マンションを売却して、一戸建てを購入するなど、住み替えによってマンションを売却するときの方法をご紹介しましょう。住み替えの場合、マンションの住宅ローンが残っている人は、そのローンを完済しないと新しい住宅を購入することができません。
また、“買いが先か、売りが先か”という問題もあります。その辺のポイントを押さえながら、住み替えでできるだけロスなく、スムーズにマンションを売却するための方法をお話しします。
住み替えによってマンションを売却するまでのステップ
住み替えによってマンションを売却する場合は、次のようなステップで進みます。
【住み替えによるマンション売却の手順 ①】住宅ローンの「残債」を確認する
住宅ローンを完済しないと、マンションは売却できない
返済予定表かインターネットバンキングで、残債の確認を
「一軒家(または別のマンション)に住み替えたいから、今のマンションを売却したい」と思っても、残債を完済しなければ、マンションを売却することはできません。具体的にはマンションの売却額で住宅ローンの残債を払い終えることで、「所有権」を売手から買手へ移すことができ、一軒家の住み替えへと進むことができます。
そのため、まずは銀行が発行した住宅ローンの返済予定表を見て、残債を確認する必要があります。ネット銀行の場合は、インターネットバンキングで確認することができます。
マンションの売却額が住宅ローンの残債に満たない場合は?
もしもマンションの売却額が住宅ローンの残債に満たない場合は、自己資金でそれを補填しなければなりません。
自己資金が足りない場合、住み替えをする人は「買い替えローン」を組むことができます。これは住み替えをする人専用の住宅ローンで、マンションの売却代金で補填しきれなかった金額を、新居の購入代金に上乗せして貸してくれるというものです。
ただし、買い替えローンがプラスされることによって、新居のローン負担が増えることは覚悟しなければなりません。その辺をよく計算しながら、本当に自宅を住み替えるべきかどうかを考える必要があるでしょう。
実際に住宅ローンの返済に充てられる金額は、マンションの売却額から下記のものが差し引かれた金額になります。
住宅ローンの返済に充てられるのは、売却額から経費を引いた金額
マンションの売却には、仲介手数料などの経費がかかる
住み替えるにあたって、マンションを売却した金額で住宅ローンを返済しようとする場合、売却金額がそのまま返済額に充てられるかというと、そうではありません。実際に住宅ローンの返済に充てられる金額は、マンションの売却額から下記のものが差し引かれた金額になります。
<マンションの売却価格から差し引かれる費用>
・不動産業者の仲介手数料 (「成約価格×3%+6万円+消費税」が上限)
・司法書士事務所に支払う登記費用 (3万円~8万円程度)
・印紙代 (売却金額によって異なる。たとえば2500万円の場合は1万円分の収入印紙が必要)
さらに売却にあたってリフォームが必要な場合は、リフォーム代金がかかります。リフォーム代金は、築10~15年程度であれば数十万円で済む場合もありますが、築20年を超えると100万円以上のリフォーム代は覚悟する必要があるでしょう。
売却益が出た場合は、「譲渡税」も別途かかる
その他にも、不動産景気の上昇などによってマンションの購入価格よりも売却価格が高かった場合は、売却益が発生するので「譲渡税」がかかります。また銀行によっては、売却額で住宅ローンの一括返済をする際に、数千円~数万円単位の手数料がかかる場合もあります。
これに引越し代などのもろもろの諸経費を含めると、たとえばリフォームの必要がないマンションを2,000万円で売却した場合、その内の5%(100万円)程度は経費として差し引かれます。そのため、住宅ローンの返済に回せる金額は実質1,900万円、もしくは1,800万円くらいだと考えた方が賢明です。
このように、住み替えるにあたってマンションの住宅ローンが残っている場合、何はさておき“ローンの完済”が最優先事項だということを知っておきましょう。
【住み替えによるマンション売却の手順 ②】「不動産売却一括査定」を申し込む
「簡易査定」を受けて、住宅ローンの完済の見込みを立てる
マンション売却ガイドの“カンタン60秒査定”を申し込む
マンションの売却額で住宅ローンを完済し、無事に住み替えを行なうことができるかどうかは、マンションの査定を受けてみなければ予測がつきません。そこで便利なのが、「不動産売却一括査定」です。ネット上でササッと申し込むだけで、お住まいの地域のマンション売却に強い数社の不動産会社から、すぐに簡易査定をもらうことができます。
