家の売却の資金計画を立てる際、忘れてはならないのが手数料です。家の売却には様々な手数料が必要になってきますから、売却価格だけでなく、手数料も把握しておくことが資金計画の際には重要です。
今回の記事では家を売却する際の手数料について、詳しく解説をしていきます。
まず知るべき|家の売却にかかる手数料の種類一覧
始めて家を売却する方にとっては、売却時にどのような手数料がかかるのかは未知の世界でしょう。家を購入する時と同じように、売却の際には様々な手数料が必要になります。
売却の際にはこれらの手数料を概算で掴んで、資金計画に織り込んでくことが重要です。物件によって必要な手数料が違う場合もあるので、売却しようとしている家に応じた手数料を理解しておくようにしましょう。
家の売却の際に必要な手数料には、下記のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 譲渡税
- 登記費用
- その他の手数料
- 住み替えの場合の手数料
それぞれの手数料の内容について、見ていきましょう。
仲介手数料
不動産の売買において、仲介手数料は忘れてはならない手数料です。金額も決して安い金額ではないため内容を理解したうえできちんと資金計画に織り込んでおきましょう。
仲介手数料とは?
不動産の売買は、売りたい人と買いたい人の合意によって成立するのが特徴です。スーパーで売っている生鮮品や、時計や宝石、高額な車であっても販売店が値段を決めて、消費者が購入をするのが一般的です。しかし不動産の場合は、売りたい人が希望価格を表示し、買いたい人と値段の交渉を行って売買が成立します。
このように、不動産取引は相対取引と言えます。しかし売りたい人も買いたい人も不動産の素人である場合も多く、トラブルが少なくありません。そこで登場するのが、不動産を仲介する仲介会社です。
専門的な知識を持った不動産会社が売主と買主の間に入り、売買対象の物件の特徴や故障箇所、取引の内容などについて説明を行い、契約書の作成も行います。不動産の専門家である仲介会社が間に入ることで、素人同士でも安心して取引が出来るようになります。
不動産売買における仲介会社は、このようにとても大切な役割を果たします。その仲介会社が報酬として受け取るのが仲介手数料です。不動産仲介における仲介手数料は、法律で下記のように上限が決まっています。
不動産の売買金額 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の部分 | 売買価格の5%+消費税 |
200万円超~400万円以下の部分 | 売買価格の4%+消費税 |
400万円超の部分 | 売買価格の3%+消費税 |
売買金額によって上記のように料率が決まっています。400万円を超える場合は計算が難しいので、下記の算式を使うと計算が簡単に出来ます。
【売買価格が400万円以上の場合】
仲介手数料=(売買価格×3%+6万円)+消費税 |
家を売却する場合は、この仲介手数料は必ず資金計画に織り込んでおきましょう。また、上記の仲介手数料の料率は上限の金額になります。仲介する不動産会社によっては、値引き交渉が可能な場合もあります。
人気のある物件や立地の良い物件などの場合は比較的売りやすいですから、そのような物件の場合は値引きをしてもらえる可能性もあります。仲介手数料は一般的には、不動産の引き渡し時に一括で清算する場合が多いです。
仲介手数料以外の費用
仲介手数料以外にかかる費用に印紙代があります。不動産を売買する場合には、売買契約書に印紙を添付します。たかが印紙代と思う方もいるでしょうが、意外と印紙代は馬鹿にならない金額です。印紙代は売買金額に応じて下記のように決まっています。
売買金額 | 印紙代 |
10万円超~50万円以下 | 200円 |
50万円超~100万円以下 | 500円 |
100万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 6万円 |
5億円超~10億円以下 | 16万円 |
10億円超~50億円以下 | 32万円 |
50億円超~ | 48万円 |
譲渡税
不動産を売却する際に、忘れてはならないのが譲渡税です。譲渡とは、売却を意味しますから譲渡税とは、売却に伴って利益が出た場合に課税される所得税のことを言います。
