成30年マンション総合調査によると、修繕積立金の全国平均は12,268円と管理費よりも少し高い水準です。

ですが多くのマンションで修繕積立金は不足していると言われており、築年数が経過したあとも修繕積立金が引き上げられるケースも多くあります。そのため実態の負担額としては、15,000円~25,000円程度の場合が多いです。

マンションの修繕積立金=毎月20,000円×12か月×30年=720万円

ただしマンションの場合、これらの修繕は外壁や構造などの共用部分に関する修繕に使われるのみで、水回りなどの専有部分の修繕は含まれていないことがポイントです。

一軒家の必要な修繕

マンションと違って一軒家の場合は、必要な修繕資金は全て自分で準備する必要があります。木造の一軒家に30年住んだ場合に必要な修繕は下記の通りです。

修繕の内容 修繕の周期 費用の目安 30年間の回数 合計金額
外壁塗装 10~15年 100万円 2回 200万円
屋根の塗装 15~20年 50万円 2回 100万円
床の張替 25年 65万円 1回 65万円
クロス張替 5~10年 10~30万円 4回 80万円
トイレ 20~25年 50万円 1回 50万円
お風呂 20~30年 110万円 1回 110万円
キッチン 20~30年 130万円 1回 130万円
合計金額 735万円

30年間で必要な修繕合計額は735万円とマンションの修繕積立金とほぼ同額となっています。一軒家の場合の修繕費は、建築時のハウスメーカーや使用している設備や建材、メンテナンスなどによって大きく変わります。不動産ジャパンの統計では、築35年の平均修繕費の合計は556万円となっています。

先程も説明したようにマンションの修繕積立金には専有部分の修繕費などが含まれていないこと、多くのマンションが修繕費の積立不足となっていることなどを考えると、一軒家の方が修繕費は安い場合が多いと言えるでしょう。

マンションと一軒家のコスト比較まとめ

ここまで説明してきた、マンションと一軒家の30年間の総コストについてまとめると下記のようになります。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 5,876万円 5,580万円
購入時諸費用(共通コスト) 294万円 279万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 243万円
固定資産税(30年累計) 966万円 476万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 900万円 0万円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 8,796万円 7,313万円

上記のように物件購入後の30年間のコストを比較すると、マンションの方が一軒家に比べると1,400万円以上もコストが高いことになります。

一般的には一軒家は購入時にコストが多くかかり、マンションはじわじわとコストがかかると言われています。そのため30年間という長い期間で比較するとこんなにも大きな差が出ることになります。

しかしここで注意しておきたいのが、物件価格は地域によって大きな差があることと、実際のライフプランでは30年目以降の費用も試算する必要があることです。マンションと一軒家のコストについて比較した多くの記事では、エリアによる物件価格差や30年を超えた超長期での観点で比較している記事は少ないです。

実際の生活により落とし込んで比較できるように、今回の記事ではもう少し掘り下げて比較をしていきます。まず、地域別のコストを比較していくことにしましょう。

地域別のマンション・一軒家のコストを徹底比較

マンション 一軒家 比較 地域別

東京23区内におけるマンション価格が高騰していることはご存知の方も多いでしょう。マンションや一軒家は地域や立地によって、同じグレードの物件であっても大きく違います。

これまで説明したきたようなコストを比較する場合には、地域毎の価格差を織り込んだうえで比較する必要があります。

ここでは、日本の各地域におけるマンションと一軒家それぞれの価格と維持費についての試算を見ていきましょう。

北海道・東北

まずは北海道及び東北地方のマンションと一軒家のコストを見ていきましょう。レインズによるこのエリアでの直近2年間の成約価格の平均は、マンションが1,700万円、一軒家が1,993万円となっています。

このエリアは戸建てが多いイメージがありますが、札幌市や仙台市を中心にマンション需要も多く直近の成約件数はマンションも戸建てもほぼ同じ水準となっています。

この金額をもとに先ほどの例と同じように、購入後30年間のコストの試算を行った結果は下記のようになります。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 1,700万円 1,993万円
購入時諸費用(共通コスト) 85万円 100万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 136万円
固定資産税(30年累計)  290万円 206万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 540万円 0円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 3,375万円 3,170万円

