現在の日本の離婚率は35%と言われています。つまり、約3組に1組の夫婦が離婚を経験していることになります。
そしてその婚姻期間が長ければ長いほど、夫婦共有の財産も多くなり財産分与の際に苦労をします。
預金などの金融資産であれば割合さえ決めれば分けるのは簡単ですし家具や家電なども、比較的分けるのに苦労はしないでしょう。しかし、財産分与で一番難しいのがマイホームです。
そこで今回の記事では、離婚時にもっともトラブルになりやすいマイホームの財産分与について見ていきましょう。
そもそも財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が離婚するにあたりそれまで二人で作ってきた財産を分けることを言います。分けるとなると気になるのがその割合ですが、原則は1/2とされています。
婚姻中の収入に大きな格差があったとしても、双方が支え合って作った財産と考えるからです。しかし、必ず1/2になるかと言うとそうではありません。婚姻中の個別の事情によってどちらか一方が多くなる場合もあります。
財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産です。ですから、婚姻前から保有していた財産などは財産分与の対象とはなりません。婚姻中に共同で築き上げ財産を共有財産、婚姻前から保有していた財産のことを特有財産と言います。
種類 | 財産の内容 | 財産分与の対象 |
共有財産 | 婚姻後に築き上げた財産 | 対象 |
特有財産 | 婚姻前から保有している財産 | 対象外 |
財産と言うと現預金のような金融資産をイメージする方も多いですがそれだけではありません。財産分与の対象となる財産には次のようなものがあります。
- 現預金(名義は夫婦どちらのものも対象)
- 株式・国債・投資信託・債権・外貨預金等の金融資産
- 車
- 電化製品
- 不動産
- 保険
- 絵画・坪などの価値のある物
- 退職金・年金
- 借入などの負債
金融資産や不動産などの財産だけでなく、借入も財産分与の対象となる点には注意です。現預金や金融資産は割合に応じて分けやすい資産ですし、保険や電化製品なども比較的分けやすいでしょう。
財産分与の対象となる資産の中で、一番分け方に困るのは不動産です。どの資産よりも高額になるうえに、ローンが残っている場合もあります。家であれば、今後どちらが住むのかという問題もあるでしょう。家をどのようにして財産分与するのか、その方法を見ていきましょう。
家の財産分与の方法
預金や株などのように半分に分けやすい財産もあれば、分けにくい資産もあります。その代表ともいえるのが家です。家などの不動産は半分に分けることは出来ませんし、どちらかに譲るにしても高額な資産であるためトラブルの原因にもなりやすいです。ちなみに家の場合も、下記のような場合は財産分与の対象にはなりません。
- 婚姻前から夫婦のどちらかが保有していた家
- 婚姻前から夫婦のどちらかが保有していた現預金で購入した家
- 婚姻中に購入したが、どちらかの親の援助で購入した家
上記のような場合は、特有財産に該当するため財産分与することは出来ません。このように分けるのが難しいのが家ですが、離婚の際に家を保有している夫婦は多いです。多くの方が悩みながらも家の財産分与を行っていることになります。家を財産分与する方法は大きく次の二つになります。
- 売却して現金化する
- どちらか片方に譲る
それぞれの方法について見ていきましょう。
売却して現金化
家などの不動産は、そのままでは財産分与することが出来ません。そのため売却して現金化し、その現金を夫婦で分ける場合も多いです。現金にしてしまえば分割もしやすいためオススメの方法ではありますが、これまで住んでいた家には住むことは出来なくなります。
また、売却する場合は買い手が見つからなければ売却することは出来ませんから、売却までに時間がかかった場合にはスムーズに財産分与が出来ない場合もあります。
現金化して分ける場合も、先ほど説明した通り1/2ずつ分けるのが原則ですが下記のような場合には注意が必要です。
- 家の購入資金に、夫婦どちらかが婚姻前に保有していた資金を使った場合
- 家の購入資金に、夫婦どちらかの実家からの援助を使った場合
つまり、資金の一部に特有財産を使って家を購入した場合です。このような場合は、割合で計算するようにします。具体例を使って計算してみましょう。
【購入価格4,000万円の家】
夫の婚姻前の預金 500万円 妻の実家からの援助 1,000万円 住宅ローン 2,500万円 |
上記のような資金計画で家を購入していたとします。その場合、夫婦それぞれの割合は下記のようになります。
【夫婦の割合】
夫の婚姻前の預金(夫の特有財産)=500/4,000=1/8 妻の実家からの援助(妻の特有財産)=1,000/4,000=1/4 住宅ローン(共有財産)=2,500/4,000=5/8 |
上記のようになります。仮にこの家を売却をして、諸費用などを差し引いた手残りが2,000万円とするとそれぞれの分け方は下記のようになります。
【分ける金額】
