借地料とは?相場や知るべき基礎知識を解説

借地料とは?相場や知るべき基礎知識を解説

借地とは、名前の通り人から借りている土地のことを言います。土地を利用するためには、何も所有しなければならない訳ではありません。土地の所有者にお金を払って、土地を借りることでその土地を使用することが出来ます。

決して珍しくはない借地ですが、住んでいるエリアによっては借地に馴染みのない方も多いでしょう。近年では借地権上の新築分譲マンションも珍しくなく、借地に触れる機会も多いため借地に関して興味をお持ちの方も多いでしょう。

そこで今回の記事では借地の基礎知識や借地料の相場について見ていきましょう。

借地料とは?

借地料 とは(相場) 借地とは

借地とは土地を借りる行為のことを指す言葉で、借りている人は貸してくれている方へ賃料を払う必要があります。その際に発生する金銭のことを借地料と言います。

借地料は、賃貸物件を借りるときと同様に毎月払う形式が一般的です。賃貸借契約書も賃貸物件同様に結ぶのが一般的で、契約書に毎月の借地料などの取り決めを記載します。

しかし借地権は賃貸物件を借りる場合と違って、とても長い契約になります。親の代から借地を引き継いでいる場合もあり、契約書が無くなってしまっているケースも珍しくありません。

借地料も長い年月を経て、曖昧になっていることもあります。当初は契約書に記載していても、その契約書が無くては確認することも出来ません。このような場合は、相場に基づいて借地料が設定されます。借地料の相場について見ていきましょう。

借地料の相場とは?

借地料 とは(相場) 

土地を借りるための対価として払うのが借地料ですが、一口に借地料と言っても借地権者から地主に払う金銭には複数の種類があります。それぞれの内容と相場について見ていきましょう。

地代の相場

地代とは土地の使用料として毎月地主に対して払う金銭のことで、借地料と言うと一般的には地代のことを言います。

この地代の相場には色々な考え方がありますが、その土地の固定資産税評価額の5~8%程度が年間の地代の相場と言われています。この時、土地の評価額は更地価格ではなく、固定資産税評価額であることに注意しましょう。

固定資産税評価額 地代(年間)
1,000万円 50万円
2,000万円 100万円
3,000万円 150万円

上記のような金額が一般的な相場です。しかし実際の地代は、相場から大きくかけ離れている場合も多いです。

古くからの借地契約で、契約当初から地価が大きく上がっているのに地代はそのまま変わっていないケースなどがあるためです。上記の金額は、あくまで目安と考えておきましょう。

更新料の相場

借地の契約は、通常は数十年以上の期間を決めて契約をします。契約の期間が終わったら借地権を地主に返還するか、引き続き借地契約を更新するかを選択します。

自宅建物などを建てで住んでいる場合は、更新をするケースが多いでしょう。その際に、地主に対して払う金銭を更新料と言います。

更新料は必ず払わなければならないものではありません。借地権者と地主の話し合いによって決めるものですが、地域の慣習によって払っている場合も多いです。

地代と同じく、更新料もはっきりと決められた相場がある訳ではありません。しかし一般的には借地権価格の5%程度の場合が多いようです。

借地権価格とは、土地の価格に借地権割合をかけて計算をします。そして、この場合の土地の価格は路線価に土地の面積をかけて計算をします。

更新料の相場=土地の価格(路線価×土地の広さ)×借地権割合×5%

土地の路線価と借地権割合は国税庁が発表している路線価図で確認出来ます。

参照:国税庁

路線価図とはこのような図で国税庁のホームページから日本全国の路線価が見れるようになっています。初めて見る方は戸惑うかもしれませんが路線価図の見方は簡単です。

路線価を知りたい箇所を見つけたらその前面の道路に書いてある数字が路線価の単価です。ここで注意が必要なのが書いてある数字は㎡当たりの単価で、単位は千円です。上記の様に200と書いてあり、土地の広さが100㎡であれば200千円×100㎡で20,000千円がその土地の価格になります。

借地権割合を求める場合は更にこの価格に借地権割合を掛けます。借地権割合は場所によって違いますが、路線価図で簡単に見ることが出来ます。

名義書換料の相場

名義書換料とは、名前の通り借地権者の名義を書き換える際に払う金銭を言います。名義を書き換えるとは、借地権者の名義を書き換えることを表します。

つまり借地権者が借地権を売却する際に、その売却を地主に承諾してもらうために払う金銭が名義書換料です。承諾してもらうために払うので、承諾料と言う場合もあります。

売却の場合以外にも、建物を建て替えする場合にも建替承諾料として地主に金銭を払う場合もあります。このような承諾料や名義書換料の相場は、借地権価格の10%が一般的な相場とされています。借地権価格については、先ほど説明した場合と同じです。

