住宅を購入すると、購入時に「不動産取得税」と「登録免許税」がかかり、住宅を保有している間はずっと「固定資産税」「都市計画税」がかかります。今回はその中から、購入時にかかる税金のひとつ、「不動産取得税」についてお話ししましょう。
買い替えを目的にマンションを売却する人は、「住宅の購入費用だけでも大変なのに、さらに取得税まで?」と思わずめまいがしそうになりますが、でもご安心を!個人が居住用の住宅を購入するときは、なるべく不動産取得税がかからないよう軽減措置が設けられているので、一般的な住宅であればそこまで大きな税額にはなりません。
ただし、中には多額の不動産取得税がかかるケースや、軽減措置が受けられないケースもあるので、事前に確認しておく必要があるでしょう。不動産取得税とはいったい何なのか、手続きはどうしたら良いのか、軽減措置はあるのかなどについて、わかりやすくご紹介したいと思います。
不動産取得税とは、いったい何?
不動産取得税とは、売買や贈与で不動産を購入したとき、または新築・増築したときにかかる税金(都道府県税)のことです。「マンションを売って、新築の一戸建てに買い替える」というような人は、もちろんこれに該当します。
不動産取得税は、いったいいくらかかる?
不動産取得税の計算の仕方はとても複雑なので、詳しい計算方法は後回しにして、おおよそいくらぐらいかかるかを先にお話ししましょう。ごく一般的な一戸建てやマンションの購入であれば、不動産取得税は0~20万円程度、多くても40万円以内に収まる場合が多いでしょう。
たとえば都市近郊で3,000万円台の建売住宅を購入した場合、不動産取得税はほぼ5~10万円程度に収まります。これから買い替えを考える人は、その辺の金額を見込んで計画を立てておくと良いかと思います。
ただし、二世帯の注文住宅などの場合は、家屋だけで4千万円以上の評価額が出る場合もあり、その際は不動産取得税が50万円以上かかることもあります。
新築住宅・新築マンションを購入する場合
では、ここから先は、やや面倒な不動産取得税の計算方法をお話しします。不動産取得税は、家屋と土地に分けて計算します。そして、家屋と土地の税金を合わせた金額が、支払うべき不動産取得税額です。
家屋の不動産取得税の計算方法
■新築の場合、軽減措置として1,200万円(または1,300万円)の控除が受けられる
まず家屋の税額は、床面積が50~240㎡の場合は1,200万円(認定長期優良住宅の場合は1,300万円)が控除されます(平成30年3月31日まで)。240㎡以上の床面積を持つ住宅は、日本では少ないので、ほとんどの人がこの軽減措置を受けられると考えてよいでしょう。
家屋の不動産取得税の計算方法は…
(建物の固定資産税評価額-控除額)×税率3%
固定資産税評価額は、実際の価格のおよそ70%が目安とされています。たとえば建物価格が2,000万円であれば、固定資産税評価額をおよそ1,400万円と見込んで、
(建物評価額1,400万円-控除額1,200万円)×税率3%=60,000円
となり、建物に関する不動産取得税は6万円程度になることが予測できます。不動産取得税の正確な金額は、固定資産税の納税通知書が送られてきたときに、そこに書かれた建物評価額をもとに計算をすれば出すことができます。
固定資産税の評価額がわからないときは、各市町村役場に訊ねましょう。控除額については、各都道府県によって若干異なる場合があるので、詳しくは各自治体のホームページなどで確認してください。
土地の不動産取得税の計算方法
■土地の不動産取得税は、多くの人が負担ゼロ
次に新築住宅・新築マンションの土地部分に関する不動産取得税の計算方法をご紹介します。土地の不動産取得税額は、ごく一般的な住宅やマンションを購入する人の多くが、負担ゼロになる軽減措置を受けることができます。
土地部分の不動産取得税の計算方法は…
(土地の固定資産税評価額×1/2)×税率3%
たとえば2,200万円の土地であれば、固定資産税評価額をおよそ1,540万円と見込んで、
(土地評価額1,540万円×1/2)×税率3%=231,000万円
となり、土地部分の不動産取得税は231,000円と見込むことができます。
土地評価額と税率の間にある(1/2)というのは、不動産取得税を計算する際に、土地評価額を2分の1の数値で計算してもらえるという特例です(平成30年3月31日まで)。上記の場合なら、1,540万円に対して課税されるはずが、770万円で計算してもらうことができるというわけです。
■多くの人が負担ゼロになる“嬉しい軽減措置”とは?
ここで「え!土地の税金だけで23万円も?」と絶句した人もいるかもしれません。でも大丈夫です!それは、多くの人が負担ゼロになる、“嬉しい軽減措置”があるからです。では、その軽減措置を含めた不動産取得税を計算してみましょう!