夫の特有財産=2,000万円×1/8=250万円 妻の特有財産=2,000万円×1/4=500万円 共有財産=2,000万円×5/8=1,250万円(夫婦それぞれの金額は1/2の、625万円) |
上記のようになります。夫は特有財産250万円と共有財産625万円の合計で875万円、妻は特有財産500万円と共有財産625万円で1,125万円となります。
このように、家を購入した資金の一部に夫婦それぞれの特有財産がある場合は分け方に注意しましょう。
片方に譲る
家の財産分与の場合は、子供の学校や環境を変えたくないなどの理由から売却をしないてどちらかがそのまま住み続ける場合もあります。
その場合の財産分与の方法は売却の場合とは違いますが、根本的な考え方は同じです。片方が家の財産を全て取得する訳ですから、もう片方はその分他の財産を多めに取得することなどでバランスを取ります。
先程の売却の例を参考にして、どちらかが自宅を引き継ぐ場合の分け方を見ていきましょう。まず、自宅購入時の資金の内訳からそれぞれの特有財産と共有財産は下記の通りでした。
【購入価格4,000万円の自宅】
夫の婚姻前の預金 500万円→夫の特有財産=500/4,000=1/8 妻の実家からの援助 1,000万円→妻の特有財産=1,000/4,000=1/4 住宅ローン 2,500万円→共有財産=2,500/4,000=5/8 |
売却の場合は、上記の割合に応じて売却資金を分ければ良かったですがどちらかが住み続ける場合はそうはいきません。その場合はまず物件の査定などにより、物件の評価額を確認します。仮に物件の評価額が2,000万円だったとすると、上記の割合に従って計算すると夫の取り分は875万円、妻の取り分は1,125万円となります。
上記のケースで、妻が自宅をそのまま取得する場合は妻は夫に875万円を支払うか、もしくは他の財産で夫が875万円を取得することで均等に分けることが出来ます。
家のローンがある場合の財産分与の方法
家を買う場合、殆どの方が住宅ローンを組んで買います。そのため財産分与をする時点で、まだ住宅ローンの残高が残っているケースもあります。これまで説明してきたケースは住宅ローンの残高がないケースでしたが、ここでは住宅ローンの借入が残っている場合の借入について見ていきましょう。
アンダーローンとオーバーローンかが重要
住宅ローンが残っている状態で家を売却する場合は、売却価格が住宅ローンの残債を上回るかどうかがポイントです。ローンの残高よりも売却価格が上回る場合をアンダーローン、ローンの残高の方が多い場合をオーバーローンと言います。
アンダーローンの場合
アンダーローンの場合は、売却価格からローンの残高を引いて残った金額を夫婦で分割することになります。この時家の全てが共有財産であれば残った金額を1/2で分けますが、一部特有財産がある場合は先ほどの例と同じように割合に応じて計算する必要があります。
先ほどと同じケースで住宅ローンの残高が1,000万円残っていたとして計算をしてみましょう。まず、自宅の購入資金と割合は下記の通りです。
【購入価格4,000万円の自宅】
夫の婚姻前の預金 500万円→夫の特有財産=500/4,000=1/8 妻の実家からの援助 1,000万円→妻の特有財産=1,000/4,000=1/4 住宅ローン 2,500万円→共有財産=2,500/4,000=5/8 |
この状態で家の売却価格が2,000万円とすると住宅ローンの残高を返済すると、残りは1,000万円になります。この1,000万円を上記の割合で分けることになりますので、夫が350万円妻が650万円という分け方になります。
オーバーローンの場合
オーバーローンの場合は売却をしても、ローンの残高が残ってしまうことになります。つまり家の価値としてはマイナスもしくはゼロという事になりますから、分けるべき財産はないことになります。しかしこのような考え方では、将来不都合が起こってしまうケースも考えられます。
例えば婚姻中に3,000万円の家を頭金なしのフルローンで購入したとします。その10年後に離婚をすることになりましたが、家は夫がそのまま住むことになりました。この時点で住宅ローンの残高は2,000万円だとすると、既に返済をした1,000万円は夫婦が共同で返済をしたことになります。
つまり1,000万円の内の半分の500万円分は妻にも権利があることになります。しかし、離婚後夫が残りのローンを完済し、売却をしたとしても妻にはお金は入りません。離婚後に時間が経っていることもあり、このタイミングで元夫に請求するようなケースは少ないでしょう。
このようなケースでも妻に権利が認められるケースも実際にありますので、詳しくは法律の専門家などに相談すると良いでしょう。このようにローンが残ってしまう場合は、どちらかが返済を続けていくことになりますがここで問題になるのがローンの名義と家の名義の問題です。
ローンの名義と家の名義
財産分与をする際、ローンの名義でトラブルとなってしまうケースがあります。例えば婚姻中は家もローンも夫の名義になっていたが、離婚後は家は妻に譲りローンの返済は引き続き夫が行うとします。