固定資産税は先ほどの事例と同様に計算、駐車場代は5千円で試算。その他のコストは同水準にて計算。

先ほど紹介した首都圏の例と比べると、物件の価格差はほぼ同じであるにもかかわらず固定資産税や駐車場代が安いことが影響し、30年間の保有コストはほぼ同じです。

物件の価格差が同じであっても、地域によってトータルコストが大きく変わるのがお分かり頂けるでしょう。

首都圏

続いて首都圏です。近隣県を含んだ首都圏の事例は先ほどの説明で既に行いましたので、ここでは東京23区に限定して試算を行います。東京23区における平均成約価格はマンションが4,816万円、一軒家が5,525万円となっています。

先ほどの首都圏の事例が新築に限定しているのに対し、こちらは中古も含んだ金額となっているため価格は低くなっていますが、他の地域と比較すると突出しています。

先ほどの例と同じように、購入後30年間のコストの試算を行った結果は下記のようになります。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 4,816万円 5,525万円
購入時諸費用(共通コスト) 241万円 276万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 242万円
固定資産税(30年累計) 824万円 564万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 1,080万円 0円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 7,721万円 7,342万円

駐車場代は月2万円で計算。

首都圏においては、やはり一軒家に比べるとマンションの方が30年間のトータルコストは高くなります。固定資産税や駐車場などがその要因の一つなっていますので、車を持っていない方であればもう少しコストは抑えられるでしょう。

先ほどの北海道・東北地方と比較すると、トータルコストが倍以上になっているのも注目すべきポイントと言えます。

中京圏

次は、名古屋を中心とした中京圏です。このエリアは全国の中でも一軒家の需要が高いのが特徴です。中京圏における平均成約価格はマンションで2,052万円、一軒家で2,794万円となっています。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 2,052万円 2,794万円
購入時諸費用(共通コスト) 103万円 140万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 160万円
固定資産税(30年累計) 357万円 286万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 720万円 0円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 3,992万円 4,115万円

駐車場代は月1万円で計算。

このエリアの特徴は一軒家の価格が比較的高額であるため、これまで紹介してきたエリアと違ってマンションの方が割安になります。一軒家の需要が高い名古屋エリアの特徴が良く出ている結果と言えるでしょう。

近畿圏

東京に次ぐ日本第2の都市である大阪や、近年価格が高騰している京都を有する近畿圏です。このエリアはインバウンドニーズも旺盛で海外からの注目も高いエリアです。このエリアの直近成約価格は、マンションで2,271万円、一軒家で2,246万円となっています。

マンションと一軒家の価格差があまりないのは首都圏と同じ傾向と言えますが、価格自体が首都圏と比較すると半額以下となっています。このことからも、不動産価格の上昇が東京圏に突出していることが分かります。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 2,271万円 2,246万円
購入時諸費用(共通コスト) 114万円 112万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 143万円
固定資産税(30年累計) 389万円 229万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 720万円 0円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 4,254万円 3,465万円

駐車場代は月1万円で計算。

近畿圏でも首都圏と同じようにマンションの方がコスト高になりますが、その総額は首都圏とは大きく違います。

中四国圏

続いて、広島を中心とした中四国地方の試算です。このエリアは全体に比べると成約件数の少ないエリアであり、逆に言うと平均とは言え、地域や物件毎に差があるエリアです。中四国圏の平均成約価格はマンションで1,876万円、一軒家の場合で2,013万円です。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 1,876万円 2,013万円
購入時諸費用(共通コスト) 94万円 101万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 136万円
固定資産税(30年累計) 320万円 229万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 540万円 0円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 3,590万円 3,214万円

総コストはやはり若干マンションの方が高くなりますが、他の地域に比べると総コストが一番安いのがこのエリアの特徴と言えます。

九州圏

続いて九州地域を見ていきましょう。九州の中心でもある福岡は、東京よりも韓国の方が近いなどの立地が功を奏し、近年が訪日観光客が増えている地域です。このエリアの平均成約価格はマンションで1,755万円、一軒家で2,384万円となっています。

 費用 マンション 一軒家
物件価格 1,755万円 2,384万円
購入時諸費用(共通コスト) 88万円 119万円
購入時諸費用(それぞれ) 40万円 148万円
固定資産税(30年累計) 301万円 242万円
管理費・駐車場代(30年間累計) 540万円 0円
修繕コスト(30年間累計) 720万円 735万円
合計 3,444万円 3,628万円