まずは当サイトの“カンタン60秒査定”に申し込み、不動産業者から「簡易査定」を出してもらいましょう。ネット上のフォーマットにマンションの間取りや階数・向きなどを1分程度書き込んだら、後は申し込んで連絡を待つだけ。すぐに数社の不動産から、査定額を知らせる連絡が入ります。
その中であまりに高すぎる査定や、あまりに低すぎる査定があれば、誠実さに欠ける可能性があるので除外した方が賢明です。SUUMOやLIFULL HOME’Sなどの不動産情報サイトで、同条件のマンションの売却額をあらかじめチェックしておくと、妥当な査定額を見分けることができるでしょう。
【住み替えによるマンション売却の手順 ③】「訪問査定」を依頼する
2~3社に「訪問査定」を依頼し、具体的な査定額を把握する
正確な売却査定額は、訪問査定を受けて初めてわかる
簡易査定を受けとったら、その中から「ここの不動産会社は対応が丁寧だし、査定価格も納得できる」と思える不動産会社を2~3社選び、訪問査定に来てもらいましょう。
簡易査定はあくまで予測の金額なので、実際にマンションの室内や外観・共有施設などを見てもらわなければ、正確な査定額は出せません。よく「1社に訪問査定に来てもらって、そのまま媒介契約をしてしまった」という人いますが、これはお勧めしません。
たとえ印象のいい不動産会社が見つかったとしても、必ず2番目・3番目の候補まで訪問査定に来てもらって、さまざまな点を比較・評価するのがベストの方法です。
査定額が予想以上に低い場合は、売却を断念することもあり得る
住み替えの場合は、住んでいるマンションを売却した金額で住宅ローンを完済し、また新たに新居の住宅ローンを組むというパターンがほとんどです。その際、「このマンションは20年前に購入するときに4,000万円もしたのだから、残債が2,500万円あっても売却金額で十分返済できるだろう」というように、甘く考える人も少なくありません。
しかし、実際の査定額が2,000万円に満たなかったりすると、足りない分は自分で払うか買い替えローンを組まなければならなくなります。そのような無理をしてまで、本当に住み替える必要があるのかどうかは、十分に家族で話し合う必要があるでしょう。
そして、「今から無理をして住み替えて、キツい住宅ローンに苦しむよりも、今のマンションで暮らし続けた方が楽しく生活できるかもしれない」という結果になることも、十分にあり得ます。
マンションを今後売るのか、住みつぶすのかが明らかになれば、長期的なリフォーム計画なども立てやすくなるでしょう。訪問査定は、何も住み替えるためだけでなく、「これからどうするかをはっきりさせる」という意味でも大きな意味があります。
売却額と貯金で住宅ローンを完済できなければ、「買い替えローン」を組む
万が一に備えて、新居の契約に「買い替え特約」を付ける
住み替えるにあたって、マンションの売却価格が住宅ローンの残債に満たず、自己資金でも補填できない場合は、「買い替えローン」を組むことになります。その際は、買い替えローンを借りられる銀行に相談をしましょう。新しく家を購入するときには、「買い替え特約」という条件を付けて契約をする必要があります。
買い替え特約とは、「売却する物件が〇月〇日までに売却できなければ、契約を解約する」という、住み替えのための特約のこと。この特約をつけることで、万が一マンションが売却できなければ住み替えを取りやめ、契約を白紙に戻すことができます。
買い替えローンをプラスした新居のローンが、本当に返済可能なのかをよく考える
しかし、買い替えローンをプラスした新居の住宅ローンの金額は、かなり高額になる可能性があります。その金額が確かに返済可能な金額なのかどうかを、家族でじっくり話し合う必要があるでしょう。
【住み替えによるマンション売却の手順 ④】「媒介契約」を結ぶ
売却・購入とも同じ会社の「専任媒介」がお勧め
住み替えの場合は、売りと買いを1社に任せられれば理想的
不動産の媒介契約には、1社が専任で売却活動を行なう「専任媒介契約」と、広くいろいろな不動産会社に売却を依頼できる「一般媒介契約」があります。媒介方法はどちらを選んでも良いのですが、住み替えの場合は、マンション売却に関しては信頼のおける不動産会社と専任媒介契約を結び、新居の購入も同じ会社に仲介を頼んだ方が何かと便利です。
