マンションの売却額が住宅ローンの残債に追いつかず、ローンの完済ができない場合があります。たとえば「バブルの絶頂期にマンションを買ったが、バブル崩壊で急激に物件価格が下がってしまい、築28年のマンションを売却したが住宅ローンを完済できなかった」というようなケースです。
また、築浅のマンションを売却する場合でも、売却額だけではローンの完済ができない場合があります。「離婚をするので築3年のマンションを売却したいが、新築時よりかなり値が下がっているので、オーバーローンになってしまう」というようなケースです。
このようにマンションを売却しても住宅ローンが完済できず、残債が残ってしまう場合は、いったいどうしたら良いのでしょうか?残債が残るときのさまざまな背景によって対処法が違うので、パターンごとにご説明しましょう。
住宅ローンの残債は、貯蓄で補填できる
決済のときに不足分を入金すれば、問題なく完済できます
マンションの売却額で住宅ローンの全額返済ができなくても、残債を貯蓄などで補うことができれば、まったく問題はありません。売買契約後の決済の際に、残債を銀行に入金すれば、無事住宅ローンを完済することができます。
住宅ローンは完済できないが、買い替えの予定がある
買い替えローンを活用しましょう
買い替えローンを使えば、住宅ローンを完済できなくても住宅が購入できる!
マンションの売却額で住宅ローンを完済できない場合でも、買い替えの目的があれば、「買い替えローン」を利用することができます。買い替えローンは現在の住居を売却して新たに住居を購入する人のためのローンで、売却したマンションの残債を上乗せして新たなローンを組むので、住宅ローンを完済できなくても買い替えができる仕組みになっています。
買い替えローンは2社の金融機関からお金を借りるダブルローンよりもリスクが低く、使いやすいので、住宅ローンの残債が残ってしまう人にとっては持ってこいのローンといえるでしょう。
買い替えローンは通常よりも支払額が高くなるので、無理のない返済計画を
買い替えローンはどんな仕組みになっているかというと、たとえばマンションを売却して、3,500万円の住宅を購入する人がいたとします。そのときに、マンションの住宅ローンを完済するのに残債が300万円残ってしまうとすると、それを上乗せした3,800万円の住宅ローンを組むことになるわけです。
ここで気を付けたいのが、買い替えローンを組むとなると、毎月の支払額が高くなることです。通常はマンションを売却した金額で住宅ローンを清算し、残った金額を新居の頭金にするのですが、買い替えローンの場合はマイナスからのスタートになります。
そういう意味で、買い替えローンはあくまで特殊なケースです。そのことを十分に認識して、できる限り無理のない返済計画を立て、本当に支払い続けられる金額を借りるようにしましょう。
住宅ローンは完済できないが、離婚などの事情ですぐに売却しなければならない
任意売却を検討しましょう
住宅ローンの残債を残したまま不動産を売却できる「任意売却」
離婚などの事情によってマンションを手離さなければならない人は、速やかにマンションを売却せざるを得ない場合もあるかと思います。
引越し先で新たに不動産を購入するということであれば、買い替えローンを使うこともできますが、そうでない場合は任意売却を検討するのがベストの方法です。任意売却とは、住宅ローンの残債を残したまま不動産を売却することができる、特別な売却方法です。
競売にかけられることなく、専門のコンサルタントが解決策をアドバイス
本来であれば、住宅ローンを残したまま売却しようとすると、「競売」しか対処法がありません。しかし、不動産を競売に出してしまうと、通常よりもかなり安い金額で売却されてしまうため、ただでさえお金が足りない売主にとっては酷な話です。その状況を解消できるのが、任意売却という方法なのです。
もしもあなたがマンションを任意売却することになると、まずは金融機関とあなたとの間に専門のコンサルタントが入り、住宅ローンの残債をどうやって返済するかといった解決策を、あなたと一緒に考えます。その際のコンサルタント料は、一切かかりません。
残債の月々の支払い額は、数千円~3万円程度
任意売却の場合は、たとえマンションを売却した後に多額の残債が残ったとしても、毎月の支払額は数千円~3万円といった無理のない金額に抑えられます。任意売却後のローン返済で生活が困窮することはないので、安心してください。
そして、任意売却なら通常の売買取引ができるので、競売のように安い金額で強制的に売られてしまうこともありません。しかもマンション売却にかかる経費は売却額から清算され、場合によっては引っ越し費用も融通してもらえることがあります。
住宅ローンは完済できないが、転勤によってマンションを離れなければならなくなった
まずは賃貸に出すことを検討しましょう
転勤の場合は、賃貸に出すという選択肢もある
転勤によってマンションを離れなければならない場合、売却額で住宅ローンを完済できないのであれば、まずは賃貸に出して家賃収入を返済に回すことを考えましょう。将来的にそのマンションに戻る予定があるのなら、リロケーションという形で期間限定の賃貸住宅にする方法もあります。
賃貸に出すことによって、売却すればなくなってしまう不動産を保有し続けることができ、任意売却の形もとらずに済みます。駅チカのマンションであれば、ほぼ間違いなく借手は見つかるでしょう。
賃貸に出すことは、それなりのリスクも伴う
しかし、賃貸に出すにあたってはリスクも伴います。売却してしまえば管理費や修繕積立金などの諸経費は支払わずに済みますが、物件を所有している間は、万が一借手が付かなかった場合でも諸経費を払い続けなければなりません。
また、入居者が家賃を滞納するなどのトラブルが発生したり、リフォームや設備の修理・交換といった経費も発生します。もしも転居先の住居が賃貸住宅だとすると、家賃の支払いと諸経費の支払いがダブルで発生する可能性もあります。
こうしたもろもろのリスクをかかえても賃貸に出した方が良いか、それとも売却した方が良いのかは、不動産のプロに相談しながら決めると良いでしょう。
賃貸料金で住宅ローンが払えなければ、任意売却という選択肢もある
もしも「駅から遠くて借手が見つかりそうもない」「築古マンションなので、住宅ローンの支払額以下の賃貸料しか取れない」などの理由で賃貸に出すことが難しい場合は、任意売却を検討せざるを得ないでしょう。
任意売却をすることによって、住宅ローンの残債の支払いは低い金額に抑えられるので、転居後の生活に支障なく生活を続けることができます。
住宅ローンの残債に関するまとめ
マンションを売却した金額で住宅ローンを完済できない場合、「できればこのまま売らずに持ち続けたい」というのは、多くの人が考えるところです。賃貸に出すなどして住宅ローンの支払いを続けられるのであれば、それも選択肢のひとつでしょう。
しかし、マンションは管理費や修繕積立金などの月々の支払いが、意外と馬鹿になりません。築年数の経ったマンションの中には、月々4万円前後の諸経費を支払わなければならないケースもあります。
マンションを所有し続けるということは、これらの諸経費を毎月払い続けるということであり、なおかつ大規模修繕の時期には100万円前後の修繕積立一時金を徴収するマンションもあります。
そうした出費をすべて予測し、長期的な視野に立って売るべきか、貸すべきか、はたまた買い替えるべきかを考える必要があるでしょう。