駐車場代は5千円で計算。

九州エリアも、中京エリアと同じくマンションよりも一軒家の方が総コストが高くなる特徴があります。

マンションと一軒家の今後の価格を徹底比較

マンション 一軒家 比較 価格

これまでマンションと一軒家を購入した場合の維持費や修繕費を含めた30年間のコストを比較してきました。しかしこれだけでは正しく両者を比較出来ているとは言えません。マンションと一軒家、どちらが経済的にメリットがあるかを完全に比較するには、将来の資産価値を考える必要があります。

一般的には資産価値が高い方が売却する際に高く売れますから、メリットがあります。一方で資産価値が高いということは、固定資産税や相続税などの税金も高くなるというデメリットもあります。

いずれは買い替えを予定しているのであれば、資産価値の高い物件が良いですし、終の棲家として選ぶなら資産価値にはそこまで拘る必要がたいとも言えるでしょう。

資産価値は不動産の相場によっても変動するので、資産価値を検証する場合は不動産の相場を知ることが重要です。まずは、マンションと一軒家それぞれの価格動向を見ていきましょう。

マンションの価格動向

参照:国土交通省「不動産価格指数」

上記の表はマンションや戸建てなどの直近の物件価格の相場をグラフにしたものです。上記のグラフで確認できる通り2013年以降他の不動産価格と比較すると、マンション価格は突出して上昇しています。

これだけマンションの価格が上昇しているには様々な要因がありますが、2013年に行われた日銀による大規模な金融緩和が価格上昇のきっかけとなっています。金融緩和によるカネ余りの中、東京オリンピックやインバウンドによる都心のマンションに注目が集まった結果、余剰マネーが不動産に向かった結果の上昇と言えます。

過去同じように不動産価格が上昇をしていたがバブル経済の時代でしたので、現在の状況はマンションバブルと言われたりもしています。そしてそのバブルによる不動産価格の上昇が反転するきっかけとなったのは、総量規制と呼ばれる金融引き締め政策がきっかけです。

過去の例を参考にするならば、現在のマンション価格の高騰が反転するのは現在の金融緩和政策が変わる頃ということになります。現在の足元の金融政策は日本だけでなく、ヨーロッパやアメリカでも緩和方向で進んでいることを考えると、当面はマンション価格が下落することは想定しずらいと言えるでしょう。

しかし日本全国どこのマンションも同じ状況かと言うと、そうではありません。これまで説明した通り東京のマンション価格は、他の地域に比べると倍以上の価格差があります。東京のマンション価格の高騰が、他のエリアのマンション価格にも影響を与えているのが今の状況です。

東京オリンピックが終わり、過熱感が一服する今後のマンション価格は地域によって差が開いていく可能性があります。マンションの今後の資産価値を考える場合、エリアや立地を踏まえて考えると良いでしょう。

一軒家の価格動向

続いて一軒家の価格を見ていきましょう。マンションと違って金融政策に左右されにくいのが一軒家の相場動向の特徴です。

上記のグラフによると、マンションほどではないですが戸建ても少しづつ価格が上昇をしています。一軒家の場合は、物件に占める土地価格の割合が高いことからマンションのように投機的な要因は影響を受けづらく、資産価値の上昇も土地の値上がり分とも言えるでしょう。実際、毎年公表される路線価や公示価格は徐々に上昇しています。

また一軒家の場合は、建物が木造や軽量鉄骨が中心という特徴があります。鉄筋コンクリートが中心のマンションと比べると、建物自体の耐用年数が短いという特徴があります。そのためどうしてもマンションに比べると一軒家の方が中古の価格は下がりやすいという傾向がありますが、ある一定の年数を超えると反転します。この点については後ほど詳しく解説をしています。

土地の価格の上昇は、マンションの場合と同じくバブル時代が先例です。そうするとやはり金融政策の如何によって相場は左右されますが、今後の土地価格を予想するにあたって見過ごせないのが2022年問題です。2022年問題とは様々なメディアでも議論されているテーマですが、今後郊外を中心とした一軒家が多いエリアの不動産価格に影響を与えることが予想されています。