借地料の種類 相場
地代 固定資産税評価額の5~8%
更新料 借地権価格の5%
名義書換料 借地権価格の10%

借地権の基礎知識

借地料 とは(相場) 基礎知識

これまで説明してきたように、毎月の地代の他に更新料や名義書換料なども払わなければいけない借地ですが、実は借りている人がとても優位な制度になっています。

地主は一度土地を貸してしまうと、その土地を取り戻す事は容易ではありません。このような制度になってしまった背景には、これまでの借地権の歴史を振り返る必要があります。

借地権の歴史

借地権の歴史を知るには、土地の制度について江戸時代まで遡る必要があります。江戸時代の農民は、田畑を大名や領主から借りることで利用をしていました。そしてその土地を利用して出来上がった米を年貢として納めていたのですが、明治時代になると土地の所有者に対して税金が課せられるようになりました。

そのため、土地所有者の中でも土地を手放した方も少なくありませんでした。

その後、戦争の特需や日本の経済発展に伴ない土地の価格がみるみる上昇しました。この頃の借地権は地主の立場が非常に強かったため、更なる有効活用を求めた地主に無理矢理追い出されたりするケースが頻発しました。

横暴な地主に対し借地権者を保護するため、法整備が何度か行われました。この時定められたのが(旧)借地借家法です。また、関東大震災で家を失くした方を保護するためにバラックにも借地を認めたため、東京に借地が急増したと言われています。

その後の戦争により、人口の都市への集中が更に加速すると地価の上昇も更に加速し、建替や更新の承諾をしない地主が増えトラブルが急増しました。

そこで、地主に変わって裁判所が承諾することが可能になる制度を法律で決めました。この改正によって、これまでの地主優位の関係から借地人保護が優先されるようになり、地主は一度土地を貸すととり返すことが難しくなりました。

この改正からも年数が経過をしてくると実態にはそぐわないことも増え、またバブルの地価上昇などもあり地主と借地権者の間でトラブルが増えました。これにより改正された法律が(新)借地借家法と言います。

借地借家法とは

借地人と地主には、昔からトラブルがつきものでした。このような揉め事を防ぐため借地や借家のルールを定めた法律が借地借家法です。この借地借家法には、旧法と新法という2つが存在しています。

借地は歴史的に地主の立場が強かったことから、借地人保護の観点で作られたのが旧借地借家法です。しかし借地権者を保護しすぎたために、今度は地主がなかなか土地を返してもらえないという問題が起きました。そこで定めたのが新法の借地借家法です。

新借地借家法では、借地の期限をしっかりと決めて契約をする定期借地権などが作られました。これにより、地主も借地人も安心して土地を貸借することが出来るようになりました。

しかし新しい借地借家法が出来たからと言って、すべての借地にこの新法が適用になる訳ではありません。新法が適用になるのは、新法が作られた平成4年以降ですから、古い借地契約は依然として多数残っています。

旧法 大正10年 借地人に有利(地主は一度貸すと、地主側から解除することは難しい)
新法 平成4年 借地人と地主が平等(期間を決めて、貸すことが可能になった)

借地権と地上権の違い

借地権と良く似た権利に地上権があります。どちらも他の人が所有している土地を借りて利用することには変わりませんがこの二つは大きく違いがあります。

借地権が債権(地主に対して土地の利用を請求できる権利)であるのに対し、地上権は物権(土地の利用を支配できる権利)であることが大きな違いです。借地権は土地の利用について「地主の承諾を前提として」間接的に支配出来ますが、地上権は「地主の承諾が無くても」直接的に支配することが出来ます。

つまり借地権と比べて地上権の権利は非常に強く、建て替えするにも売買するにも地主の承諾は不要です。また第三者に対しても、借地権は建物が無ければ対抗出来ませんが、地上権は対抗が可能です。