不動産の場合は売買する金額が高額なので、所得の金額も大きく譲渡税の金額も高額になる場合があります。一方で買った金額よりも値下がりするケースも多いですから、譲渡税が不要な場合も多くあります。
譲渡税の計算方法
それでは実際に譲渡税の計算方法を見ていきましょう。ちなみに、譲渡税は所得税ですが給与収入などの他の収入とは分けて計算をする分離課税となります。まず所得の金額は下記の計算式で計算します。
【譲渡所得】
譲渡所得=収入金額−取得費-譲渡にかかった費用 |
収入金額は不動産の売却で入った収入のこと、取得費はその不動産を購入した際の金額、譲渡にかかった費用は仲介手数料などの手数料のことを言います。譲渡にかかった費用にはいくつか種類がありますが具体的には下記のような金額を含むことが出来ます。
- 仲介手数料
- 印紙代
- 解体費用(建物を壊して売った場合)
- 借地権の際の名義書換料
売却した家を相続などで引き継いでいた場合は、親の取得費をそのまま引き継ぎますが取得費が不明な場合もあります。その場合はみなし取得費として売却金額の5%で計算をすることになります。
こうして計算した譲渡所得の金額に対して、税率をかけて譲渡税を計算しますが譲渡税の税率は保有していた期間によって短期と長期に分かれます。
売却した家を保有していた期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年超の場合は長期譲渡所得となります。期間を計算する際は売却をした日ではなく、売却をした年の1月1日時点で5年以下か5年超かを判定する点に注意をしましょう。
【短期譲渡所得】
譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%) |
【長期譲渡所得】
譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
短期譲渡所得の場合は約40%、長期の場合でも約20%と高い税率がかかります。しかし、家を売却する場合は次のような特例が使えます。
譲渡税の特例
家を売った場合に使える譲渡税の特例には、いくつか種類があります。それぞれに適用できる要件がありますので内容を良く確認しましょう。
3,000万円の特別控除
こちらの特例は譲渡所得から3,000万円を上限にして控除することが出来る特例です。つまり収入から取得費と費用を引いた所得が3,000万円までであれば、所得税がかからないことになるとても大きな特例です。この特例を利用するための要件は下記になります。
- 居住用の不動産の売却であること
- 売却した年の前年・前々年にこの特例や他の特例を受けていないこと
- 親子間や夫婦間の売買でないこと
などがあります。所有期間などは関係ないので、比較的適用になりやすい特例です。上記は一部なので、詳しくは国税庁のホームページなどで確認をするようにしましょう。
軽減税率の特例
家を売却した場合、所有期間が10年を超えている場合は下記の軽減税率が適用になります。
・譲渡所得6000万円以下の部分 ・譲渡所得6000万円超の部分 |
この特例は、先ほどの3,000万円の特別控除の特例と同時に利用することが可能です。3,000万円を控除してもまだ所得が残る場合は、この軽減税率が適用されます。この特例を利用するための具体的な要件は次の通りです。
- 居住用の不動産の売却であること
- 売却した年の1月1日で所有期間が10年を超えていること
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
- 親子間や夫婦間の売買でないこと
こちらの要件も一部ですので詳細は国税庁のホームページで確認しましょう。
買い替え特例
もう一つの特例が買い替え特例と呼ばれるものです。この制度は名前の通り、家を買い替えた場合に利用できる制度です。
この制度の特徴は、買い替えで購入した家が売却した家の価格より高いことが条件であることです。売った価格よりも高い価格の家を買うことで、譲渡所得を将来に繰り延べることが出来ます。
この制度はあくまで繰り延べなので、税額そのものが軽減される訳ではありません。将来買い替えた家を売却した際には、再度譲渡税が課税される点に注意が必要です。この特例はを受けるために要件は下記の通りです。
- 居住用の不動産の売却であること
- 前年・前々年に3000万円特別控除や10年超所有の場合の軽減税率の特例、その他の特例を利用していないこと