【2022年問題】

東京などの都市部で農地として指定されている生産緑地が、2022年に大量に農地から宅地へと転用、もしくは売却出来ることが可能になるため、それによる不動産価格の影響が懸念されている問題。多くの生産緑地が東京・大阪・名古屋の大都市圏に集中しており、土地の広さも相応にあることから土地価格の下落が議論されているが、多くの立地が駅から離れているなどの立地上の問題があること、また用途が限られていることから現状維持で影響は軽微との見方も多い。

生産緑地として指定されているエリアは、都市部とはいえ駅から10分以上離れた立地が多くマンションよりもファミリー向けの一軒家などが多い立地です。そのため2022年問題による影響があるとすると、一軒家の方だと言われています。

ただし、2022年にどれだけの生産緑地が宅地として売却されるかは未知数です。生産緑地を所有している方でも農業を続ける方はそもそも売却しないでしょうし、先祖から引き継いだ土地を売りたくないと考える方もいるでしょう。売却ではなく、相続対策として賃貸アパートを建築するという選択肢もあります。

このような要因を考えると、この問題によって一軒家の価格が大きく下がるというのは考えずらいのが現状です。一時的に下がる可能性ももちろんありますが、やはり大きく下がるきっかけとしては金融引き締めやリーマンショックなどの経済イベントの方が可能性は高いでしょう。

マンションと一軒家、長い目で見るとどちらがお得?

マンション 一軒家 比較 得

これまでマンションと一軒家の特徴、価格動向や30年間のコストなどについて比較をしてきました。しかし本当にマンションと一軒家を悩んでいる方の中には、結局どっちが得なの?と考える方もいるでしょう。

マンションにしても一軒家にしても、一生住み続ける予定で購入する方が多いです。経済的なコストで比較する場合は、30年という限られた期間ではなく、より長い期間で比較することが大切です。

投資用不動産を買われたことのある方はお分かりになるかと思いますが、物件を買う場合「出口」を意識しています。出口とは、投資におけるゴールを意味する言葉ですから、不動産投資においては一般的には「売却」を意味する場合が多いです。

投資用で不動産を購入するということは、リターンを得るために購入をします。不動産投資におけるリターンは大きく二つあり、保有期間中の賃料収入による利益と売却時の利益です。

この2点を総合的に予想して最終的に利益(リターン)が残ることを予想して物件を購入します。そのため出口である売却価格がどれくらいになるかに加えて、保有期間中の賃料収入がどれくらいあるのかを計算して、投資の判断を行います。

【投資用不動産のリターン】

リターン(出口の利益)=保有期間中の賃料収入+売却による利益

一方で、マイホームを購入する場合に出口を意識する方は少ないでしょう。投資用不動産と違ってマイホームの場合は売却を前提としていないので、出口を意識することは難しいかもしれません。しかし、売却を前提としていないからこそ出口を意識する必要があるとも言えます。

マイホームを購入し、その後売却をしなかった場合は生涯住み続けることになりますが、その後のことも考える必要があります。30年という区切りではなく、更に長い期間住み続けるには大規模なリフォームや建て替えが必要な場合もあります。

よってマンションと一軒家では、その際の費用負担も大きく変わってきます。更に生涯住み続けたマイホームは、自分が亡くなった後は子供や配偶者などの家族や親族が引き継ぐことになります。

投資用不動産における出口が売却を意味するのと同じように、マイホームを購入する場合の出口戦略の一つとして、相続や建替え・売却を意識する必要があります。

マイホームを購入する場合は、ここまでのコストを比較して検討する必要があります。長期にわたって不動産を保有する場合の、マンションと一軒家のコストについて見ていきましょう。

建て替えや大規模修繕

参照:国土交通省「住宅市場動向調査」より抜粋

上記の図は、国土交通省の統計によるマイホームを購入する方の平均年齢です。新築の一軒家で37歳、マンションで38歳となっています。一方で日本人の平均寿命は男性で81歳、女性で87歳と言われています。

つまり、長い場合で一度買ったマイホームには50年以上も住むことになります。もちろん、途中で買い替えたりするケースもありますが一度買ったマイホームに生涯住み続ける方も多いです。

マイホームの法定耐用年数は、木造の一軒家で22年、鉄筋コンクリートのマンションで47年とされています。法定耐用年数を過ぎても住むには問題ありませんが、やはり50年以上も済むとなると大規模な修繕や建替えは避けて通れない問題です。