(土地1m²あたりの固定資産税評価額×1/2)×住宅の床面積×2×税率3%
この計算で導き出された金額と、特例に定められた「45,000円」という金額を比べて、どちらか多い方の金額が控除の対象になります。たとえば、100㎡の宅地の土地評価額が1,540万円であれば、1㎡あたりの評価額は1,540万円÷100=154,000円。住宅の床面積が120㎡として、これを計算に当てはめてみると…
(154,000円×1/2)×120㎡×2×税率3%=554,400円
554,400円と45,000円では、当然ながら554,400円の方が多いので、この場合は554,400円が控除金額となります。すると…
不動産取得税額231,000円-控除金額554,400円=△323,400円
マイナスの金額は計算されないので、この場合の土地に関する不動産取得税はゼロという計算になります。
不動産取得税額は、県税事務署に教えてもらうこともできる
県税事務所に相談して、正確な不動産取得税額を教えてもらいましょう
上記を見てもわかる通り、不動産取得税の計算方法はかなり複雑です。「何とか自分で計算しよう」とがんばるのも素晴らしいのですが、ちょっと計算を間違えてしまうと、当初の予算が狂って慌てることもあるでしょう。
そんなことにならないよう、あらかじめ不動産業者や建築業者に相談するか、県税事務署に確認しておくことをお勧めします。「税務署は苦手」という人も多いのですが、こういうときには税務署ほど頼りになる場所はありません。固定資産税評価額をもとに、正確な不動産取得税額を教えてもらうことができます。
不動産取得税は都道府県税なので、一般的に税務署と呼ばれる所ではなく、“県税事務所”に相談します。ちなみに、固定資産税は“市役所”の管轄になります。
「不動産取得税計算ツール」も活用できます
不動産取得税を計算する際は、東京都主税局のホームページにある「不動産取得税計算ツール」も活用できます。 http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/syutokuzei.html
不動産取得税に関する詳しい説明は、各都道府県のホームページの、不動産取得税に関するページをご覧ください。
東京都の場合:http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/fudosan.html
中古住宅・中古マンションを購入する場合
中古住宅・中古マンションを購入する場合は、1,200万円控除が受けられる条件が厳しくなり、控除額も築年数によって変わるので注意しましょう!
家屋の不動産取得税の計算方法
■中古の場合、1,200万円控除を受けられる条件が厳しくなる
中古住宅・中古マンションを購入する場合、家屋の不動産取得税控除を受けるためには、下記の条件が必要になります。
<家屋の不動産取得税控除を受けられる条件>
- 自己の居住用の用途のみ
- 床面積が50~240㎡
- さらに①~③のいずれかの条件を満たしていること
- 築20年以内(マンションは25年以内)
- 昭和57年以降に新築されたもの
- 昭和57年1月1日以前の家屋の場合は、地震対策の安全基準に適合していると認められたもの
■築年数によって、控除額も変わる
また、中古住宅・中古マンションの場合は、築年数によって控除額が変わってきます。
築 年 数 | 控 除 額 |
---|---|
平成9年4月1日以降 | 1,200万円 |
平成1年4月1日~平成9年3月31日 | 1,000万円 |
昭和60年7月1日~平成1年3月31日 | 450万円 |
昭和56年7月1日~平成60年6月30日 | 420万円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 350万円 |
築年数に該当する控除額を下記の式に当てはめて、家屋の不動産取得税を計算しましょう。
(建物の固定資産税評価額-控除額)×3%
たとえば平成1年2月8日築の中古住宅を購入した場合、評価額1,000万円の家屋の不動産取得税は…
(評価額1,000万円ー450万円)×税率3%=165,000円
となり、家屋の不動産取得税は165,000円という計算になります。
土地の不動産取得税の計算方法
では、中古住宅・中古マンションの土地に関する不動産取得税はどうでしょうか?土地に関しては、1,200万円(あるいはそれ以下)の控除を受けられる条件さえ満たした物件なら、新築時と同様の計算方法になります。
不動産取得税は申告が必要?
不動産を購入したら、取得日から一定期間の間に、市町村役場または県税事務所で「不動産取得申告(報告)書」を提出する必要があります。提出期限は東京都が30日以内、神奈川県が10日以内など、各県によって違います。
期限内に不動産取得申告(報告)書を提出しないと、不動産取得税の軽減措置などを受けられなくなる可能性があるので、不動産を購入したらすぐに提出することが大切です。
不動産取得税は、どうやって納税したらいい?
不動産取得税は、住宅を取得後6ヶ月~1年ほどの間に、各都道府県から請求されます。納税は金融機関や県税事務所・コンビニなどでできます。納税の期日を過ぎると延滞金が発生する可能性があるので、必ず期限内に納付しましょう。
不動産取得税の納付に関しては、実際に住んでからしばらく経って連絡があるため、そのときにはすっかり忘れてしまっている人も少なくありません。突然降って湧いたように請求書が来ると、「まったく予定していなかった!」と大慌てになることがあるので、くれぐれも不動産取得税の存在を忘れないよう注意が必要です。
不動産取得税に関するまとめ
不動産取得税の計算方法はとても複雑ですが、大まかなイメージとしては「新築は家屋の評価額が1,200万円以下なら課税されない」「土地は広すぎなければ課税されない」ということで、ごく一般的な一戸建てやマンションの場合はさほど心配する金額にはなりません。
ただし、不動産取得税は忘れた頃に請求がやって来るので、「いったいこの税金は何?」と苛立つ人が多いのも事実です。不動産の購入は、不動産取得税の支払いや確定申告が終わって、はじめて完了と考えた方が良いでしょう。