そうすると本来はローンの名義は夫のままで、家の名義は妻の名義に変えるべきなのですが、現実的にはそれが出来ません。何故なら金融機関が認めないからです。
家の名義を夫から妻にするためには、金融機関が家に付けている抵当権を外す必要がありますが、まだローンの残高が残っている状態では金融機関は抵当権は外しません。そのため家の名義は夫のままで、妻が住むことになってしまいます。
それでも普段の生活には問題ありませんが、固定資産税は夫に毎年請求が行きますし、万が一にも夫が勝手に売却をしてしまう可能性もあります。ローンの返済が滞れば、競売に掛けられてしまう可能性もあります。
離婚当初は良くても、時間が経過するとこのようなトラブルになってしまうことは少なくありません。
このようなトラブルを防ぐためには、財産分与時に離婚協議書を公正証書にしておく方法があります。公正証書にしておくことで夫側に今後のローンの支払いを念押しさせる効果があります。
また妻に収入がある場合であれば、家もローンの名義も妻にしてしまった方が安心の場合もあります。この場合、ローンというマイナスの財産も妻が取得することになるので、他の資産で調整をして分ける必要はあります。しかし今後も安心して家に住み続けられるメリットがあります。
離婚時における家以外の財産の分与方法
離婚の際の財産分与は家だけではありません。家以外の財産についてはどのように分ければ良いかを見ていきましょう。
車
家の次に高額な資産が車です。車の分け方は基本的には家の場合と同じ考え方です。売却をして現金化をしてそれぞれで分けるか、どちらかが使い続ける場合は評価を出してその半分の金額を引き継がない方へと渡します。
保険
保険も永年の積立などで高額になる場合もあります。保険の場合は、財産分与をする時点での解約返戻金の金額を夫婦で分けることになります。この場合婚姻中に加入していた保険は共有財産で1/2ずつ分けますが、婚姻前から加入している保険などがある場合は期間に応じて分けることになります。
具体例を見てみましょう。加入期間が15年ある保険で、そのうち婚姻中の期間が10年、独身中の期間が5年だとします。この場合の解約返戻金が150万円だった場合、共有財産だとみなされるのは、150万円×2/3=100万円ということになります。
年金
将来受け取ることの出来る年金も、財産分与の対象となります。年金の分け方も基本的には1/2ずつが原則ですが、これは婚姻期間中に納付した部分の年金のみになります。
年金の分割はきちんと制度として定められており、夫婦の合意に基づいて分割される合意分割と夫婦の合意がなくても分割が可能な3号分割があります。それぞれの特徴は下記の通りです。
合意分割 | 3号分割 | |
夫婦の合意 | 必要(裁判所がする場合もある) | 不要 |
分割割合 | 1/2が上限 | 1/2 |
分割の対象となる期間 | 婚姻期間中 | (平成20年4月1日以降の婚姻期間のうち)第3号被保険者だった期間 |
対象者 | 1号2号3号被保険者 | 3号被保険者 |
年金は加入している制度によって1~3号被保険者に分けられます。1号は自営業などの場合、2号は会社員など、3号は会社員の妻などを指します。3号分割は専業主婦が離婚によって、将来年金が受け取れないということにないように作られた制度です。
退職金
退職金も財産分与の対象となる財産です。しかし退職金については払われる時期や、離婚の時期によっては払われる前であったりと分け方が難しい財産でもあります。
退職金が既に払われている場合
退職金が既に払われている場合、払われた退職金を夫婦で分けることになります。退職金の分け方は、退職金の対象となる勤続年数のうち婚姻期間がどれくらいあったかという事と、退職金が払われるにあたり配偶者の貢献度がどれくらいあったかという事に基づいて計算をします。
また退職金が払われたのが何年も前のことで、既に受け取った退職金を全て使ってしまった場合などは財産分与の対象にはなりませんので注意しましょう。
退職金がこれから払われる場合
これから退職金が払われる場合は、退職金の支払いが確実かどうかで財産分与の対象となるかどうかが決まります。熟年離婚で近い将来退職金が払われるのが確実である場合には財産分与の対象となりますが、若者の離婚で退職金の支払いがまだまだ先の場合には財産分与の対象とならない場合もあります。
退職金の支払いの有無などは会社によっても違うので、会社の就業規則や退職金制度なども参考にしながら決めることになります。
離婚の財産分与のまとめ
今回の記事では、離婚の際の財産分与で家はどう分けるかについて下記の内容を中心に解説してきました。
財産分与の対象となる財産の中でも、家は特に高額でローンが残っている場合も多くトラブルになりやすい財産です。後で後悔しないように、離婚の際に当事者間で良く協議をすることが大切です。
また財産分与の際に自宅の査定をする場合は、下記のような一括査定サイトを利用することで、複数の不動産会社から一括で査定が出来るのでおすすめです。手続きや協議で多忙な時期ですから、自ら複数の不動産会社に依頼する手間を省くことが出来るのは嬉しいです。
今回の記事が家の財産分与で困っている方の参考になれば幸いです。