このように地上権はとても強い権利であり、地主にとってはとても不利な権利であることから現在の借地は殆どは借地権となっています。

使用貸借とは

借地権と良く似た権利がもう一つあり、使用貸借と呼ばれています。使用貸借も他人が所有する土地を利用するという意味では同じですが、大きな違いがあります。

借地権が地主に対して地代を払うのに対し、使用貸借は無償で土地を利用することが出来ます。通常使用貸借は、親の土地に子供が家を建てたりなど親族間で行われる場合が多いです。無償で土地を利用できるので、使用貸借は借り手優位にも見えますが実はそうではありません。

使用貸借の借り手は、対価を払っていない分とても立場が弱いです。土地の所有者が貸借関係を解消しようとすればいつでも可能ですし、第三者に対抗も出来ませんし、使用貸借は相続もされません。

つまり地主の気持ち一つ次第でいつでも解消できるのが使用貸借です。地上権が借り手寄りの制度だったのに対し、使用貸借は地主寄りの制度と言えるでしょう。

借地権の税金や消費税は?

借地料 とは(相場) 税金

土地を所有していると、様々な税金の問題に直面します。毎年発生する固定資産税を始めとして、売買の際の消費税や不動産取得税、相続が発生した場合の相続税などが主な税でしょう。借地権として土地を利用している場合、所有している場合と比較してこれらの税金はどのように違うでしょうか。各税金毎に見ていきましょう。

固定資産税

土地や建物を所有していると毎年発生するのが固定資産税です。固定資産税の税率は1.4%と低い税率ですが、不動産の場合はそもそもの価値が高いので、税額もばかになりません。このような固定資産税ですが、借地の場合は固定資産税は不要です。その変わりに地主に対する毎月の地代が必要になると思えば理解しやすいでしょう。

ここで注意しておきたいのが、固定資産税が不要になるのは土地だけであることです。借地の上に建物を建築して所有する場合は、建物の固定資産税に関しては払う必要があることを認識しておきましょう。

消費税と不動産取得税

土地や建物を購入した場合に必要になる税金の代表が、消費税と不動産取得税でしょう。どちらも購入した不動産の価格に応じて必要になる税金であり、相応の金額が課税される税金ですが借地権の場合はどのようになるでしょうか。

結論から言いますと、借地権の場合はどちらも不要です。まず消費税は、土地には課税されません。ですから当然借地権の売買の場合も課税されませんが、注意したいのが建物には課税されることです。借地権付の建物を売買する場合は、借地権には消費税は課税されませんが、建物部分に関しては消費税が必要になります。

続いて不動産取得税ですが、こちらも借地権の売買の場合は不要です。不動産取得税は名前の通り、不動産の取得に対して課税される税金ですから、そもそも借地権の場合は課税されません。

しかしここでも注意が必要なのが、消費税の場合と同じく建物に対しては課税される事です。建物も不動産ですから、その取得に伴って課税されることになります。

相続税

これまでの税金の説明では、借地権に対する税金は発生しませんでしたが相続税の場合は違います。相続税は保有していた資産に対して課税される体系のため、借地権という権利も課税対象に含まれてします。

借地権を相続税評価額で計算して、その評価額に対して相続税が課税されることになります。借地権の相続税評価額の計算方法は下記のようになります。

借地権の相続税評価額=借地権価格(土地の価格×借地権割合)

更新料の計算の際に使用した借地権価格が相続税評価額となります。この計算方法は普通借地権における計算方法で、定期借地権や一時的使用目的の場合の借地は、それぞれ計算方法が違います。詳しくは国税庁のホームページで確認しましょう。

借地権や借地料による過去のトラブル事例

借地料 とは(相場) トラブル事例

これまで説明したきように借地権は、複雑な権利関係の上に成り立っている権利です。契約期間も長期にわたることから、様々なケースでトラブルが発生する場合があります。ここでは、借地権で起こりやすいトラブルについて見ていきましょう。

更新に関するトラブル

借地権は30年以上もの長い期間にわたる契約です。新法の借地借家法で認められている定期借地権は、期限が到来したら更新しないで借地契約を終了させることが出来ますが、旧借地借家法が適用になる借地権の場合は地主側から更新を拒むことはできないのが原則です。

しかし地主によっては更新に応じてくれず、トラブルへと発展するケースがあります。

また更新には応じてくれた場合でも、更新料を求められてトラブルになるケースもあります。更新料は先ほども説明した通り法的に決められたものではありません。これまでの更新の際に更新料を払っていなかったのに急に求められたり、契約書に書いてない更新料を求められたりするケースもあります。