先ほど30年間の修繕については説明をしましたが、生涯の住居としてマンションと一軒家を比べる場合はこの点も頭に入れておいた方が良いでしょう。

一軒家の場合

まずは一軒家に生涯住むとした場合、どれくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。仮に35歳で木造の一軒家を購入し、85歳まで住み続けたとしましょう。そうすると50年間にわたって建物を居住できる状態に維持する必要があります。

木造の一軒家の寿命は一般的には30年と言われていますが、実際にはメンテナンス次第では50年や80年でも持つ場合もあります。

寿命が30年と言われているのには、住み替えによる解体やライフスタイルの変化に伴う建替えなどがあるためです。とは言え木造の一軒家に50年住むと仮定すると、途中で建替えをしなければならない場合が多いでしょう。

一軒家を建替えする場合の費用は、数千万円になります。建替えをする建物の規模によって実際は大きく変わりますが、一般的な延床30坪程度の一軒家で1,500万~2,500万程度かかります。

50年という長い期間を住むためには、日常的な修繕に加えてこのような建替え費用も考慮する必要があります。

先程の説明で、一軒家の30年間の改修費の平均は735万円と説明しました。30年間で735万円ですから、年間にすると約25万円になります。そうすると、一軒家に50年住むための修繕・維持費の合計は下記のようになります。

50年間の改修費=年間25万円×50年間+建替費用2,000万円=3,250万円

マンションの場合

マンションの場合は、一軒家とは事情が異なります。マンションは一軒家と違って構造は鉄筋コンクリートで造らています。鉄筋コンクリートの法定耐用年数は47年とされていますが、実際の寿命はメンテナンス次第で60年~80年持つと言われています。

実際都内には、築60年を超えるマンションも複数存在しており随時建替えの計画が議論されています。

しかし実際に建替えを行ったマンションは300件程度とまだまだ事例は少ないです。マンションの場合、建替えや修繕などを行う場合住民同士の合意が必要になります。

そのため、建替えが必要な時期が到来しているマンションであっても、住民同士の意見が合わず建替えが行われていないのも実態です。

マンションの建替を実施する場合、その費用はどこから捻出するでしょうか。多くのマンションでは修繕積立金を積み立てていますが、修繕積立金は修繕のための資金であって建替えの際には使えません。

そもそも古いマンションには修繕積立金が無いか、あっても十分な積立てが出来ていないマンションが多いです。

資金が足りない場合は、基本的には各住民が負担して資金を捻出します。その際の各住民の負担はマンションの規模などにもよりますが、2,000~3,000万程度が一般的と言われています。

このような高額な資金負担を全住民が足並みを揃えて行うことは大変難しく、マンションの建て替えが進まない要因の一つです。

ただし、マンションによっては住民の負担なく建替えに成功している物件もあります。これは、建て替え後のマンションの価値を高めることによって、建替えの資金を捻出する方法です。例として、下記のような計画になります。

 広さ 建替え前 建替え後
部屋数 100戸 180戸
各部屋の専有面積 平均80㎡ 平均70㎡
延床面積 10,000㎡ 14,000㎡
階数 15階 20階

上記のように、建替後の建物を大きくして部屋数を増やすことで、増えた部屋を販売して資金を捻出する方法です。この例では建替えによりマンションを大きくして、部屋数を80戸増やしました。

この80戸を新築分譲マンションとして販売することで、建築資金を捻出して各住民の費用負担を減らすことが出来ています。全てのマンションがこの方法で建替えできる訳ではありませんが、建替えに成功しているマンションの事例の一つです。

マンションに50年間住んだ場合の、改修費としては下記のようになります。

【建替えをしなかった場合、もしくは建替えに資金負担がなかった場合】

50年間の改修費=修繕積立金月2万円×12か月×50年=1,200万円

 【建替えに資金負担が必要だった場合】

50年間の改修費=修繕積立金月2万円×12か月×50年=1,200万円+建替え費用2,000万円=3,200万円

資産価値はどう動くか

50年間改修や建替えなどのメンテナンスを行いながら、人生の終末期まで住んだマイホームは最終的には売却をするか相続によって次世代へと引き継がれるケースが多いでしょう。

売却の場合も相続の場合も、その時点でのマイホームの資産価値によって売却資金や必要なコストが変わってきます。ここでは、一軒家とマンションの資産価値の動きを比較していきましょう。