- 売却した金額が1億円以内であること
- 買い替えした住宅の床面積が50㎡以上であること
- 家を売った年の前年から売った年の翌年までの3年間の間に、買い替えの住宅を購入すること
- 親子間や夫婦間の売買でないこと
この特例はこれまで説明した3,000万円の特例や、長期の軽減税率とは同時に利用できない点に注意が必要です。こちらも詳細は国税庁のホームページで確認が必要です。
家を売却した場合は、このように様々な特例があります。これらの特例を上手く活用することで譲渡税を抑えることが出来るのでしっかりと抑えておきましょう。
登記費用
家を売却した場合、登記の名義を変える必要があります。不動産売買の際に所有者の名義を変えることを所有権の移転登記と言いますが、この手続きには費用が掛かります。
しかし不動産の売買では、所有権の移転登記の費用は通常は買主が負担をします。そのため売却の際にはこの費用は必要ありません。
家を売却する際に必要な登記費用としては、抵当権の抹消費用がかかる場合があります。
抵当権抹消費用
抵当権とは、金融機関から住宅ローンを借りる際に自宅に設定されている権利です。住宅ローンを借りる場合は殆どの場合で、自宅に抵当権が設定されており、金融機関は抵当権を設定することで担保としています。
家を売却する際、抵当権が設定されたままでは売却できませんので、抵当権の抹消登記をする必要があります。
抵当権の抹消登記にかかる費用は3~5万円程度です。通常は司法書士に依頼をしますが、詳しい方であれば自分で法務局に行って手続きをすることも可能です。
その他諸費用
これまで説明したきた手数料以外にも、家の売却の際には手数料が必要な場合もあります。ここで説明する手数料は必ずしもかかる訳ではなく、物件によって必要になる場合もある費用です。
境界確定
戸建ての家を売却する際、隣地との境界を確定して測量図を作成しておく必要があります。境界確定とは隣地との境を下記のように確定させることです。
境界確定や測量は必ずしも行わなければならないものではないですが、隣人とのトラブルを避ける意味でも通常は買主から求められるケースが多いです。
既に境界確定測量が行われている場合は不要ですが、古い取引では行われていないケースも多いですから売却の際には売主の負担で境界確定を行うのが一般的です。
境界確定測量にかかる費用は土地の広さにもよりますが、100~200㎡の土地で約60~80万円程度が相場と言われています。境界確定を行う土地の隣地や接道に官有地が無い場合、官民立ち合いが不要になるため測量費はもう少し安くなります。
解体費用
売却する家の家屋が古い場合は取り壊しをして、更地にして売却する場合があります。もちろん買主負担で売却をする場合もありますが、立地によっては解体をしてから売却した方が売りやすい場合もあります。当然この場合の解体費用は売主負担で行う必要があります。
解体費用は建物の構造などにもよりますが、木造の場合で坪4~5万円程度、軽量鉄骨の場合で坪6~7万円程度が一般的です。一般的な戸建て住宅の場合は、木造で30坪程度ですからおおよその解体費用は120~150万円程度になります。
ローン返済にかかる費用
売却する家にまだ住宅ローンが残っているケースもあるでしょう。住宅ローンが有る場合は、売却と同時に住宅ローンを全額繰上返済をする必要があります。
住宅ローンを返済する場合、金融機関によっては繰上返済の手数料が必要になる場合もあります。繰上返済手数料の取り扱いは金融機関毎に違いますので、売却の際には必ず確認しておきましょう。
主要な銀行の繰上返済の手数料は下記の通りです。
金融機関名 | 全額繰上返済手数料 |
三菱UFJ銀行 | 33,000円(インターネットだと割引有り) |
三井住友銀行 | 22,000円(インターネットだと割引有り) |
みずほ銀行 | 33,000円 |
りそな銀行 | 変動金利の場合11,000円、固定金利の場合33,000円 |
三井住友信託銀行 | 22,000円 |
住み替えローンの場合に発生する手数料
これまでは家の売却の際に必要な手数料について解説をしてきました。しかし、家を売却する際には同時に新しい家を購入するようなケースも多いでしょう。家族が増えたので広い家に引っ越したり、転勤や里帰りで家を買い替えたりなど住み替えをする場合も多いです。