契約で定めていない限り更新料を払う義務はないですが、過去に払った実績がある場合は支払い義務が生じますので注意しましょう。

借地権は期間の長い契約だけに、契約書を紛失してしまっていたり期限を忘れてしまう場合などもあります。元々契約書を作成していない場合もあるでしょう。このように期限が曖昧で、気づかないうちに借地期限が過ぎてしまっており、地主から急に立ち退きをせまられてトラブルになるケースもあります。

しかしこのような場合でも、建物があり使用を継続している場合には立ち退く必要はありません。

更新に関するトラブルをまとめると下記のようなものがあります。

  1. 更新を地主に拒まれトラブルになるケース
  2. 契約書に定めていない更新料を急に請求される
  3. 借地期限を過ぎており、急に立ち退きを請求された
  4. 更新した後は新法借地借家法が適用になると言われた(更新後も旧法が適用される)

売買に関するトラブル

通常の不動産の売買に比べると、借地権の売買は利害関係が複雑になるためトラブルが起きやすいです。借地権を売買するには地主の承諾が必要ですが、地主が承諾してくれない場合や法外な承諾料を請求されてトラブルになるケースがあります。

このような場合話し合いで解決するしかないのですが、どうしても地主が承諾をしない場合は裁判所がかわりに承諾許可を与えることも可能です。

売買の承諾は認めても、借地上の建物への抵当権設定を認めてくれない地主もいます。金融機関によっては借地権付建物へ融資する際に、地主の承諾を条件としているところもあります。このようなトラブルの場合は、地主と話し合いで解決をするか地主の承諾なしでも融資をしてくれる金融機関を探しましょう。

古い借地契約になると、売買しようと準備をすると契約書が見当たらない場合もあるでしょう。しかし、契約書が無いからといって借地権を証明出来ないわけではないので安心しましょう。契約書はなくても、毎月地代を地主に払っており借地上の建物を登記していれば借地権の存在を証明することが出来ます。

他にも地主が土地を転売してしまい、新しい地主と地代などでトラブルになるケースなどもあります。売買に関するトラブルをまとめると下記のようなものがあります。

  1. 地主が売買の承諾をしない、または抵当権設定の承諾をしない
  2. 売買する際に契約書を失くしてしまっているケース(契約書がなくても借地権は証明できます)
  3. 地主が底地を転売し、トラブルとなるケース

相続に関するトラブル

借地人が亡くなると、借地権は相続人に相続されますがこの際に名義書換料を請求されてトラブルになるケースがあります。名義書換料は売買の際に必要になるもので、相続の場合には支払う義務はありません。そもそも相続の場合は、地主の承諾も不要とされています。

また相続の際に親族間で遺産分割協議がまとまらず、複数名で借地権を相続して後々トラブルに発展してしまうケースもあります。借地権を複数の名前で相続すると、今後売却や更新・建て替えの際には全員の同意が必要になってくるためどうしてもトラブルが起きやすくなります。

他にも、相続のタイミングで地主から土地の返還を求められてトラブルになるケースもあります。相続に関するトラブルをまとめると、下記のようなものがあります。

  1. 相続で借地権を引き継ぐ際に、地主から名義書換料を請求された
  2. 借地権を複数名で相続して、後日トラブルとなった
  3. 相続の際に、地主から借地の返還を求められた(返還する必要はありません)

借地料とはまとめ

借地料 とは(相場) まとめ

今回借地料の相場や、借地権の基礎知識について下記の内容を説明してきました。

  • 借地料には地代・更新料・名義書換料があること。地代の相場は固定資産税の5%程度、更新料の相場は借地権価格の5%程度、名義書換料は借地権価格の10%程度が一般的な相場であること。
  • 借地権は江戸時代まで遡って歴史的背景があること。借地借家法には旧法と新法があって、それぞれ特徴があること。借地権と地上権、使用貸借はどれも似ているが大きく違う権利であること。
  • 借地権には固定資産税や消費税は不要であるが、相続税は課税されること。
  • 借地権にはトラブルが多く、更新や売買・相続の際にトラブルになるケースが多いこと。

借地権は東京などの地価が高い地域ほど多い権利です。所有権と違って土地を所有しなくても土地を利用できるメリットがある変わりに、地主との交渉でトラブルが起きる可能性もあります。借地権の取引をする場合には、借地料の相場や借地権の特徴を良く理解しておくことが大切です。

今回の記事が、借地権について不安のある方の参考になれば幸いです。

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