実際の資産価値とは一致しませんが、税務上の建物の資産価値を計算する場合、法定耐用年数を用います。木造の一軒家の建物の法定耐用年数は22年ですから、22年後には価値は0になります。一方でマンションの場合の法定耐用年数は47年ですから、一軒家に比べると建物の下落スピードは緩やかです。

しかし一軒家の場合、建物の価値が0になっても土地が残ります。土地の価値は相場によって変動するものの、建物のように0になるということはありません。マンションの場合も土地の持ち分はありますが、一軒家に比べると土地の比率は低いです。

具体例として下記のパターンの50年間の資産価値の動きを比較してみましょう。

  1. 一軒家(木造)、購入後35年で建替え
  2. 一軒家(木造)、建替え実施せず
  3. マンション(鉄筋コンクリート)、購入後40年で建替え
  4. マンション(鉄筋コンクリート)、建替え実施せず

この4パターンを表にするとこのようになります。

50年後の資産価値としては、建替えをした方が高く、建替えをしなかった場合はマンションよりも一軒家の方が土地の分だけ資産価値が高くなっているのが分かります。

上記の表は資産価値の推移を分かりやすくイメージにしたものですから、実際に売却する際には相場や立地などによって価格は大きく変動します。しかし、一軒家とマンションを比較する際には、長い目でみた資産価値の推移も意識しておくと良いでしょう。

相続が起きたら

売却をする場合は、先ほど説明をした資産価値が高い方が、良い値段で売却が出来ます。では、売却ではなく相続でマイホームを引き継ぐ場合はどのように考えれば良いでしょうか。

相続とは、人が亡くなることにより故人が所有していた財産を、相続人に引き継ぐことを言います。その財産にはマイホームも含まれますから、マイホームはいつかは相続人に引き継がれることになります。

一般的には、配偶者や子供などの親族に引く継がれるケースが多いです。

相続で財産を引き継ぐ際、相続税という税金が発生します。相続税は相続する財産の価格に応じて税金を計算します。つまり、相続によってマイホームを引き継ぐには税金を納める必要があるのです。

実際の計算方法はマイホームなどの不動産だけでなく金融資産などの全ての財産を合計し、その金額に応じて下記のように計算します。

【相続税の計算】

相続税額=相続する財産の金額×税率(10~55%)−控除額

税率は相続する財産の金額に応じて決められていますし、実際の相続税の算出は国税庁のホームページなどを参照すると良いでしょう。

相続税は金額が高いほど税金が高くなる仕組みになっていますから、相続で引き継ぐ際には資産価値の低い方が相続税の金額は抑えることが出来ます。3,000万円と5,000万円を相続する場合を比較してみましょう。

【3,000万円の場合の相続税】

3,000万円×15%−50万円=400万円

【5,000万円の場合の相続税】

5,000万円×20%−200万円=800万円

このように相続税だけで400万円もの差が出ることになります。物件の資産価値は建替えや大規模修繕で大きく変動することは先ほど説明した通りです。そのため、建替えなどは自身の相続にも影響を及ぼすことを意識しておきましょう。

結局、どちらが得になる?

結局どちらが得になるかは、物件を何年保有するかや建替えをするか、売却するのかや相続するのか、また物件の相場や立地によって大きく左右されます。

そのため一概にどちらが得とは決めにくいですが、参考にこれまで説明したきたパターンで試算をしていきましょう。

  1. マンションを35歳で購入、75歳で建替え(建替え負担あり)実施、その後85歳で相続もしくは売却
  2. マンションを35歳で購入、建替え実施せず85歳で相続もしくは売却
  3. 一軒家を35歳で購入、70歳で建替え実施、その後85歳で相続もしくは売却
  4. 一軒家を35歳で購入、建替え実施しないで85歳で相続もしくは売却

上記の4パターンで長期にわたるコストと出口の価格を計算していきましょう。まず物件の購入価格は先ほどの説明で使用した首都圏におけるそれぞれに平均価格とします。

購入にかかるコストも一般的な費用とし、一軒家の場合のみ仲介手数料や水道加入負担金がかかるものとします。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
物件価格 5,876万円 5,876万円 5,580万円 5,580万円
購入時費用 334万円 334万円 522万円 522万円