なぜなら、住み替えの場合は、マンション売却と新居購入のタイミングが非常に重要だからです。「マンションの売却が先決」と思って新居を決めずにマンションを売却した場合、なかなかいい家が見つからないと、仮住まいの手間と経費がかかります。
専任の不動産会社が、売買のタイミングなど、何かと便宜を図ってくれる
また、住みたい新居を先に見つけて急いでマンションを売却に出した場合は、買手に足元を見られて安く叩かれてしまう危険性もあるでしょう。その点、売りと買いを1社の不動産会社に任せられれば、担当者がタイミングの調整をしつつ便宜を図ってくれるので、とてもやりやすいのです。
もちろん、住み替えを行なう人がすべて、同じ会社に売りと買いを任せているわけではありません。「購入する物件は、仲介業者を通さずに自分で見つける」という人もいるでしょうし、「大規模分譲地の新築物件なので、仲介は必要ない」という人もいるでしょう。
その辺は臨機応変に選択し、できるだけタイミングよく売りと買いを進行できるようにしましょう。
【住み替えによるマンション売却の手順 ⑤】販売開始・お客様の内覧
住み替えの基本は、新居購入よりも“売却優先”
最初に欲しい家が決まってしまうと、マンション売却時にたたかれることもある
不動産会社と媒介契約を結んだら、いよいよマンションの販売活動をスタートします。住み替えを考える人でよくあるのが、「マンションに住んでいるけれど、いずれ一戸建てが欲しいと思ってモデルハウスに見学に行ったら、ピッタリの物件に出会った。今すぐマンションを売却して、一戸建てに住み替えたい」というようなパターンです。
実際に購入したいと思う家が目前にあれば、売却に気合いが入るのも無理はないでしょう。しかし、住み替え先を決めてからのマンション売却は、転勤によるマンション売却と一緒で、買手に足元を見られて大幅値引きを迫られる典型的なケースです。
住まいとの出会いは縁。冷静に考えて、適正価格で売却できる方法を
やはり理想的なのは、マンションの売却を先に済ませ、そこから新居を探し始めるのがベストの方法です。「売却を決めてから、いい家が見つからなかったら困る」という気持ちもあるかもしれませんが、そのときは実家や賃貸住宅などへの仮住まいを視野に入れても良いでしょう。
住まいというのは不思議なもので、「絶対にこの家に住みたい!」と懇願しても住めないこともあれば、「まあこのくらいの家なら問題ないかな」と思っていたら、驚くほどスルスルと物事が進んで入居に至る場合もあります。
ある意味結婚と同じで、「この人しかいない」と思った人が10年後に理想の人であるとは限らないように、「この家しかない」と思った家が10年後に理想の家であるとは限らないのです。結婚相手との出会いが縁なら、住まいとの出会いも縁。そんな風に考えられるようになると、“まずは最初にマンションの売却を”と、冷静に考えられるかもしれません。
“住み替えの売主は安く叩かれやすい”ということをくれぐれも念頭に置いて、適正価格でマンションを売却できるように考えることが大切です。
【住み替えによるマンション売却の手順 ⑥】売買契約・決算・引渡し
マンションの売却代金を受け取ってローンを完済し、所有権を移転
マンション売却完了後は、心置きなく新居探しができる
マンションの買手が見つかり、無事成約ができたら、売買契約を結びます。そして1~1ヶ月半後には決算を行ない、買手からマンションの売却代金を受け取り、それで住宅ローンを一括返済します。金額が足りない場合は、その分を売主が現金で支払います。(すでに住み替え先が決まっていて、買い替えローンを利用する人は、住宅ローンの一括返済と同日に買い替えローンの融資実行を行います。)
これによってマンションに付いていた抵当権が抹消され、所有権移転手続を行なうことができます。手続終了後はマンションの鍵を買手に渡し、マンション売却は完了です。マンション売却の翌年には、確定申告を行なう必要があります。
マンション売却完了後は、新居購入の目途がはっきり立つので、心置きなく新居探しに集中することができます。
もしも新居の買いを先行していたなら、マンションが無事売却できて、ホッと胸を撫でおろすことでしょう。
住み替えの際のマンション売却に関するまとめ
住み替えはふたつの物件の売買が関係してくるので、非常に気を使うとともに、上手くやらないと予想を大幅に上回る出費になりかねない大変な作業です。しかし、これを乗り越えて理想の新居に住み替えることができたら、その喜びはとても大きいでしょう。
売りと買いのタイミングにはくれぐれも注意して、慎重にマンション売却に臨みましょう!