住み替えの場合は売却時の手数料に加え、新しい家の購入にかかる手数料も必要になります。ここでは住み替えの際の手数料について見ていきましょう。
購入にかかる費用
家を購入する場合の手数料は、一般的に新築のマンションで物件価格の3〜5%、戸建や中古物件の場合で6〜13%程度言われており、購入の場合にもそれなりに費用がかかるのが分かります。
売却の場合と同じくたくさんの項目がありますから、費用毎に見ていきましょう。
仲介手数料
売却の場合と同じように購入の場合も仲介手数料がかかります。手数料率の上限は売却の場合と同じで、場合によっては値引き交渉も可能です。新築マンションなどの場合は、売主が不動産会社になっていますから仲介手数料が不要の物件もあります。
印紙税
こちらも売却の場合と同じで、売買契約書に添付すると印紙代が必要になります。金額も先ほど紹介した売却の場合と同じ金額です。
登記費用
購入の場合は、売却の際よりも登記費用は高くなります。物件を購入した場合は、売主から買主へと物件の所有権が移転しますのでその内容を法務局へと登記申請手続きを行います。
この申請手続きは自分で行うには難しく、通常は司法書士へと依頼します。また所有権の移転登記を行う際には、固定資産税評価額に対して下記税率の登録免許税が必要になります。
税率 | 軽減税率 | |
土地の所有権移転 | 2% | 1.5% |
新築建物の所有権保存 | 0.4% | 0.15% |
中古建物の所有権移転 | 2% | 0.3% |
登録免許税については一定の要件を満たすことで、軽減税率が適用になります。詳しくはこちらの国税庁ホームページで確認をしましょう。
不動産取得税・固定資産税
不動産を購入した場合、忘れてはならないのが不動産取得税です。不動産取得税は不動産購入時にかかる費用ではありませんが、不動産を購入する場合は忘れずに資金計画に織り込んでおきましょう。通常は不動産購入後6ヵ月程度で、下記の計算式で計算された通知が届きます。
【不動産取得税】
税額 = 固定資産税評価額 × 4% |
不動産取得税も現在は軽減税率が用意されており、宅地の場合は固定資産税評価額が1/2になりますし、新築建物であれば1,200万円の控除が適用できます。
また不動産を保有していると、毎年固定資産税が課税されます。固定資産税は1月1日時点での所有者に対して課税されるため、不動産を売買する際には売主と買主が物件の引き渡しの日を基準に日割りで折半するのが通常です。
その他の費用
この他にも、大きな費用としては引っ越し費用や火災保険などがあります。新しい家を購入する訳ですからカーテンや家具・家電などの費用も準備しておく必要があります。
またマンションの場合、物件にもよりますが購入時に一括で修繕積立金を払うこともあります。金額は物件によって違いますが、多い場合は100万以上になることもあります。
ローンにかかる費用
住み替え後の家を購入する際、住宅ローンを借りる場合は住宅ローンにかかる費用も準備する必要があります。一度ローンを組んだ経験のある方であればお分かりかもしれませんが、住宅ローンを借りる場合は下記のような手数料が必要になります。
保証料・融資手数料
住宅ローンを借りる場合は各金融機関が定める保証会社の保証が付いている場合が多いです。保証会社が付くことで保証人が不要で住宅ローンを借りれるというメリットがあります。
その保証会社に対して払う手数料が保証料です。金融機関によっては保証料ではなく、融資手数料などと呼ぶところもあります。料率も金融機関によって違いますが、借入金額の2%程度の場合が多いです。
抵当権設定費用
住宅ローンを借りる場合、購入した家を金融機関が担保にします。担保にするためには自宅の登記に抵当権を設定しますが、この費用も負担する必要があります。抵当権設定の登記を行う場合は司法書士に依頼をするのが一般的で、費用には司法書士への報酬と下記の税率で計算される登録免許税が必要になります。
【抵当権設定の登録免許税】
税率=借入金額×0.4% |
家の売却時の手数料のまとめ
今回は家を売却する際の手数料について下記の内容を説明してきました。
家を売却する際には、必要な手数料を把握しておくことが大切です。また手数料だけでなく、下記にあるような無料の一括査定サイトを利用することも重要です。無料査定を利用することで売却の相場を確認することが出来るので、より高く売却できる可能性があります。
今回の記事が家を売却する方の参考になれば幸いです。