続いて50年間の維持費です。維持費の中で注意が必要なのが固定資産税です。固定資産税は固定資産税評価額に応じて決まることは先ほど説明しました。

つまり建替えをすると建物の価値が上がるので、固定資産税評価額はも上がります。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
固定資産税(50年間の累計) 1,673万円 1,432万円 853万円 699万円
管理費・駐車場代 1,500万円 1,500万円 0円 0円

続いて修繕や建替えにかかるコストです。先ほど説明をした30年間の修繕費をもとに算出していきます。建替え費用は、マンション・一軒家とも2,000万円とします。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
修繕費 1,200万円 1,200万円 1,225万円 1,225万円
建替費用 2,000万円 0円 2,000万円 0円

最後に、50年経過した後の資産価格を見ていきましょう。50年後の資産価値については、「資産価値はどう動くか」の項目で説明したグラフ通りに推移したと仮定して、資産価値を計算します。すると、次のようになります。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
資産価値 4,841万円 1,269万円 3,906万円 1,674万円

これで全ての資産は終了です。50年間のコスト総額と50年後の資産価値を比較してみましょう。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
コスト総額 12,583万円 10,342万円 10,180万円 8,026万円
試算価値 4,841万円 1,269万円 3,906万円 1,674万円

上記のような結果になりますが、これだとどのパターンが得になるかは分からないので50年間のコスト総額から、資産価値の価格で売却したと仮定すると次のようになります。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
コスト総額−売却価格 7,742万円 9,073万円 6,274万円 6,352万円

この差額の金額が50年間マイホームに住むために費やしたコストということになります。年間の費用にすると次のようになります。

パターン① パターン② パターン③ パターン④
1年間の住居費 155万円 181万円 125万円 127万円

やはりマンションに比べると、一軒家の方がお得になるという結果になりました。ただし、これは資産価値の価格で売却した前提になります。マンションの価格は一軒家に比べて価格が高騰しているのが足元の状況ですから、実際には資産価値以上に高い値段で売却することが期待できます。

また最近では車を持たない家庭も多いので、その場合は駐車場代で大きく結果が変動します。上記の試算を参考にして、各家庭それぞれの事情や物件の相場を考慮しながら慎重に比較することが、マイホーム選びでは大切と言えるでしょう。

ちなみに東京都内で賃貸物件を借りる場合、同じような物件であればマンションでも一軒家でも月15~20万円程度が必要になりますから、どちらがお得になるかは比較しやすいでしょう。

マンションと一軒家の徹底比較まとめ

マンション 一軒家 比較 まとめ

今回マンションの一軒家の比較について比較してきましたが、もう一度まとめておきます。

  • マンションを選ぶ方は立地重視の方が多く、一軒家を選ぶ方はマイホームと言えば一軒家のイメージを持っている方が多い
  • 一般的にはマンションの方が立地やセキュリティに優れており、一軒家の方が庭や間取りなどが優れている
  • 一軒家は購入する際に費用が高く、マンションは購入後にじわじわとコストがかかる場合が多い
  • 購入後30年間のコストまで含めて比較した場合、マンションの方が高くなる
  • 一般的にはマンションの方が割高になるが、地域別に比較すると一軒家の方が高くなる地域もある
  • マンション価格は現在高騰しているが、今後地域によって価格差が出てくる可能性がある
  • マイホームを購入する際には、出口を意識することが大切な

マイホームを購入する際、マンションと一軒家で迷う方は多いです。どちらが良いかはもちろん好みはありますが、今回の記事で紹介しているように長い目で見た経済合理性の大切な要因です。

マイホームを購入する場合、ついつい目先の売買価格などに目が行ってしまいがちですが、それだけで選んでしまうのは危険です。購入するマイホームをいつまで住むつもりなのか、ライフプランを含めて検討することで後の後悔を少なくすることが出来ます。

また、一度購入した後はマイホームの資産価値を意識することが重要です。マイホームの資産価値を正確に把握しておくことで、売却や相続へ向けて的確に対策を行うことが出来ます。

マイホームの資産価値を把握するには、不動産会社の査定を活用するのが有効です。下記のマンション売却ガイドのような一括査定サイトであれば複数の不動産会社か査定をしてもらえるので手間がかかりません。ぜひ一度おためしください。

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